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[[ファイル:Zaanse_mayonaise.jpg|thumb|代表的なエマルションである[[マヨネーズ]]]]
'''エマルション'''または'''エマルジョン'''<ref>[http://www.noe.jx-group.co.jp/binran/glossary/jp_a/e8.html 石油用語辞典|エマルジョン(エマルション)] - [[JX日鉱日石エネルギー]]</ref>({{Lang-en-short|Emulsionemulsion}} {{IPA|imʌ'lʃən}})とは、分散質・[[分散媒]]が共に液体である[[分散系]]溶液のこと。'''乳濁液'''(にゅうだくえき)あるいは'''乳剤'''(にゅうざい)ともいう。身近な例としては[[マヨネーズ]]・[[接着剤#合成系接着剤|木工用接着剤]]・[[アクリル絵具]]・[[写真フィルム]]の感光層・[[アスファルト#用途|アスファルト舗装のシール剤]]が挙げられる。
 
<!-- {この段落は下に移動した。次の機会に削除すること。} ときどき'''エマルション液滴'''という記述があるが、エマルションとは懸濁している'''[[系 (自然科学)|系]]'''を指しており、分散 媒中の滴を指す言葉としては'''誤り'''である(このままだとエマルションの状態を保った液体の液滴、という意味になってしまう)。
 
-->分離している2つの液体をエマルションにすることを'''乳化'''(にゅうか)といい、乳化する作用をつ物質を'''乳化剤'''(にゅうかざい)という。
 
[[化粧品]]の[[乳液]]を指すこともある。一方、[[農薬]]ではエマルションと乳剤を区別し、有効成分を[[有機溶剤]]および[[界面活性剤]]に溶解した[[溶液]](水と混合してエマルションにしてから使用する)を乳剤(emulsion concentrate:EC)(emulsion concentrate: EC) と呼ぶ。
 
== 呼称 ==
古い文献などでは濁点のあるエマル''''''ョンという表記が多く、化学分野を中心に一般にも浸透しており<ref>[http://www.zebra.co.jp/pro/listball_emulsion.html エマルジョンボールペン] - [[ゼブラ_(文具メーカー)|ゼブラ]]</ref>、[[写真フィルム]]<ref>フィルムの乳剤番号(製造番号)をエマルジョンナンバーと呼ぶ。</ref>などでは業界用語として定着している。
 
一方、[[日本工業規格]]ではエマル''''''ョンと表記するのが正しいため、産業関係では濁点のない表記が定着している<ref>[http://www.jama.or.jp/lib/jamagazine/200704/02.html JAMA -JAMAGAZINE-2007年4月号 5.エマルション塗料] - [[日本自動車工業会]]</ref>。
 
ただし、英語の発音を無理に片仮名で表記すれば、「イマァルシャン」が近い<ref>{{Cite web |url=http://en.hatsuon.info/word/emulsion
|title=emulsionの発音記号と読み方 |publisher=発音インフォ |accessdate=2017-04-15}}</ref>。
 
ときどき「エマルション液滴」という記述があるが、エマルションとは懸濁している[[系 (自然科学)|系]]を指しており、媒中に分散した滴を指す言葉としては誤りである(「エマルションの状態を保った液体の液滴」という意味になってしまう)。
 
== 両親媒性物質とミセル ==
一般に、[[水]]と[[油]]のように相互に交じ混ざり合わない液体は、[[液滴]]状に分散しても[[界面張力]]が大きいためにので[[滴]]状に分散しても滴が合体することによって界面の面積を小さくする作用が働いて、最終的には2つの層に分離する。
 
分子構造のある部分と異なる部分が交じ混ざり合わない溶媒(分散系)に対して[[親和性]]つ物質を[[両親媒性分子|両親媒性物質]]と呼ぶが、この分散系に両親媒性物質を添加するとこの物質がそれぞれの溶媒に[[配向するように性|配向]]し界面を覆い尽くすように分布する。
 
一方の物質(混り合わない液体のうちの一方または両親媒性物質、またはその混合物)が粒状に会合し(異なる分子が層状に分布し)ている構造を'''ミセル'''(micelle) (micelle)」と呼び、両親媒性物質がミセルを形成すると液滴の分散系が安定化する。
 
この両親媒性物質が分布することによって界面張力は低下し、特に[[イオン性物質]]の場合は[[電気二重層]]を形成して液滴間に静電反発力が働くなど、界面を保護するように作用するためので、分散系の液滴は安定化する。
 
たとえば[[石鹸]]など陰イオン系[[界面活性剤]]は疎水性基を油滴側、カルボキシレートアニオン基を水側に向けて界面に配向することで油を水に可溶化する。一方、カルボキシレートアニオン基の負電荷は分極した水を引き付け、アニオン電荷と分極した水の電荷から構成される電気二重層を形成する。これによって油滴表面には同種の電荷が存在するためにので油滴同士どうしは反発し、エマルションは安定する。
 
=== 臨界ミセル濃度 ===
{{Main|臨界ミセル濃度}}
'''ミセル'''を形成するためには両親媒性物質(界面活性剤)が界面に一定量以上存在する必要があり、ミセルを形成するのに必要な最低限の界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(critical (critical micelle concentration:CMC)concentration: CMC) と呼ぶ。この値が小さいほど界面活性剤としての能力は高い。
 
== 乳化剤 ==
'''乳化剤'''(にゅうかざい、emulsifier)は、安定なエマルションを形成するために添加される両親媒性物質であり、一般には[[化学品]]の両親媒性物質である[[界面活性剤]]が用いられる場合ことが多い。食品用、化粧品用、工業用といった用途に合わせて様々な種類の乳化剤が存在する。
 
たとえば、[[マヨネーズ]]においては、[[卵黄]]の脂質([[リン脂質]]や[[ステロール]]類など)が界面活性効果を表し、[[牛乳]]に於いては乳タンパク質が働くことで安定なエマルションを形成している。
 
=== 水-油系エマルション ===
水-油系エマルションを形成する場合、油滴が水に分散する水中油滴(O/W型)エマルションか、油中水滴(W/O型)エマルションのいずれかの構成をとる。これは乳化剤の親水性と親油性の強度がどの程度であるかという性質によって、どちらの状態をとりやすいかが影響され、決まる。温度変化などによってO/W型とW/O型との間を移り変わる'''転相'''と呼ばれる現象も見られ、その温度を'''転相温度'''(HLB温度)という。
 
=== 親水親油バランス ===
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== 乳化方法 ==
エマルションは熱力学的に不安定な系であり、非平衡状態にある。すなわち、未来永劫微細混合されている状態が保たれるわけではなく、いつかは必ず油と水に分かれてしまう。そこで、合一を出来できる限り抑えるために、さまざまな乳化方法が検討されており、一般的には記のものが知られている。[[機械乳化]]、[[電気毛管乳化]]以外は乳化途中に無限会合状態を経由する方法が取られており、被分散側の粒子径を出来できる限り微細化することで合一を防いでいる。
 
* [[機械乳化]]
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* [[転相温度乳化]](PIT乳化)
* [[D相乳化]]
* [[可溶化領域を利用した[[超微細乳化]]
 
== 解乳化 ==
[[解乳化]]とは、乳化の逆をう。つまり、エマルションになっている系を、積極的に安定な相分離系へ移行させるプロセスをう。利用としては、原油にエマルションとして含まれている水の分離や、下水中にエマルションとして含まれている廃油の分離などがある。
 
== 料理におけるエマルション ==
Emulsionは「乳をり取る」という意味の[[ラテン語]]からきた言葉であり、[[ナッツ]]などから抽出した[[乳液]]を指した。[[ヴィネグレットソース]]や[[オランデーズソース]]、[[ブイヤベース]]など、とろみのある料理や[[ソース (調味料)|ソース]]、[[ソーセージ]]の充填物などを作る時、エマルションの原理が応用されていである。また、サラダなどにエマルションソースをかけたものは、メニュー名に「~のエマルション」とされる場合ことがある。
エマルションソースは高温になると乳化剤が安定を失うためので、かける対象が熱すぎる料理には向かない。保温する場合も水分と油の比率が変化しないように注意する必要がある。冷蔵庫で保管するなどした場合、隣り合う液滴が融合したり油脂が固化してなめらかさが失われる場合こともある{{sfn|Harold McGee |2008|pp=605-618}}。
 
==脚注==