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ただし近年の測定結果や理論面からは、グルコース1分子から38当量のATPが合成されるとする解釈は支持されていない。以下問題点を列挙すると:
* 心筋や肝臓などの細胞では、解糖系で合成されたNADHはリンゴ酸アスパラギン酸シャトル(Glu/Aspシャトル)を通じてミトコンドリア内での当量のNADH合成に利用されるが、通常の細胞では、NADHはグリセロリン酸シャトル(αGPシャトル)を通じてミトコンドリア内での当量のFADH<sub>2</sub>合成に利用される。そのため最終的に合成されるATPが2当量少なくなる。
* 従来は電子伝達系においてNADH や FADH<sub>2</sub>などの水素供与体が電子を酸素に渡す過程でATPが合成されると考えられたが、今日では電子伝達による膜外へのプロトンの放出と、プロトン濃度勾配により生まれた[[膜電位]]を駆動力とするATP合成が別個のシステムで行われることが判明し、P/O比(合成されたリンと消費した酸素のモル比)は整数である必要がなくなった。真核生物においてはNADHの酸化からは10当量のプロトンが、FADH<sub>2</sub>の酸化からは6当量のプロトンがミトコンドリア基質から[[ミトコンドリア膜間腔]]へ放出される。
* ミトコンドリア内で合成されたATPを細胞質基質へ輸送する段階で当量のプロトンのミトコンドリア基質内への流入が起こり、ATP合成のためのプロトンの消失に繋がる。同様にGlu/AspシャトルによるNADHの生成においても当量のプロトンがミトコンドリア基質内へ流入する。
* ATP合成酵素においては3当量のプロトンの流入でATP合成酵素が1回転し、ATPが1分子合成されると考えられている。さらにミトコンドリア内で合成したATPを細胞内へ輸送する際に1当量のプロトンを消費するため、細胞質基質で消費するためのATPの合成に必要なプロトンの当量(H<sup>+</sup>/ATP比)は4となる。理論上のP/O 合成比は、NADHで2.5 (= 10/4)、FADH<sub>2</sub>で1.5 (= 6/4)となり、グルコース1分子当たり31または29.5分子のATPが合成されることになる(Glu/AspシャトルやGTP由来のATP輸送によるプロトン消費(共に2 H<sup>+</sup>、0.5 ATP相当の消失)を無視すると32または30分子)。<ref name=Hinkle1991>Hinkle, P. C.; Kumar, M. A.; Resetar, A.; Harris, D. L. ''Biochemistry'' '''1991''', ''30'', 3576–3582.</ref> 最近の生化学の教科書ではこちらの説を解説するようになってきている。