「ゲーム理論」の版間の差分

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2011年から2013年頃までの間、「ゲーム理論は経済学とは無関係に数学者の手によって生まれた。ゲーム理論は数理経済学ではなく純粋数学である。」という旨の主張がIP利用者の方を中心によって繰り広げられて編集合戦が起きていたようなので、ゲーム理論の誕生年に関してやや詳しめに出典を付けております。出典の多さに見苦しさを感じられた方もおられるかもしれませんが、ご了承ください。
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が一般的である一方で、[[1928年]]にゲーム理論が誕生したとする見方もある{{Sfn|鈴木|1999|p=236}}{{sfn|河野|2017|p=1}}。1928年は、フォン・ノイマンが論文「社会的ゲームについて({{lang-de-short|"Zur Theorie der Gesellschaftsspiele"}})」を発表し、モルゲンシュテルンが著書『経済予見ー仮定とその可能性についての考察({{lang-de-short|''Eine untersuchung ihre Voraussetzungen und Moglichkeiten''}})』を刊行した年である。例えば、[[酒井泰弘]]([[滋賀大学]][[名誉教授]]・経済学説史家)や[[河野敬雄]]([[京都大学]]教授・理論経済学者){{harvnb|河野|2017}}のように、ゲーム理論が「1928年に、二人独自の研究によって誕生し、1944年出版の共著『ゲーム理論と経済行動<!--原文ママ-->』によって確立した{{sfn|酒井|2010|pp=148–149}}」とする専門家もいる。}}。元来は主流派経済学([[新古典派経済学]])への批判を目的として生まれた理論であったが{{Sfn|岡田|2011|p=13}}、[[1980年代]]の「[[ゲーム理論#ゲーム理論によ経済学の静かな革命|ゲーム理論による経済学の静かな革命]]」を経て、現代では経済学の中心的役割を担うようになった{{Sfn|神取|1994}}{{Sfn|神取|2010}}
}}
{{Refnest|group="†"|
ゲーム理論のルーツについては、フォン・ノイマンらに始まる[[協力ゲーム]](提携と[[コア (ゲーム理論)|コア]]の理論)、[[ナッシュ|ジョン・ナッシュ]]に始まる協力ゲーム(交渉の理論)、ナッシュに始まる[[非協力ゲーム理論]](均衡の理論)の3流派に分けて論じられることもあり、今日「ゲーム理論」と言えばナッシュの「非協力ゲーム」を指す場合がほとんどである{{sfn|河野|2017|p=2}}。しかし、数学者である{{harvnb|Luce|Tucker|1959}}はPrefaceでフォン・ノイマンをcreator of the Theory of Gamesと評しており、また、[[ロジャー・マイヤーソン|マイヤーソン]]([[2007年]][[ノーベル経済学賞|ノーベル賞]]受賞者)はフォン・ノイマンらをゲーム理論の先駆者としている一方でナッシュを「中興の祖」として位置付けている{{sfn|Myerson|1999|pp=1070-1073}}。このように、ナッシュがゲーム理論の創始者とされることは稀である{{sfn|河野|2017|pp=2-5}}。
}}。元来は主流派経済学([[新古典派経済学]])への批判を目的として生まれた理論であったが{{Sfn|岡田|2011|p=13}}、[[1980年代]]の「[[ゲーム理論#ゲーム理論による経済学の静かな革命|ゲーム理論による経済学の静かな革命]]」を経て、現代では経済学の中心的役割を担うようになった{{Sfn|神取|1994}}{{Sfn|神取|2010}}。
 
ゲーム理論の対象はあらゆる'''戦略的状況''' ({{lang-en-short|''strategic situations''}})である{{sfn|神取|2014|pp=304–307}}{{Refnest|group="†"|「戦略的状況」は'''ゲーム的状況'''({{lang-en-short|''game situations''}}){{Sfn|岡田|2011|p=2}}や'''戦略的環境'''({{lang-en-short|''strategic environment''}}){{sfn|奥野|2008|pp=188–189}}と呼ばれることもある。}}。「戦略的状況」とは自分の利得が自分の行動の他、他者の行動にも依存する状況を意味し{{Refnest|group="†"|日本語圏へのゲーム理論の導入や普及に尽力した経済学者の一人として知られる[[鈴木光男]]は[[東北大学]][[経済学部]]在学中の[[1952年]][[1月]]に「ゲームの理論の構成とその経済学への応用」という卒業論文を提出しており、口頭試問の際に指導教官であった[[安井琢磨]]から「ゲームとは、一言でいえば何だ」と質問されて「相手がいるということです」と答えている{{Sfn|鈴木|2014|pp=107–108}}。}}、[[経済学]]で扱う状況の中でも[[完全競争市場]]や[[独占|独占市場]]を除くほとんどすべてはこれに該当する{{sfn|神取|2014|pp=304–307}}。さらにこの戦略的状況は経済学だけでなく[[経営学]]、[[政治学]]、[[法学]]、[[社会学]]、[[人類学]]、[[心理学]]、[[生物学]]、[[工学]]、[[コンピュータ科学]]などのさまざまな学問分野にも見られるため、ゲーム理論はこれらにも応用されている{{sfn|神取|2014|pp=304–307}}{{Sfn|岡田|2011|p=2}}{{Sfn|ギンタス|2011|loc=第12章}}。