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{{国際化|領域=[[日本]]|date=2007年8月21日 (火) 14:55 (UTC)}}
[[File:Cropduster spraying pesticides.jpg|thumb|right|200px|[[飛行機]]による農薬の空中散布]]
'''農薬'''(のうやく、{{lang-en-short|agricultural chemical}}<ref>agrochemical、または、agrichemicalと省略される。</ref>)とは、[[農業]]の効率化、あるいは[[農作物]]の保存に使用される[[薬剤]]の総称。[[殺菌剤 (農薬その他)|殺菌剤]]、[[防黴剤]](ぼうばいざい)、[[殺虫剤]]、[[除草剤]]、[[殺鼠剤]](さっそざい)、[[植物成長調整剤]](通称植調:[[植物ホルモン]]剤など)等をいう。また、日本の'''[[農薬取締法]]'''({{lang-en-short|Agricultural Chemicals Control Act}}<ref>[http://www.japaneselawtranslation.go.jp/law/detail/?id=341&vm=&re=01 農薬取締法]([[法務省]]「日本法令外国語訳データベースシステム」)</ref>)の上では、稲作で使う[[アイガモ]]などの[[生物]]も、[[害虫]]を駆除することから[[特定農薬]]として指定されている。{{seealso|([[生物農薬}}]]も参照)。
 
[[虫害]]や[[病気]]の予防や対策、[[除虫]]や[[除草]]の簡素化、農作物の安定供給・長期保存を目的として、近代化された農業では大量に使用されている。一方、ヒト人体に対して毒性する影響もたらす農薬も多くあることかれており、使用できる物質や量は法律で制限されている。
 
== 歴史 ==
[[紀元前]]から海葱([[強心配糖体|ステロイド配糖体]]を含む)を利用した[[ネズミ]]駆除、[[硫黄]]を使用した害虫駆除が行われてきた。[[17世紀]]になると[[タバコ]]粉、[[19世紀]]初頭には[[除虫菊]]やデリス根([[ロテノン]]を含有)を利用した殺虫剤などが用いられるようになったが、天然物や[[無機化合物]]が中心であり、人為的に化学合成された[[有機化合物]]の農薬が登場するのは[[20世紀]]に入ってからである<ref>スリーエム研究会 『林業薬剤の知識』28-30頁 昭和54年12月20日刊</ref>。
 
=== 前近代 ===
人類の歴史を遡ると農作物への病害虫による被害は古くからあり、耕作方法や品種の変更など様々な努力がなされていた<ref name="jcpa11">[http://www.jcpa.or.jp/qa/a6_11.html Q.「農薬」が無い時代は、どの様に防除していたのですか。] 農薬工業会、2017年5月16日閲覧。</ref>。
 
元来、植物には[[昆虫]]による食害や[[菌類]]・[[ウイルス]]感染などを避けるため各種の[[化学物質]]を含有または分泌する[[アレロパシー]]と呼ばれる能力があり、複数種類の植物を同時に栽培すると[[連作障害]]などを防止できることは経験的に知られていた。
 
古代ギリシャや古代ローマでは、播種前の種子に植物を煮出した液やワインを漬けておく方法や、生育中の苗にバイケイソウなどの植物の浸出液を散布する方法がとられていた<ref name="jcpa11" />。
世界的な農薬利用の歴史では、[[紀元前]]から海葱([[強心配糖体|ステロイド配糖体]]を含む)を利用した[[ネズミ]]駆除、[[硫黄]]を使用した害虫駆除が行われてきた。[[17世紀]]になると[[タバコ]]粉、[[19世紀]]初頭には[[除虫菊]]やデリス根([[ロテノン]]を含有)を利用した殺虫剤などが用いられるようになったが、天然物や[[無機化合物]]が中心であり、人為的に化学合成された[[有機化合物]]の農薬が登場するのは[[20世紀]]に入ってからである<ref>スリーエム研究会 『林業薬剤の知識』28-30頁 昭和54年12月20日刊</ref>。日本では、16世紀末の古文書に[[アサガオ]]の種や[[トリカブト]]の根など5種類の物質を用いた農薬の生成法が紹介されており、1670年には[[鯨油]]を水田に流す方法による害虫([[ウンカ]])駆除法が発見されている<ref>[http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201301260039.html 中国新聞「国内最古の農薬使用 島根」(2013年1月26日閲覧)]</ref>。中国の『[[天工開物]]』(1637年)によれば、山西省では虫よけのために豆や麦に砒素を混ぜで播き、寧州や紹州の稲田では早苗の根を砒素に浸して豊作を得たという。
 
=== 近代農薬の登場 ===
[[1700年代]]には[[除虫菊]]の粉で作物を害虫から守ることができることが欧州などですでに知られており、商品として流通し始めた。
[[1800年代]]に入るとコーカサス地方で[[除虫菊]]の粉末が殺虫剤として使用されたほか、[[デリス]]根の殺虫効果が知られるようになった<ref name="jcpa11" />。
 
[[1824年]]にはモモのうどんこ病に対して硫黄と石灰の混合物が有効であることが発見された<ref name="jcpa11" />。その後、[[1851年]]にフランスの[[グリソン]]が[[石灰硫黄合剤]]を考案した。
=== 近代農薬 ===
[[1851年]]にフランスの[[グリソン]]が[[石灰]]と[[硫黄]]を混ぜた物([[石灰硫黄合剤]])に農薬としての効果があることを発見し、同じく[[フランス]]で[[1880年]]頃、偶然に[[ボルドー液]]にブドウの病気を防ぐ効果があることが見出された。
 
18世紀後半には木材の防腐剤として用いられていた硫酸銅が種子の殺菌にも用いられるようになったが、[[1873年]]に[[ボルドー大学]]のミヤルデ教授が[[ブドウ]]の[[べと病]]に硫酸銅と石灰の混合物が有効であることを発見<ref name="jcpa11" />。[[1882年]]以降[[ボルドー液]]として農薬に利用されることとなった<ref name="jcpa11" />。
[[1924年]]に[[ヘルマン・シュタウディンガー]]らによって除虫菊の主成分が[[ピレトリン]]という[[化学物質]]であることが解明された。[[1932年]]には日本の[[武居三吉]]らによって、[[デリス]]根の有効成分が[[ロテノン]]という化学物質であることも判明した。[[1930年代]]には日本の農村でも農薬が普及し始め、[[昭和初期]]には本格的に普及した。
 
[[1924年]]に[[ヘルマン・シュタウディンガー]]らによって除虫菊の主成分が[[ピレトリン]]という[[化学物質]]であることが解明された。[[1932年]]には日本の[[武居三吉]]らによって、デリス根の有効成分が[[ロテノン]]という化学物質であることも判明した。
=== DDTと殺虫剤 ===
 
=== 化学合成農薬の登場 ===
20世紀前半までは農薬の中心は天然物や無機物であったが、第二次世界大戦後になると本格的に化学合成農薬が利用されるようになる<ref name="jcpa11" />。
 
==== DDTと殺虫剤 ====
[[1938年]]、[[ガイギー]]社の[[パウル・ヘルマン・ミュラー]]は、[[合成染料]]の防虫効果の研究から[[DDT]]に殺虫活性があることを発見、農業・[[防疫]]に応用された。DDTは、人間が大量に合成可能な有機化合物を、殺虫剤として実用化した最初の例であり、ミュラーはこの功績により[[1948年]]に[[ノーベル生理学・医学賞]]を受賞した。
 
DDTの発見に刺激され、[[1940年]]代には世界各国で[[殺虫剤]]の研究が始まり、[[1941年]]頃にフランスで[[ベンゼンヘキサクロリド]]が、[[1944年]]頃ドイツで[[パラチオン]]が、アメリカで[[ディルドリン]]がそれぞれ発明された。いずれも高い殺虫効果があり、またたく間に先進国を中心に世界へ広がっていった。一部の殺虫薬は[[第二次世界大戦]]に使われた[[毒ガス]]の研究から派生したものといわれている<ref>植村振作ら『[[農薬毒性の事典]]』(三省堂)の「[[サリン]]」の項</ref>。
 
==== 除草剤環境運動と農薬批判 ====
[[1962年]]に[[レイチェル・カーソン]]が『[[沈黙の春]]』を発表し[[環境運動]]が世界的な関心を集めてからは、農薬の過剰な使用に批判が起こるようになった。日本でも[[水俣病]]などの[[公害]]が社会問題となるなか[[1974年]]には[[有吉佐和子]]の小説『[[複合汚染]]』が発表され、農薬と化学肥料の危険性が訴えられた。消費者の[[自然]]嗜好や[[環境]]配慮や[[有機野菜]]消費の増加といったことを受けて、生産者側である農家からも[[費用]]や[[化学農薬]]の[[副作用]]や[[健康被害]]への心配から、[[天敵]]、[[細菌]]、[[ウイルス]]、[[線虫]]や[[糸状菌]]([[カビ]]の仲間)等の[[生物農薬]]の使用も進められている。
[[1944年]]には最初の除草剤である[[2,4-D]](2,4PAともいう)が開発された。日本で除草剤が本格的に普及し始めたのは[[1950年代]]に入ってからである。
 
== 農薬の分類 ==
[[1946年]]、[[アメリカ軍]]は日本の衛生状況の悪化を防ぐため、[[ノミ]]・[[シラミ]]・[[カ|蚊]]の[[防除]]を勧め、DDTなどを日本に広めた。
=== 機能による分類 ===
農薬は機能により次のように分類される<ref name="maff">[http://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_tisiki/tisiki.html 農薬の基礎知識 詳細] 農林水産省、2017年5月16日閲覧。</ref>。
* [[殺虫剤]]
* [[殺菌剤]]
* 殺虫殺菌剤
* [[除草剤]]
* [[殺そ剤]]
* 植物成長調整剤
* 誘引剤
* 展着剤
* 天敵
* 微生物剤
 
害虫の[[天敵]]や[[微生物]](微生物剤)を利用する場合を[[生物農薬]]という。[[生物的防除]]とも呼ばれる。生物農薬は化学農薬([[化学的防除]])に比べて毒性や[[薬剤耐性]]の面でメリットがあり普及しているが、害虫を全滅できないことや効果発揮が遅いなどのデメリットもある。
[[1947年]]、日本で[[農業協同組合法]]公布。[[1948年]]、[[農薬取締法]]公布。[[1950年]]、[[森林病害虫等防除法]]と[[植物防疫法]]公布。
{{Main|生物農薬}}
 
=== 製剤方法による分類 ===
[[1958年]]、国内最初の[[空中散布]]が[[神奈川県]]で実施された。
* [[乳剤]]
: 水に溶けにくい有効成分を[[有機溶媒]]に溶かし、さらに水に馴染み易くするために[[界面活性剤]]を加えたもの。使用時に水で[[希釈]]すると[[エマルション]]になる。
* [[水和]]剤
: 水に溶けにくい有効成分を、[[鉱物]]等に混ぜて微粉状にし、水に馴染み易くしたもの。水で希釈して使う。飛び散らないよう、粒状に成形したものは顆粒水和剤、またはドライフロアブルと呼ばれる(うち、水田用除草剤は顆粒とも呼ばれる)。
* 水溶剤
: [[水溶性]]の有効成分を水に溶かし希釈して使う。
* 液剤
: 有効成分の水溶液。そのまま使うものと水で希釈して使うものがある。
* 粒剤
: 有効成分に鉱物粉等に混ぜて粒状にしたもの。水に溶かさず、そのまま散布する。粒径によって微粒剤、細粒剤などがある。
* 粉剤
: 有効成分に鉱物粉等に混ぜて粉状にしたもの。水に溶かさず、そのまま散布する。粒径とその割合によって微粉剤、DL粉剤、フローダスト剤などがある。
* [[マイクロカプセル]]
: 有効成分を高分子膜で被覆して数μm~数百μmくらいのマイクロカプセル状にしたもの。
* [[燻蒸]]剤
: 常温または水を入れて有効成分を気化させて利用するもの。
* [[燻煙]]剤
: 着火または加熱により有効成分を気化させて利用するもの。
* [[エアゾール]]
: [[液化ガス]]に有効成分を溶かし、液化ガスの圧力で[[スプレー]]できる容器(スプレー缶)に入れたもの。
* フロアブル剤
: [[ゾル]]剤とも呼ばれる。溶剤に溶けにくい固体有効成分を、水和剤よりも細かい微粒子にして水に混ぜ、液剤化したもの(登録上の分類は水和剤)。
* EW
: 水に溶けにくい有効成分を、高分子膜や界面活性剤などで被覆することで水に混ぜ、液剤化したもの。有機溶媒を使わないため、危険物にあたらない利点もある(登録上の分類は乳剤)。
* [[マイクロエマルション]]
: 水に溶けにくい有効成分を最低限の有機溶剤に溶かし、界面活性剤で水に混ぜ液剤化したもの(登録上の分類は液剤)。
* [[ペースト]]剤
: 有効成分に鉱物粉等に混ぜて糊状にしたもの。塗布して使う。
* [[錠剤]]
: 水溶剤や水和剤を、錠状に成形したもの。現場で計量する手間が軽減できる。水で希釈して使う。
* 塗布剤
: 専ら塗布して使うもので他のどの剤型にも当てはまらないもの。
* [[粉末]]
: 粉状で他のどの剤型にも当てはまらないもの。
* 微量散布用剤
: 空中散布における微量散布(ULV)専用に有効成分を[[有機溶媒]]に高濃度に溶かしたもの。
* 油剤
: 水に溶けにくい有効成分を[[有機溶媒]]に溶かした油状の液体。
* [[パック]]剤
: 水稲用の殺虫剤、殺菌剤の粒剤を水溶性フィルムで包装したもので、水田に畦から投げ込んで使う。散布機不要で、飛散が無い。
* [[ジャンボ]]剤
: 畦から投げ込んで使う、錠剤又は水溶性フィルム包装の粒剤の水田用除草剤(登録上の分類は剤または粒剤)。
* WSB剤
: 水和剤や水溶剤を水溶性フィルムで包装したもので、袋ごと水に溶かして使う。調製時の粉立ちが無く、使用者に安全である。
* 複合[[肥料]]
: 有効成分を[[肥料]]に混ぜたもの。
* 剤
: 他のどの剤型にも当てはまらないもの。
 
=== 環境運動と各国における農薬批判の利用 ===
=== アメリカ ===
[[1962年]]に[[レイチェル・カーソン]]が『[[沈黙の春]]』を発表し[[環境運動]]が世界的な関心を集めてからは、農薬の過剰な使用に批判が起こるようになった。日本でも[[水俣病]]などの[[公害]]が社会問題となるなか[[1974年]]には[[有吉佐和子]]の小説『[[複合汚染]]』が発表され、農薬と化学肥料の危険性が訴えられた。消費者の[[自然]]嗜好や[[環境]]配慮や[[有機野菜]]消費の増加といったことを受けて、生産者側である農家からも[[費用]]や[[化学農薬]]の[[副作用]]や[[健康被害]]への心配から、[[天敵]]、[[細菌]]、[[ウイルス]]、[[線虫]]や[[糸状菌]]([[カビ]]の仲間)等の[[生物農薬]]の使用も進められている。
アメリカでは家庭用・農業用・工業用を問わず殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(Federal Insecticide, Fungicide, and Rodenticide Act: FIFRA)等による規制がある<ref>[https://www.jetro.go.jp/world/qa/04Y-120102.html 殺虫剤の現地輸入規則および留意点:米国向け輸出] 日本貿易振興機構、2017年5月16日閲覧。</ref>。
 
=== 日本 ===
[[2000年]]、「[[JAS法]]」による「[[有機農産物]]認証制度」発足。
 
== 日本の状況 ==
化学農薬の普及は、農村労力の都会への流入を可能にし、日本の[[工業化]]に貢献した。また過酷な労働からの解放は、農家の[[余暇]]の拡大、兼業化による現金収入の増加など社会に大きな変革を与えた。一方、健康や環境への悪影響など負の面も大きい。
 
==== 歴史 ====
日本では、16世紀末の古文書に[[アサガオ]]の種や[[トリカブト]]の根など5種類の物質を用いた農薬の生成法が紹介されており、1670年には[[鯨油]]を水田に流す方法(注油法)による害虫([[ウンカ]])駆除法が発見されている<ref name="jcpa11" /><ref>[http://www.chugoku-np.co.jp/News/Tn201301260039.html 中国新聞「国内最古の農薬使用 島根」(2013年1月26日閲覧)]</ref>。
 
[[1930年代]]には日本の農村でも農薬が普及し始め[[昭和初期]]には本格的に普及した。
 
[[1948年]]、[[農薬取締法]]公布。
 
[[1950年]]、[[森林病害虫等防除法]]と[[植物防疫法]]公布。
 
[[1958年]]、国内最初の[[空中散布]]が[[神奈川県]]で実施された。
 
[[2000年]]、「[[JAS法]]」による「[[有機農産物]]認証制度」発足。
 
==== 法規制 ====
[[農薬取締法]]により、農薬の製造者又は輸入者には[[登録]]の、販売者には[[届出]]の制度が設けられている。さらに[[毒物及び劇物取締法]]により[[毒物]]または[[劇物]]に該当する農薬の場合、別途それぞれに製造業、輸入業、農業用品目販売業の登録が必要となる。収穫後に用いる[[防かび剤]]などいわゆる「[[ポストハーベスト農薬]]」は、[[日本]]では農薬に入れず[[食品添加物]]として扱う。
 
=== 農薬取締法では次ように定義 ===されている。
* 第1条の2 「農薬」とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という)を害する薗、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤<ref>その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む</ref>及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。
* 2 前項の防除のために利用される天敵は、この法律の適用については、これを農薬とみなす。
67 ⟶ 150行目:
 
[[2005年]](平成17年)8月の農業資材審議会と中央環境審議会合同の特定農薬を検討する会合<ref>農林水産省「[http://www.maff.go.jp/www/counsil/counsil_cont/seisan/tokuteinoyaku_iinkai/6/itiran.html 農業資材審議会農薬分科会特定農薬小委員会及び中央環境審議会土壌農薬部会農薬小委員会第6回合同会合]」(2005年8月31日)</ref>において特定農薬に該当するかどうかの試験検討結果が報告され、[[コーヒー]]、[[緑茶]]、[[牛乳]]、[[焼酎]]には農薬としては効果がないこと、[[木酢液]]は効果はあるが使用者に対し危険の可能性があることが報告された。
 
== 製剤方法による分類 ==
; [[乳剤]]
: 水に溶けにくい有効成分を[[有機溶媒]]に溶かし、さらに水に馴染み易くするために[[界面活性剤]]を加えたもの。使用時に水で[[希釈]]すると[[エマルション]]になる。
; [[水和]]剤
: 水に溶けにくい有効成分を、[[鉱物]]等に混ぜて微粉状にし、水に馴染み易くしたもの。水で希釈して使う。飛び散らないよう、粒状に成形したものは顆粒水和剤、またはドライフロアブルと呼ばれる(うち、水田用除草剤は顆粒とも呼ばれる)。
; 水溶剤
: [[水溶性]]の有効成分を水に溶かし希釈して使う。
; 液剤
: 有効成分の水溶液。そのまま使うものと水で希釈して使うものがある。
; 粒剤
: 有効成分に鉱物粉等に混ぜて粒状にしたもの。水に溶かさず、そのまま散布する。粒径によって微粒剤、細粒剤などがある。
; 粉剤
: 有効成分に鉱物粉等に混ぜて粉状にしたもの。水に溶かさず、そのまま散布する。粒径とその割合によって微粉剤、DL粉剤、フローダスト剤などがある。
; [[マイクロカプセル]]
: 有効成分を高分子膜で被覆して数μm~数百μmくらいのマイクロカプセル状にしたもの。
; [[燻蒸]]剤
: 常温または水を入れて有効成分を気化させて利用するもの。
; [[燻煙]]剤
: 着火または加熱により有効成分を気化させて利用するもの。
; [[エアゾール]]
: [[液化ガス]]に有効成分を溶かし、液化ガスの圧力で[[スプレー]]できる容器(スプレー缶)に入れたもの。
; フロアブル剤
: [[ゾル]]剤とも呼ばれる。溶剤に溶けにくい固体有効成分を、水和剤よりも細かい微粒子にして水に混ぜ、液剤化したもの(登録上の分類は水和剤)。
; EW
: 水に溶けにくい有効成分を、高分子膜や界面活性剤などで被覆することで水に混ぜ、液剤化したもの。有機溶媒を使わないため、危険物にあたらない利点もある(登録上の分類は乳剤)。
; [[マイクロエマルション]]
: 水に溶けにくい有効成分を最低限の有機溶剤に溶かし、界面活性剤で水に混ぜ液剤化したもの(登録上の分類は液剤)。
; [[ペースト]]剤
: 有効成分に鉱物粉等に混ぜて糊状にしたもの。塗布して使う。
; [[錠剤]]
: 水溶剤や水和剤を、錠状に成形したもの。現場で計量する手間が軽減できる。水で希釈して使う。
; 塗布剤
: 専ら塗布して使うもので他のどの剤型にも当てはまらないもの。
; [[粉末]]
: 粉状で他のどの剤型にも当てはまらないもの。
; 微量散布用剤
: 空中散布における微量散布(ULV)専用に有効成分を[[有機溶媒]]に高濃度に溶かしたもの。
; 油剤
: 水に溶けにくい有効成分を[[有機溶媒]]に溶かした油状の液体。
; [[パック]]剤
: 水稲用の殺虫剤、殺菌剤の粒剤を水溶性フィルムで包装したもので、水田に畦から投げ込んで使う。散布機不要で、飛散が無い。
; [[ジャンボ]]剤
: 畦から投げ込んで使う、錠剤又は水溶性フィルム包装の粒剤の水田用除草剤(登録上の分類は剤または粒剤)。
; WSB剤
: 水和剤や水溶剤を水溶性フィルムで包装したもので、袋ごと水に溶かして使う。調製時の粉立ちが無く、使用者に安全である。
; 複合[[肥料]]
: 有効成分を[[肥料]]に混ぜたもの。
; 剤
: 他のどの剤型にも当てはまらないもの。
 
== 生物農薬 ==
{{Main|生物農薬}}
害虫の[[天敵]]や[[微生物]]を利用する場合を[[生物農薬]]という。[[生物的防除]]とも呼ばれる。生物農薬は化学農薬([[化学的防除]])に比べて毒性や[[薬剤耐性]]の面でメリットがあり普及しているが、害虫を全滅できないことや効果発揮が遅いなどのデメリットもある。
 
== 農薬の危険性と規制 ==
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* [http://www.maff.go.jp/nouyaku/ 農林水産省農薬対策室農薬コーナー]
* [http://www.env.go.jp/chemi/kurohon/index.html 「化学物質と環境」化学物質環境実態調査 年次報告書(環境省)]
 
 
{{農薬}}
{{Agri-stub}}
 
{{DEFAULTSORT:のうやく}}