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1967年にナイサーが[[情報処理]]の理論を取り入れた『認知心理学』という著作を公開し新しい時代を形作っていった。観察研究ができない精神分析の無意識と、行動主義の、行動および報酬と罰にしか焦点を当てない心理学ではなく、思考などの観察可能な認知に焦点を当てた手法が登場した。
 
[[アルバート・バンデューラ]]は1977年に『[[社会的学習理論]]』を出版し、報酬や罰による誘導がなくても、他者の観察を通して単に真似することで学習するという[[モデリング (心理学)|モデリング]]の理論を唱えた{{sfn|心理学大図鑑|2013|pp=288-289}}。{{日本語版にない記事リンク|エドワード・L・デシ|en|Edward L. Deci}}は、{{日本語版にない記事リンク|自己決定理論|en|Self-determination theory}}を提唱し、自らがそれを行いたいから行動するようになるという自律性や内発的動機の理論を提唱した。[[マーティン・セリグマン]]は当初、回避できない罰を与えられた場合の[[学習性無力感]]の研究者であったが、次第にポジティブな学習に言及することが増え、[[ポジティブ心理学]]を1990年代に提唱する。
 
=== 現状 ===
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=== 生理学からの発展 ===
脳を損傷すると[[精神]]機能に異変が生じる事から、「脳が感情や[[思考]]などの[[精神現象]]を生み出す中枢である、とみなし、脳を構成する[[神経系]]を調べることで精神現象を解明できる可能性がある」との発想が生まれた。これは、古くはデカルトが[[心身合一]]の問題として言及しているが、実験的に調べられるようになったのは19世紀以降である。
 
19世紀の[[ポール・ピエール・ブローカ]][[カール・ウェルニッケ]]らの[[失語症]]と[[脳損傷]]の関係調査により、[[ブローカ野]]や[[ウェルニッケ野]]などの[[言語中枢]]とされる脳部位 ([[言語野]]) が推定された。この研究により、言語を扱う[[精神機能]]が脳という[[生理学]]的土台によって生じることが明らかにされた。脳損傷と精神機能失調との関係調査は[[20世紀]]初頭の[[第一次世界大戦]]以降、[[戦争]]で脳を損傷した[[患者]]の[[治療]]の過程で大きく進んだ。[[1960年]]代からは、[[コンピュータ断層撮影|CT]]により[[脳血管障害]]患者の脳を非侵襲的に調べられるようになり、さらに進展した。
 
[[イワン・パブロフ]]は[[1902年]]に[[唾液腺]]の研究過程で俗に「パブロフの犬」とよばれる[[条件反射]]を発見した。この研究を嚆矢として、正常な動物における生理的現象と精神現象の関係が論じられるようになった。この分野はパブロフの犬のような[[巨視的]]なものから[[薬物投与]]、[[神経細胞]]の[[分子生物学]]的解析など様々なものがあるが、全体的には神経細胞の振る舞いを調べるものが多い。
 
1936年に[[ハンス・セリエ]]は「各種有害作因によって引き起こされる症候群」を発表し、この有害作因が[[ストレス (生体)|ストレス]]という用語に変わり受け入れられていったが、ストレスを引き起こすものを[[ストレッサー]]と呼んだ<ref name="事典セリエ">{{Cite book|和書|author=久保田正春|chapter=セリエ『現代社会とストレス』|title=精神医学文献事典|publisher=弘文堂|date=2003|isbn=978-4-335-65107-6|page=251}}</ref>。1956年に、『現代社会とストレス』(''The Stress of Life'')を出版し一般向けに初めて概説した<ref name="事典セリエ"/>。
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=== 言語学からの発展 ===
[[ノーム・チョムスキー]]は経験主義や極端な行動主義を批判し、人間が言語を獲得できるのはそれに専門化された生得的な器官([[言語獲得装置]])を脳の中に持っているためだと主張した。チョムスキーに始まるこの議論は現在でも継続中であり、[[言語獲得]]と[[概念獲得]]は[[発達心理学]]の中心的なトピックである。
 
=== 教育学からの発展 ===