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{{参照方法|date=2009年5月}}
[[Image:Pandemicseverityindex.png|thumb|450px|right|PSIカテゴリー]]
[[画像:Reconstructed Spanish Flu Virus.jpg|right|thumb|患者の遺体から見つかったゲノムより復元されたスペインかぜウイルス]]
'''スペインかぜ''' (1918 flu pandemic, '''Spanish flu''') は、[[1918年]]から[[1919年|19年]]にかけ全世界的に流行した、[[インフルエンザ]]の[[パンデミック]]であ。CDCによる[[インフルエンザ#パンデミック指数|インフルエンザ・パンデミック重度指数]](PSI)においては最上位のカテゴリー5に分類される。感染者5億人、死者5,000万~1億人、と爆発的に流行した。
 
米国発であるにも関わらずスペインかぜと呼ぶのは、情報が[[スペイン王国|スペイン]]発であったためである。当時は[[第一次世界大戦]]中で、世界で情報が[[検閲]]されていた中でスペインは中立国であり、大戦とは無関係だった<ref name="isl"/>。一説によると、この大流行により多くの死者が出たため、[[第一次世界大戦]]終結が早まったといわれている<ref>[http://influenza.elan.ne.jp/basic/spain.php 20世紀のパンデミック(スペインかぜ)] [[中外製薬]]</ref>。
== 概要 ==
 
== 概要経緯 ==
発生源は1918年3月、[[アメリカ合衆国|米国]]の[[デトロイト]]や[[サウスカロライナ州]]付近である<ref name="isl">[http://www.isl.or.jp/service/influenza-jp1918.html 1918-19スペイン風邪の流行状況(労研図書館資料から)] [[労働科学研究所]]</ref>。その後同年6月頃、[[ブレスト (フランス)|ブレスト]]、[[ボストン]]、[[シエラレオネ]]などでより毒性の強い感染爆発が始まった<ref name="isl"/>。[[アメリカ疾病予防管理センター]] (CDC) によれば、既に[[1915年]]にインフルエンザと肺炎による死亡率が米国で増加しているが、発生源は依然不明としている<ref>[http://www.cdc.gov/ncidod/EID/vol12no01/05-0979.htm#21 1918 Influenza: the Mother of All Pandemics]<br>''Historical and epidemiologic data are inadequate to identify the geographic origin of the virus, and recent phylogenetic analysis of the 1918 viral genome does not place the virus in any geographic context''</ref>。新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会では[[カナダ]]の[[鴨]]の[[ウイルス]]が[[イリノイ州]]の[[豚]]に感染したとの推定が委員から説明されている<ref>[http://www.mhlw.go.jp/shingi/2003/11/txt/s1126-5.txt 感染症分科会感染症部会新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会第二回議事録](厚生科学審議会)</ref><ref>しかしながら同資料が述べているのはswine fluと言う英語の起源が豚と人のインフルエンザの同時流行から『当時の人が』人のインフルエンザは豚起源であると考えての命名(という推定)であり、「豚から人に感染した」とは推定していない。</ref><ref>2009年7月の[[ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン|NEJM]]では、アイオワ州のCeder Rapids Swine Festivalを流行の起源としているが、当時豚インフルエンザ様の疾患が豚に大流行していたとの記録からの類推に過ぎない。</ref>。
 
米国発であるにも関わらずスペインかぜと呼ぶのは、情報が[[スペイン王国|スペイン]]発であったためである。当時は[[第一次世界大戦]]中で、世界で情報が[[検閲]]されていた中でスペインは中立国であり、大戦とは無関係だった<ref name="isl"/>。
 
一説によると、この大流行により多くの死者が出たため、[[第一次世界大戦]]終結が早まったといわれている<ref>[http://influenza.elan.ne.jp/basic/spain.php 20世紀のパンデミック(スペインかぜ)] [[中外製薬]]</ref>。
 
== 被害状況 ==
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== 病原体 ==
[[画像File:Reconstructed Spanish Flu Virus.jpg|right|thumb|患者の遺体から見つかったゲノムより復元されたスペインかぜウイルス]]
スペインかぜの病原体は、[[A型インフルエンザウイルス]](H1N1亜型)である。ただし、当時はまだウイルスの分離技術が十分には確立されておらず、また主要な実験動物である[[ハツカネズミ|マウス]]や[[ウサギ]]に対しては病原性を示さなかったことから、その病原体は不明であるとされた。ヒトの[[インフルエンザウイルス]]の病原性については[[1933年]]に[[フェレット]]を用いた実験で証明された。その後、スペインかぜ流行時に採取された患者[[血清]]中にこの時分離されたウイルスに対する[[抗体]]が存在することが判明したため、この[[1930年]]頃に流行していたものと類似のインフルエンザウイルスがスペインかぜの病原体であると考えられた。その後、[[1997年]]8月に[[アラスカ州]]の凍土より発掘された4遺体から肺組織検体が採取され、ウイルス[[ゲノム]]が分離されたことによって、ようやくスペインかぜの病原体の正体が明らかとなった。
 
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スペインかぜについては、解読された遺伝子からウイルスを復元したところ、マウスに壊死性の[[気管支炎]]、出血を伴う中程度から重度の[[肺胞炎]]、[[肺胞浮腫]]を引き起こすことが判明した。このような強い病原性はウイルス表面にある[[タンパク質|蛋白質]]HA([[赤血球凝集素]]、[[ヘマグルチニン]])が原因である。また、スペインかぜウイルスは、現在のインフルエンザウイルスよりも30倍も早く増殖する能力を持つことが分かっている(増殖をつかさどる3つの[[DNAポリメラーゼ]]による)。<!-- インフルエンザウイルスに感染した人がさらに他の細菌に感染する、二次感染症によって死んだ人が多かったものと考えられている。 -->
 
通常の流行では小児と老人で死者が多いのだが、スペインかぜでは青年層の死者が多かった点に関し<!-- これはパンデミック以前にH1N1亜型の流行があり壮年層に免疫があったのではないかという説があるが、少年以下層の死者が特に多くないために疑問視されている。| 疑問視されている、すなわち、多分間違っているというのであれば書かないほうが良いのでは -->[[2005年]]5月に[[:en:Michael Osterholm|Michael Osterholm]]はウイルスによって引き起こされる[[サイトカイン放出症候群#サイトカインストーム|サイトカインストーム]]が原因<ref name="Osterholm2005">[http://content{{cite journal|last1=Osterholm|first1=Michael T.nejm.org/cgi/content/full/352/18/1839 |title=Preparing for the Next Pandemic]|journal=New [[ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンEngland Journal of Medicine|NEJM]]volume=352|issue=18|year=2005|pages=1839–1842|issn=0028-4793|doi=10.1056/NEJMp058068}}</ref>であるという仮説を提唱<ref>[http://content.nejm.org/cgi/content/full/352/18/1839/F3 Proposed Mechanism of the Cytokine Storm Evoked by Influenzavirus] [[ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン|NEJM]].</ref>したが、これに反対する説もある。一方、[[2007年]]1月に[[科学技術振興機構]]と[[東京大学医科学研究所]]が人工合成したウイルスを用いて[[サル]]で実験した結果では、スペイン風邪ウイルスには強い致死性の[[肺炎]]と[[免疫]]反応の調節に異常を起こす病原性があることを発表している<ref>[http://www.jst.go.jp/pr/announce/20070118/index.html スペイン風邪をサルで再現させて、謎だったウイルスの病原性を解析]([[科学技術振興機構]]、[[東京大学医科学研究所]])</ref><ref>サイトカインストーム説の出所はF・マクファーレン・バーネットの免疫過剰反応説である。</ref>。
 
[[2008年]]12月に、東京大学の[[河岡義裕]]など日米の研究者グループによって強い病原性を説明する3つの遺伝子を特定したことが発表された<ref>[http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2553162/3640960 スペイン風邪の強い病原性の鍵となる遺伝子、日米の研究者が解明] AFP 2008年12月30日</ref><ref>スペイン風邪の第2波でRNAのPB2の627番目がリジンに変わって強毒性となったという。第1波のアミノ酸が何であったかは不明である。</ref>。