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'''恒河沙'''（ごうがしゃ）は[[漢字]]文化圏における[[数]]の[[単位]]の一つ。恒河沙がいくつを示すかは時代や地域により異なり、また、現在でも人により解釈が分かれる。一般的には10<supmath>10^{52}</supmath>を指すが、10<supmath>10^{56}</supmath>とする人もいる。
恒河沙はもとは[[仏教]]用語である。「恒河」は[[ガンジス川]]を意味する[[梵サンスクリット語]]<ruby lang="sa">गङ्ग<rp>（</rp><rt lang="Gangasa-Kana">ガンガ</rt><rp>）</rp></ruby>を音訳したものである。すなわち、「恒河沙」とはガンジス川にある無数の砂の意味であり、もともと無限の数量の例えとして仏典で用いられていた。例えば[[法華経]]の「[[堤婆達多品]]（だいばだったほん）」の中に「恒河の砂ほど多くの衆生が仏の教えを聴く」といったような形での用例がある（なお仏典においては、[[大乗起信論]]のように「過恒沙」と表記する例もある）。
数の単位としての初出は、[[元 (王朝)|元]]の[[朱世傑]]による数学書『{{仮リンク|算学啓蒙|zh|算学启蒙}}』であり、それまであった[[載]]よりも上の位として、[[極 (数)|極]]以上の他の単位とともに登場した。極以外は全て仏典からとられたものである。当時はすでに[[中数]]が使用されており、恒河沙は極(10<supmath>10^{88}</supmath>)の万万倍で10<supmath>10^{96}</supmath>となる。
日本へも、[[平安時代]]には既に中国から非常に大きな数を表す概念として「恒河沙」という語が伝えられていたようであり、一例として、平安時代後期に成立した説話集である『[[今昔物語]]』に、数え切れないくらい多くの国の例えで「無量無辺不可思議那由他恒河沙の国土を過ぎ行きて」といった用例が見られる（おそらくは仏典に由来するもの）。
数の単位としては、中国から『[[算法統宗]]』などの数学書を通して伝わったようであるが、それがいつ頃かはよくわからない。和書の中で、「恒河沙」を数の単位の一つとして正確に定義づけた上で他の用語とともに体系的に説明したのは、[[江戸時代]]に執筆され、当時ベストセラーとなった数学書である『[[塵劫記]]』が最初である。寛永4年（[[1627年]]）の初版では、載までを[[下数]]、極以上を[[万万進]]としたため、恒河沙は極(10<supmath>10^{15}</supmath>)の万万倍で10<supmath>10^{23}</supmath>となる。寛永8年版では載までを中数の[[万進]]に改めたため、恒河沙は極(10<supmath>10^{48}</supmath>)の万万倍で10<supmath>10^{56}</supmath>となった。寛永11年版で万進に統一され、恒河沙は極(10<supmath>10^{48}</supmath>)の万倍の10<supmath>10^{52}</supmath>となった。ただし、今日でも寛永8年版を根拠に恒河沙を10<supmath>10^{56}</supmath>とする人もいる。もっとも、[[京 (数)|京]]以上の数については[[指数表記]]が用いられるのが普通であって実用ではまず用いられないので、極以降の値がどうなっていてもそれほど問題にはならない。
恒河沙の位および前後の位の命数は以下のようになる。
<td style="vertical-align:top">
{|class=wikitable
|[[1 E88|10<supmath>10^{88}</supmath>]]||一極
|-
|…||…
|-
|[[1 E95|10<supmath>10^{95}</supmath>]]||千万極
|-
|[[1 E96|10<supmath>10^{96}</supmath>]]||一恒河沙
|-
|[[1 E97|10<supmath>10^{97}</supmath>]]||十恒河沙
|-
|[[1 E98|10<supmath>10^{98}</supmath>]]||百恒河沙
|-
|[[1 E99|10<supmath>10^{99}</supmath>]]||千恒河沙
|-
|[[1 E100|10<supmath>10^{100}</supmath>]]||一万恒河沙
|-
|[[1 E101|10<supmath>10^{101}</supmath>]]||十万恒河沙
|-
|[[1 E102|10<supmath>10^{102}</supmath>]]||百万恒河沙
|-
|[[1 E103|10<supmath>10^{103}</supmath>]]||千万恒河沙
|-
|[[1 E104|10<supmath>10^{104}</supmath>]]||一阿僧祇
|}
<td style="vertical-align:top">
{|class=wikitable
|[[1 E15|10<supmath>10^{15}</supmath>]]||一極
|-
|…||…
|-
|[[1 E22|10<supmath>10^{22}</supmath>]]||千万極
|-
|[[1 E23|10<supmath>10^{23}</supmath>]]||一恒河沙
|-
|[[1 E24|10<supmath>10^{24}</supmath>]]||十恒河沙
|-
|[[1 E25|10<supmath>10^{25}</supmath>]]||百恒河沙
|-
|[[1 E26|10<supmath>10^{26}</supmath>]]||千恒河沙
|-
|[[1 E27|10<supmath>10^{27}</supmath>]]||一万恒河沙
|-
|[[1 E28|10<supmath>10^{28}</supmath>]]||十万恒河沙
|-
|[[1 E29|10<supmath>10^{29}</supmath>]]||百万恒河沙
|-
|[[1 E30|10<supmath>10^{30}</supmath>]]||千万恒河沙
|-
|[[1 E31|10<supmath>10^{31}</supmath>]]||一阿僧祇
|}
<td style="vertical-align:top">
{|class=wikitable
|[[1 E48|10<supmath>10^{48}</supmath>]]||一極
|-
|…||…
|-
|[[1 E55|10<supmath>10^{55}</supmath>]]||千万極
|-
|[[1 E56|10<supmath>10^{56}</supmath>]]||一恒河沙
|-
|[[1 E57|10<supmath>10^{57}</supmath>]]||十恒河沙
|-
|[[1 E58|10<supmath>10^{58}</supmath>]]||百恒河沙
|-
|[[1 E59|10<supmath>10^{59}</supmath>]]||千恒河沙
|-
|[[1 E60|10<supmath>10^{60}</supmath>]]||一万恒河沙
|-
|[[1 E61|10<supmath>10^{61}</supmath>]]||十万恒河沙
|-
|[[1 E62|10<supmath>10^{62}</supmath>]]||百万恒河沙
|-
|[[1 E63|10<supmath>10^{63}</supmath>]]||千万恒河沙
|-
|[[1 E64|10<supmath>10^{64}</supmath>]]||一阿僧祇
|}
<td style="vertical-align:top">
{|class=wikitable
|[[1 E48|10<supmath>10^{48}</supmath>]]||一極
|-
|…||…
|-
|[[1 E51|10<supmath>10^{51}</supmath>]]||千極
|-
|[[1 E52|10<supmath>10^{52}</supmath>]]||一恒河沙
|-
|[[1 E53|10<supmath>10^{53}</supmath>]]||十恒河沙
|-
|[[1 E54|10<supmath>10^{54}</supmath>]]||百恒河沙
|-
|[[1 E55|10<supmath>10^{55}</supmath>]]||千恒河沙
|-
|[[1 E56|10<supmath>10^{56}</supmath>]]||一阿僧祇
|}
</table>
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