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==発見==
20世紀初頭までに、タンパク質と炭水化物は必要な食品成分だと知られていたが、脂肪酸は炭水化物から合成できるので優れたエネルギー源ではあるが、必要不可欠ではないと考えられていた<ref name="pmid4274059">{{cite journal |authors=Knauf PA, Proverbio F, Hoffman JF |title=Chemical characterization and pronase susceptibility of the Na:K pump-associated phosphoprotein of human red blood cells |journal=J. Gen. Physiol. |volume=63 |issue=3 |pages=305–23 |year=1974 |pmid=4274059 |pmc=2203555 |doi=10.1194/jlr.R055095 |url=http://www.jlr.org/content/56/1/11.full}}</ref>。20世紀初頭の技術では食物から脂肪を完全に抽出できず、脂肪を除去してラットに与える実験では、実際には脂肪が残留していた<ref name="pmid4274059"/>。1912年に{{仮リンク|トマス・バー・オズボーン|en|Thomas Burr Osborne (chemist)}}と{{仮リンク|ラファイエット・メンデル|en|Lafayette Mendel}}はそうした技術によってラットでの脂肪は不要だと確認し、1920年代までに必要不可欠ではないので必要最小限は非常に少なくすべきとの見解を示し、同時代の研究者は多くはこの見解に従った<ref name="pmid4274059"/>。オズボーンは全米科学アカデミーのメンバーで食物タンパク質で国際的に著名なアメリカの生化学者であり、メンデルはアメリカ栄養研究所の初代所長など、両者は国際的にも権威的に他にも数々の地位を占めていたためである<ref name="pmid4274059"/>。
 
1929年には、ミネソタ大学のジョージ・オズワルド・バー(George Oswald Burr)が ω-6系の多価不飽和脂肪酸であるリノール酸のラットでの欠乏症を確認し、必須栄養素だと報告された<ref name="pmid4274059"/>。この見解は栄養研究所の見解と対立したので疑義されたが、数年を経て追試が行われ受け入れられていった<ref name="pmid4274059"/>。また1931年にジョージ・オズワルド・バーは、ω-3系の[[αリノレン酸]]がラットで合成されなかったことを報告し、これも必須脂肪酸だと結論した<ref name="pmid4274059"/>。しかし、欠乏症実験にてリノール酸と競合する結果が確認されるため、長い間αリノレン酸でも確実だとみなされなかった<ref name="pmid4274059"/>。
 
1960年までにはカルフォルニア大学ロサンゼルス校のジム・ミードが、リノール酸がアラキドン酸に変換されることを確認した<ref name="pmid4274059"/>。1964年にはカロリンスカ研究所で、アラキドン酸がプロスタグランジンに変換されたことが確認された<ref name="pmid4274059"/>。
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だが、脂肪の細かい区別を周知させることは難しいのではと考えた栄養学者たちは、脂肪がよくないという単純なメッセージを生み出した<ref name="日経サイエンス2003"/>。アメリカ農務省の意図とは、アメリカにて低脂肪食にすることで必然的に飽和脂肪酸の摂取量を減らすということであった<ref name="日経サイエンス2003"/>。
 
1976年には、Cuthbertonが[[粉ミルク]]の必要成分としてリノール酸のみが必須だと主張したが、Crawfordは異議を唱え、1978年には[[世界保健機関]](WHO)と[[国際連合食糧農業機関]](FAO)が、脂肪に関する専門部会でαリノレン酸の必須性を確定した<ref name="pmid18522621">{{cite journal |authors=Stark AH, Crawford MA, Reifen R |title=Update on alpha-linolenic acid |journal=Nutr. Rev. |volume=66 |issue=6 |pages=326–32 |year=2008 |pmid=18522621 |doi=10.1111/j.1753-4887.2008.00040.x |url=}}</ref>。1982年に、ラルフ・ホルマンが、αリノレン酸の摂取が増加すると、血中のDHAが増加することを確認しヒトでαリノレン酸が必須だと裏付けた<ref name="pmid4274059"/>。
 
1994年の世界保健機関による、「人間栄養学における脂肪と油」(''Fats and oils in human nutrition'')では、トランス脂肪酸による飽和脂肪酸に似た影響が報告された<ref>[[世界保健機関|World Health Organization]], [[国際連合食糧農業機関|Food and Agriculture Organization of the United Nations]], "[http://www.who.int/nutrition/publications/nutrientrequirements/9251036217/en/ Fats and oils in human nutrition]", 1994.</ref>。2003年にはトランス脂肪酸を1%未満にすべきとした<ref name="whofao2003"/>。
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==PFCバランス==
[[タンパク質]]・脂肪・[[炭水化物]]のカロリーベースでの摂取バランスのことを、それぞれの頭文字をとって'''PFCバランス'''という。この中で、脂肪の比率を25-30%以下に抑えることが、[[生活習慣病]]を予防するための[[食生活指針]]の考えの一つとなっている。炭水化物は一般的に60%前後ともっとも多く必要だとしかし[[#歴史]]の通りこの考え方は疑問視さており日本2015年にはアメリカの食生活指針炭水化物脂質の上限主に提供する食品を主食と撤廃ている<ref>『[http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/pdf/eiyou-syokuji2.pdf 食事バランスガイド 厚生労働省・農林水産省決定 フードガイド(仮称)検討会報告書]』(PDF) 第一出版、2005年12月。ISBN 4-8041-1117-4。</ref>
1994年の世界保健機関による「人間栄養学における脂肪と油」(''Fats and oils in human nutrition'')は、成人の脂質の摂取量は15%以上とし、下回る集団においては確保の努力が必要だとされた<ref>[[世界保健機関|World Health Organization]], [[国際連合食糧農業機関|Food and Agriculture Organization of the United Nations]], "[http://www.who.int/nutrition/publications/nutrientrequirements/9251036217/en/ Fats and oils in human nutrition]", 1994.</ref>
 
心血管系のリスクを上げる飽和脂肪酸の摂取が多い食事状況であれば、脂質全体の摂取量を減らすことでそのリスクを回避するという目的は達成されるが、しかし飽和脂肪酸を心血管系のリスクを下げる種類の脂肪酸に置き換えても目的は達成され、脂質全体の摂取比率が上がっている<ref name="日経サイエンス2003"/>。
[[タンパク質]]・脂肪・[[炭水化物]]のカロリーベースでの摂取バランスのことを、それぞれの頭文字をとって'''PFCバランス'''という。この中で、脂肪の比率を25〜30%以下に抑えることが、[[生活習慣病]]を予防するための[[食生活指針]]の考えの一つとなっている。炭水化物は一般的に60%前後ともっとも多く必要だと考えられており、日本の食生活指針では炭水化物を主に提供する食品を主食としている<ref>『[http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/pdf/eiyou-syokuji2.pdf 食事バランスガイド 厚生労働省・農林水産省決定 フードガイド(仮称)検討会報告書]』(PDF) 第一出版、2005年12月。ISBN 4-8041-1117-4。</ref>。
 
1994年の世界保健機関による「人間栄養学における脂肪と油」(''Fats and oils in human nutrition'')は、成人の脂質の摂取量は15%以上とし、下回る集団においては確保の努力が必要だとされた<ref>[[世界保健機関|World Health Organization]], [[国際連合食糧農業機関|Food and Agriculture Organization of the United Nations]], "[http://www.who.int/nutrition/publications/nutrientrequirements/9251036217/en/ Fats and oils in human nutrition]", 1994.</ref>
 
[[厚生労働省]]の1999年の栄養所要量の6次改定では、[[脂質]]はエネルギー比率で成人で20-25%の範囲が望ましい。飽和脂肪酸、[[一価不飽和脂肪酸]]、[[多価不飽和脂肪酸]]の望ましい摂取割合は、おおむね3:4:3であり、[[ω-6脂肪酸]]と[[ω-3脂肪酸]]の比は、健康人では4:1程度である<ref>[http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s9906/s0628-1_11.html 第6次改定日本人の栄養所要量について] (厚生労働省)</ref>。
 
一日のエネルギー必要量を仮に、男性では2660(kcal)、女性では1995(kcal)とすると、脂肪のエネルギー量は9 kcal/gであり、仮に20%の値を当てはめると、以下のとおりとなる。
*男性では、2660 kcal/日 x 0.2 / 9 kcal/g =60 g/日([[植物油]][[大匙]]4杯/日に相当)
*女性では、1995 kcal/日 x 0.2 / 9 kcal/g =45 g/日(植物油大匙3杯/日に相当)
 
[[厚生労働省]]の1999年の栄養所要量の6次改定では、[[脂質]]はエネルギー比率で成人で20-25%の範囲が望ましい。飽和脂肪酸、[[一価不飽和脂肪酸]]、[[多価不飽和脂肪酸]]の望ましい摂取割合は、おおむね3:4:3であり、[[ω-6脂肪酸]]と[[ω-3脂肪酸]]の比は、健康人では4:1程度である<ref>[http://www1.mhlw.go.jp/shingi/s9906/s0628-1_11.html 第6次改定日本人の栄養所要量について] (厚生労働省)</ref>。
 
== 脂質の摂取基準 ==
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脂質のうち、[[ω-6脂肪酸]]と[[ω-3脂肪酸]]が必須脂肪である。
 
ω-6とω-3系のバランスについては[[必須脂肪酸#バランス]]
 
==健康への影響==