「ヨウ素」の版間の差分
削除された内容 追加された内容
→日本での摂取状況: 素干しコンブわずか1gでヨウ素の耐容上限量約2.2 mg/日に達する |
m style |
||
72行目:
[[ハロゲン元素]]の一つ。'''ヨード'''(沃度)ともいう。[[分子量]]は253.8。[[融点]]は113.6 ℃で、常温、常圧では[[固体]]であるが、[[昇華 (化学)|昇華]]性がある。固体の結晶系は紫黒色の[[斜方晶系]]で、反応性は[[塩素]]、[[臭素]]より小さい。[[水]]にはあまり溶けないが、[[ヨウ化カリウム]]水溶液にはよく溶ける。これは下式のように、[[ヨウ化物イオン]]との反応が起こることによる。
: <ce>{I^-
単体のヨウ素は、[[毒物及び劇物取締法]]により[[医薬用外劇物]]に指定されている。
==
[[ベルナール・クールトア]]によって[[1811年]]に海藻灰から発見された<ref name="sakurai">{{Cite |和書 |author =[[桜井 弘]]|||title = 元素111の新知識|date = 1998| pages = 240|publisher =[[講談社]]| series = |isbn=4-06-257192-7 |ref = harv }}</ref>。彼の友人シャルル・ベルナール・デゾルムとニコラ・クレマンが[[ジョゼフ・ルイ・ゲイ=リュサック]]と[[アンドレ=マリ・アンペール]]にサンプルを送った上で[[1813年]][[11月29日]]に発表した。
91行目:
体内で[[甲状腺ホルモン]]を合成するのに必要なため、ヨウ素は[[人]]にとって[[必須元素]]である。人体に摂取、吸収されると、ヨウ素は血液中から[[甲状腺]]に集まり、蓄積される。なお、このヨウ素の吸収は[[ゴイトロゲン]]と呼ばれる食品群や化学物質などにより阻害されることに注意が必要である。
=== 日本での摂取状況 ===
[[海藻]]類はヨウ素を海水から[[生物濃縮|濃縮]]しており、海洋の中にある日本では食生活の中で海藻などから自然にヨウ素の摂取が行われている。また、[[日本]]ではヨウ素を含有することをうたった[[鶏卵]]が売られている。
[[厚生労働省]]が発表した「日本人の食事摂取基準(2010年版)」によると、ヨウ素の推奨量は成人で約130 µg/日、ヨウ素の耐容上限量は約2.2 mg/日としている<ref>{{PDF|[http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4al.pdf 「日本人の食事摂取基準」(2010年版)6.2.5 ヨウ素]}} 厚生労働省</ref>。コンブは大量にヨウ素を含み、素干しコンブわずか1gでヨウ素の耐容上限量約2.2 mg/日に達する。北海道での海岸性甲状腺腫はヨウ素の過剰摂取が原因であると考えられている。半面、ヨウ素の抗腫瘍作用を利用するため少なくとも3 mg/日を摂取すべきとの説も存在する<ref>布施 養善 「[http://doi.org/10.11299/brte.24.117 ヨウ素をめぐる医学的諸問題-日本人のヨウ素栄養の特異性]」 『Biomedical Research on Trace Elements』Vol.
ヨウ素制限食を必要とする際には、逆に[[コンブ]]など海藻の摂取を控えなくてはならない。
{| class="wikitable floatright" style="text-align:center"
|+ 食品1グラムあたりのヨウ素含有量<ref name="ranking">
{{cite web
|url=http://fooddb.mext.go.jp/ranking/ranking.html
|title=食品成分ランキング
106 ⟶ 105行目:
! 食品 !! 含有量 (μg/g)
|-
|-
|-
|-
|-
|-
|-
|-
|-
▲{{cite web
|url=http://www.e-lactancia.org/media/papers/Algas-Yodo-2008.pdf
|title=日本で市販されている食品中のヨウ素含有量
141 ⟶ 131行目:
|accessdate = 2016年3月4日}}</ref>
|-
|-
|-
|}
{| class="wikitable floatright" style="text-align:center"
|+ ヨウ素推奨摂取量(米国FNB)<ref>
{{cite web
|url=https://ods.od.nih.gov/factsheets/Iodine-HealthProfessional/
|title=Iodine
159 ⟶ 146行目:
! 年齢/性別など !! 推奨量 RDA <br />(μg/日)!! 上限 UL <br />(μg/日)
|-
! 幼児
| 110-130 || 未定義
|-
! 子供
| 90 || 200-300
|-
! 子供
| 120
|-
! 成人
| 150
|-
! 成人女子
| 220
|-
! 成人女子
| 290
|}
=== 海外での摂取状況 ===
大陸の中央部ではヨウ素を摂取する機会がほとんどないので、[[ヨード欠乏症]]による[[甲状腺機能低下症|甲状腺異常]]が多く発生した。[[アメリカ合衆国|アメリカ]]では[[アメリカ食品医薬品局|FDA]]の規定により食塩の中に一定量のヨウ化ナトリウムが混入させてある。また、[[モンゴル]]では日本からの援助で国民にヨウ素剤を服用させた結果、甲状腺異常の患者を激減させた。アメリカのほかに[[スイス]]、[[カナダ]]、[[中国]]などでは[[食塩]]にヨウ素の添加を義務付けている<ref>山田洋介 [http://www.excite.co.jp/News/column_g/20110427/Sinkan_index_1916.html ヨウ素添加を義務付けている国(新刊JP)] エキサイトニュース 2011年4月27日</ref>。
=== 貿易上の課題 ===
一方で、食習慣の違いなどで、豪州では日本から輸入された高濃度のヨウ素(昆布エキス)を含む食品による健康被害も報告されており<ref>{{Cite web
=== 放射性ヨウ素 ===
[[チェルノブイリ原子力発電所]]の事故では、核分裂生成物の [[ヨウ素131|<sup>131</sup>I]]([[放射性同位体]])が多量に放出されたが、これが甲状腺に蓄積したため、住民に甲状腺ガンが多発した。放射能汚染が起きた場合、放射性でないヨウ素の大量摂取により、あらかじめ甲状腺をヨウ素で飽和させる防護策が必要である([[ヨウ化カリウム#用途]]、[[ヨウ素剤]]参照)。そのため、日本は[[武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律|国民保護法]]に基づく[[国民保護|国民の保護]]に関する基本指針により、核攻撃等の武力攻撃が発生した場合に武力攻撃事態等対策本部長又は都道府県知事が、[[安定ヨウ素剤]]を服用する時期を指示することになっている。
なお、独立行政法人[[放射線医学総合研究所]]は、たとえヨウ素を含んでいてもうがい薬や消毒剤など、内服薬でないものは「安定ヨウ素剤」の代わりに飲んだりしないようにとしている<ref>{{PDF|[http://www.nirs.go.jp/data/youso-1.pdf ヨウ素を含む消毒剤などを飲んではいけません -インターネット等に流れている根拠のない情報に注意]}} [[放射線医学総合研究所]]</ref><ref>[http://www.remnet.jp/kakudai/11/kichou.html 「安定ヨウ素剤予防服用の考え方と実際」]</ref>。
220 ⟶ 207行目:
== 資源 ==
ヨウ素は海水中に0.05 [[ppm]] (0.000005 %) 含まれ、推定資源量は3億4千万[[トン]]である。ヨウ素は生物濃縮される元素で、海藻の灰から抽出され0.45 %以上のヨウ素が含有される。かつては海藻を原料に工業的に生産されたが、1959年以降は工業的には、[[天然ガス]]<ref>亀井玄人、[https://www.jstage.jst.go.jp/article/shigenchishitsu1992/51/2/51_2_145/_article/-char/ja/ 茂原ガス田の地下水に含まれるヨウ素の起源と挙動] 資源地質 Vol.51 (2001) No.2 P.145-151, {{doi|10.11456/shigenchishitsu1992.51.145}}</ref>、[[チリ硝石]]、[[石油]]の副産物として生産されている。
工業的には[[ヨウ化ナトリウム]]を含む地下水などヨウ化物イオンを含む水溶液を酸性条件下で[[塩素]]を吹き込み、酸化されたヨウ素単体を[[昇華 (化学)|昇華]]精製する。
305 ⟶ 292行目:
* [http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail680.html ヨウ素解説 -「健康食品」の安全性・有効性情報]([[国立健康・栄養研究所]])
* [http://hfnet.nih.go.jp/contents/indiv_agreement.html?595 ヨウ素、ヨード -「健康食品」の安全性・有効性情報](国立健康・栄養研究所)
* [http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0529-4al.pdf ヨウ素 -「日本人の食事摂取基準」
|