「条約の受諾」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
 
1行目:
'''受諾'''(じゅだく、acceptance)とは、国際法上の意味においては、国家が[[条約]]に正式に拘束されることへの同意を表明する方法の一つである。伝統的国際法においては、条約当事国となる最終的な意思表示として、[[署名]](署名だけでよいとする条約の場合)、[[批准]]、[[加入]]、公文書の交換などの手続きがあったが、第二次世界大戦後に新たに条約の受諾と[[承認]]が考案され、慣行として確立された
 
==沿革==
受諾の意味には二種類あり、署名を行っていない状態で条約に拘束されることへの同意を表明するものと、条約に拘束する性質を持たない署名を行った後の最終的な同意表明としてのものがある。前者は[[加入]]に、後者は[[批准]]に類似している。
伝統的国際法においては、条約当事国となる最終的な意思表示として、[[署名]](署名だけでよいとする条約の場合。signification)、[[批准]](ratification)、寄託(depositary)、公文書の交換などの手続きがあったが、第二次世界大戦後に新たに受諾と[[承認]](approval)、[[加入]](accession)が考案され、1969年の[[条約法に関するウィーン条約|ウィーン条約法条約]]によって確立した。
 
==概要==
ただし、受諾と[[加入]]、[[批准]]は単なる用語の違いではなく、実際に付される手続きが異なる。
受諾について、[[条約法に関するウィーン条約|ウィーン条約法条約]]は、「条約に拘束されることについての国の同意は、批准により表明される場合の条件と同様の条件で、受諾または承認により表明される」(第14条2項)として、批准類似の受諾にのみ言及している。
 
受諾には、条約に拘束する性質を持たない署名を行った後の最終的な同意表明である場合と、署名や承認を行っていない状態で条約に拘束されることへの同意を表明する場合がある。前者は[[承認]]に、後者は[[加入]]に類似している(なお、承認、受諾と[[批准]]、[[加入]]は単なる用語の違いではなく、実際に付される手続きが異なる)。
批准類似の受諾の場合、条約に署名した政府が、当該条約が批准のために[[憲法]]に定められた手続きに付することを義務付けられていない場合、条約をさらに検討する機会を政府に与えるようなものとして用いられている。言い換えれば、批准よりも簡略化された手続きである。そのため、条約が、その目的や趣旨から、批准の前提条件となる[[立法府]]の承認を得なくてもよいものである場合に、用いられることが多い。
 
批准類似の受諾いずれの場合条約に署名した政府が、当該その条約等の批准のために[[憲法]]に定められた手続に付すことを義務付けられていない場合、条約をさらに検討実施する機会を政府に与えるようなものとして用いられている。言い換えれば、批准よりも簡略化された手続きである。そのため、条約等に拘束力が生じる点については同じであり、条約等の実施手段が、その目的や趣旨から、批准の前提条件となる[[立法府]]の承認を得なくてもよいものである場合に用いられることが多い。
加入類似の受諾の場合も、同様である。
 
なお、[[日本国憲法]]は、[[内閣]]の義務として「条約を締結(conclude)すること。但し、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする。」とし(第73項3条)、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。」としており(第98条2項)、国際的には、国内の立法府による条約の承認が条約の締結の第一段階の状態であるとされている<ref>[http://www.imo.org/en/About/Conventions/Pages/Home.aspx Adopting a convention, Entry into force, Accession, Amendment, Enforcement, Tacit acceptance procedure] - [[国際海事機関]]</ref>。
受諾について、[[条約法に関するウィーン条約|ウィーン条約法条約]]は、「条約に拘束されることについての国の同意は、批准により表明される場合の条件と同様の条件で、受諾または承認により表明される」(第14条2項)として、批准類似の受諾にのみ言及している。
 
==適用方法==
尚、'''条約に拘束される意思表示の方法にどのような手続きがあるかについては、それぞれの条約によって異なる。'''受諾が規定されていない場合もあるので、注意が必要である。
例えば、[[ジェノサイド条約]]では、受諾を規定しておらず、第11条で、「この条約は、[[批准]]されなければならない」としている。これは、条約の性質上、国の権限ある機関([[立法府]])によって慎重に条約の内容が審査されることが求められているためである。このような条約は他に、[[欧州人権条約]]、[[社会権規約]]、[[自由権規約]]、[[ウィーン条約法条約]]などがあり、「署名国により、自国の憲法上の手続に従って批准されなければならない」と規定する条約もある。([[包括的核実験禁止条約]]など)
 
例えば、[[ジェノサイド条約]]では、受諾規定を設置しておらず、第11条で、「この条約は、[[批准]]されなければならない」としている。これは、条約の性質上、国の権限ある機関([[立法府]])によって慎重に条約の内容が審査されることが求められているためである。このような条約は他に、[[欧州人権条約]]、[[社会権規約]]、[[自由権規約]]、[[ウィーン条約法条約]]などがあり、「署名国により、自国の憲法上の手続に従って批准されなければならない」と規定する条約もある。([[包括的核実験禁止条約]]など)
 
「署名国により、自国の憲法上の手続に従って批准されなければならない」と規定する条約もある。([[包括的核実験禁止条約]]など)
 
==日本が受諾した条約・議定書==
*[[腐敗の防止に関する国際連合条約]] - 2017年
*[[国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約]] - 2017年
*[[人身取引議定書|国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する人(特に女性及び児童)の取引を防止し,抑止し及び処罰するための議定書]] (密入国議定書) - 2017年 <ref>[[婦人及児童ノ売買禁止ニ関スル国際条約|婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約]]を参照。</ref>
*[[密入国議定書|国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する陸路,海路及び空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書]] - 2017年 (人身取引議定書)<ref>[[全ての移住労働者及びその家族の権利の保護に関する国際条約]]を参照。</ref>
 
50 ⟶ 55行目:
*[[対人地雷の使用、貯蔵、生産及び移譲の禁止並びに廃棄に関する条約]](対人地雷禁止条約、オタワ条約) - 1998年
 
==外部リンク==
* [http://ask.un.org/faq/14594 What is the difference between signing, ratification and accession of UN treaties?] - United Nations.
 
==脚注==
[[Category:条約|*しようやくのしゆたく]]