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宇宙について説明するにあたり、まず人類がどのように宇宙の理解を深めてきたか、おおまかな流れを解説する。
 
宇宙がいかに始まったか。こについての議論は[[宗教]]や[[哲学]]上の問題として語られて続けている<ref name=Ara8>[[#荒舩|荒舩、pp. 8-13、ビッグバンからはじまった宇宙]]</ref>。宇宙に関する説・研究などは[[宇宙論]]と呼ばれている。
古代インドの[[ヴェーダ]]では無からの発生、原初の[[原人]]の犠牲による創造、苦行の熱からの創造、といった宇宙生成論があった。[[古代ギリシャ]]では[[ヘシオドス]]の『神統記』に宇宙の根源の[[カオス]]があったとする記述があったが、[[ピタゴラス学派]]は宇宙を[[コスモス (宇宙観)|コスモス]]と見なし、[[天文現象]]の背後にひそむ[[数]]的な秩序を説明することを追究した。秩序の説明の追究は、やがて[[エウドクソス]]による、地球を27の層からなる天球が囲んでいる、とする説へとつながり、それはまた[[アリストテレス]]への説へと継承された。2世紀ころの[[クラウディオス・プトレマイオス]]は『[[アルマゲスト]]』において、天球上における天体の動き([[軌道 (力学)|軌道]])の数学的な分析を解説した。これによって天動説は大成され、ヨーロッパ[[中世]]においてもアリストテレスの説に基づいて宇宙は説明された。しかし天球を用いた天体の説明は、その精緻化とともに、そこにおける[[天球]]の数が増えていき、非常に複雑なものとなっていった。こうした状況に対し、[[ニコラウス・コペルニクス]]は従来の地球を中心とする説([[地球中心説]])に対して、[[太陽中心説]]を唱えた。この太陽中心説([[地動説]])は、当初は惑星軌道が楕円を描いていることが知られていなかったために[[周転円]]を用いた天動説よりも精度が低いものであったが、やがて[[ヨハネス・ケプラー]]による楕円軌道の発見などにより地動説の精度が増していき、天動説に代わって中心的な学説となった。宇宙は始まりも終わりも無い同じ状態であるものと[[アイザック・ニュートン]]は考え<ref name=Ara8 />、『[[自然哲学の数学的諸原理]]』の第3巻「世界の体系について」において、宇宙の[[数学]]的なしくみを説明し、地球上の物体も太陽のまわりをまわる惑星も、それまで知られなかった[[万有引力]]というものを導入すれば数学的原理を用いて統一的に説明できる、ということを示してみせた。こうした理論体系を構築した背景には[[神学]]的な意図があったとも指摘されている。ニュートンが同著で[[ユークリッド幾何学]]を用いつつ[[絶対時間と絶対空間|絶対空間・絶対時間]]という概念を導入したため、その後西欧では多くの人々が宇宙を無限に均一に広がる空間だと見なすようになった。かも静的で安定的なものだと考えていた。
 
科学的な分析が始まった<ref name=Ara8 />20世紀初頭でも科学者も含めてほとんどの人は宇宙は静的だと見なしていた。20世紀になり[[アルベルト・アインシュタイン]]により絶対時間・絶対空間を否定し、宇宙の不安定なモデル(宇宙方程式)が提示され<ref name=Ara8 />、1927年ベルギーの[[司祭]][[ジョルジュ・ルメートル]]が「宇宙は“原始的原子”の“爆発”から始まった」とする説を提唱し、この説が後に「[[ビッグバン]]」と呼ばれるようになった。その説は最初は科学者などからも反発されたものの、やがて徐々に受け入れられるようになり、今日では多くの科学者が支持する「標準的宇宙論モデル」を構成する要素になっている。
 
おおむねこうして形成された現代の宇宙論であるが、今日でも日々新たな発見はなされており、今後も説明の枠組み、様々な推定値等々が改定されてゆく可能性はある、とされている。よって宇宙に関する説は、必ずしも確定的ではなく、異論も多数あり、現段階で支持者の多い説が将来、事実ではなかったと判明する可能性もあるが、便宜上、現段階で大多数の科学者に支持されている説明を主として、以下の説明を行う。
 
== 現代宇宙論 ==
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| video1 = [http://www.youtube.com/watch?v=17jymDn0W6U 宇宙の大きさ] - 2009年時点の科学的知識に基づき、宇宙背景放射が放射された面までの宇宙全体を光行距離で描いた動画 (2009年12月、[[アメリカ自然史博物館]])
}}
宇宙の大きさについてはまだ分かっていないことが多い<ref>が、「宇宙の果て」と言えば2種類の意味がある。ひとつは、数百年前でも議論されていたことで、物理的な空間に端があるのか、相対性理論が提唱されて以降は空間は曲がってつながっていて端は無いのか、という問題として扱う場合。「宇宙の果て」は、もうひとつの意味としては、観測可能な限界ライン([[事象の地平面|宇宙の地平線]])を指す。</ref>
 
(哲学者や真理を探究しようとする人によって)(そもそもの)「宇宙の大きさ」という大テーマが立てられる時は、基本的には宇宙全体の大きさを問題にしている。だが、これについてはよく分かっていない。
 
[[地球]]から理論上観測可能な領域([[観測可能な宇宙]])に限って問題にすれば、あまり難しい問題ではなく、半径約450億[[光年]]の球状の範囲である。ただしこの大きさは[[赤方偏移]]から計算された理論上の値であり、直接の観測によって正確に分かっているわけではない。
 
なお全体的な大きさはともかくとして、とりあえず宇宙の大きさをそこに含まれるものとの比較によって感じてもらうために挙げると、典型的な[[銀河]]の直径でもわずか3万光年にすぎない。であり、隣どうしの銀河の間の典型的な距離はわずか300万光年にすぎない<ref>Rindler (1977), p.196.</ref>。例えば、我々人類が属している[[銀河系|天の川銀河]]はざっと10万光年の直径であり<ref>{{cite web
| last = Christian
| first = Eric
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}}</ref>。観測可能な宇宙の範囲内だけでもおそらく1000億個(10<sup>11</sup>個)の銀河が存在している<ref>{{cite web | last = Mackie | first = Glen |date= February 1, 2002 | url = http://astronomy.swin.edu.au/~gmackie/billions.html | title = To see the Universe in a Grain of Taranaki Sand | publisher = Swinburne University | accessdate = 2006-12-20 }}</ref> 。
 
《地球上から見ることができる宇宙の大きさ》とは、我々[[人間]]が物理的に観測可能な宇宙の時空の最大範囲を指す表現である。宇宙は膨張し続けているため、宇宙の大きさを表現するにはいくつかの単位がある。({{仮リンク|距離測度|en|distance measures (cosmology)}}も参照のこと)
「光を含む電磁波により人類が地球から[[観測可能な宇宙]]の果て」と言うと、我々が観測できる光のなかでも、最も古い時代に光が放たれた空間のことを指している。この空間から光が放たれたとき、つまり約138億年前([[宇宙の晴れ上がり]]直後)、この空間(=観測可能な宇宙の果て)は地球がある位置から(地球を中心とする全方向に宇宙論的固有距離において)約4100万[[光年]]離れたところにあった。そして当時この空間は、地球の位置から、光の約60倍の速度<ref group="注釈">ここでいう「速度」の大きさとは地球のある位置から対象までの宇宙論的固有距離を宇宙時間で微分したものである。以下、「宇宙の大きさ」の項目における「速度」および「速さ」はこの定義に準ずる。</ref>で遠ざかっていた、とされる。この空間までの現在の距離である{{仮リンク|共動距離|en|Comoving_distance}}は、約450億光年<ref group="注釈">450億光年先の空間は現在における光子の[[事象の地平面#宇宙の地平面|粒子的地平面]]である。
</ref>と推定されている。<ref>[http://www.nao.ac.jp/study/uchuzu/rule.html 「宇宙図の見方」](国立天文台)</ref>{{要出典範囲|宇宙の晴れ上がりの直後から約138億年の間に、宇宙は約1090倍程度に膨張したと考えられている。この空間は現在、光速の約3.5倍の速度で地球から遠ざかっている(宇宙の膨張は空間自体の膨張であるため、光速を超えることも可能である)。|date=2014年11月}}
 
「天体から放たれた[[光]]が地球にたどり着くまでの時間に光速をかけたもの」は{{仮リンク|光行距離|en|Distance measures (cosmology)}}と呼ばれている<ref group="注釈">「光行距離」は現代[[中国語]]での表現。日本語ではまだ Light travel distance の定訳はない。中国語でも Comoving distance の訳語は「共動距離」である。</ref>。これは光が地球に届くまでの間に、光の旅した道のりを表す。光行距離では、[[電磁波]]により観測される宇宙<ref group="注釈">電磁波による観測に制限されない、観測可能な宇宙との違いに注意。</ref>の果てから地球までの光の旅した道のりは約138億光年と推定されている。これは光速に宇宙の年齢をかけたものだが、この値は先に述べた2つの距離(450億光年、4100万光年)と値が異なっている。なぜならば、光が地球に届く間に宇宙が膨張し、そのため光の道のりが延び、また光を放った空間が遠ざかるからである。つまり光行距離はある時刻における空間上の2点間の距離を指し示すものではない。天文学では光行距離を天体までの距離とみなすことが多いが、それは我々に届く光が旅した道のりであり、現在の天体までの距離や、天体が光を放ったときの天体までの距離を示すものではない。それはあくまで、我々に届く光が旅した道のりである
 
まとめると、現在我々が観測することができる最も古い時代に放たれた光は、約138億年前に約4100万光年離れた空間から放たれた光である。そしてその光源がある空間は、現在450億光年かなたの彼方にあり、光は138億年かけて138億光年の道のりを旅してきた、ということである。わずか4100万光年の距離を光が進むのに138億年もの時間を費やしたのは宇宙の膨張が地球への接近を阻んだためである(これは、流れの速い川を上流へ向かう船がなかなか前に進めないことと似ている。宇宙空間の膨張は一般相対性理論より導かれる。よって電磁波の媒質である空間の膨張により地球を基点としたときの、地球から離れた場所にある光の速度が変化しても特殊相対性理論における「光速度不変の法則」とは矛盾しない)。
 
我々の観測可能な領域を超える宇宙は、共動距離的な意味の場合、[[インフレーション理論]]に基づき、より広大であろうと予想されているが、いまだその大きさが[[有限]]なのか[[無限]]なのかすらわかっていない{{要出典|date=2011年3月}}。宇宙の大きさは、誕生から現在までの膨張速度にもよるが、[[レオナルド・サスキンド]]はインフレーション直後の宇宙の大きさは有限ながらも、<math>10^{10^{10^{122}}}</math>(この数値の単位を議論することに意味はない。単位がメートルであっても光年であっても誤差にすぎないほど大きな値であるからである。)という非常に大きな値を解の1つに得ている。宇宙の大きさが有限の場合、空間は閉じており、直進すれば宇宙を1周することになる。無限であるとすれば永久に元の場所に戻ることはないが、確率的には十分遠方に至れば地球周辺と原子配置が同一の領域が存在すると言える。この領域に到達した時点で実質的に宇宙を周回したことと同じ効果があり、無限宇宙は矛盾する。
 
=== 宇宙の年齢 ===
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==== 膨張の中心 ====
すべての天体を含む宇宙全体が膨張しているため、無数の銀河がほぼ一様に分布していて、その距離に[[比例]]した[[速度]]で遠ざかっているように見えるが、これはわれわれ[[太陽系]]が宇宙。そ[[中心]]だからではなくためたとえいずれの銀河から見たとしても、これとじ速度に見える、という。それは、すべての天体を含む宇宙全体が膨張しているからである、と考えられている(膨張宇宙論)。「[[宇宙原理]]を採用すれば、宇宙には果てがない」と言う。よってため、これを信じれば宇宙膨張の中心は存在しない。銀河の後退速度が[[光速]]に等しくなる距離は、宇宙論的固有距離において地球から約150億光年のところとなる。宇宙年齢に光速をかけた距離とこの距離が近似するのは偶然である。ここまでの距離は[[ハッブル距離]]、あるいは[[ハッブル半径]]と呼ばれるが、これは宇宙の[[地平面]](宇宙の事象の地平面、あるいは粒子的地平面)ではない。[[光速]]を超えて遠ざかる天体は赤方偏移Z=1.6程度の天体と考えられるが、この値を超える天体はすでに1000個程度観測されている。
 
=== 宇宙の誕生 ===