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[[File:NGC 1365 ESO.jpg|right|thumb|175px|NGC 1365<br />赤外線光度 10<sup>11.0</sup><math>L</math><small><math> _{\odot} </math></small>の赤外線銀河]]
'''赤外線銀河'''<ref name="daijiten"/>(せきがいせんぎんが、infrared galaxy<ref name="daijiten"/>)とは、銀河の内部からのエネルギーにより銀河の星間ガスや塵が暖められ、それが[[赤外線]]を強く再放射している銀河である。エネルギーのほとんどを赤外線で放射しており、赤外線(8-1000μm)の[[光度 (天文学)
==特徴==
[[File:SEDApr220.png|right|thumb|360px|超高光度赤外線銀河 Arp220 の放射エネルギー分布]]
その名があらわすとおりに、赤外線で強く輝いていることが最大の特徴である。可視光で輝いている通常の銀河の場合は赤外線による発光は弱い。従来から可視光で観測されてきた天の川銀河近傍の天体で、10<sup>11</sup><math>L</math><small><math> _{\odot} </math></small>より大きい赤外線光度をもつものはまれである<ref
赤外線による発光が比較的強い銀河のうち<ref>より具体的には、IRASが25μmと60μmで観測して、60μmの放射流束が25μmのものより大きいものについて調査した結果。</ref>、赤外線強度が10<sup>9</sup><math>L</math><small><math> _{\odot} </math></small>より小さい銀河はEまたはS0の形態つまり[[楕円銀河]]
赤外線銀河の赤外線強度と可視光による銀河の分類を比べることのできるものについては、赤外線強度が強いグループになるほど、その中でのセイファート銀河の割合が増える。赤外線強度が10<sup>10</sup>-10<sup>11</sup><math>L</math><small><math>_{\odot} </math></small>の銀河のうち、セイファート銀河の占める割合は数パーセントだが、10<sup>12.3</sup><math>L</math><small><math>_{\odot} </math></small>より大きいものの中では、半数弱をセイファート銀河が占める。ライナー型銀河の割合は約3割で、赤外線強度との関係は見られない。残りはスターバースト銀河で、赤外線強度が強いものになるほど、その中で占める割合が少なくなっている<ref>Sanders et al. 1996, p.761</ref>。
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{| class="wikitable" style="width:85%; text-align:center; margin:0 auto"
|+赤外線銀河の明るさと可視光による特徴の関係<ref>Sanders et al. 1996, p.773 Table 3 "IRAS galaxy properties versus <math> L_{ir} </math>"より抜粋</ref>
|-
| rowspan="2" colspan="2" |
| colspan="4" |赤外線での明るさ log(<math>L_{ir}</math> /<math>L</math><small><math>_{\odot} </math></small> )
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地上の望遠鏡からの観測に加えて、弾道飛行をするロケット、気球、飛行機などによる高高度での赤外線による観測も行われた。地上からの観測をする場合、大気中の水蒸気が宇宙からの赤外線を吸収するし、大気自身も赤外線を発しているので、観測の邪魔になるからである。10μm付近の波長は大気を通過してくるのだが([[大気の窓]])、25μmから600μmの波長域は地上から観測できない<ref>G. H. Rieke et al, p.326</ref>。
さらに効果的な観測をするために、1970年代には地球周回軌道に赤外線観測機器を置くことが検討されるようになる。1983年にはアメリカ、オランダ、イギリスの共同計画としてIRASが打ち上げられ、1983年1月25日から11月22日まで<ref>[http://www.spitzer.caltech.edu/images/2863-sig09-010-A-Quarter-Century-of-Infrared-Astronomy A Quarter Century of Infrared Astronomy]</ref>の約10か月<ref>観測機器を液体ヘリウムで冷却しているので、液体ヘリウムがなくなるとそれで観測を終える。</ref>の活動期間の間に赤外線銀河を含むさまざまな赤外線発生源を多数発見した。この観測結果のうち、赤外線銀河に関するものは、例えば、RGBSサンプル(THE IRAS REVISED BRIGHT GALAXY SAMPLE)としてまとめられている<ref
赤外線の放射に特徴があるとはいえ、赤外線銀河の観測は赤外線のみならずさまざまな波長の電磁波をつかって行われている。例えば、[[スピッツァー宇宙望遠鏡]]に関連したプロジェクトとして、銀河近傍にある202のさまざまなタイプの赤外線銀河および超高光度赤外線銀河を選び、スピッツァー宇宙望遠鏡(赤外線)、[[チャンドラ (人工衛星)|チャンドラ]](X線)、[[ハッブル宇宙望遠鏡]](可視光、赤外線、紫外線)、[[GALEX (人工衛星)|GALEX]](紫外線)、その他地上望遠鏡を使用した総合的な観測結果が集められ、[http://goals.ipac.caltech.edu GOALSサンプル]としてまとめられている。
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==宇宙や銀河の歴史と赤外線銀河==
[[File:Universe expansion.png|right|thumb|157px|宇宙の発達のイメージ<br />赤外線銀河は銀河や星の生成・発達に関係があるらしい。]]
マーフィらの結論<ref
超高光度赤外線銀河は、その後[[楕円銀河]]に発達するといわれている。これは、楕円銀河もやはり銀河同士の衝突・一体化によっ形成されたということが考えられている<ref>A. Toomre 'The Evolution of Galaxies and Stellar Populations' Beatrice M. Tinsley (ed.), Richard B. Larson (ed.) , Yale University Observatory, 1977, p.401</ref>からである。超高光度赤外線銀河と楕円銀河を比較すると、楕円銀河の中でも、中型サイズで回転している(小さな核をもち、扁平な形状のもの)種類の楕円銀河とよく似た特徴を持つ。そのため、超高光度赤外線銀河はこの種類の楕円銀河へ発達していくと考えられる<ref>R. Genzel, L. J. Tacconi, D. Rigopoulou, D. Lutz, AND M. Tecza "Ultraluminous infraread mergers: Elliptical galaxies in formation?" The Astrophosical Journal, Vol 563, 2001, pp. 527 - 545. 銀河内の物質の速度分布、有効半径、光度の3つの観点から超高光度赤外線銀河と楕円銀河を比較した。</ref>。あるいは超高光度赤外線銀河は、その後クエーサーに発達するとも言われている<ref>D. B. Sanders, B. T. Soifer, J. H. Elias, B. F. Madore, K. Matthews, G. Neugebauer and N. Z. Scoville
遠方の赤外線銀河を観測することで、昔の宇宙の状態を推し量ることができる。昔の宇宙では星の生成がいまより盛んだったらしい。エルバスらの研究によれば、[[赤方偏移]]の量でz
<math>\approx</math>1(約76億年前の宇宙に当たる<ref name=
==主な赤外線銀河==
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* VV340
[[File:Hubble Interacting Galaxy UGC 9618 (2008-04-24).jpg|thumb|175px|VV340]]
:2つの渦巻銀河のペア(以下、VV340N-横を向いている方、VV340S-渦巻きが見える方、と記す)で、互いに接近しつつある段階にある。赤外線光度は10<sup>11.67</sup><math>L</math><small><math>_{\odot} </math></small><ref
{{-}}
* NGC 4418
[[File:NGC 4418.jpg|thumb|175px|NGC 4418]]
:9.7μmのシリケイトの吸収が強く出ていることでよく知られている<ref>報告をしたのは、Roche, et al. "NGC 4418 - A very extinguished galaxy" Monthly Notice, Vol. 218, Royal Astronomical Society, 1986, pp.19-23。"よく知られている"と評価しているのは、例えば、H. W. W. Spoon, et al. "The obscured mid-infrared continuum of NGC 4418: A dust - and ice enshrouded AGN" Astronomy & Astrophysics, Vol. 365, 2001, p. L353。</ref>。赤外線光度は10<sup>11.08</sup><math>L</math><small><math>_{\odot} </math></small><ref
{{-}}
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File:Hubble Interacting Galaxy NGC 3690 (2008-04-24).jpg|NGC 3690(10<sup>11,88</sup><math>L</math><small><math>_{\odot} </math></small>)
</gallery>
<small>()内は赤外線光度を表す。数値はRGBSカタログによる<ref
==注釈==
{{
<ref name="daijiten">{{Cite book|和書
|author =
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== 外部リンク ==
* [http://www.spacedaily.com/reports/How_To_Bake_A_Galaxy.html How To Bake A Galaxy] (SpaceDaily) Jun 19, 2006 (英語)
* [http://goals.ipac.caltech.edu The Great Observatory All-sky LIRG Survey (英語)]
{{銀河}}
|