「異体字セレクタ」の版間の差分

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{{Double image aside|right|u66d9-k.svg|120|u66d9.svg|120|異体字セレクタを付けない場合、点のある字体と点のない字体は区別されない。異体字セレクタ17」SV17を付けると点のない字体、異体字セレクタ18」SV18を付けると点のある字体を表す。}}
 
'''異体字セレクタ'''<ref>JIS X 0221:2007の規格票では「字形選択子」という訳語を当てているが、全く意味の異なる"Character shaping selectors"などにも全く同じ訳語を当てているので、混乱を避けるため本項では「異体字セレクタ」という訳語を用いる。</ref> ({{lang-en-short|variationVariation selectorSelector}}) は、付加された[[Unicode]]における[[文字]]の[[字体]]をより詳細に指定する、[[Unicode]]におけるためのセレクタ(選択子)である。
 
== 解説 ==
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この原則は、たとえば[[ラテン文字]]の 'a' で、上部の右から左へ伸びる線があるかどうか、という違いは通常は「フォントの違い」であり「別の字」とはしないためほとんど問題ない。しかし例えば、[[CJK統合漢字]]において、Han unification([[:en:Han unification]])や各国内標準の都合を理由として、運用上しばしば「別の字」とされる字形を、様々な経緯の結果「詳細/デザイン差」として同じ符号位置としてしまっているのは、問題がしばしば発生する(初期のUnicodeが提案された当初から危惧されていた通りに)。そのため、状況によっては、フォントの指定などを含めることができない[[プレーンテキスト]]上で字形の区別を保存したいという需要も存在する。
 
たとえば、
[[Image:u845b-k.svg|thumb|right|120px|{{JIS2004フォント|[[葛飾区]]の葛}}]]
[[Image:u845b.svg|thumb|right|120px|{{JIS90フォント|[[葛城市]]の葛}}]]
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* [[IME]]に単語登録可能な文字列は通常プレーンテキストのみである<ref>{{cite book|和書|author=川俣晶|date=1998-10-30|title=Windows NT 日本語処理ガイドブック|publisher=Windows NT 漢字処理技術協議会|url=http://www.xkp.or.jp/xkp2.pdf|pages=p.5}}</ref>。このため[[フォント]]の指定や[[DTP]][[アプリケーションソフトウェア|アプリケーション]]による字形の選択が可能であっても、通常の文字入力とは異なる操作を要求される上に正しい組み合わせを覚えていなければならず、ほとんどの一般利用者にとって現実的な手間で入力できない。たとえば[[Microsoft Windows Vista|Windows Vista]]では{{JIS2004フォント|[[葛飾区]]}}と{{JIS90フォント|[[葛城市]]}}を区別して表示できるが<ref>{{cite web|url=http://download.microsoft.com/download/3/4/4/3448ddf3-ca22-45bd-9984-1237e8ed0019/Windows_Vista_application_compatibility_paper.doc|title=アプリケーション開発者向け Windows Vista 対応アプリケーションの互換性|pages=68|accessdate=2008-02-02}} [http://channel9.msdn.com/ShowPost.aspx?PostID=222960#222960 デモ映像]</ref>、「かつしかく」が[[Image:u845b-k.svg|葛|32px]]飾区、「かつらぎし」が[[Image:u845b.svg|葛|32px]]城市のように区別して変換されるような単語登録はできない。ただし[[EGBRIDGE|egbridge]]など、Mac OS Xの[[インプットメソッド]]のうち[[グリフアクセスプロトコル]]に対応したものはプレーンテキストの制約に縛られない<ref>{{cite web|url=http://www.ergo.co.jp/products/egb16/other.html#03|title=Mac専用日本語入力プログラム“egbridge Universal” | 製品情報 | エルゴソフト</title>|accessdate=2008-02-15}}</ref>。
* [[電子メール]]の送信に使われる[[Simple Mail Transfer Protocol|SMTP]]などの情報交換用[[通信プロトコル|プロトコル]]は、情報交換をプレーンテキストで行うよう設計されている。このため、Mac OS Xの[[グリフアクセスプロトコル]]のように内部に閉じたテキスト処理ではプレーンテキストの制約を取り払ったシステムも、メールなどによる外部との情報交換では字形の区別を保存できない<ref>{{cite web|url=http://www.apple.com/jp/pro/design/typography/05/index6.html|title=アップル - Pro - 技術情報 - Mac OS Xと日本語タイポグラフィ 第5回:ヒラギノProの漢字を巡る座談会 - ページ6|accessdate=2008-02-15}}</ref>。
このような字形の区別にかかわる需要は、Unicodeの[[CJK統合漢字|漢字統合]]の規則が国内での運用の実情に沿っていない日本では特に顕著であり、JISの各文字集合([[JIS X 0208]]、[[補助漢字|JIS X 0212]]、[[JIS X 0213]])やUnicodeで満たせない需要に対応するため、官庁では[[戸籍統一文字]]や[[住民基本台帳ネットワーク]]統一文字など、民間では[[今昔文字鏡]]や[[GT書体|GTプロジェクト]]など独自の[[大規模文字セット]]が繰り返し作成され、一部で運用されてきた。しかしそれらは独自であるがゆえに、Unicodeを使用している既存の大多数の[[パーソナルコンピュータ|PC]]環境と[[相互運用性]]がない。
 
このような字形の区別にかかわる需要は、Unicodeの[[CJK統合漢字|漢字統合]]の規則が国内での運用の実情に沿っていない日本では特に顕著であり、JISの各文字集合([[JIS X 0208]]、[[補助漢字|JIS X 0212]]、[[JIS X 0213]])やUnicodeで満たせない需要に対応するため、官庁では[[戸籍統一文字]]や[[住民基本台帳ネットワーク]]統一文字など、民間では[[今昔文字鏡]]や[[GT書体|GTプロジェクト]]などといった独自の[[大規模文字セット]]が繰り返し作成され、一部で運用されてきた。しかしそれらは独自であるがゆえに、Unicodeを使用している既存の大多数の[[パーソナルコンピュータ|PC]]環境と[[相互運用性]]がない。
異体字セレクタは以上のような問題をUnicode上で解決するために考案された特殊な「文字」([[符号点|符号位置]]が与えられているもの、という意味では「文字」)である。[[HyperText Markup Language|HTML]]や[[Cascading Style Sheets|CSS]]などの[[Web標準]]を管理している[[World Wide Web Consortium]]は、HTMLなどの[[マークアップ言語]]においても字形を指定するために異体字セレクタを使うことを想定している<ref>{{cite web|url=http://www.w3.org/TR/2003/NOTE-unicode-xml-20030613/#Format|title=Format Characters Suitable for Use with Markup|date=2003-06-13|accessdate=2008-02-02}}</ref>。異体字セレクタのうち、特に漢字の異体字セレクタを指して、Ideographic Variation Selector略してIVSと呼ぶ。
 
異体字セレクタは以上のような問題をUnicode上で解決するために考案された特殊な「文字」([[符号点|符号位置]]が与えられているもの、という意味では「文字」)である。異体字は、異体字の親となる基底文字の文字コードの後に異体字セレクタを付けることで表現する。異体字セレクタを用いると、異体字は文字コードとして表現されるため、プレーンテキスト上でも字形の区別をつけることができる。[[HyperText Markup Language|HTML]]や[[Cascading Style Sheets|CSS]]などの[[Web標準]]を管理している[[World Wide Web Consortium]]は、HTMLなどの[[マークアップ言語]]においても字形を指定するために異体字セレクタを使うことを想定している<ref>{{cite web|url=http://www.w3.org/TR/2003/NOTE-unicode-xml-20030613/#Format|title=Format Characters Suitable for Use with Markup|date=2003-06-13|accessdate=2008-02-02}}</ref>。なお異体字セレクタのうち特に漢付加された文字の字形をより詳細に指定する機能を持つが、異体字セレクタを指して、Ideographic Variation Selector略してIVSそのものが表示されるこ呼ぶはない
異体字セレクタは、付加された文字の字形をより詳細に指定する機能を持つが、それ自身は表示されない。異体字セレクタはモンゴル文字専用のモンゴル自由字形選択子が{{U+}}180B〜U+180Dに3文字、特定の適用対象を定められていないものがU+FE00〜U+FE0FおよびU+E0100〜U+E01EFに256文字存在し、選択したい字形に応じて異なる異体字セレクタを付加する。異体字セレクタとそれが付加される文字との組み合わせ、および指定される字形は規格で定められており、それ以外の組み合わせは無視される。利用者が独自に考えた未登録の字形を利用したい場合には、[[私用領域]]の文字を{{要出典範囲|date=2013年5月|私用の異体字セレクタとして}}使う。領域として私用の異体字セレクタ(Private Use Variation Selectors)を追加する提案もあった<ref>http://www.unicode.org/L2/L2003/03293-puvs.html</ref>が、取り入れられていない。
 
===組み合わせ===
Unicodeにおける異体字セレクタの組み合わせは2つのタイプがあり、
Standardized variationVariation sequences(Sequences(標準化された異体字シーケンス、略称SVS)とIdeographic variationVariation sequences (Sequences(漢字異体字シーケンス、略称IVS)がある。SVSは主に非漢字が登録されており、コレクションはStandardizedVariants.txt<ref>
前者は主に非漢字が登録され、StandardizedVariants.txt<ref>{{Cite web | title=StandardizedVariants.txt | url=http://www.unicode.org/Public/UCD/latest/ucd/StandardizedVariants.txt | publisher=Unicode Consortium | date=2015-11-20 | accessdate=2017-06-01 }}</ref>
</ref>にて定義されており、追加はUnicodeが行なっている。IVSは漢字専用でコレクションが Ideographic Variation Database (IVD) にて定義されており、コレクションは定められた手続きに則ってUnicodeへ申請を行うことでIVDに登録することができる<ref>
{{Cite web | title=Unicode® Technical Standard #37 UNICODE IDEOGRAPHIC VARIATION DATABASE | url=http://www.unicode.org/reports/tr37/| publisher=Unicode Consortium | date=| accessdate=2017-10-05 }}
</ref>。
 
2017年5月現在Unicodeに登録されている異体字セレクタで利用できる異体字は、SVSに登録されている組み合わせは、[[数学記号の表|数学記号]]が25通り、[[モンゴル文字]]が64通り、[[ビルマ文字]]が27通り、[[パスパ文字]]が6通り<ref name="u5stdvars"/>、[[マニ文字]]が5通り、[[携帯電話の絵文字|絵文字]]が486通り(テキストスタイルと絵文字スタイルが243通りずつ)、そして[[CJK互換漢字]]に対応するものが1002通りで、IVDに登録されているコレクションが[[CID (文字コード)|Adobe-Japan1-6]]コレクションに含まれる約1460014,600通り、および汎用電子コレクション ({{lang-en-short|Hanyo-Denshi collection}}) に含まれる約1300013,000通り<ref name="ivd"/>、文字情報基盤コレクション ({{lang-en-short|Moji-Joho collection}}) に含まれる約1000010,000通り、マカオ特別行政区(MSARG)コレクションに含まれる21通り、[[CJK互換漢字]]に対応するものが1002通りである。ただし汎用電子コレクションには、Adobe-Japan1コレクションと多数の重複がある<ref>{{cite web|url=http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110124/356398/|title=UnicodeのIVSがもたらすメリットとデメリット - 新常用漢字が引き起こす文字コード問題|author=安岡孝一|date=2011-01-24|accessdate=2011-02-01}}</ref>。汎用電子コレクションと文字情報基盤コレクションは同一の字形は異体字セレクタを共有している。漢字は[[常用漢字]]の字形など日本において標準的な字形も登録されており、Adobe-Japan1-6に含まれるものなら、「一」のように単一の字形しか存在しないものでもその単一の字形が登録されている。汎用電子コレクションの方は、Adobe-Japan1-6とは異なり、同一コードポイントで複数の字形を持つもののみ登録されており、単一の字形しか存在しないものは登録されていない。
{{cite web|url=http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110124/356398/|title=UnicodeのIVSがもたらすメリットとデメリット - 新常用漢字が引き起こす文字コード問題|author=安岡孝一|date=2011-01-24|accessdate=2011-02-01}}
</ref>。汎用電子コレクションと文字情報基盤コレクションは同一の字形は異体字セレクタを共有している。漢字は[[常用漢字]]の字形など日本において標準的な字形も登録されており、Adobe-Japan1-6に含まれるものなら、「一」のように単一の字形しか存在しないものでもその単一の字形が登録されている。汎用電子コレクションの方は、Adobe-Japan1-6とは異なり、同一コードポイントで複数の字形を持つもののみ登録されており、単一の字形しか存在しないものは登録されていない。
 
===符号位置===
異体字セレクタは、付加された文字の字形をより詳細に指定する機能を持つが、それ自身は表示されない。異体字セレクタはモンゴル文字専用のモンゴル自由字形選択子が{{U+}}180B〜U+180Dに3文字、特定の適SVSで利対象を定めらていないものる異体字セレクタ[[基本多言語面]]のU+FE00〜U+FE0FおよびFE0F(異体字セレクタ1~16 (VS1-VS16))に16文字、IVSで利用される異体字セレクタが[[追加特殊用途面]]のU+E0100〜U+E01EFE01EF(異体字セレクタ17~256 (VS17-VS256))256240文字存在し、選択したい字形に応じて異なる異体字セレクタを付加する。異体字セレクタとそれが付加される文字との組み合わせ、および指定される字形は規格で定められており、それ以外の組み合わせは無視される。利用者が独自に考えた未登録の字形を利用したい場合には、[[私用領域]]の文字を{{要出典範囲|date=2013年5月|私用の異体字セレクタとして}}使う。領域として私用の異体字セレクタ(Private Use Variation Selectors)を追加する提案もあった<ref>http://www.unicode.org/L2/L2003/03293-puvs.html</ref>が、取り入れられていない。
 
漢字の字形指定 (IVS) に[[基本多言語面]]の異体字セレクタを使わないず、[[追加特殊用途面]]のセレクタを使用する<ref>{{cite web|url=http://www.unicode.org/reports/tr37/|title=Unicode Technical Standard #37 - Ideographic Variation Database|date=2006-01-13|accessdate=2008-02-02}}</ref>。このためIVSに対応し、[[UTF-16]]を使用するアプリケーションは、[[Unicode#サロゲートペア|サロゲートペア]]を正常に扱えなければならない。逆にSVSでは2017年5月現在、全て基本多言語面の異体字セレクタのみ使用している。なお、CJK互換漢字は、漢字でありながらIVSではなく非漢字と同じSVSとして登録されたため、基本多言語面の異体字セレクタを使用する。
 
2012年1月には携帯電話の絵文字としても使われる107文字について、テキストスタイル(普通の文字のように白黒で表示)と絵文字スタイル(カラーで表示したり、アニメーションする)の切替を異体字セレクタで行えるようになった。使用する異体字セレクタは基本多言語面に規定されたもので、テキストスタイルがU+FE0E(異体字セレクタ15)FE0E(VS15)、絵文字スタイルがU+FE0F(異体字セレクタ16)FE0F(VS16)となっている。
 
なお、U+303EにIDEOGRAPHIC VARIATION INDICATOR(直訳すると漢字異体字表示子)という似たような名称で、かつ例示字形が点線で囲まれている(通常は不可視である制御文字などを示す)ものが存在するが、これはこれに続く漢字が異体字であることを示す可視の記号 ([[下駄記号]]の異体字版) であり、異体字セレクタではない<ref>{{cite web|url=http://std.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n1728.doc|title=Ad-Hoc Report on Ideographic Variation Indicator|date=1998-03-18|accessdate=2008-02-21}}</ref>。
 
=== CJK互換漢字との関係 ===
Unicodeにおける異体字セレクタの組み合わせは、2つのタイプがあり、
[[Image:ufa30.svg|thumb|right|120px|CJK互換漢字を使うと<U+FA30>、異体字セレクタを使うと<U+4FAE, E0101>, <U+4FAE, E0103>または,<U+4FAE FE00>のいずれかで符号化される]]
Standardized variation sequences(標準化された異体字シーケンス、略称SVS)とIdeographic variation sequences (漢字異体字シーケンス、略称IVS)がある。
[[JIS X 0213]]や[[CNS 11643]]などの各国の従来文字コードでは区別されているがUnicodeでは統合されている文字を区別するため、Unicodeではこれまで[[CJK互換漢字]]を使ってきた。しかし技術的な制約により、漢字の異体字セレクタは[[CJK統合漢字]] (正確にはUnified_Ideographプロパティを持つ文字) にしか付けることができない。これは[[Unicode正規化]]に対する安定性の問題 ([[CJK互換漢字#問題点]]を参照) を改善するが<ref>{{cite web|url=http://www.unicode.org/mail-arch/unicode-ml/y2007-m03/0122.html|title=Re: Comment on PRI 98: IVD Adobe-Japan1 (pt.2)|date=2007-03-20|accessdate=2008-02-02}}</ref>、同じ字形を意図していても異体字セレクタに対応した[[実装]]と対応していない実装との間で異なる符号化表現が採用され、混乱を招く可能性も指摘されている<ref>{{cite web|url=http://www.unicode.org/mail-arch/unicode-ml/y2007-m03/0144.html|title=Re: Comment on PRI 98: IVD Adobe-Japan1 (pt.2)|date=2007-03-25|accessdate=2008-02-02}}</ref>。
前者は主に非漢字が登録され、StandardizedVariants.txt<ref>{{Cite web | title=StandardizedVariants.txt | url=http://www.unicode.org/Public/UCD/latest/ucd/StandardizedVariants.txt | publisher=Unicode Consortium | date=2015-11-20 | accessdate=2017-06-01 }}</ref>
{{cite web|url=http://www.unicode.org/mail-arch/unicode-ml/y2007-m03/0122.html|title=Re: Comment on PRI 98: IVD Adobe-Japan1 (pt.2)|date=2007-03-20|accessdate=2008-02-02}}
にて定義されており追加はUnicodeのバージョンアップと同時に行われる、後者は漢字専用で Ideographic Variation Database (IVD)にて定義される。
</ref>、同じ字形を意図していても異体字セレクタに対応した[[実装]]と対応していない実装との間で異なる符号化表現が採用され、混乱を招く可能性も指摘されている<ref>
{{cite web|url=http://www.unicode.org/mail-arch/unicode-ml/y2007-m03/0144.html|title=Re: Comment on PRI 98: IVD Adobe-Japan1 (pt.2)|date=2007-03-25|accessdate=2008-02-02}}</ref>。
 
また、2006年1月に漢字字形データベースIVDへの登録手続きが制定されて<ref name="uts37"/>漢字字形コレクションの登録が可能になった後にも[[ARIB外字]]や汎用電子で収集された漢字の一部を互換漢字として収録することが要望される<ref>{{cite web|url=http://www.cse.cuhk.edu.hk/~irg/irg/irg29/IRGN1347_wg2n3318-ARIB_CJK.pdf|title=Proposal to encode six CJK Ideographs in UCS|date=2007-09-07|accessdate=2008-02-02}}</ref><ref name="hanyo"/>など、足並みは必ずしもそろっていなかった。
2017年5月現在Unicodeに登録されている異体字セレクタの組み合わせは、[[数学記号の表|数学記号]]が25通り、[[モンゴル文字]]が64通り、[[ビルマ文字]]が27通り、[[パスパ文字]]が6通り<ref name="u5stdvars"/>、[[マニ文字]]が5通り、[[携帯電話の絵文字]]が486通り(テキストスタイルと絵文字スタイルが243通りずつ)、そして[[漢字]]が[[CID (文字コード)|Adobe-Japan1-6]]に含まれる約14600通り、および汎用電子コレクション ({{lang-en-short|Hanyo-Denshi collection}}) に含まれる約13000通り<ref name="ivd"/>、文字情報基盤コレクションに含まれる約10000通り、マカオ特別行政区(MSARG)コレクションに含まれる21通り、[[CJK互換漢字]]に対応するものが1002通りである。ただし汎用電子コレクションには、Adobe-Japan1コレクションと多数の重複がある<ref>{{cite web|url=http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20110124/356398/|title=UnicodeのIVSがもたらすメリットとデメリット - 新常用漢字が引き起こす文字コード問題|author=安岡孝一|date=2011-01-24|accessdate=2011-02-01}}</ref>。汎用電子コレクションと文字情報基盤コレクションは同一の字形は異体字セレクタを共有している。漢字は[[常用漢字]]の字形など日本において標準的な字形も登録されており、Adobe-Japan1-6に含まれるものなら、「一」のように単一の字形しか存在しないものでもその単一の字形が登録されている。汎用電子コレクションの方は、Adobe-Japan1-6とは異なり、同一コードポイントで複数の字形を持つもののみ登録されており、単一の字形しか存在しないものは登録されていない。
 
2013年9月30日に制定のUnicode 6.3では、CJK互換漢字が正規化でCJK統合漢字に置き換えられ、字形等の情報を失ってしまう問題を解消するために、Standardized VariantsSVSとしてCJK互換漢字と等価なCJK統合漢字と異体字セレクタの組合せがIVSとは別に登録された。IVSとは異なり基本多言語面にあるVS1(UU+FE00)~VS3(UFE00(VS1)~U+FE02)FE02(VS3)を使う。IVSにある字形と同じものでも登録されている。例えば、U+FA30の「侮」の康煕別掲の字体であるU+FA30の「&#xFA30;」は、SVSではU+4FAEとU+FE00(異体字セレクタ1)FE00(VS1)の組合せで登録された。CJK互換漢字ブロックおよびその補助集合のうち、CJK統合漢字扱いするものを除いた1002字全てが登録された。字体の違いでなく韓国KS X 1001の読みの違いで分離されているものや台湾Big5の誤って重複収録されたものに対応する互換漢字にも異体字セレクタが与えられている。例えば、U+F90Aの「금」(Geum、クム)と読む「金」には、U+91D1(KS X 1001では「김」(Gim、キム)と読む「金」に対応)と字体が全く同じであるが、これにU+FE00(VS1)を付け加える組合せが与えられた。
漢字の字形指定 (IVS) には、[[基本多言語面]]の異体字セレクタを使わない<ref>{{cite web|url=http://www.unicode.org/reports/tr37/|title=Unicode Technical Standard #37 - Ideographic Variation Database|date=2006-01-13|accessdate=2008-02-02}}</ref>。このためIVSに対応し、[[UTF-16]]を使用するアプリケーションは、[[Unicode#サロゲートペア|サロゲートペア]]を正常に扱えなければならない。逆にSVSでは2017年5月現在、全て基本多言語面の異体字セレクタのみ使用している。なお、CJK互換漢字は、漢字でありながらIVSではなく非漢字と同じSVSとして登録されたため、基本多言語面の異体字セレクタを使用する。
 
== 問題点 ==
2012年1月には携帯電話の絵文字としても使われる107文字について、テキストスタイル(普通の文字のように白黒で表示)と絵文字スタイル(カラーで表示したり、アニメーションする)の切替を異体字セレクタで行えるようになった。使用する異体字セレクタは、テキストスタイルがU+FE0E(異体字セレクタ15)、絵文字スタイルがU+FE0F(異体字セレクタ16)となっている。
[[Image:R188 font.gif|thumb|right|250px|国によって異なる骨の異体字({{lang|zh|骨}}・骨)。異体字セレクタでは対応していない例]]
* フォントを指定できないプレーンテキストでの使用を想定されているにもかかわらず、確実にフォントを指定できる環境以外では、異体字セレクタを使用しても対象の環境で意図した異体字が表示されるとは限らない。ただし外字と異なり、どのような字形を意図していたかの情報は失われない。
* 漢字の場合、出典が異なれば同一字形であっても別の異体字セレクタが割り当てられることとなっている。そのため、同一字形に対して複数の異体字セレクタが割り当てられ、検索等において支障が生ずる場合がある。例えば、{{JIS2004フォント|葛飾区の葛}} (U+845B, JIS2004字形) には、Adobe1Adobe-6用Japan1コレクションの異体字セレクタ18SV18 (U+E0101, cid-7652) の他に汎用電子コレクション用の異体字セレクタ20SV20 (U+E0103, FT1769)、{{JIS90フォント|葛城市の葛}} (U+845B, JIS90字形) にはAdobe1Adobe-6用の異体字セJapan1コレクタ17ションのSV17 (U+E0100, cid-1481) の他に汎用電子コレクション用の異体字セレクタ19SV19 (U+E0102, JA1975) が与えられてしまった。また、Unicode 6.3ではIVSとは別にCJK互換漢字にSVSとして異体字セレクタが与えられたため、例えば侮 (U+4FAE) の異体字「&#xFA30;」(CJK互換文字) にはAdobe1Adobe-6の異体字セJapan1コレクタ18ションのSV18 (U+E0101, cid-13382) と汎用電子の異体字セレクタ20ションのSV20 (U+E0103, JC1424) に加え、CJK互換漢字U+FA30に対応する異体字セレクタ1SV1 (U+FE00) が与えられるなど最大同じ字体に3つ異体字セレクタが与えられることとなった。
 
* またすべての環境で異体字セレクタに対応した環境ていると少なく([[#ソフトウェア]]の節を参照)限らずまた対応した環境であっても対応範囲はフォントによって必ずしも一様ではない。たとえばWindows 8.1標準搭載の日本語フォントのうちメイリオ/游明朝/游ゴシックはおおむねAdobe-Japan1コレクションをサポートするが、MS 明朝/MS ゴシックはおおむねJIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形のみをサポートする。また、国によって異なる骨の異体字(図参照)のようなケースを異体字セレクタで区別することができない
 
== 歴史 ==
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2003年6月25日、[[ドイツ]]が[[ウムラウト]]と[[トレマ]]を区別するための異体字セレクタの追加を要望したが<ref>{{cite web|url=http://std.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n2593.doc|title=German request to encode the characters "LATIN VARIATION SELECTOR UMLAUT" and "LATIN VARIATION SELECTOR TREMA"|date=2003-06-25|accessdate=2008-02-02}}</ref>、技術的制約により異体字セレクタでは実現不可能であったため却下された<ref>{{cite web|url=http://std.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n2613.doc|title=UTC response to N2593|date=2003-09-04|accessdate=2008-02-02}}</ref>。
 
2005年7月16日、アメリカの企業[[アドビシステムズ]]の[[エリック・ミューラー]]とアメリカの企業[[サン・マイクロシステムズ]]の[[樋浦秀樹]] (当時) より、異体字セレクタを実際に漢字で運用するための漢字字形データベース ({{lang-en-short|Ideographic Variation Database}}、IVD) の規格草案がユニコードコンソーシアムに提案され<ref>{{cite web|url=http://www.unicode.org/reports/tr37/tr37-1.html|title=Proposed Draft Unicode Technical Standard #37 - Registration of Ideographic Variation Sequences|date=2005-07-16|accessdate=2008-02-02}}</ref>、2006年1月13日正式版が発行された<ref name="uts37">{{cite web|url=http://www.unicode.org/reports/tr37/tr37-3.html|title=Unicode Technical Standard #37 - Ideographic Variation Database|date=2006-01-13|accessdate=2008-02-02}}</ref>。
 
2006年7月4日にISO/IEC 10646:2003 追補2が、14日にUnicode 5.0が制定され<ref>{{cite web|url=http://www.unicode.org/versions/components-5.0.0.html|title=Components of Unicode Standard 5.0|date=2006-07-14|accessdate=2008-02-02}}</ref>、両規格へのパスパ文字の収録に合わせてパスパ文字と異体字セレクタの組み合わせが追加された<ref name="u5stdvars">{{cite web|url=http://www.unicode.org/Public/5.0.0/ucd/StandardizedVariants.html|title=Standardized Variants Revision 5.0.0|date=2006-07-14|accessdate=2008-02-02}}</ref>。
 
{{Double image aside|right|u93ad.svg|120|cid-13370.svg|120|{{Unihan|93AD}}|{{Unihan|93AD}}ではなく、{{Unihan|93AE}}に異体字セレクタ18SV18を付けて表す}}
2007年12月14日、[[CID (文字コード)|Adobe-Japan1-6コレクション]]が最初の漢字字形コレクションとして正式に承認され、IVDに登録された<ref name="ivd">{{cite web|url=http://www.unicode.org/ivd/index.html|title=Ideographic Variation Database|accessdate=2011-02-01}}</ref>。ただし2度の公開レビューにもかかわらず割り当てに疑問が残る組み合わせの存在も指摘されている (右図はその一例)<ref>{{cite web|url=http://slashdot.jp/~yasuoka/journal/426907|title=IVDのダブリ|date=2008-01-07|accessdate=2008-02-02}}</ref>。
 
2008年10月10日、日本は[[汎用電子情報交換環境整備プログラム]]の成果として収集・整理された、[[戸籍]]や[[住民基本台帳ネットワーク]]の処理に必要とされる異体字を、[[CJK互換漢字|互換漢字]]として追加提案した<ref name="hanyo">{{cite web|url=http://www.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n3530-cover.doc|title=Proposal to Add a Set of Compatibility Ideographs for Government Use|date=2008-10-10|accessdate=2011-02-01}}</ref>。これに対しUnicode Technical Committee (UTC)と米国は、互換漢字は正規化に際して区別が保存されず、また統合漢字の字形の一意性は保証されないため、IVDによる登録を推奨するとコメントした<ref>{{cite web|url=http://www.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n3590.pdf|title=Handling Glyph Shapes for Government Use in WG2/N3530 via Variation Sequences|date=2009-02-09|accessdate=2011-02-01}}</ref>。またUTCは、SC2からの登録に対して通常IVDへの登録にかかる登録料を免除すると伝えた<ref>{{cite web|url=http://std.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/n3591.pdf|title=Information on the Unicode Ideographic Variation Database – Letter to SC2 Unicode Consortium|date=2009-03-12|accessdate=2011-02-01}}</ref>。これを受け、2009年10月16日、日本は互換漢字の追加提案を取り下げた<ref>{{cite web|url=http://std.dkuug.dk/jtc1/sc2/wg2/docs/N3706.doc|title=Follow-up on N3530 (Compatibility Ideographs for Government Use)|date=2009-10-16|accessdate=2011-02-01}}</ref>。
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2011年4月2日、UTCから[[簡体字]]をIVSで表す登録申請の準備をしていることが告知された<ref>{{cite web |url=http://appsrv.cse.cuhk.edu.hk/~irg/irg/irg36/IRGN1757_ProposedIVDRegistration.pdf |title=Preliminary Proposal for an Ideographic Variation Database Registration |date=2011-04-02 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>。しかしCJK統合漢字の既存の符号化モデルと矛盾する上に、21字中符号化済みの漢字が6字も含まれるというずさんな提案であり、[[Ideographic Rapporteur Group|IRG]]<ref>{{cite web |url=http://std.dkuug.dk/JTC1/SC2/WG2/docs/n4021.pdf |title=Summary Report of IRG #36 |date=2011-04-20 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>・韓国<ref>{{cite web |url=http://appsrv.cse.cuhk.edu.hk/~irg/irg/irg36/IRGN1757ROKFeedback.pdf |title=R.O.Korea's comments RE: IRG N1757 (UTC Preliminary Proposal for an IVD Registration) |date=2011-06-01 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>・イギリス<ref>{{cite web |url=http://appsrv.cse.cuhk.edu.hk/~irg/irg/irg37/IRGN1783_WG2n4075.pdf |title=Comments on issues raised in N4021 |date=2011-05-22 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>などから懸念が寄せられ、登録申請は中止された。
 
2012年1月31日、Unicode 6.1が制定。携帯電話の絵文字のテキストスタイルと絵文字スタイル切り替えのための異体字セレクタの組合せが登録された<ref>{{cite web |url=http://www.unicode.org/Public/6.1.0/ucd/StandardizedVariants.html |title=Standardized Variants Revision 6.1.0 |date=2011-11-27 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>。
 
2012年3月2日、IVDがバージョンアップ。汎用電子コレクションとAdobe-Japan1-6のこれまで登録されていなかった異体字のうち一部が追加登録された<ref name="ivdversions">{{cite web |url=http://www.unicode.org/ivd/#versions |title=Ideographic Variation Database |accessdate=2014-09-17 }}</ref>。
 
2013年9月30日、Unicode 6.3が制定。CJK互換漢字のコレクションStandardized VariantsとしてSVSに登録された<ref>{{cite web |url=http://www.unicode.org/Public/6.3.0/ucd/StandardizedVariants.html |title=Standardized Variants Revision 6.3.0 |date=2013-03-03 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>。
 
2014年5月16日、IVDがバージョンアップ。文字情報基盤コレクションが登録された<ref name="ivdversions"/>。
 
2016年6月21日、Unicode 9.0が制定。携帯電話の絵文字の追加等があった。
 
2016年8月15日、IVDがバージョンアップ。マカオ特別行政区(MSARG)コレクションが登録された。日本以外がソースのIVS登録は初である。
 
{{clear}}
== 互換漢字との関係 ==
[[Image:ufa30.svg|thumb|right|120px|CJK互換漢字を使うと<FA30>、異体字セレクタを使うと<4FAE, E0101>, <4FAE, E0103>または<4FAE FE00>のいずれかで符号化される]]
[[JIS X 0213]]や[[CNS 11643]]などの各国の従来文字コードでは区別されているがUnicodeでは統合されている文字を区別するため、Unicodeではこれまで[[CJK互換漢字]]を使ってきた。しかし技術的な制約により、漢字の異体字セレクタは[[CJK統合漢字]] (正確にはUnified_Ideographプロパティを持つ文字) にしか付けることができない。これは[[Unicode正規化]]に対する安定性の問題 ([[CJK互換漢字#問題点]]を参照) を改善するが<ref>{{cite web|url=http://www.unicode.org/mail-arch/unicode-ml/y2007-m03/0122.html|title=Re: Comment on PRI 98: IVD Adobe-Japan1 (pt.2)|date=2007-03-20|accessdate=2008-02-02}}</ref>、同じ字形を意図していても異体字セレクタに対応した[[実装]]と対応していない実装との間で異なる符号化表現が採用され、混乱を招く可能性も指摘されている<ref>{{cite web|url=http://www.unicode.org/mail-arch/unicode-ml/y2007-m03/0144.html|title=Re: Comment on PRI 98: IVD Adobe-Japan1 (pt.2)|date=2007-03-25|accessdate=2008-02-02}}</ref>。
 
また、2006年1月に漢字字形データベースへの登録手続きが制定されて<ref name="uts37"/>漢字字形コレクションの登録が可能になった後にも[[ARIB外字]]や汎用電子で収集された漢字の一部を互換漢字として収録することが要望される<ref>{{cite web|url=http://www.cse.cuhk.edu.hk/~irg/irg/irg29/IRGN1347_wg2n3318-ARIB_CJK.pdf|title=Proposal to encode six CJK Ideographs in UCS|date=2007-09-07|accessdate=2008-02-02}}</ref><ref name="hanyo"/>など、足並みは必ずしもそろっていなかった。
 
2013年9月30日に制定のUnicode 6.3では、CJK互換漢字が正規化でCJK統合漢字に置き換えられ、字形等の情報を失ってしまう問題を解消するために、Standardized Variantsとして、CJK互換漢字と等価なCJK統合漢字と異体字セレクタの組合せがIVSとは別に登録された。IVSとは異なり基本多言語面にあるVS1(U+FE00)~VS3(U+FE02)を使う。IVSにある字形と同じものでも登録されている。例えば、U+FA30の「侮」の康煕別掲の字体「&#xFA30;」は、U+4FAEとU+FE00(異体字セレクタ1)の組合せで登録された。CJK互換漢字ブロックおよびその補助集合のうち、CJK統合漢字扱いするものを除いた1002字全てが登録された。字体の違いでなく韓国KS X 1001の読みの違いで分離されているものや台湾Big5の誤って重複収録されたものに対応する互換漢字にも異体字セレクタが与えられている。例えば、U+F90Aの「금」(Geum、クム)と読む「金」には、U+91D1(KS X 1001では「김」(Gim、キム)と読む「金」に対応)と字体が全く同じであるが、これにU+FE00を付け加える組合せが与えられた。
 
== 問題点 ==
[[Image:R188 font.gif|thumb|right|250px|国によって異なる骨の異体字({{lang|zh|骨}}・骨)。異体字セレクタでは対応していない例]]
* フォントを指定できないプレーンテキストでの使用を想定されているにもかかわらず、確実にフォントを指定できる環境以外では、異体字セレクタを使用しても対象の環境で意図した異体字が表示されるとは限らない。ただし外字と異なり、どのような字形を意図していたかの情報は失われない。
* 漢字の場合、出典が異なれば同一字形であっても別の異体字セレクタが割り当てられることとなっている。そのため、同一字形に対して複数の異体字セレクタが割り当てられ、検索等において支障が生ずる場合がある。例えば、{{JIS2004フォント|葛飾区の葛}}には、Adobe1-6用の異体字セレクタ18の他に汎用電子コレクション用の異体字セレクタ20、{{JIS90フォント|葛城市の葛}}にはAdobe1-6用の異体字セレクタ17の他に汎用電子コレクション用の異体字セレクタ19が与えられてしまった。また、Unicode 6.3ではIVSとは別にCJK互換漢字に異体字セレクタが与えられたため、例えば「&#xFA30;」にはAdobe1-6の異体字セレクタ18と汎用電子の異体字セレクタ20に加え互換漢字U+FA30に対応する異体字セレクタ1が与えられるなど最大3つ異体字セレクタが与えられることとなった。
 
さらに2014年9月現在、
* 異体字セレクタに対応した環境は少なく([[#ソフトウェア]]の節を参照)、また対応した環境であっても、対応範囲はフォントによって必ずしも一様ではない。たとえばWindows 8.1標準の日本語フォントのうちメイリオ/游明朝/游ゴシックはおおむねAdobe-Japan1コレクションをサポートするが、MS 明朝/MS ゴシックはおおむねJIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形のみをサポートする。
* 異体字セレクタに対応したフォントが少ない ([[#フォント]]の節を参照)。
* 現状では漢字は日本向けのコレクションしか登録されていないため、国によって異なる骨の異体字(右記の図参照)のようなケースを異体字セレクタで区別することはできない。
 
== 実装 ==
漢字の異体字セレクタに対応した[[実装]]には以下のようなものがある。
 
=== フォント仕様 ===
* [[OpenType]]仕様のバージョン 1.5は、漢字Unicodeの異体字セレクタによる字形切り替えをサポートするため、cmapテーブルでFormat 14 'cmap'"Unicode subtableと呼ばれる情報のフォーマットVariation Sequences"を規定するした<ref>
{{cite web|url=http://www.microsoft.com/typography/otspec150/default.htm|title=Microsoft Typography - OpenType Specification|date=2008-01-29|accessdate=2008-03-10}}</ref>。
* [[Scalable Vector Graphics|SVG]]フォントはIVSに限らず、任意のUnicode符号列に対してグリフを割り当て可能である<ref>{{cite web|url=http://www.w3.org/TR/SVG/fonts.html#GlyphElement|title=Fonts – SVG 1.1 (Second Edition)|accessdate=2011-02-01}}</ref>。
 
=== フォント ===
以下は和文フォントでのIVSへの対応状況である。大別すると、Adobe-Japan1コレクション完全対応、Hanyo-Denshiに対応したもの、[[JIS X 0213|JIS X 0213:2004]]で例示字形が変更される以前の字形(いわゆるJIS90字形)のみIVSによりサポート(Adobe-Japan1コレクションを一部グリフに限って対応)するものの2つとなる
* [[Y.OzFont]] - [[フリーフォント]]のY.OzFontは2008年2月8日のバージョン12.04以降、漢字の異体字セレクタIVSに対応している<ref>{{cite web|url=http://yozvox.web.infoseek.co.jp/|title=Y.Oz Vox|date=2008-03-10|accessdate=2008-03-10}}</ref>。
* [[小塚明朝]]/[[小塚ゴシック]] Pr6N(Adobe-Japan1) - 2007年8月1日のバージョン6.003で、初めてFormat 14 'cmap' subtableAdobe-Japan1コレクションのIVSに対応した<ref name="IRGN1374">{{cite web|url=http://www.cse.cuhk.edu.hk/~irg/irg/irg29/IRGN1374_IUC.pdf|title=Ideographic Variation Sequences|pages=p.10|date=2007-10-17|accessdate=2008-03-10}}</ref>。
* [[花園フォント]](Adobe-Japan1) - 2009年12月1日版よりIVSのサポートを開始し、2010年2月22日版でAdobe-Japan1コレクションのIVSを完全収録した<ref>{{cite web|url=http://fonts.jp/hanazono/|title=花園フォント|accessdate=2011-01-19}}</ref>。
* [[IPAフォント]]
** IPAexフォント - JIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形をIVSによりサポートしている。サポート文字数はVer.001.02の時点で172文字<ref>{{cite web|url=http://www.ipa.go.jp/software/open/ossc/ipafont/releasenote.html|title=IPAフォントリリースノート |accessdate=2011-01-19}}</ref>。
** IPAmj明朝 - 汎用電子コレクションによるIVSに対応していたが、最新バージョンでは文字情報基盤コレクションでの実装となっている<ref>
** IPAmj明朝(Hanyo-Denshi) - 汎用電子情報交換環境整備プログラムによる字形を約4200文字サポートしている<ref>{{cite web|url=http://www.atmarkit.co.jp/flinux/rensai/osstopics/01/01.html|title=連載:OSS界のちょっと気になる話 第1回 どんな人名も正しく表示? IPAの新フォントを試そう!|accessdate=2012-01-05}}</ref>。IPAexフォントに収録されているIVSに対応した字形はサポートしていないものも多い。符号化は完了していない。
* [[和田研フォント]] - 漢字の異体字セレクタに対応したものは「和田研細丸ゴシックProN」がある。JIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形をこれによりサポートしている<ref>{{cite web|url=http://sourceforge.jp/projects/jis2004/wiki/FrontPage|title=和田研細丸ゴシック2004フォントの公開|accessdate=2012-01-05}}</ref>。
</ref><ref>{{cite web|url=http://mojikiban.ipa.go.jp/1309.html|title=IPAmj明朝フォント符号化の状況 文字情報基盤整備事業|accessdate=2017-10-05}}
* [[MS 明朝]]、[[MS ゴシック]] - [[Windows 8]]に搭載のバージョンから、JIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形をIVSによりサポートしている。
</ref>。なおIPAexフォントのIVSで対応している字形はサポートしていないものも多い。2017年10月現在ではまだ符号化は完了していないが、2017年度中に完了する見込みである。
* [[游明朝体]]/[[游ゴシック体]] Pr6N(Adobe-Japan1) [[字游工房]]フォント - 一太郎2014プレミアムおよび、[[OS X Mavericks]] (10.9)と[[Windows 8.1]]にバンドルされているバージョン<ref name="jiyu">[http://www.jiyu-kobo.co.jp/wp@test/wp-content/uploads/2016/10/compatibility_1610.pdf 游書体互換(HP用20161003) - 字游工房]</ref>も対応
* [[和田研フォント]] - 漢字の異体字セレクタIVSに対応したものは「和田研細丸ゴシックProN」がある。JIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形をこれによりサポートしている<ref>{{cite web|url=http://sourceforge.jp/projects/jis2004/wiki/FrontPage|title=和田研細丸ゴシック2004フォントの公開|accessdate=2012-01-05}}</ref>。
* [[源ノ角ゴシック]] - [[Adobe]]と[[Google]]の共同開発。Adobe-Japan1の漢字グリフは網羅しているが、AJ1との互換性がとくに考慮されているわけではない。
* [[MS 明朝]][[MS ゴシック]]・[[メイリオ|メイリオ・Meiryo UI]] - [[Windows 8]]に搭載のバージョンから、JIS X 0213:2004で例示字形が変更される以前の字形をIVSによりサポートしている<ref>{{cite web|url=https://www.microsoft.com/ja-jp/business/industry/gov/ivs/|title=Windows 8 の IVS 対応と IVS Add-in for Microsoft Office|publisher=マイクロソフト|accessdate=2017-10-05}}</ref>
* [[ヒラギノ|ヒラギノ角ゴシック/明朝/丸ゴシック]] ProN(Adobe-Japan1) - [[Mac OS X Lion|Mac OS X Lion 10.7]]に搭載のバージョン(8.10)からIVSに対応した<ref>
{{cite web|url=http://www.screen.co.jp/ga_product/sento/support/otf_ver_hiragino.html|title=ヒラギノフォントとMac OS Xのバージョン相関表|publisher=SCREENグラフィックソリューションズ|accessdate=2017-10-05}}</ref>。
* [[游書体|游明朝体]]/[[游ゴシック体]] Pr6N(Adobe-Japan1) [[字游工房]]フォント - 一太郎2014プレミアムおよび、[[OS X Mavericks]] (10.9)以降と[[Windows 8.1]]以降にバンドルされているバージョン<ref name="jiyu">[http://www.jiyu-kobo.co.jp/wp@test/wp-content/uploads/2016/10/compatibility_1610.pdf 游書体互換(HP用20161003) - 字游工房]</ref>も対応
* [[源ノ角ゴシック]]・[[源ノ明朝]] - [[Adobe]]と[[Google]]の共同開発。Adobe-Japan1コレクションのIVSに対応しており、Adobe-Japan1の漢字グリフは網羅しているが、AJ1との互換性がとくに考慮されているわけではない。
 
=== フォント作成ツール ===
Format 14 'cmap' subtableを含んだUnicodeの異体字セレクタに対応したフォントの作成に対応した(cmapテーブルのFormat 14の生成ができる)ツールには、以下のようなものがある。
* [[FontForge]] - 2007年10月2日以降のビルドでcmapテーブルのFormat 14 'cmap' subtableの生成に対応<ref>{{cite web|url=http://fontforge.sourceforge.net/changelog.html|title=Change log for FontForge|date=2008-03-09|accessdate=2008-03-10}}</ref>。
* Adobe Font Development Kit for OpenType (AFDKO) - バージョン2.1以降でcmapテーブルのFormat 14 'cmap' subtableの作成に対応<ref name="IRGN1374"/>。
* TTX/FontTools - GlyphWikiでIVS対応フォントの生成に使われている<ref>{{cite web|url=http://glyphwiki.org/wiki/GlyphWiki:%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%B3%E3%83%88%E7%94%9F%E6%88%90#i9|title=GlyphWiki:フォント生成|accessdate=2011-01-19}}</ref>。
* [[TTEdit]] - IVS対応 TrueTypeフォントから作成した場合。
 
=== ライブラリ ===
[[FreeType]]の2007年10月以降の開発版には、Format 14 'フォントファイル内のcmap' subtableテーブルから異体字セレクタの情報を読み取るための[[アプリケーションプログラミングインタフェース|API]]が追加されている<ref>{{cite web|url=http://lists.gnu.org/archive/html/freetype-devel/2007-10/threads.html#00016|title=freetype-devel (thread)|date=2007-10-31|accessdate=2008-03-10}}</ref>。
 
=== ソフトウェア ===
* [[Windows 7]]では標準のテキスト描画処理が異体字セレクタに対応しており、[[エクスプローラー]]でのファイル名表示や[[メモ帳]]やサードパーティのテキストエディタでのテキスト表示等で異体字セレクタによる字形切り替えが可能である。但し、使用するフォントが異体字セレクタによる字形切り替えに対応している必要があり、日本語版に[[プレインストール]]された標準的なフォントである[[メイリオ]]はWindows 7にバンドルされたバージョンではIVSに対応であるしていないため、初期設定状態では異体字セレクタで字形が切り替わらない。<ref>{{cite web|url=http://biotronique.jp/techno/computing/unicode_variationselector_windows7|title=Biotronique - Computing - 実は異体字セレクタに対応済のWindows 7|date=2009-12-02|accessdate=2009-12-03}}</ref>
* [[Windows 8]]以降、システム標準の日本語フォントがAdobe-Japan1コレクションIVSに対応した<ref>{{cite book|和書 |title=Unicode IVS/IVD入門 |author=田丸健三郎, 小林龍生 |isbn=978-4822294830 }}</ref>。
* [[Mac OS X 10.5]]標準のテキスト描画処理はdefault ignorableプロパティに従い<ref>{{cite web|url=http://unicode.org/faq/unsup_char.html|title=FAQ - Display of Unsupported Characters|accessdate=2011-01-19}}</ref>異体字セレクタを描画しないが、字形の切り替えはサポートしない。
* [[Mac OS X 10.6]]標準のテキスト描画処理は字形の切り替えをサポートするが<ref name="lunde2009">{{cite web|url=http://blogs.adobe.com/typblography/2009/08/ivs_ideographic.html|title=IVS (Ideographic Variation Sequence) support in OSes|author=Ken Lunde|accessdate=2011-02-01}}</ref>、Windows 7と同様標準フォントの[[ヒラギノ]]は異体字セレクタに未対応である。
* [[Mac OS X Lion]] (10.7)以降システム標準の日本語ヒラギノフォントがAdobe-Japan1コレクションによるIVSに対応した<ref>{{cite web |url=http://www.screen.co.jp/ga_product/sento/support/otf_ver_hiragino.html |title=ヒラギノとMac OS Xのバージョン相関表 |date=2014-07-08 |accessdate=2014-09-17 }}</ref>。
[[Image:uts37sample.png|thumb|right|289px|AlphaとY.OzFontによる、UTS #37の例文の描画結果「{{JIS90フォント|芦}}田さんは[[芦屋]]<!-- 曖昧さ回避不能 -->のお嬢様だ」「[[芦]]」の「戸」が[[新字体]]と[[旧字体]]]]
* Alpha (テキストエディタ) - 2008年2月のIVS-OTFT試験公開版では異体字セレクタの情報をOpenType機能タグの情報に変換することにより、異体字セレクタによるグリフの切り替えに対応している<ref>{{cite web|url=http://alpha.sourceforge.jp/diary/|title=Alpha の бесполезный な日記|date=2008-03-04|accessdate=2008-03-10}}</ref>。
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== 外部リンク ==
* [http://www.unicode.org/Public/UNIDATA/StandardizedVariants.html Standardized Variants - Unicode]{{en icon}}
* [http://www.unicode.org/reports/tr37/ Unicode Technical Standard #37 - Ideographic Variation Database]{{en icon}}
* [http://www.unicode.org/ivd/index.html Ideographic Variation Database - Unicode]{{en icon}}
* [http://www.unicode.org/ivd/data/2014-05-16/IVD_Sequences.txt IVD_SequencesIVDに登録された組み合わせの一覧 Unicode 2014年5月16日現在]{{en icon}}
 
{{DEFAULTSORT:いたいしせれくた}}