「地震動」の版間の差分

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[[Image:Sisma three components.jpg|thumb|right|200px|地震動を波形で示したグラフ。<br/>黒:東西動成分<br/>青:南北動成分<br/>赤:上下動成分]]
地震工学における'''地震動'''(じしんどう、{{lang-en-short|ground motion}})とは、[[地震]]における地面の揺れ動きを言う<ref>地震動は地震現象の一部であり、その一つの現れである。ただし、言葉としては『地震』と『地震動』はっきり区別してつかわないとしばしば混乱をもたらす。[[#大崎(1983)|大崎(1983)]] p.42</ref>。ある点における地震動は、工学的には[[振動]]現象として取り扱われる<ref>伝搬する[[波動]]として扱う場合は[[地震波]]と呼ばれる。</ref>。地震動は地盤の振動であるが、地盤ごとに卓越周期(predominant(predominant period)period)と呼ばれる固有の周期が存在する。
 
== 力学的特徴 ==
{{see also|地震波}}
地震動は連続的な動きではなく、短い周期で動きを多数繰り返す[[振動]]である。繰り返しの振動の主要な部分は、地震を発生させている[[断層]]で加圧(固定)→開放(ずれ)→加圧(固定)→開放(ずれ)…の過程が非常に短い周期で繰り返されることによって生まれる。
 
地震を発生させる断層では、地震を起こす際に面同士が強い力によってずれるが、ずれる面は岩盤や固い土砂であるため滑らかではなく、ずれる面は極微小地震(マグニチュード1未満の地震)でも数[[平方メートル|m<sup>2</sup>]]、M9以上の地震でおよそ1万[[平方キロメートル|km<sup>2</sup>]]と非常に広いため、ずれる速さは一定にはならず、場所によってずれる速さやずれやすさにばらつきが出るなどして、不均一な振動となる。
 
発生した地震動は、およそ3〜7[[メートル毎秒|km/s]]で周囲に伝わっていく。伝わる速さや伝わりやすさは振動の性質によって異なる。また、地盤の性質([[地質]])によっても地震動の伝わる速さや伝わりやすさは変わる。地震動が伝わる過程で、弱まることを[[減衰]]、強まることを[[増幅]]ということが多い
 
地盤の性質や振動の性質によって、地震動が干渉・合成され、地震動の周期が変化したりすることがある。これら振動としての性質は[[波動]]として考えることが多い。また、[[ベクトル]]である地震動を方向別に[[スカラー]]として捉えた場合、上下動成分、南北動成分、東西動成分の3つに大分されることが多い。縦揺れ、横揺れといった特徴は、地震波の差ではなく、上下や東西南北といった地震動の方向の差によって生まれる。
また、地盤の性質([[地質]])によっても地震動の伝わる速さや伝わりやすさは変わる。地震動が伝わる過程で、弱まることを[[減衰]]、強まることを[[増幅]]ということが多い。
 
地盤の性質や振動の性質によって、地震動が干渉・合成され、地震動の周期が変化したりすることがある。
 
これら振動としての性質は[[波動]]として考えることが多く、詳細は[[地震波]]を参照のこと。
 
また、[[ベクトル]]である地震動を方向別に[[スカラー]]として捉えた場合、上下動成分、南北動成分、東西動成分の3つに大分されることが多い。縦揺れ、横揺れといった特徴は、地震波の差ではなく、上下や東西南北といった地震動の方向の差によって生まれる。
 
== 振動の特徴 ==
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地震動のうち、周期が短く伝播速度が7km/s前後と早い[[P波]]は、最初に到達してカタカタという小さな揺れをもたらし、[[初期微動]]と呼ばれている。揺れが小さいのは周期が非常に短く減衰が大きいためであり、震源に近いところではあまり減衰していないP波によって[[地鳴り]]のような音が発生する。
 
周期が比較的長くP波の半分ほどの速度で伝播する[[S波]]は、初期微動の後に到達してガタガタという激しい揺れをもたらし、[[主要動]]と呼ばれている。地震によってS波の周期は異なり、卓越する地震動の周期(最も振幅が大きい地震動の周期)も変わるため、被害の様子も変わってくる。また、さまざまな周期を持ち周期によって速度が異なる[[表面波]]は、被害を起こすような周期の振動がS波よりもやや遅れて到達する。表面波は減衰が少ないので遠くまで到達し、ユラユラという揺れを、震源から数千km離れた地点でも発生させる(特に高層建築物内で揺れやすい)。表面波と、S波到達後に続くP波も主要動に含まれる。
 
また、さまざまな周期を持ち周期によって速度が異なる[[表面波]]は、被害を起こすような周期の振動がS波よりもやや遅れて到達する。表面波は減衰が少ないので遠くまで到達し、ユラユラという揺れを、震源から数千km離れた地点でも発生させる(特に高層建築物内で揺れやすい)。表面波と、S波到達後に続くP波も主要動に含まれる。
 
P波とS波の最初の到達時間の差を[[初期微動継続時間]]といい、複数の離れた地点の地震計で得られた初期微動継続時間から、[[震源]]の位置を推定する。地震動(地震波)の伝播速度は地盤によって変わるため、実用的には、[[地質調査]]によりあらかじめまとめておいた地震波の伝播速度のデータを、観測データと比較しながら計算を繰り返し、詳細な震源の位置を決定する。
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周期別に、地震動は6つに分けられる。
 
周期が長いほど減衰しにくく、長距離を長時間伝わる。また、地震動を伝える地盤が固いほど、周期が短い地震動を伝えやすい。周期と被害の関係については、[[1980年代]]ごろから地震計の精度が向上したことを受けて、解明が進んだ。現在も研究が進み、防災の面から新たな発見も期待されている分野である
 
; 極短周期地震動:周期0.5秒以下の地震動。屋内の[[家具]]や[[物]]などが最も揺れやすい周期。計測[[震度計]]の感度が最も強いのがこの地震動であるため、震度と被害や体感震度との間のずれを生む原因とされている。
周期と被害の関係については、[[1980年代]]ごろから地震計の精度が向上したことを受けて、解明が進んだ。現在も研究が進み、防災の面から新たな発見も期待されている分野である。
; 極短周期地震動
周期0.5秒以下の地震動。屋内の[[家具]]や[[物]]などが最も揺れやすい周期。計測[[震度計]]の感度が最も強いのがこの地震動であるため、震度と被害や体感震度との間のずれを生む原因とされている。
 
; 短周期地震動:周期0.5〜1秒の地震動。やや短周期地震動も含めることがある。[[人間]]が最も揺れを感じやすい地震動。
; 短周期地震動
周期0.5〜1秒の地震動。やや短周期地震動も含めることがある。[[人間]]が最も揺れを感じやすい地震動。
 
; 稍(やや)短周期地震動:周期1秒〜2秒の地震動。[[木構造 (建築)|木造]][[家屋]]、非木造の中低層建築物が最も揺れやすい地震動。人間が住む建造物の多くはこの周期の揺れで最も被害を受けやすいため、この周期の地震動が長く観測される(卓越する)と人的被害が大きくなる傾向にある。このことから、俗に'''キラーパルス'''(killer pulse)と呼ばれる。キラーパルスに関しては、はじめの揺れの振幅や振幅の継続時間、あるいは初動の揺れの方向によって、建物の壊れやすさが異なるという研究結果もある。[[兵庫県南部地震]]([[阪神・淡路大震災]])ではこの地震動が卓越しており、甚大な被害をもたらした。
; 稍(やや)短周期地震動
周期1秒〜2秒の地震動。[[木構造 (建築)|木造]][[家屋]]、非木造の中低層建築物が最も揺れやすい地震動。
 
; 稍(やや)長周期地震動:周期1秒〜2〜5秒の地震動。巨大な[[木構造 (建築)|木造タンク]][[家屋鉄塔]]など非木造の低層規模建築物が最も揺れやすい地震動。
人間が住む建造物の多くはこの周期の揺れで最も被害を受けやすいため、この周期の地震動が長く観測される(卓越する)と人的被害が大きくなる傾向にある。このことから、俗に'''キラーパルス'''(killer pulse)と呼ばれる。キラーパルスに関しては、はじめの揺れの振幅や振幅の継続時間、あるいは初動の揺れの方向によって、建物の壊れやすさが異なるという研究結果もある。[[兵庫県南部地震]]([[阪神・淡路大震災]])ではこの地震動が卓越しており、甚大な被害をもたらした。
 
; 稍(やや)長周期地震動
周期2〜5秒の地震動。巨大な[[タンク]]や[[鉄塔]]など、中規模建築物が最も揺れやすい地震動。
 
; 長周期地震動
{{Main|長周期地震動}}
:周期5秒以上の地震動。やや長周期地震動も含めることがある。[[高層建築物]]や[[超高層建築物]]が最も揺れやすい地震動。周期が短いものに比べて、建物などが揺れる幅が大きく、重いものが建物の揺れにあわせて高速で移動し人や物を傷つけるといったことが起きる。
 
; 超長周期地震動:周期数百秒以上の地震動。[[地球]]全体が最も揺れやすい地震動。
周期数百秒以上の地震動。[[地球]]全体が最も揺れやすい地震動。
 
== 振幅で見た地震動 ==
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変位は地震波の波形などから見ることができる振幅の大きさである。震度は地上における地震動の大きさを被害の程度を考慮して算出されるもの。速度は単純に地震動の速さを表す。加速度は地震動の変化を表すもので、加速度が大きいほど激しい揺れとなる。
 
== 脚注 ==
{{Reflist}}
<references />
 
== 参考文献 ==