「ユーザビリティ」の版間の差分

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==背景==
===シャッケル===
人間工学の大家であったブライアン・シャッケル({{lang|en|Brian Shackel}})は、1991年の著作『{{lang|en|Human Factors for Informatics Usability}}』の中で、ユーティリティ(utility、必要な機能があるか)とユーザビリティ(usability、ユーザがうまく使えるか)とライカビリティ({{lang|en|likeability}} ユーザが適切だと感じられるか)という三つの側面の総和と、コスト(初期コストと運用コスト)とのバランスを考慮し、前者の比率が高いものほどアクセプタビリティ(バランスがとれており、購入するに最適である)が高いといえる、という構図を提案している。
 
この考え方は、以後のユーザビリティ概念(たとえばニールセン、ISO9241-11)に影響を及ぼしたと考えられる。
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ウェブ・ユーザビリティの権威であるニールセンは、ユーザビリティに関して最初に出版された概論書『ユーザビリティエンジニアリング原論』 (1994) において、ユーザビリティの概念を、彼の考えた階層的概念構造の中に位置づけて示した。
 
それによると、ユーザビリティは学習しやすさ ({{lang|en|learnability}})、効率 ({{lang|en|efficiency}})、記憶しやすさ ({{lang|en|memorability}})、エラー ({{lang|en|errors}})、満足 ({{lang|en|satisfaction}}) といった品質要素から構成される概念として示されている。この定義はいちおう人間工学、認知工学、感性工学的な側面を考慮したものになっているが、かならずしも網羅的、かつ相互排他的になっておらず、概念定義としては十分なものではない。また、それぞれの品質要素は、学習のしやすさや効率などの諸側面において問題がないようにと考えられており、いわばマイナスでない特性の集合となっている。
 
いいかえれば、ニールセンにおけるユーザビリティは、そのような問題点のないことを意味しており、マイナスの側面を0レベルまで向上させるという意味合いを持っている。彼がヒューリスティック評価という手法を提唱したのは、ユーザビリティテスト ({{lang|en|usability test}}、{{lang|en|usability testing}}) による評価が全盛の時代であり、それはいいかえれば評価がユーザビリティ活動の中心となっていた時代でもあった。
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ニールセンは、ユーザビリティと対比させてユーティリティ ({{lang|en|utility}}) という概念を位置づけている。これは機能や性能のように製品やシステムのポジティブな側面である。いいかえれば、0レベルからプラスの方向に製品の魅力を増してゆくものである。このように、彼の定義ではユーザビリティにはプラスの方向性は含まれておらず、その意味で、小さなユーザビリティ ({{lang|en|small usability}}) と呼ばれることもある。
 
ニールセンは、ユーザビリティとユーティリティを合わせた概念としてニールセンはユースフルネス ({{lang|en|usefulness}}) という上位概念を位置づけているが、これは後述するISO9241-11のユーザビリティ定義に近いものであり、大きなユーザビリティ ({{lang|en|big usability}}) と呼ばれる概念に近い。
 
===ISO===
こうした状況の中、ユーザビリティという概念にきちんとした定義を与えたのがISO規格であり、現在はこの定義が一般的に用いられている。ISOの規格におけるユーザビリティの定義にはISO 9126系のものとISO 9241-11系のものがある。
 
====ISO 9126====
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====ISO 9241-11====
1998年に成立したISO 9241-11は、JIS Z8521として1999年にJIS化されているがおり、ここではユーザビリティに関するかなり厳密な定義が行われている。すなわち、ユーザビリティとは「ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目標を達成するために用いられる際の有効さ、効率及び満足度の度合い」として定義されている。さらに有効さ ({{lang|en|effectiveness}}) については「ユーザが、指定された目標を達成する上での正確さと完全さ」、効率 ({{lang|en|efficiency}}) については「ユーザが、目標を達成する際に正確さと完全さに費やした資源」、満足度 ({{lang|en|satisfaction}}) については「不快さのないこと、及び製品使用に対しての肯定的な態度」という定義が与えられている。有効さと効率という二つの概念は、相互排他性が明確であり、またこの規格以前にも、品質を表現する際にしばしば用いられているため了解性が高いといえる。なお、満足度については、部分的に有効さと効率に従属する側面を持っている。つまり、有効であり効率的であれば、それによって満足感がもたらされるからである。ただし、より感性的な、たとえば審美的な側面などは満足度固有の側面であり、その点では他の二つの概念から独立したものといえる。
 
ISO 9241-11のユーザビリティの定義はNielsenの定義と比較してポジティブな側面を含んだ幅広いものになっており、その意味で大きなユーザビリティ ({{lang|en|big usability}}) と呼ばれることもある。このISO9241-11のユーザビリティの定義は、その後、ISO 13407やISO 20282、CIF (ISO 25062)などの各種の規格においても用いられることになり、ユーザビリティに関する現在の標準的定義であるといえる。ただ、有効さと効率が相互排他的な概念であるのに対し、満足度はそれらに従属する側面もあり、また価格やデザインなどユーザビリティ以外の要因によっても影響されるため、[[黒須正明]]は、ユーザビリティの下位概念を有効さと効率の二つに限定している。
 
[[人間工学]]や[[ユーザーインターフェイス|ユーザ・インタフェイス]]の分野では、ユーザビリティの定義に様々な解釈がある。例えば、ユーザビリティに関するプロセスを定めた国際規格として、[[1999年]]6月に、[[国際標準化機構]]により制定された[[ISO 13407]]がある。ユーザにとっての利用品質の確保と向上を目指す設計プロセスを確立することを基本的な目的に、[[インタラクティブ・システム]]の[[人間中心設計]]プロセスを規格化したものであり、設計プロセスそのものを人間中心にすることで、ユーザビリティの向上を図るものである。また、ISO 13407に関連した規格として、[[ISO 9241-11]]がある。これは、ユーザビリティの定義と、ユーザビリティをユーザの行動と満足度を尺度に規定または評価する場合に考慮しなければならない情報の認識方法を説明した国際規格であり、ISO 13407はこの定義を用いて制定されている。なお、ISO 13407は2009年現在改訂中であり、番号がISO 9241-210と変更されることになっている。