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著作では都市圏輸送や都市間輸送を担う路線を中心に扱っているが「全国鉄道事情大研究」シリーズでは全国のローカル路線も扱っている。主張は、鉄道会社側ができない理由を挙げて提案をつぶすのに対して大風呂敷的に妄想すれば一部は実現できるであろうというスタンスから、コスト的・経営的・理論的な視点に重きは置かれていない。
 
=== 川島の提言は以下のようになる。 ===
;==== 高速化 ====
: 最速130km/h運転、路線によっては160km/h運転を提言。
:また、各駅停車しか走らない路線では快速などの優等列車の設定。およびそれを実現するにあたって、高速走行・高加減速ができる車両を揃えること、[[曲線]]部における[[カント]]量の増加による制限速度の向上、[[複々線]]化、日勤教育の実施、保安装置の改良(移動閉塞あるいはそれと同等の効果を得られると川島が主張する[[デジタルATC]]、駅進入時の速度制限を無くすための[[定位置停止装置|TASC]]の導入<ref name="set">川島令三『関西圏通勤電車徹底批評』(上下巻)、草思社、2004年12月28日。</ref>)等。
 
:また、各駅停車しか走らない路線では快速などの優等列車の設定。およびそれを実現するにあたって、高速走行・高加減速ができる車両を揃えること、[[曲線]]部における[[カント]]量の増加による制限速度の向上、[[複々線]]化、日勤教育の実施、保安装置の改良(移動閉塞あるいはそれと同等の効果を得られると川島が主張する[[デジタルATC]]、駅進入時の速度制限を無くすための[[定位置停止装置|TASC]]の導入<ref name="set">川島令三『関西圏通勤電車徹底批評』(上下巻)、草思社、2004年12月28日。</ref>)等。
; 快適な車内
: [[鉄道車両の座席#転換クロスシート|転換クロスシート]]の導入。
:同じクロスシートでもボックス式クロスシートへの評価は低く、転換クロスシート、中でも乗客が自分で転換できるタイプが望ましいとしている<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、235ページ</ref>。上野原市在住の理由として「クロスシートで通勤できるから」と語っている<ref>『鉄道マニア倶楽部ver.2』。</ref>ことからも、個人的にもクロスシートを重視していることが見て取れる。
: オールクロスシートが難しい場合、編成の一部をクロスシート化したり<ref group="注釈">京王井の頭線において、混雑の激しい1両目を6ドア、2両目を5ドアとした上で3、4両目にボックスシートを設置(5両目は通常の4ドアロングシートのまま)することを提言していた(川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』中央書院、2002年8月23日、232ページ)</ref>、その上で座席指定料金を取ることも提言している。スタンションポールやつり革については閑散時には鬱陶しい<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、236ページ</ref>として否定的な見方を示している。
 
;==== 快適な車内 ====
; 乗り継ぎの簡略化・新線の建設
: [[鉄道車両の座席#転換クロスシート|転換クロスシート]]の導入。
: 他路線との大規模な直通運転やそのための延伸。利用客が期待できる施設までの延伸や駅の設置も提唱している。
: 新線建設の際には、リスク分散や利便性確保の観点から「上下分離方式<ref group="注釈">線路などのインフラは行政や鉄道会社が出資する第三セクターが保有し、鉄道会社がそれを借りて運行する方式。この方式を採用することで、債務や財政といった経営的な問題が運賃の高騰など乗客の利便性低下につながるのを避けられると主張。</ref>」を採用することが望ましいとしており、
:これによらず建設された[[東京臨海高速鉄道りんかい線]]を運賃や利便性の観点から酷評している<ref group="注釈">上下分離方式で建設していれば、運賃を安く抑えることができ、かつJRとの直通運転を増やせると主張している。ただし、りんかい線の運営主体はJRとは異なる第三セクターであり、上下分離方式を採用しさえすればJRとの運賃配分の問題が解決して直通列車を増やせるというわけではない。</ref><ref>川島令三『関西圏通勤電車徹底批評 上』草思社、2004年12月28日、58ページ</ref>。
 
:同じクロスシートでもボックス式クロスシートへの評価は低く、転換クロスシート、中でも乗客が自分で転換できるタイプが望ましいとしている<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、235ページ</ref>。上野原市在住の理由として「クロスシートで通勤できるから」と語っている<ref>『鉄道マニア倶楽部ver.2』。</ref>ことからも、個人的にもクロスシートを重視していることが見て取れる。
; 増発
; [[ダイヤグラム#パターンダイヤ|パターンダイヤ]]の設定
: 都市近郊路線においては最低毎時4本(15分間隔)でないと利用できないと主張している<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、223ページ</ref>。同時に優等列車についても増発を提言している。長編成による低頻度運転を行っている路線については短編成による高頻度運転も提言している。
 
: オールクロスシートが難しい場合、編成の一部をクロスシート化したり<ref group="注釈">京王井の頭線において、混雑の激しい1両目を6ドア、2両目を5ドアとした上で3、4両目にボックスシートを設置(5両目は通常の4ドアロングシートのまま)することを提言していた(川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』中央書院、2002年8月23日、232ページ)</ref>、その上で座席指定料金を取ることも提言している。スタンションポールやつり革については閑散時には鬱陶しい<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、236ページ</ref>として否定的な見方を示している。
; [[鉄道駅|駅]]施設の[[バリアフリー]]化・利便性向上
: 鉄道会社によるバリアフリー化の手法としてしばしば見られる「階段の一部に[[エスカレーター]]を導入」という形式に対して、階段だけならば列車到着時には幅いっぱいに使えるのに、一部分だけをエスカレーターにしたせいでそれができなくなったとして、エスカレーターを設置するのであれば新たに連絡通路なりを整備すべきであると主張している<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、245-247ページ</ref>。
: また、ターミナル駅の不便さには厳しい論評をしている。具体的には、[[京王井の頭線]][[渋谷駅]]<ref group="注釈">駅改築によって全体が100メートルほど西に移動し、他の路線への乗り換えで連絡通路を通らなければならなくなった</ref>や、[[東武伊勢崎線]][[北千住駅]]<ref group="注釈">[[営団地下鉄日比谷線|営団(現東京メトロ)日比谷線]]開業による混雑を緩和するため、全体を3階建てとして混雑の緩和を図ったが、上下移動に時間がかかるようになった</ref>のような、駅設備の(ターミナル中心からの)後退による乗り換え距離の増加、そして構造が複雑化したことによる移動時間の増加を批判しており、「“改良”するほど不便になっている」などと批判している<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、247-253ページ</ref><ref>川島令三『私の戦後「電車」史 1955-1995』PHP研究所、1995年12月29日、105-106ページ</ref>。
 
;==== 乗り継ぎの簡略化・新線の建設 ====
; 小規模路線・路面電車の[[ライトレール|LRT]]化
: 他路線との大規模な直通運転やそのための延伸。利用客が期待できる施設までの延伸や駅の設置も提唱している。
: [[夜行列車]]とともに[[路面電車]]を安易に廃止しすぎだと語っていたことがあり、路面電車やそれに類する軌道路線のLRT化をしばしば提言。中でも[[都電荒川線]]や[[京阪京津線]]については、LRT化のモデル路線と位置づけている<ref name="toden">川島令三『全国鉄道事情大研究 東京都心部篇』草思社、2000年5月30日、264-276ページ</ref><ref name="keishin">川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、299ページ</ref>。
 
: 川島は、日本では「LRT=低床路面電車」と受け取られがちであるとして、「本来のLRTはミニ地下鉄ほどの大きさであり、高速である。編成両数も長い」「多くは専用軌道を走るか、併用軌道でもクルマが進入できないようブロックで隔絶して走る」と持論を展開した上で、「LRT=高規格路面電車」という位置付けを提唱し<ref group="注釈">もっとも、北米などにおけるLRTは専用軌道による運行による定時性・高速運行が重要な要素となっているため、的外れな指摘ではない。</ref>、単に低床式の車両の導入にとどまらない、大がかりな改良策を主張している<ref name="keishin"/>。なお、川島自身はLRT化によって輸送力の増強が図れるため、それが高額な建設費を要する[[地下鉄]]に代わる輸送機関になるとして、大きな妄想を抱いている<ref name="keishin"/>。先述の都電荒川線のケースでも、欧米並みのLRV(軽快電車車両。加速度は5.0km/h/s、減速度も5.0km/h/s程度が最低ラインだと川島は主張している)の導入による最高速度180キロ運転、高架線による道路との立体交差や、地下線による短絡を組み合わせた線路環境の実現といった、大胆な空想を打ち出している<ref name="toden"/>。
: 新線建設の際には、リスク分散や利便性確保の観点から「上下分離方式<ref group="注釈">線路などのインフラは行政や鉄道会社が出資する第三セクターが保有し、鉄道会社がそれを借りて運行する方式。この方式を採用することで、債務や財政といった経営的な問題が運賃の高騰など乗客の利便性低下につながるのを避けられると主張。</ref>」を採用することが望ましいとしており、
 
:これによらず建設された[[東京臨海高速鉄道りんかい線]]を運賃や利便性の観点から酷評している<ref group="注釈">上下分離方式で建設していれば、運賃を安く抑えることができ、かつJRとの直通運転を増やせると主張している。ただし、りんかい線の運営主体はJRとは異なる第三セクターであり、上下分離方式を採用しさえすればJRとの運賃配分の問題が解決して直通列車を増やせるというわけではない。</ref><ref>川島令三『関西圏通勤電車徹底批評 上』草思社、2004年12月28日、58ページ</ref>。
 
;==== 増発・[[ダイヤグラム#パターンダイヤ|パターンダイヤ]]の設定 ====
: 都市近郊路線においては最低毎時4本(15分間隔)でないと利用できないと主張している<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、223ページ</ref>。同時に優等列車についても増発を提言している。長編成による低頻度運転を行っている路線については短編成による高頻度運転も提言している。
 
;==== [[鉄道駅|駅]]施設の[[バリアフリー]]化・利便性向上 ====
: 鉄道会社によるバリアフリー化の手法としてしばしば見られる「階段の一部に[[エスカレーター]]を導入」という形式に対して、階段だけならば列車到着時には幅いっぱいに使えるのに、一部分だけをエスカレーターにしたせいでそれができなくなったとして、エスカレーターを設置するのであれば新たに連絡通路なりを整備すべきであると主張している<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、245-247ページ</ref>。
 
: また、ターミナル駅の不便さには厳しい論評をしている。具体的には、[[京王井の頭線]][[渋谷駅]]<ref group="注釈">駅改築によって全体が100メートルほど西に移動し、他の路線への乗り換えで連絡通路を通らなければならなくなった</ref>や、[[東武伊勢崎線]][[北千住駅]]<ref group="注釈">[[営団地下鉄日比谷線|営団(現東京メトロ)日比谷線]]開業による混雑を緩和するため、全体を3階建てとして混雑の緩和を図ったが、上下移動に時間がかかるようになった</ref>のような、駅設備の(ターミナル中心からの)後退による乗り換え距離の増加、そして構造が複雑化したことによる移動時間の増加を批判しており、「“改良”するほど不便になっている」などと批判している<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、247-253ページ</ref><ref>川島令三『私の戦後「電車」史 1955-1995』PHP研究所、1995年12月29日、105-106ページ</ref>。
 
;==== 小規模路線・路面電車の[[ライトレール|LRT]]化 ====
: [[夜行列車]]とともに[[路面電車]]を安易に廃止しすぎだと語っていたことがあり、路面電車やそれに類する軌道路線のLRT化をしばしば提言。中でも[[都電荒川線]]や[[京阪京津線]]については、LRT化のモデル路線と位置づけている<ref name="toden">川島令三『全国鉄道事情大研究 東京都心部篇』草思社、2000年5月30日、264-276ページ</ref><ref name="keishin">川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、299ページ</ref>。
 
: 川島は、日本では「LRT=低床路面電車」と受け取られがちであるとして、「本来のLRTはミニ地下鉄ほどの大きさであり、高速である。編成両数も長い」「多くは専用軌道を走るか、併用軌道でもクルマが進入できないようブロックで隔絶して走る」と持論を展開した上で、「LRT=高規格路面電車」という位置付けを提唱し<ref group="注釈">もっとも、北米などにおけるLRTは専用軌道による運行による定時性・高速運行が重要な要素となっているため、的外れな指摘ではない。</ref>、単に低床式の車両の導入にとどまらない、大がかりな改良策を主張している<ref name="keishin"/>。なお、川島自身はLRT化によって輸送力の増強が図れるため、それが高額な建設費を要する[[地下鉄]]に代わる輸送機関になるとして、大きな妄想を抱いている<ref name="keishin"/>。先述の都電荒川線のケースでも、欧米並みのLRV(軽快電車車両。加速度は5.0km/h/s、減速度も5.0km/h/s程度が最低ラインだと川島は主張している)の導入による最高速度180キロ運転、高架線による道路との立体交差や、地下線による短絡を組み合わせた線路環境の実現といった、大胆な空想を打ち出している<ref name="toden"/>。
 
=== 各鉄道事業者に対する評価 ===
{{出典の明記|section=1|date=2010年12月}}
; 旧・[[日本国有鉄道]](国鉄)
: 評価は概して低く、国鉄が開発・製造した[[国鉄103系電車|103系電車]]については、同時期の[[私鉄]]の車両と比較して[[空気バネ]][[鉄道車両の台車|台車]]等を採用していないために乗り心地が悪い<ref name="kokutetsu103">『全国鉄道事情大研究 大阪都心部・奈良編』コラム「103系について」</ref>、加速力が低いために運転性能が大幅に劣る<ref name="kokutetsu103"/>、[[回生ブレーキ]]を装備していない<ref name="kokutetsu103"/>といった理由で酷評しており、さらには本来駅間距離の短い都市部の路線向けに開発した103系を[[常磐快速線]]などの中距離運用にまで充当した国鉄の極端な標準化方針も批判している<ref name="kokutetsu103"/>。
: [[近畿地方|関西]]の国鉄は他の地域に比べ良好であったが、当時の関西私鉄の質がそれ以上であったため、相対的に評価が低かったとも述べている。
 
;==== 旧・[[日本旅客国有鉄道|東日本旅客]](国道(JR東日本]] ====
: 評価は概して低く、国鉄が開発・製造した[[国鉄103系電車|103系電車]]については、同時期の[[私鉄]]の車両と比較して[[空気バネ]][[鉄道車両の台車|台車]]等を採用していないために乗り心地が悪い<ref name="kokutetsu103">『全国鉄道事情大研究 大阪都心部・奈良編』コラム「103系について」</ref>、加速力が低いために運転性能が大幅に劣る<ref name="kokutetsu103"/>、[[回生ブレーキ]]を装備していない<ref name="kokutetsu103"/>といった理由で酷評しており、さらには本来駅間距離の短い都市部の路線向けに開発した103系を[[常磐快速線]]などの中距離運用にまで充当した国鉄の極端な標準化方針も批判している<ref name="kokutetsu103"/>。
: 概して評価は低い。要因として、以下のようなものが挙げられる。
: [[鉄道車両の座席#ロングシート|ロングシート]]主体の車両を中長距離運用や[[東北地方]]の閑散路線にまで使用し、転換クロスシートをほとんど採用していないことに関して、厳しい批判を幾度も繰り返している。乗客が逸走すると予想しながらコスト削減を優先しロングシート主体の車両を大量導入したことで実際に乗客の減少を招いた('''ただし因果関係の立証はしていない'''<ref group="注釈">実際に座席の形態が変わったことで乗客が減少したことを示すデータを掲載していない。</ref>)として、「確信犯的」「公共交通機関として失格」とまで酷評<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、239ページ</ref>したこともある。しかし、ロングシート車の701系を導入後の秋田支社のローカル列車利用者数は対前年比106%、弘前 - 青森間では対前年比104%と増えている<ref>『[[鉄道ジャーナル]]』398号、[[鉄道ジャーナル社]]、1994年、54、58頁。</ref>。
: また、[[ダイヤグラム#パターンダイヤ|パターンダイヤ]]の導入に熱心でないために各駅での発車時刻や運転間隔にばらつきが出てしまい、乗客の利便性を損なっている、あるいは競合私鉄への乗客の流出に繋がっていること(この件についても検証可能なデータを示していない)や、優等列車と普通電車の接続が悪いことなども要因となっているほか<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日</ref>、ダイヤに余裕をとりすぎて[[表定速度]]が全般的に低いことも挙げられる。
: 同時に、私鉄線と併走していない区間が多く、それによりサービス向上への意欲がみられない点を批判している。私鉄路線と競合している[[湘南新宿ライン]]や[[総武快速線]]、[[東海道線]]などの路線・区間においても、競争意識が薄いために本来のポテンシャルを発揮しきれておらず、私鉄に対し優位に立てていないと厳しい意見を述べている<ref>川島令三『私鉄王国の凋落』草思社、2001年8月10日</ref><ref>川島令三『私の戦後「電車」史 1955-1995』PHP研究所、1995年12月29日、150ページ</ref>。
 
: [[近畿地方|関西]]の国鉄は他の地域に比べ良好であったが、当時の関西私鉄の質がそれ以上であったため、相対的に評価が低かったとも述べている。
; 関東の私鉄事業者
: こちらも、車両がロングシート主体であることや、表定速度が(関西の鉄道事業者に比べて)低いことから、JR東日本ほどではないもののあまり好意的な評価はしていない。
: ただし、関東大手私鉄で唯一の転換クロスシート導入(ただし手動転換ができないため価値が半減としている)や速達列車中心のダイヤ設定を行う[[京浜急行電鉄|京浜急行電鉄(京急)]]、[[運賃]]を値下げしスピードアップにも意欲的な[[京王電鉄]]、複々線化事業を推し進めている[[小田急電鉄]]などは好意的に評価されている。ただ、京王についてはラッシュ時におけるダイヤ編成、優等列車(特に高尾山輸送に用いられる車両)がロングシート主体であること<ref>川島令三『私鉄王国の凋落』草思社、2001年8月10日、198-201ページ</ref>、および京王線の[[複々線]]化が[[新宿駅|新宿]] - [[笹塚駅|笹塚]]間のみにとどまっていることに対する評価は厳しい。
 
;==== [[西日本旅客鉄道|西日本旅客鉄道(JR西日本)]]および関西の私鉄事業者 ====
: 概して評価は低い。要因として、以下のようなものが挙げられる。
: 『全国鉄道事情大研究』各巻での関西の事業者、特にJR西日本への評価は最近までは比較的高く、[[アーバンネットワーク]]内の高速化や高速・高頻度運転、パターンダイヤ、転換クロスシートなど、会社間の競争によって質が高められたケースが多かった(しかし、並行路線がない路線においては質的向上が今ひとつだったとも語っている)<ref>川島令三『関西圏通勤電車徹底批評 上』草思社、2004年12月28日、4ページ</ref>として、旧国鉄・私鉄とも総じて質が高かったと述べている。
: JR西日本については、国鉄時代の車両を競合私鉄並みに性能の良い車両に置き換えた上で最高速度も引き上げた結果、サービスが向上したと賞賛している<ref name="up45">川島令三『関西圏通勤電車徹底批評 上』草思社、2004年12月28日、45ページ</ref>。ただし103系が残る[[大阪環状線]]などの路線では、延命工事が施された後も加速度が低いままの103系を加速度の高い新型車両(特に[[JR西日本207系電車|207系]])へ置き換えるべきだとしている<ref>川島令三『関西圏通勤電車徹底批評 上』草思社、2004年12月28日、85・196ページ</ref>。
: そのJR西日本についても、京阪神地区以外は評価が厳しく、「[[岡山県|岡山]]・[[広島県|広島]]地区の[[山陽本線]]は年々ダイヤが廃れている」と述べているほか、ローカル線の経費削減のために行う日中時の保線(その際は運休となり、[[代行バス]]が運行されない)や極端な徐行運転を批判している。
: こうして競合私鉄に対してJRが優勢になったため、関西の大手私鉄の施策にはかなり手厳しい批判が見受けられる。全体の所要時間を伸ばしてでも[[優等列車]]の停車駅を増やすなど、JRとの競争において守りの姿勢でいるからとしており<ref name="set"/>、特に[[阪急電鉄|阪急電鉄(阪急)]]や[[京阪電気鉄道|京阪電気鉄道(京阪)]]、[[近畿日本鉄道|近畿日本鉄道(近鉄)]]への批評は「あれだけの設備があるのに、なぜ積極的なスピードアップをしないのか」「[[阪急神戸線|神戸線]]では待避駅が少ない」「[[阪急京都線|京都線]]の特急は停車駅を増やして遅くなった」(阪急)、「[[京阪本線]]の急行の停車駅が多すぎる」(京阪)、「緩急結合運転を意識していない」(近鉄)と厳しい。同様に神戸の私鉄を東西につなぐ[[神戸高速鉄道]]についても、線内での運賃設定や速度制限がJRとの競争力を減じるとして厳しい評価を下している。
: こうした私鉄各社の方策に対しては、速達列車の停車駅を増やさずに所要時間を短く抑え、緩急接続を密に行うことで途中駅の利便性の確保も図るべきであると主張する<ref name="up45"/>と同時に、関西私鉄同士(路線によってJRも含む)の直通運転をもっと増やすべきだと主張し、スイッチバックや連絡線の敷設といった大がかりな空想も随所で行っている<ref name="set"/>。
 
: [[鉄道車両の座席#ロングシート|ロングシート]]主体の車両を中長距離運用や[[東北地方]]の閑散路線にまで使用し、転換クロスシートをほとんど採用していないことに関して、厳しい批判を幾度も繰り返している。乗客が逸走すると予想しながらコスト削減を優先しロングシート主体の車両を大量導入したことで実際に乗客の減少を招いた('''ただし因果関係の立証はしていない'''<ref group="注釈">実際に座席の形態が変わったことで乗客が減少したことを示すデータを掲載していない。</ref>)として、「確信犯的」「公共交通機関として失格」とまで酷評<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日、239ページ</ref>したこともある。しかし、ロングシート車の701系を導入後の秋田支社のローカル列車利用者数は対前年比106%、弘前 - 青森間では対前年比104%と増えている<ref>『[[鉄道ジャーナル]]』398号、[[鉄道ジャーナル社]]、1994年、54、58頁。</ref>。
: なお、[[大阪市交通局]]に対しては、[[市営モンロー主義]]と呼ばれる他事業者に対する排他的な交通政策をはじめとして、一貫して批判的な評価を下している。(市営モンロー主義政策は2011年12月の市長交代で終焉となった。)
 
: また、[[ダイヤグラム#パターンダイヤ|パターンダイヤ]]の導入に熱心でないために各駅での発車時刻や運転間隔にばらつきが出てしまい、乗客の利便性を損なっている、あるいは競合私鉄への乗客の流出に繋がっていること(この件についても検証可能なデータを示していない)や、優等列車と普通電車の接続が悪いことなども要因となっているほか<ref>川島令三『鉄道再生論 新たな可能性を拓く発想』、中央書院、2002年8月23日</ref>、ダイヤに余裕をとりすぎて[[表定速度]]が全般的に低いことも挙げられる。
 
: 同時に、私鉄線と併走していない区間が多く、それによりサービス向上への意欲がみられない点を批判している。私鉄路線と競合している[[湘南新宿ライン]]や[[総武快速線]]、[[東海道線]]などの路線・区間においても、競争意識が薄いために本来のポテンシャルを発揮しきれておらず、私鉄に対し優位に立てていないと厳しい意見を述べている<ref>川島令三『私鉄王国の凋落』草思社、2001年8月10日</ref><ref>川島令三『私の戦後「電車」史 1955-1995』PHP研究所、1995年12月29日、150ページ</ref>。
 
;==== 関東の私鉄事業者 ====
: こちらも、車両がロングシート主体であることや、表定速度が(関西の鉄道事業者に比べて)低いことから、JR東日本ほどではないもののあまり好意的な評価はしていない。
 
: ただし、関東大手私鉄で唯一の転換クロスシート導入(ただし手動転換ができないため価値が半減としている)や速達列車中心のダイヤ設定を行う[[京浜急行電鉄|京浜急行電鉄(京急)]]、[[運賃]]を値下げしスピードアップにも意欲的な[[京王電鉄]]、複々線化事業を推し進めている[[小田急電鉄]]などは好意的に評価されている。ただ、京王についてはラッシュ時におけるダイヤ編成、優等列車(特に高尾山輸送に用いられる車両)がロングシート主体であること<ref>川島令三『私鉄王国の凋落』草思社、2001年8月10日、198-201ページ</ref>、および京王線の[[複々線]]化が[[新宿駅|新宿]] - [[笹塚駅|笹塚]]間のみにとどまっていることに対する評価は厳しい。
 
==== [[西日本旅客鉄道|西日本旅客鉄道(JR西日本)]]および関西の私鉄事業者 ====
: 『全国鉄道事情大研究』各巻での関西の事業者、特にJR西日本への評価は最近までは比較的高く、[[アーバンネットワーク]]内の高速化や高速・高頻度運転、パターンダイヤ、転換クロスシートなど、会社間の競争によって質が高められたケースが多かった(しかし、並行路線がない路線においては質的向上が今ひとつだったとも語っている)<ref>川島令三『関西圏通勤電車徹底批評 上』草思社、2004年12月28日、4ページ</ref>として、旧国鉄・私鉄とも総じて質が高かったと述べている。
 
: JR西日本については、国鉄時代の車両を競合私鉄並みに性能の良い車両に置き換えた上で最高速度も引き上げた結果、サービスが向上したと賞賛している<ref name="up45">川島令三『関西圏通勤電車徹底批評 上』草思社、2004年12月28日、45ページ</ref>。ただし103系が残る[[大阪環状線]]などの路線では、延命工事が施された後も加速度が低いままの103系を加速度の高い新型車両(特に[[JR西日本207系電車|207系]])へ置き換えるべきだとしている<ref>川島令三『関西圏通勤電車徹底批評 上』草思社、2004年12月28日、85・196ページ</ref>。
 
: そのJR西日本についても、京阪神地区以外は評価が厳しく、「[[岡山県|岡山]]・[[広島県|広島]]地区の[[山陽本線]]は年々ダイヤが廃れている」と述べているほか、ローカル線の経費削減のために行う日中時の保線(その際は運休となり、[[代行バス]]が運行されない)や極端な徐行運転を批判している。
 
: こうして競合私鉄に対してJRが優勢になったため、関西の大手私鉄の施策にはかなり手厳しい批判が見受けられる。全体の所要時間を伸ばしてでも[[優等列車]]の停車駅を増やすなど、JRとの競争において守りの姿勢でいるからとしており<ref name="set"/>、特に[[阪急電鉄|阪急電鉄(阪急)]]や[[京阪電気鉄道|京阪電気鉄道(京阪)]]、[[近畿日本鉄道|近畿日本鉄道(近鉄)]]への批評は「あれだけの設備があるのに、なぜ積極的なスピードアップをしないのか」「[[阪急神戸線|神戸線]]では待避駅が少ない」「[[阪急京都線|京都線]]の特急は停車駅を増やして遅くなった」(阪急)、「[[京阪本線]]の急行の停車駅が多すぎる」(京阪)、「緩急結合運転を意識していない」(近鉄)と厳しい。同様に神戸の私鉄を東西につなぐ[[神戸高速鉄道]]についても、線内での運賃設定や速度制限がJRとの競争力を減じるとして厳しい評価を下している。
 
: こうした私鉄各社の方策に対しては、速達列車の停車駅を増やさずに所要時間を短く抑え、緩急接続を密に行うことで途中駅の利便性の確保も図るべきであると主張する<ref name="up45"/>と同時に、関西私鉄同士(路線によってJRも含む)の直通運転をもっと増やすべきだと主張し、スイッチバックや連絡線の敷設といった大がかりな空想も随所で行っている<ref name="set"/>。
 
: なお、[[大阪市交通局]]に対しては、[[市営モンロー主義]]と呼ばれる他事業者に対する排他的な交通政策をはじめとして、一貫して批判的な評価を下している。(市営モンロー主義政策は2011年12月の市長交代で終焉となった。)
 
=== 問題点 ===
{{出典の明記|date=2011年10月}}
 
* 『なぜ福知山線脱線事故は起こったのか』において、実際の事故原因が自身のスピードアップ至上主義と相反することから'''脱線原因を事故車207系電車に使用されている[[ボルスタレス台車]]の構造が事故の最大の要因と断定'''しており<ref>川島令三『なぜ福知山線脱線事故は起こったのか』草思社、2005年8月10日、p.138-139</ref>、「台車に一家言ある京阪や京浜急行も採用しないし、採用した電鉄で、マズいと思っているところもある<ref>川島令三『なぜ福知山線脱線事故は起こったのか』草思社、2005年8月10日、p.149</ref>」「台車メーカーや一部関係者から危険である旨の証言を得た」と述べている。これについて、[[日本国有鉄道]][[小倉総合車両センター|小倉工場]]長などを歴任した鉄道技術者・交通研究家の[[久保田博]]([[2007年]][[1月18日]]死去)らによる構造理解の誤りの指摘・批判を受けている<ref>[[久保田博]]「福知山線事故に寄す」『[[鉄道ジャーナル]]』470号、[[鉄道ジャーナル社]]、2005年。</ref>。
* これ以外にも、『東海道ライン全線・全駅・全配線』での[[鶴見線]]廃駅について「総持寺駅」(正しくは「本山駅」)という記述をしていること、『全国鉄道事情大研究 京都・滋賀篇』における[[山科駅]]などの駅配線図の誤りなど、著書の記述には事実や公式発表と整合性が取れていないなどのミスや、裏付け確認の不十分な箇所が散見される。
 
* これ以外にも、『東海道ライン全線・全駅・全配線』での[[鶴見線]]廃駅について「総持寺駅」(正しくは「本山駅」)という記述をしていること、『全国鉄道事情大研究 京都・滋賀篇』における[[山科駅]]などの駅配線図の誤りなど、著書の記述には事実や公式発表と整合性が取れていないなどのミスや、裏付け確認の不十分な箇所が散見される。
 
== 文章の性格 ==
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== 主要著作 ==
※発売順に列挙
* 東京圏通勤電車事情大研究([[草思社]]、[[1986年]])ISBN 978-4-7942-0255-0
* 関西圏通勤電車事情大研究(草思社、[[1987年]])ISBN 978-4-7942-0296-3