「ポペットバルブ」の版間の差分

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[[Image:Four stroke engine diagram.jpg|154px|thumb|right|典型的な[[4ストローク]][[DOHC]]レシプロ[[内燃機関]]の概念図。<br/>(E) 排気[[カムシャフト]]<br/>(I) 吸気カムシャフト<br/>(S) [[点火プラグ]]<br/>'''(V) ポペットバルブ'''<br/>(P) [[ピストン]]<br/>(R) [[コネクティングロッド]]<br/>(C) [[クランクシャフト]]<br/>(W) 冷却水が通るウォータージャケット]]
[[画像:4-Stroke-Engine.gif|thumb|4ストロークDOHC[[火花点火機関]]の動作概略図。<br/> (1) 吸入行程<br/> (2) 圧縮行程<br/> (3) 燃焼・膨張行程<br/> (4) 排気行程]]
ポペットバルブは[[クランクケース]]圧縮式の[[2ストローク機関#デイ式2ストロークエンジン|ガソリン2ストロークエンジン]]を除く現代のほとんどのレシプロエンジンで使用されていて、[[シリンダーヘッド]]の吸気ポートと排気ポートに配置されている。バルブステムが[[シリンダーヘッド]]のバルブガイドに通されており、気流を制御するための弁の開閉は[[カムシャフト]]のカムによって行われる。ポペットバルブは[[バルブリフター]]を介し[[カムシャフト]]に押されるか、[[タペット]]を介してカムシャフトで作動する[[ロッカーアーム]]に押されることで押し開かれる。
 
[[イタリア]]の[[オートバイ]]メーカー、[[ドゥカティ]]のエンジンではバルブスプリングを持たず、カムシャフトが機械的にポペットバルブを閉鎖する[[デスモドロミック]]を採用している。これは超高回転域に置けるカムへの追従性悪化による[[バルブ[[サージング]]を防止するための機構である。通常のエンジンでは閉じ側にコイルスプリングを使用することが多く、サージング防止のため、[[摩擦]]の増大と引き換えは巻[[ばね定]]変化させた可変レート高める、[[固有振動]]数が異なる2つのスプリングやバネレートの高いバルブを組み合わせる、スプリングそのもの用い不等ピッチや円錐状とす必要があるがこれらは動弁系などフリクション対策で共振増大させてしまうため、最高防いでいる。常用回転数が1万800018,000 [[rpm (単位)|rpm]]に達した[[フォーミュラ1|F1]]エンジンなどでは、コイルスプリングで共振を防ぐことは難しく、共振周波数の高い[[トーションバー]]スプリングや、高搾空の[[体]]を用いてバルブを閉じる[[空気バネ|ニューマチックバルブスプリング]]を用いている。
 
ポペットバルブは[[鋼鉄]]などの頑丈な金属を用いて製造されるが、一部の高出力エンジンではバルブの材料に[[チタン]]を用いることもある。これはポペットバルブの慣性質量を減らすための措置であり、バルブコッターやリテーナーも同様に軽量化が行われることも多い。また、部位によって要求される性質が異なるため、ステムやステム端部と傘部を別々の材料で作ったりすることがある。高出力エンジンの場合、特に高い温度の排気ガスに晒される排気バルブの熱伝導特性を改良するため、[[ナトリウム]]封入バルブを用いることがある。ステムをドリル切削するなどして中空構造とし、この半分程度に[[ナトリウム]]を封入したものである。ポペットバルブの往復によりナトリウムがステム内を往復し、[[燃焼室]]からバルブガイドへと熱を逃がしやすくする。また、中空化と鋼より密度の低いナトリウムを使用することでポペットバルブの軽量化も見込める。
 
ポペットバルブは吸気と排気に1[[シリンダー]]あたりそれぞれ1本以上ずつ用いられる。[[OHV]]や[[SOHC]]が主流の時代には吸排気効率向上のためにポペットバルブの外径を大きくするビッグバルブが用いられたが、バルブの慣性質量の増加で高回転での追従性が悪化し、その割に開口面積がさほど拡大されず効率が上がらないため、後に吸排気それぞれに複数のバルブを配置する[[マルチバルブ]]構成が普及した。初めは吸気2・排気1の3バルブ構成、後に[[DOHC]]の普及とともに吸気2・排気2の4バルブ構成が一般化し、一部には吸気3・排気2の5バルブのエンジンもあった。1シリンダーあたり最大のバルブ数を持つ現在までに市販されたエンジンは、[[楕円ピストンエンジン|楕円ピストン]]の採用で吸気4・排気4の8バルブとした[[ホンダ・NR]]のものである。
 
また、吸気バルブの開閉タイミングやリフト量を回転数や負荷に応じて可変させることで燃焼室への混合気流入速度を変化させ、高回転域での出力と低回転域での実用トルクの両立を実現した[[可変バルブ機構]]は、近年ではファミリーカー[[軽自動車]]や[[大衆車]]などでも[[自動車排出ガス規制]]などへの対応や[[燃費]]向上のためにごく一般的に使用されるようになった。さらには吸気バルブのタイミングやリフトの可変量を拡大して、その制御で[[スロットル|スロットルバルブ]]に代わって出力を制御する[[バルブトロニック]]のような技術も現れている
 
かつての[[鋳鉄]]製シリンダーヘッドが[[鋳鉄]]製あった頃は、ポペットバルブはシリンダーヘッドに穿たれたバルブ穴にポペットバルブが直接差し込まれていたが、後に放熱対策や軽量化のために[[アルミ合金]]製のシリンダーヘッドが登場すると、ヘッドの摩耗を抑えるために[[鋼鉄]]や[[リン青銅]]などで製作されたバルブガイドがヘッドに挿入されるようになり、燃焼室側にも傘部の接触面にバルブシートが取り付けられるようになった。
 
ポペットバルブのステムはヘッドムシャフトルに直接突き出る形になるため、そのままでは吸排気ポートのガスがカムシャフト側に吹き抜けたり、カムシャフトルーム内の[[エンジンオイル]]が吸排気ポート内に吸い出されるオイル下がりが発生する。そのため、バルブステムには熱と摩擦に強い[[フッ素樹脂|フッ素ゴム]]製のバルブステムシールが挿入され、密封性を保つようになっている。
 
バルブガイド、バルブシート、バルブステムシールともに今日では消耗部品の一つであり、これらが摩耗・劣化することでオイル下がりが起こる。このような状態の車両はアクセルオシリの際に[[マフラ (原内でエンジンオイルが燃えるため、始機)|マフラ時やエンジンブレ]]から青キ使用時に排気がが噴出となり、オイルの燃える臭いもすることで判別が可能である。
 
==== バルブ配置 ====
[[第二次世界大戦]]前後までの黎明期の車両用エンジンは、ポペットバルブはシリンダーと平行に逆さの状態で配置された。これは一般的には[[サイドバルブ]](SV)と呼ばれ、シリンダーヘッドの外形が平たかったためにしばしばフラットヘッドとも呼ばれた。この形式は極めて簡素な構造で信頼性や耐久性も高かったことから[[第二次世界大戦]]中の軍用車両では積極的に用いられたこともあった。しかし燃焼室が横に長く伸びる形状となることと、吸気と排気が同じ側に向かうターンフロー(カウンターフロー)構造しか採れなかったことから、吸排気効率が非常に悪くて最高回転数は2000-3000rpm程度に限定され、またこの燃焼室形状では大きな表面積により冷却損失が大きいために[[熱効率]]が低く、しかも排気がシリンダー側面を這うように出て行くために放熱を妨げるなど、エンジン性能面では不都合が多かった。