「宇宙の戦士」の版間の差分

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作品中に登場する様々な小道具類やアイディアは、以降の作品に影響を与えた。特に、兵士が「着る」、すなわち着衣のように装着して体全体で操縦する、「装甲を施した宇宙服型ロボット兵器」という概念の[[パワードスーツ]](強化防護服)のアイデアは、その後、多くのSF作品で類型の兵器を生む源流となり、特に1980年代から1990年代にかけて大流行した。具体例は[[パワードスーツの登場するサイエンス・フィクション一覧]]を参照。
 
日本のSF界において、1967年の新書版ハヤカワSFシリーズ版ではなく、とりわけ[[ハヤカワ文庫]]版(1977年)<ref>日本語訳としては1979年のハヤカワ文庫版以外に、1967年に新書版ハヤカワSFシリーズで出版されていた。</ref>の挿絵に登場する[[スタジオぬえ]]の[[宮武一貴]]デザイン、[[加藤直之]]画によるパワードスーツの与えた衝撃が大きい。アメリカの[[ペーパーバック]](日本の「文庫本」相当)版に見られる伝統的な宇宙服に近いデザインから、殺気を宿す「戦闘用機械」へ刷新したビジュアルは、多くの人がイメージする「パワードスーツ型兵器」の原型となった。この「ぬえ版パワードスーツ」は現在でも人気が高く、アクション[[フィギュア]]や[[プラモデル]]が発売されている。
 
その影響は映像分野へも波及し、[[SFアニメ]]の[[メカニックデザイン]]においても重要な転換点となった。従来のヒーロー的なロボットとは異なる「軍用の人型量産兵器」という発想は、『[[機動戦士ガンダム]]』に始まる[[リアルロボット]]路線の基調となり、様々な人気メカニックを生みだした。なお、『機動戦士ガンダム』に登場するメカニック、[[ガンキャノン]]のデザインには先の「ぬえ版パワードスーツ」のデザインが活かされている。
 
なお、ガンダムの制作関係者にハヤカワ文庫版を紹介したのはスタジオぬえの[[高千穂遥]]だった。なお、本来の意図は「主人公の国籍が明かされるラスト部分の面白さ」を伝えることだったという。結果的にパワードスーツをヒントに[[モビルスーツ]]のアイデアが生まれ、日本において『宇宙の戦士』は内容の論議とは別に、「ガンダム誕生に寄与したSF小説」という評価を得ることになった。
 
=== 小説 ===
日本では、前述のハヤカワ文庫およびハヤカワSFシリーズ版の刊行前に、「[[S-Fマガジン]]」1961年2月号から4月号に[[田中融二]]による抄訳が掲載された。
 
その後、1963年から1964年に[[小学館]]の少年雑誌「[[ボーイズライフ]]」に『宇宙の特攻兵』のタイトルで連載されたが、主人公が日系人であるなど翻案といえる内容だった。著者は後にハヤカワ版の翻訳も手がける矢野徹、挿絵は[[中西立太]]。当時高校生だった劇画家[[小林源文]]はその挿絵に感銘を受けて中西を訪ね、絵を学んだというエピソードがある。
 
[[ハリイ・ハリスン]]の『[[宇宙兵ブルース]]』は『宇宙の戦士』などの[[軍事SF]]小説に対するシニカルな批判的パロディとして発表され、作中にベトナム戦争を思わせる惑星と機動歩兵も登場する。また、パワードスーツ型兵器を用いた兵士による、異星人との戦いを描いた著名なSF作品として、[[ジョー・ホールドマン]]の『[[終りなき戦い]]』(''The Forever War'')がある。ここでは「コンバット・シェル」と呼ばれるパワードスーツ型兵器が登場する。
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==== 実写映画 ====
* 『[[スターシップ・トゥルーパーズ]]』(1997年、アメリカ)
:: [[ポール・バーホーベン]]<ref>なお、バーホーベンはオランダ海軍に従軍した経歴がある。また『[[ロボコップ2]]』では危険な任務での死を恐れてストライキを起こす警官をやや批判的に描いている。(ロボコップ2の監督は[[アーヴィン・カーシュナー]])</ref>監督。[[邦題]]は小説の原題の表音をそのままカナ表記となった。
:: 作中にはパワードスーツは登場せず<ref>、むしろ生身の兵士と、異星の[[虫]]型生物「バグズ(Bug。sは複数形)」との(グロテスクな)暴力描写が強調される。なお、米国版の実写作品やアニメ作品に、原作同様のパワードスーツが表現されない(されにくい)理由は、一般的に米国の映像作品では、主人公の顔や表情、動作(演技)の見えないメカニックの活躍表現は伝統的に禁忌とされているためである特に実写作品の場合、俳優組合の影響が強いハリウッド映画界では、出演者の「顔出し」の有無やその長さはギャランティ設定や、出演交渉などを大きく左右する場合があるなお、パワードスーツの類が登場する場合は、搭乗者の顔や頭が外部から見える設計構造が基本である。</ref>、むしろ生身の兵士と、異星の[[虫]]型生物「バグズ(Bug。sは複数形)」との(グロテスクな)暴力描写が強調される。
:: [[マイケル・アイアンサイド]]演じる教師ラズチャック(原作におけるデュボア)が、親からの教えとして非暴力を唱える生徒に暴力の有効性や実績を説き、また市民の担う義務と権利の関係、安全の有償性等についてリコに毅然と語り、戦場で最期を遂げる時も若い部下達に教えたとおりの潔い死に方を見せるなど、原作の基本的思想性はほぼストレートに映像化されている。
::監督の主眼が巨大昆虫vs未来兵士の壮絶な死闘というコンセプトであり、原作小説自体には本質的に興味が無く、内容の類似点からくる訴訟を避けるために映画化権を取得したという経緯からストーリーは多少の省略や変更点(父の生死等)はあるものの、比較的忠実(最後にヒーローになるのは意外な人物である点)であるが、その忠実さはむしろ皮肉に満ちている。
::パワードスーツが登場しない(いうほぼこの一点)から、日本のマニアからは(誤解を含め)過度に嫌悪されることがある。
:: 一方で政府による[[プロパガンダ]]の描写などで軍国主義的側面は過度に強調されて皮肉られている。バーホーベンは映画内の皮肉や誇張について、「作中で[[ファシズム]]の思想や想像力をもてあそぶことを通じて、アメリカ社会のある側面を描き出そうとした」と述べている<ref>{{cite web|url=http://www.avclub.com/articles/paul-verhoeven,14078/|title="Interview: Paul Verhoeven", by Scott Tobias|publisher=''[[The A.V. Club]]''|date=April 3, 2007| accessdate=2011-03-24}}</ref>。
* 『[[スターシップ・トゥルーパーズ2]]』(2003年、アメリカ)
:: 1作目の10分の1以下という低予算で製作され、アメリカでは劇場公開されずテレビ映画として放送された。1作目と同様の世界観を踏まえたもので、人間に寄生する「パラサイト・バグ」など、原作小説にはなかった存在が登場する。
::監督はバーホーベンの盟友であり、モデルアニメーションの第一人者でもある[[フィル・ティペット]]が担当。彼の監督デビュー作である。一応原作小説を読んだバーホーベンと違い、ティペットは原作を一行も読んでいないし、今後も読む気はないと豪語しており、シリーズの異色作である。
 
* 『[[スターシップ・トゥルーパーズ3]]』(2008年、アメリカ)
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==== アニメ ====
* 『[[宇宙の戦士 (アニメ)|宇宙の戦士]]』(1988年、日本)
:: 日本において[[OVA]]としてアニメ化され、後にテレビでも放送された。製作は[[サンライズ (アニメ制作会社)|サンライズ]]で、後にテレビでも放送された。「軍隊における青春物語」としての性質が強く、また原作における思想は全く語られず、翻案作品といえる。パワードスーツのデザインはハヤカワSF文庫版同様に宮武一貴であるが、リファインされている。
 
* 『[[スターシップ・トゥルーパーズ・クロニクルズ]]』(1999年、アメリカ)