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== 病原性 ==
レジオネラは環境中に普通に存在する菌であり、通常では感染症を引き起こすことは少ない。しかしながら[[#感染しやすい環境|感染しやすい環境]]に示すような環境下では、特に高齢者等抵抗力の少ない人々にとって、主に[[レジオネラ属]]の一種、''L. pneumophila'' が、ヒトのレジオネラ感染症(レジオネラ肺炎およびポンティアック熱)の原因になる。
{{main|レジオネラ症}}
; [[レジオネラ肺炎]]: 2 - 10日の潜伏期間を経て高熱、咳、頭痛、筋肉痛、悪感等の症状が起こる。進行すると呼吸困難を発し胸の痛み、下痢、意識障害等を併発する。死亡率は15% - 30%と高い。
# 体温>39.4℃
# 喀痰がない(細胞内寄生のため、[[好中球]]や[[マクロファージ]]に貪食されず、膿性喀痰を生じない)
# 血清ナトリウム値<133mEq/L
# LDH>255IU/L
# CRP>18.7mg/dL
# 血小板<17.1万、の6つのうち4つ以上を満たす場合レジオネラ肺炎の確率が66%であると報告されている<ref>Fiumefreddo R, et al. Clinical predictors for Legionella in patients presenting with community-acquired pneumonia to the emergency department. BMC Pulm Med. 2009;19;9:4. doi: 10.1186/1471-2466-9-4.</ref>。
 
== 脚注 ==
; [[ポンティアック熱]]: 多量のレジオネラを吸い込んだとき生じる。潜伏期間は1 - 2日で、全身の倦怠感、頭痛、咳などの症状を経て、多くは数日で回復する。
{{Reflist}}
 
レジオネラ感染症は、1976年に初めて報告された[[新興感染症]]であり、日本では[[感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律]]によって[[四類感染症]]に指定されている。これは日本でのレジオネラ発生の増加を踏まえて[[2003年]]の改正の際に行われたものであり、従前の[[感染症法]]では規定されていなかった、汚染施設の消毒などに対する行政措置が可能になるような改正が盛り込まれた。
 
== 感染しやすい環境 ==
前述のようにレジオネラの病原性は低く、健康人がただ風呂に入っただけでは感染しない。空調冷却水内で増殖した菌が[[冷却塔]](クーリングタワー)から飛散したり、入浴施設の水循環装置や浴槽表面で増殖した菌がシャワーなどで利用されたり、浴槽の気泡装置で泡沫に含まれたりして塵(エアロゾル)となり、それが[[気道]]を介して吸入され、肺に存在するマクロファージ([[肺胞マクロファージ]])に感染することによって発病する。日本でも毎年数人がレジオネラにより死亡している。
 
=== 感染源 ===
入浴設備、超音波加湿器、空調機器やダクト等が感染源になったと報告されているが、特に日本では入浴設備からの感染事例が多い。1996年、[[経済産業省|通産省]]から家庭用24時間風呂浴水のレジオネラの存在が確認され易いとして、その製造元・発売元に衛生対策の要請がなされ、1997年にはレジオネラ対策24時間風呂が各社から発売されている。しかし、それ以降も各地の[[温泉]]や共同入浴施設では、感染による死者が出ており、衛生管理の難しさを物語っている。前述のように、レジオネラは入浴施設で多用される濾過循環装置の濾材では処理できないため、[[循環式浴槽]]を持つ共同入浴施設では、以下の二点が指導されている。
# [[塩素消毒]]を行い、また定期的に湯をおとし清掃すること(レジオネラ繁殖を抑制する)
# 泡風呂にしないこと、湯面より高い位置にある注ぎ口ではなく浴槽内から循環させること([[エアロゾル]]形成を抑制する)
また、''L. longbeachae'' による疾患も報告されており、こちらは[[土壌]]に存在する病原菌が園芸用の[[たい肥]]等を通じて感染する事が多い。
 
=== 汚染状況 ===
{{節stub}}
; 循環式
{{節stub}}
 
; 掛け流し式
: 従来、循環式よりは汚染の程度は低いと考えられているが、宮城県保健環境センターによる22施設の調査では、約30%の施設で公衆浴場法および旅館業法施行細則の基準を超える汚染が確認され<ref>[http://www.pref.miyagi.jp/hokans/STUDY/reports/2006/106.pdf 掛け流し式温泉における微生物生息状況 (pdf) /2006] 宮城県保健環境センター</ref>、浴槽内の菌と浴槽付近のぬめりの菌のPFGEパターンが一致し、周囲のぬめりが浴槽の汚染源になっている可能性を報告している。同時に、掛け流し式温泉に於いても十分な衛生管理を行い感染事故の防止の必要があるとしている。
 
== 主なレジオネラ感染事例 ==
=== 日本における主な感染事例 ===
* [[1996年]]1月 [[東京都]][[新宿区]]の大学病院で、[[新生児]]3名が発症し、うち1名が死亡した。[[加湿器]]が感染源と考えられた。
* [[1999年]]6月 [[愛知県]]で自宅の24時間風呂で水中[[分娩]]したことにより新生児が感染し、死亡した。
* [[2000年]]3月 [[静岡県]][[掛川市]]内にオープンした複合レジャー施設内の[[温泉]]が感染源となり、23名が発症し、うち2名が死亡した。
* [[2000年]]6月 [[茨城県]][[石岡市]]にオープンした入浴施設が感染源となり、143名が発症し、うち3名死亡した。
* [[2002年]]7月 [[宮崎県]][[日向市]]にオープンした温泉入浴施設が感染源となり、295名が発症し、うち7名が死亡した。
* [[2002年]]8月 [[鹿児島県]][[薩摩郡]][[東郷町 (鹿児島県)|東郷町]](現[[薩摩川内市]]) の温泉施設が感染源になり、9名が発症し、うち1名が死亡した。
* [[2007年]]10月 [[新潟県]][[新潟市]]で超音波式加湿器が感染源となり、男性1名が死亡<ref>[http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3355.html 家庭用超音波式加湿器が感染源と考えられたレジオネラ症の1例] 国立感染症研究所</ref>。
* [[2008年]]2月 前年8月に[[鹿児島県]][[指宿市]]内の[[足湯]]で、高圧洗浄機で浴槽を清掃していた男性1名が発症していたことが判明。全国初の足湯での感染に至った。
** 3月 [[群馬県]]で天然鉱石使用の入浴施設が原因と推定される感染事例<ref>[http://idsc.nih.go.jp/iasr/rapid/pr3411.html 天然鉱石を使用した入浴施設が原因であると推定されたレジオネラ感染事例-群馬県] 国立感染症研究所</ref>。
* [[2011年]]10月 [[群馬県]][[みなかみ町]]の旅館に宿泊した60歳代の男性が入浴施設が感染源となり、発症し、死亡した。
* [[2012年]]11月 [[埼玉県]][[日高市]]にある温泉施設の浴槽が感染源となり、利用した客4人が発症。
* [[2013年]]2月 [[千葉県]][[船橋市]]の入浴施設を利用した60歳代の男性が発症し、死亡した。
* [[2014年]]6月 [[埼玉県]][[北本市]]の温泉施設を利用した男性客3人が、発熱や呼吸困難などの症状を訴え、60歳代の男性が死亡した。
* [[2015年]]5月 [[岩手県]][[盛岡市]]の公衆浴場で集団感染し、50〜80代の男女9名が入院。うち70代の男性が肺炎を発症し死亡した。
* [[2015年]]6月 [[神奈川県]][[小田原市]]の入浴施設を利用した客がレジオネラ症と診断され,検査を行ったところ一部の浴槽から基準値を超えるレジオネラ属菌が検出された。
* 2017年3月 [[広島県]][[三原市]]の日帰り温泉施設を利用した40人の客が感染し、うち50代の男性1人がレジオネラ肺炎で死亡した。
 
=== 日本国外における感染事例 ===
* 2012年夏。カナダのケベック州でレジオネラ症感染者が続出した。CNNのリポートでは、9月3日に165人感染、10人死亡<ref>CNN.co.jp 9月3日(月)11時9分配信</ref> CBC・モントリオール発信では、11人の死亡を報告した<ref>[http://www.cbc.ca/news/canada/montreal/story/2012/09/02/legionnaires-disease-death-september.html]</ref>。9月7日の保健所の発表では、176人の感染と11人の死亡、感染元となった冷却塔からの感染は終息の兆しとなった<ref>The Canadian Press Friday September 7, 2012 17:44配信 [http://www.globaltvedmonton.com/canada/quebec+city+legionnaires+outbreak+appears+to+be+under+control+health+chief/6442710672/story.html]</ref>。
* 2005年のカナダのトロント市では、21人が死亡し、127人が感染した<ref>CBC Montreal 9月7日19時33分配信 [http://www.cbc.ca/news/canada/montreal/story/2012/09/07/montreal-legionnaires-outbreak-under-control-quebec.html Legionnaires' kills 11 people in Quebec City] CBC News Sep 02, 2012 11:46</ref>。
 
== 治療法 ==
細胞内寄生菌であるため、細胞内への浸透性の悪い薬剤の効きが弱い。またβ-ラクタマーゼを産生するものが多いため、[[ペニシリン]]、[[セフェム]]系の抗菌薬は効かない。食細胞内に移行性の高い[[マクロライド]]系、[[ニューキノロン]]系、[[リファンピシン]]、[[テトラサイクリン]]系の抗菌薬を投与する。
 
== 関連項目 ==
* [[温泉]]
 
== 脚注 ==
<references/>
 
== 外部リンク ==
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* [http://www.saitama-med.ac.jp/uinfo/jsms/vol30/01/30_091_098.pdf 舘田一博:レジオネラ感染症の最新の診断と治療 (pdf)] 埼玉医科大学
 
{{日本の感染症法における感染症}}
{{DEFAULTSORT:れしおねら}}
[[Category:プロテオバクテリア門]]