「福島第一原子力発電所事故」の版間の差分

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また、2号機から放出された高濃度汚染水が含む放射性物質の量は、東京電力発表の水量と濃度<ref name="tepco11041901">{{Cite Web|url=http://www.tepco.co.jp/cc/press/11041901-j.html|title=高いレベルの放射性廃液の集中廃棄物処理施設への移送について|publisher=東京電力|date=2011-04-19|accessdate=2017-03-28}}</ref>に基づけば330京 Bqである。高濃度汚染水の一部は海洋や地下水に漏れた<ref>{{Cite news|title=福島原発の地下水汚染、海に流出の可能性 建屋の壁が破損か|newspaper=msn産経ニュース|date=2011-04-01|url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110401/dst11040110050022-n1.htm|accessdate=2011-09-11 |archiveurl=http://web.archive.org/web/20110727043928/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110401/dst11040110050022-n1.htm |archivedate=2011-07-27}}</ref><ref>{{Cite news|title=取水口でストロンチウム 地下水からも初検出|newspaper=msn産経ニュース|date=2011-06-12|url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110612/dst11061222010025-n1.htm|accessdate=2011-09-11 |archiveurl=http://web.archive.org/web/20111213195316/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110612/dst11061222010025-n1.htm |archivedate=2011-12-13}}</ref>。
 
2011年10月13日時点における土壌中に蓄積されたセシウム137・セシウム134の合計値が1万ベクレル/m<sup>2</sup>以上となる地域は、東北・関東・甲信越の13都県、3万km²<sup>2</sup>以上に及んだ<ref>{{Cite web |url=http://ramap.jaea.go.jp/map/? |title=放射線量等分布マップ拡大サイト |publisher=文部科学省 |accessdate=2016-04-02}}</ref><ref name="朝日新聞20111121"/>(1999年以降の調査での、事故前におけるセシウム137の最大値は、長野市の4700ベクレル/m<sup>2</sup>である)。また年間の空間放射線量<ref group="注">1日のうち屋内に16時間、屋外に8時間いると仮定し、屋内(木造家屋)での線量は屋外の40%になると考えた場合</ref>が5ミリシーベルト(1.0μSv/h)以上の地域は福島県内の約1800km²<sup>2</sup>、20ミリシーベルト(3.8μSv/h)以上の地域は約500km²<sup>2</sup>の範囲に及んだ<ref name="NAIIC20120705" />。事故後は年間20ミリシーベルトが住民の許容被曝限度とされ、避難の基準となった。政府は、長期的には追加被曝量を年間1ミリシーベルト以下へ下げることを目指すとして、年間1ミリシーベルト(0.23μSv/h)以上の放射線量が観測されていた8県の102市町村を2011年12月に「汚染状況重点調査地域」に指定して除染を進めている<ref>{{Cite web |url=http://www.env.go.jp/press/press.php?serial=14598 |title=放射性物質汚染対処特措法に基づく汚染廃棄物対策地域、除染特別地域及び汚染状況重点調査地域の指定について(お知らせ)|publisher=環境省 |date=2011-12-19 |accessdate=2016-04-02 }}</ref>。
 
もともと原子炉内にあった核燃料は東京電力の所有物であるが、[[東京地方裁判所]]で行われた裁判における同社の主張では、放出された放射性物質の[[所有権]]は同社になく、付着した土地の持ち主にあるとしている<ref>{{Cite Web|url=http://astand.asahi.com/webshinsho/asahi/asahishimbun/product/2012021700007.html|title=プロメテウスの罠〔4〕 東電は述べた「放射性物質は無主物である」|publisher=朝日新聞|date=2012-03-02|accessdate=2017-03-28}}</ref><ref>[http://www.jiji.com/jc/zc?k=201111/2011111400849 福島ゴルフ場の仮処分申請却下=「営業可能」と賠償認めず-東京地裁]{{リンク切れ|date=October 2012}}(時事通信 2011年11月14日)</ref>。
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=== 汚染水の漏出 ===
[[ファイル:Fukushima I nuclear accident diagram 1.svg|thumb|360px|right|福島第一原発側面図]]
3月24日、3号機[[タービン]]建屋(側面図 (2))建屋地下の溜まり水に浸かりながらケーブル敷設作業をした作業員3人が[[被曝]]した。この水は濃度390万 Bq/[[立方センチメートル|cm³<sup>3</sup>]]の放射性物質を含み、表面から約400 mSv/hの放射線を発していた<ref>{{Cite Web|url=http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/press_f1/2010/htmldata/bi1386-j.pdf|title=福島第一原子力発電所3号機タービン建屋における協力企業作業員の被ばくに関する調査結果について|publisher=東京電力|format=pdf|date=2011-03-25|accessdate=2017-03-28}}</ref>。また3月26日には1号機の溜まり水から380万 Bq/cm³<sup>3</sup>の放射線を検出、翌3月27日には2号機の溜まり水の表面で1,000 mSv/h を超えた(針が振り切れて測定不能となった)。
 
さらに、3月28日には1 - 3号機の海側にある立て坑(ピット)(側面図 (3))の溜まり水からも放射線が検出され、うち2号機の立て坑の水表面からは1,000 mSv/hを超える放射線量が検出された。立て坑は冷却用の海水などの配管が通っているトンネルであるトレンチ(側面図 (4))に通じている。2号機から、核燃料の混じった冷却水が漏れてこれらに流入しているとみられる<ref name="msn20110330">{{Cite news|url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110330/dst11033010110014-n1.htm|title=2号機の水、放射線量高く、炉内から漏出か 海への排出も検討|newspaper=msn産経ニュース|date=2011-03-30|accessdate=2011-04-04}}{{リンク切れ|date=2017年3月}}</ref>。冷却水を循環できず外部注水していたため、注水量が多すぎれば蒸発しきれない分、汚染水漏出量が増え、少なすぎれば温度や圧力が上がってさらなる炉心過熱の危険が増すという微妙な問題が発生した。
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4月2日、2号機海側の立て坑に亀裂があり高濃度の放射性物質汚染水が海に流出しているのが発見された。コンクリートでは固められず、新聞紙やおがくずを投入してみるという試行錯誤の末、[[水ガラス]]の導入によって4月6日に止めることができた{{Sfn|原子力災害対策本部|2011|loc=VI.3}}が、その後、地下水の放射性物質濃度が高くなった。
 
東京電力は、高濃度汚染水をタービン建屋やトレンチから緊急に排出するために、集中廃棄物処理施設中の6.3 Bq/cm³<sup>3</sup>の低濃度汚染水(実測値9,070[[トン]])を海に放出して空けてそこに入れるしかないと判断した。さらに、5号機・6号機のサブドレンピットに増してきた貯留地下水(実測値1,323トン)もそれぞれ16 Bq/cm³<sup>3</sup>、20 Bq/cm³<sup>3</sup><ref>{{Cite news|url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110404/dst11040416330025-n1.htm|title=東電、低レベルの放射線汚染水を海に放出へ 法定濃度の100倍|newspaper=msn産経ニュース|date=2011-04-04|accessdate=2011-04-16}}{{リンク切れ|date=October 2012}}</ref>で設備水没の危険もあるので同時に海に放出するとした。東京電力は、[[核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律]]に基づいて政府の承認を受け、発表を行った。放出は4月4日から10日にかけて実施された。放射能レベルは約1,500億 Bqで{{Sfn|原子力災害対策本部|2011|loc=VI.5}}、「原発から1 km以遠の魚や海藻を毎日食べた場合の年間被曝量は0.6 mSvであり、年間に自然界から受ける放射線量の4分の1」とされたが<ref>{{Cite Web|url=http://www.tepco.co.jp/cc/press/11040406-j.html|title=福島第一原子力発電所からの低レベルの滞留水などの海洋放出について(第二報)|publisher=東京電力|date=2011-04-04|accessdate=2017-03-28}}</ref>、この処理には日本国内外から抗議の声が上がった<ref>{{Cite news|url=http://sankei.jp.msn.com/world/news/110411/erp11041122330008-n1.htm|title=汚染水放出は「国際犯罪」 チェルノブイリ関係者らが批判|newspaper=msn産経ニュース|date=2011-04-11|accessdate=2011-09-11}}{{リンク切れ|date=October 2012}}</ref>。
 
一方、2号機からの高濃度汚染水だけで2万5000トンあって、その[[セシウム137]]の濃度は300万 Bq/cm³<sup>3</sup>で、[[ヨウ素]]131の濃度は1300万 Bq/cm³<sup>3</sup>と発表されている<ref name="tepco11041901"/>。[[国際原子力事象評価尺度]]マニュアルの大気放出時ヨウ素換算係数<ref>[http://www-pub.iaea.org/mtcd/publications/PubDetails.asp?pubId=8120 INES: The International Nuclear and Radiological Event Scale User's Manual 2008 Edition p.158 TABLE-16]</ref>を準用し40を掛ければ、セシウム137のヨウ素等価濃度は1.2億 Bq/cm³<sup>3</sup>で、この2核種だけで合計濃度は1.33億 Bq/cm³<sup>3</sup>なので、2万5000トンの2号機汚染水に含まれる2核種の放射性物質総量はそれらの積で、330京 Bqと単純計算される。
 
4月6日以前に毎分2[[リットル]]で海に流れ出てしまった高濃度汚染水中の放射性物質は、上記濃度を仮定すれば、10日間あたり0.2京 Bqと計算される。東京電力は独自仮定に基づき、IAEAのヨウ素換算係数を適用しない単純合計ベースで、放射性物質放出の総量を0.47京 Bqと推算した<ref>{{Cite Web|url=http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG2100A_R20C11A4MM0000/?dg=1|title=高濃度汚染水、海洋流出は4700兆ベクレル 福島2号機|publisher=日本経済新聞|date=2011-04-21|accessdate=2017-03-28}}</ref>。この発表では「原発から1 km以遠の魚や海藻を毎日食べた場合の年間被曝量」についての言及はなかった。
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3月30日、IAEAのフローリー事務次長は[[ウィーン]]の本部で記者会見し、事故を起こした福島第一原発の北西約40 kmにあり、避難地域に指定されていなかった福島県飯舘村について、高い濃度の放射性物質が検出されたとして、住民に避難を勧告するよう日本政府に促した<ref>{{Cite news|title=飯舘村に避難勧告を=IAEA|url=http://www.jiji.com/jc/eqa/c?g=soc_30&amp;rel=j7&amp;k=2011033100027|newspaper=時事ドットコム|date=2011-03-31|accessdate=2011-04-01}}{{リンク切れ|date=2017年3月}}</ref>(政府は当初、避難の必要性を否定していたが、4月になって飯舘村を計画的避難区域に指定した)。
 
[[2015年]][[8月31日]]、国際原子力機関は2012年から世界40か国以上の専門家ら約180人が検証した事故の最終報告書を発表した。報告書は、日本では原発は絶対安全であるとの思い込みがあったことにより大事故につながったと批判し、各国に安全第一の文化をもつ重要性を強調している。日本の電力事業者間ではこの規模の事故はあり得ないとの思い込みがはびこり、政府規制当局も疑問を持たなかったなど問題点を列挙した。長時間にわたり電力供給が停止することなどを想定外としていたことが事故の主な要因と挙げている。規制当局の責任と権限も不明確でこれも弱点となった。[[原子力規制委員会 (日本)| 原子力規制委員会]]が設けられ改革が行われ緊急事態への備えの強化などの評価をしている<ref>読売新聞2015年9月1日夕刊3版12面</ref>。
 
== 影響 ==
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* 人体への影響
* X線画像への影響
* 経済への影響
* 交通への影響
* 賠償・補償
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[[国際原子力機関]] (IAEA) が定める原子力事故または事象の深刻度である[[国際原子力事象評価尺度]] (INES) について、[[原子力安全・保安院]]は[[2011年]][[4月12日]]、暫定的ながら'''レベル7'''(深刻な事故)と評価した{{Sfn|原子力災害対策本部|2011|loc=21-22}}。「7」はINESの最高レベルであり、[[1986年]]の[[チェルノブイリ原子力発電所事故]]もこれにあたる。[[1979年]]の[[スリーマイル島原子力発電所事故]]は「5」(施設外へのリスクを伴う事故)、[[1999年]]の[[東海村JCO臨界事故]]は「4」(施設外への大きなリスクを伴わない事故)である。
 
日本政府は、INESについて、11日16時時点ではレベル3と認定していた{{Sfn|原子力災害対策本部|2011|loc=21}}。12日にはレベル4に引き上げた{{Sfn|原子力災害対策本部|2011|loc=21}}。一方で、{{仮リンク|フランス原子力安全機関|en|Autorité de sûreté nucléaire}} (ASN) のラコスト総裁は、3月14日にはレベル「5」あるいはレベル「6」(大事故)との感触があるとし<ref>{{Cite news|title=東日本大震災:福島第1原発爆発 「スリーマイル以上」-仏原子力機関|url=http://mainichi.jp/select/weathernews/news/20110315dde003040020000c.html|newspaper=毎日jp|date=2011-03-15|accessdate=2011-03-15}}{{リンク切れ|date=October 2012}}</ref>、翌日の3月15日には「事故の現状は前日(14日)と全く様相を異にする。レベル6に達したのは明らかだ」と述べた<ref>{{Cite news|url=http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2011031501000982.html|title=東京新聞:仏当局「福島事故はレベル6」 ラコスト局長が見解|newspaper=東京新聞 TOKYO Web|date=2011-03-15|accessdate=2011-03-16}}{{リンク切れ|date=October 2012}}</ref>。また、アメリカの{{仮リンク|科学国際安全保障研究所|en|Institute for Science and International Security}} (ISIS) は3月15日に「レベル6に近く、レベル7に到達する恐れがある」との見解を発表した<ref>{{Cite news|url=http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&amp;k=2011031600432|title=「レベル7」到達の恐れ=福島原発事故-米シンクタンク|newspaper=時事ドットコム|date=2011-03-16|accessdate=2011-03-16}}{{リンク切れ|date=2017年3月}}</ref>。それでもなお、3月16日の時点において、日本の原子力安全・保安院は3月12日に認定したレベル「4」との見方を変えなかった<ref>{{Cite news|url=http://news.tbs.co.jp/20110316/newseye/tbs_newseye4675483.html|title=米民間機関「チェルノブイリに次ぐレベル」|newspaper=TBS Newsi|date=2011-03-16|accessdate=2011-03-17}}}{{リンク切れ|date=2017年3月}}</ref>。16日時点では国際原子力機関は、INES判定を保留しており、[[フロリダ州立大学]]の核物理学者カービー・ケンパーも影響を評価するには時期尚早であり、十分な評価材料がない、とした<ref>{{Cite news|url=http://www.cnn.co.jp/world/30002159.html|title=スリーマイル島を上回る規模 仏当局者が見解|newspaper=CNN.co.jp|date=2011-03-16|accessdate=2011-03-17}}{{リンク切れ|date=2017年3月}}</ref>。原子力安全・保安院は、3月18日にINES判定をレベル5に引き上げた{{Sfn|原子力災害対策本部|2011|loc=21}}<ref name="nisa20110318">{{WAP|pid=3487630|url=http://www.meti.go.jp/press/20110318009/20110318009-1.pdf|title=東北太平洋沖地震による東京電力(株)福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の事故・トラブルに対するINES(国際原子力・放射線事象評価尺度)の適用について|date=2012-04-02}}</ref>。これに対し米科学国際安全保障研究所 (ISIS) は4月1日、さらに深刻なレベル「6」に引き上げるべきだとの見解を示した<ref>{{Cite news|date=2011-04-02|url=http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&amp;k=2011040200145|title=「レベル6」への引き上げ提言=福島原発事故で米シンクタンク|newspaper=時事ドットコム|accessdate=2011-04-03}}{{リンク切れ|date=2017年3月}}</ref>。
 
3月25日、原子力安全委員会の[[緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム|SPEEDI]]システムを使った放射性物質の放出量は、3万[[テラ|T]][[ベクレル|Bq]] - 11万TBqと推定された。これはINESのレベル「7」の基準1には該当する。
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また、東電は2009年9月、[[貞観地震]]の津波も評価し、取水口付近に8.7 m〜9.2 mの津波が襲来するものの陸上への遡上は無いとした報告を[[原子力安全・保安院]]へ行っている<ref name="yomi20110825-1"/>{{Sfn|国会事故調|2012|p=86}}。
 
[[産業技術総合研究所]]活断層・地震研究センターの[[岡村行信]]センター長らは、[[2004年]]頃から[[貞観地震|貞観津波]]が残した地中の土砂を調査し、痕跡が宮城県[[石巻市]]から福島第一原子力発電所に近い福島県[[浪江町]]まで分布し、内陸3 - 4 kmまで入り込んでいることを確認した<ref>{{Cite web|author=岡村行信|coauthors=宍倉正展et al.|date=2007-09-28|url=http://unit.aist.go.jp/actfault-eq/seika/h18seika/pdf/shishikura.pdf|title=活断層・地震研究センターホーム>研究成果>活断層・古地震研究報告 第7号(2007年)・石巻平野における津波堆積物の分布と年代|format=PDF|publisher=産業技術総合研究所|accessdate=2011-03-27|deadlink=2017-03-29}}</ref>。[[2009年]]の国の審議会(原発の耐震指針の改定を受け電力会社が実施した耐震性再評価の中間報告書について検討する審議会)で、大地震や津波を考慮しない理由を東京電力に対して問い質したが、東京電力は「まだ十分な情報がない」「引き続き検討は進めてまいりたい」と答えるにとどまった。震災発生後、岡村センター長は、警告されたデータが完全でないことを理由にリスクを考慮しないという姿勢はおかしいと述べ、「原発であればどんなリスクも当然考慮すべきだ。あれだけ指摘したにもかかわらず、東京電力からは新たな調査結果は出てこなかった。『想定外』とするのは言い訳に過ぎない。もっと真剣に検討してほしかった」と話した<ref>毎日新聞2011年3月27日14新版1面「大津波再来」の指摘軽視、及び[http://mainichi.jp/select/today/archive/news/2011/03/26/20110327k0000m040036000c.html 福島第1原発:東電「貞観地震」の解析軽視(2011年3月26日)]{{リンク切れ|date=October 2012}}</ref><ref>東京新聞2011年3月24日11版S 18面「国会で津波議論済み」</ref><ref>[http://www.kyoto-np.co.jp/country/article/20110326000121 大津波、2年前に危険指摘 東電、想定に入れず被災]{{リンク切れ|date=2017年3月}} 京都新聞 2011年3月26日</ref><ref name="yomi110410">読売新聞2011年4月10日13版5面「東日本大震災4月9日対策強化指示・大津波の脅威ようやく直視」</ref>。
 
2012年[[6月13日]]の朝日新聞と翌[[6月14日|14日]]の読売新聞によれば、東京電力は2005年12月から2006年3月まで原子力技術・品質安全部設備設計グループが5号機がどの程度の津波に耐えられるか、想定の津波高さ5.7mを超え津波高さ13.5mから14mが襲った場合の分析を入社3年目の技術系社員の社内研修の研究課題とし、分析と報告させ非常用ディーゼル発電機やバッテリーなどすべての電源を失い、原子炉を冷却できなくなるという結果を得ていた。津波対策の費用も5号機および6号機周辺に約1.5km長の防潮壁を建設する場合は約80億円、建屋の出入り口の防水工事などに約20億円と試算した。これら研究成果と報告を幹部が把握したか不明であり、安全対策として反映されなかった<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/feature/20110316-866921/news/20120613-OYT1T01006.htm 東電、06年に福島第一の大津波対策費を試算]{{リンク切れ|date=2017年3月}}読売新聞2012年6月14日13S版37面</ref><ref>{{Cite Web|url=http://www.asahi.com/special/10005/TKY201206120810.html|title=東電、06年にも大津波想定 福島第一、対策の機会逃す|publisher=朝日新聞|date=2012-06-13|accessdate=2017-03-28}}</ref>。
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[[2006年]][[10月27日]]、[[吉井英勝]]([[京都大学]]原子核工学科卒業、[[日本共産党]])は、国会質問で当時の[[原子力安全委員会]]委員長の[[鈴木篤之]]に対して、福島第一原子力発電所を含む43基の[[原子力発電所]]は、地震によって送電線が倒壊したり、内部電源が故障したりすることで引き起こされる電源喪失状態、または大津波に伴う引き波によって冷却水の取水が不可能になると言った理由で炉心溶融にいたるのではないか、そうなった時どう想定しているのかと質問した<ref group="注">大津波による敷地や施設の冠水については特に大きな問題とはしていない。</ref><ref name="k061027">{{Cite Web|url=http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/165/0002/16510270002003a.html|title=第165回国会 内閣委員会 第3号|publisher=国会|date=2006-10-27|accessdate=2017-03-28}}</ref>。これに対し鈴木篤之は、電源喪失状態となり燃料溶融に至る事故は非常に低い確率論としては存在すると答え、吉井に対して、電力会社には、さらに激しい地震の影響を想定させると約束した<ref>{{Cite Web|url=http://jp.wsj.com/public/page/0_0_WJPP_7000-211334.html|title=福島第1原発事故、昨年議員が同様な事故の可能性警告|publisher=ウォール・ストリート・ジャーナル|date=2011-03-28|accessdate=2017-03-28}}</ref><ref name="k061027"/>。 吉井は同年[[12月13日]]にも、「巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書」<ref>{{Cite Web|url=http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a165256.htm|title=巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問主意書|publisher=吉井英勝|date=2006-12-13|accessdate=2017-03-28}}</ref>を[[内閣]]に提出し、原発の最悪の事故を念頭に、津波の引き潮により冷却水が喪失する可能性の指摘や、非常用ディーゼル発電機の事故によりバックアップが機能停止した過去事例の提示要求などを行ったが、当時の内閣総理大臣[[安倍晋三]]は、「我が国において、非常用ディーゼル発電機のトラブルにより原子炉が停止した事例はなく、また、必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない」と回答した<ref>{{Cite Web|url=http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/b165256.htm|title=衆議院議員吉井英勝君提出巨大地震の発生に伴う安全機能の喪失など原発の危険から国民の安全を守ることに関する質問に対する答弁書|publisher=内閣総理大臣 安倍晋三|date=2016-12-22|accessdate=2017-03-28}}</ref><ref>{{Cite Web|url=http://www.jcp.or.jp/akahata/aik09/2010-03-01/2010030101_05_1.html|title=チリ地震が警鐘 原発冷却水確保できぬ恐れ|publisher=しんぶん赤旗|date=2010-03-01|accessdate=2017-03-28}}</ref>。また、吉井は[[2010年]][[4月9日]]にも衆議院経済産業委員会で同じ問題を取り上げたが、当時の経済産業大臣の[[直嶋正行]](民主党)は、「多重防護でしっかり事故を防いでいく、メルトダウンというようなことを起こさせない、このための様々な仕組みをつくっている」<ref>{{Cite Web|url=http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/174/0098/17404090098007a.html|title=第174回国会 経済産業委員会 第7号|publisher=国会|date=2010-04-09|accessdate=2017-03-28}}</ref>と説明した。
 
2011年3月15日の米ABCによると、米[[ゼネラル・エレクトリック]] (GE) 社の技術者Dale G. Bridenbaugh(和表記:ブライデンボー)は、[[1975年]]の時点で「Mark I」型原子炉では冷却装置が故障した場合に格納容器に動的負荷がかかることを勘案した設計が行われていないと次第に認識しつつ退社に至ったと語ったとのことである<ref>{{Cite news|title=Fukushima: Mark 1 Nuclear Reactor Design Caused GE Scientist To Quit In Protest, Damaged Japanese Nuclear Plant Has Five Mark 1 Reactors|url=http://abcnews.go.com/Blotter/fukushima-mark-nuclear-reactor-design-caused-ge-scientist/story?id=13141287|newspaper=[[ABCニュース (アメリカ)|ABCニュース]]|date=2011-03-15|accessdate=2011-03-24|language=英語|trans_title=MarkI原子炉の設計欠陥に抗議しGE科学者退社}}<!--見出しには抗議protestとあるが国内外各紙のどこにも、抗議して辞職したとは記述がない--></ref>。その後は米原子力規制委員会と協力しながらMark I原子炉の廃止を訴え続けたと一部で報道されている<ref>[http://www.wa-dan.com/article/2011/03/post-83.php 75年に同僚2人とともにGEを退職すると、米原子力規制委員会と共同戦線を張ってマークIの製造中止を訴えてきた。]{{リンク切れ|date=2017年3月}}</ref><ref>[http://mainichi.jp/select/weathernews/20110311/archive/news/2011/03/30/20110330k0000e030026000c.html 上司は「電力会社に操業を続けさせなければGEの原子炉は売れなくなる」と議論を封印。ブライデンバーさんは76年、約24年間勤めたGEを退職した。直後、米議会で証言]{{リンク切れ|date=2017年3月}}}</ref>。
 
同日の米ニューヨーク・タイムズによると、福島第一原発など日本にも9基ある「Mark I」型軽水炉について、アメリカ原子力規制委員会 (NRC) は1972年、格納容器が小さいことを問題視した。水素がたまって爆発した場合、格納容器が損傷しやすいとして「使用を停止すべきだ」と指摘していたことを報じた<ref name="akahata_genpastu03">{{Cite Web|url=http://www.jcp.or.jp/akahata/html/senden/2011_genpatsu/index03.html|title=原発の源流と日米関係(3)|publisher=しんぶん赤旗|date=2011-06-09|accessdate=2017-03-28}}</ref><ref name="NY0315">{{Cite Web|url=http://www.nytimes.com/2011/03/16/world/asia/16contain.html?_r=1|title=Experts Had Long Criticized Potential Weakness in Design of Stricken Reactor|publisher=ニューヨークタイムズ|date=2011-03-15|accessdate=2017-03-28}}</ref>。
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米紙[[ウォール・ストリート・ジャーナル]](電子版)は2011年3月19日に、事故の拡大は、東京電力が廃炉を懸念したため原子炉への海水注入が1日近く遅れたと報じた(12日の朝に検討し13日に全ての号機で注入開始)。注水後の12日夜に、東京電力から連絡を受けた政府側の受け身の姿勢も事故対応の遅れにつながったと指摘している。事故対応に当たった複数の関係者によると、東電が海水注入をためらったのは長年の投資が無駄になることを心配したためだという。海水を注入した場合、塩分により鋼鉄の圧力容器が腐食し、原子炉が再び使える可能性はほぼなくなる<ref>[http://www.47news.jp/CN/201103/CN2011032001000434.html 海水注入遅れたと米紙指摘 東京電力、廃炉を懸念]{{リンク切れ|date=2017年3月}}</ref><ref>[http://www.sponichi.co.jp/society/news/2011/03/20/kiji/K20110320000465240.html 米紙指摘 東京電力 廃炉の懸念で海水注入遅れた「60%が人災だ」]{{リンク切れ|date=2017年3月}}</ref>。
 
2011年5月20日には、[[TBSテレビ|TBS]]や[[共同通信]]など国内のテレビ局ならびに新聞社において、官邸の指示により海水注入を中断したとの報道が広くなされていたが<ref>[http://megalodon.jp/2011-0520-1844-57/news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4729987.html 1号機海水注入、官邸指示で中断]TBS 2011年5月20日</ref><ref>[http://www.47news.jp/CN/201105/CN2011052001001207.html 1号機の海水注入を55分間中断 再臨界恐れ首相指示]{{リンク切れ|date=2017年3月}}共同通信 2011年5月20日</ref>、2014年8月に[[吉田昌郎]]の証言集である吉田調書が報道各社で検証されたことを受けて、9月1日に元首相の[[菅直人]]は「首相意向で海水注入中断」「震災翌日、55分間」との2011年5月21日付[[読売新聞]]の記事をとりあげ、読売に対して謝罪を要求<ref>{{Cite Web|url=http://www.j-cast.com/2014/09/02214748.html|title=菅直人氏、読売新聞に謝罪求める 「首相意向で海水注入中断の報道は二重の意味で誤り」|publisher=J-CASTニュース|date=2014-09-02|accessdate=2017-03-28}}</ref>。9月3日には「(読売は)相当びびっている」などとツイッターでつぶやいた<ref>[http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140912/stt14091208240002-n1.htm  現地視察「吉田所長に迷惑かけたかも」 菅元首相、ブログで釈明]{{リンク切れ|date=2017年3月}}産経新聞 2014年9月12日</ref>。
 
実際には、現場を指揮した[[吉田昌郎]]の判断により海水注入は中断することなく行われており<ref>{{Cite Web|url=http://www.nikkei.com/article/DGXDZO29296360X20C11A5NN8001/|title=原発対策、信頼失う 東電、注水中断確認せず|publisher=日本経済新聞|date=2011-05-27|accessdate=2017-03-28}}</ref>、2011年5月27日、ウォール・ストリート・ジャーナルもこの事実を報じた<ref>{{Cite Web|url=http://realtime.wsj.com/japan/2011/05/27/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%AC%AC1%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%81%AE%E5%90%89%E7%94%B0%E6%89%80%E9%95%B7%E3%81%AE%E6%B3%A8%E6%B0%B4%E7%B6%99%E7%B6%9A%E5%88%A4%E6%96%AD/|title=福島第1原発の吉田所長の注水継続判断|publisher=ウォール・ストリート・ジャーナル|date=2011-05-27|accessdate=2017-03-28}}</ref>。
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== 注釈 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist|group=""}}
 
== 出典 ==
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* [http://www.kagakueizo.org/movie/industrial/365/ 「福島の原子力」(日映科学映画製作所、企画:東京電力、1977年 カラー 27分)] - 科学映像館
* [http://www.kagakueizo.org/movie/industrial/350/ 「黎明 福島原子力発電所建設記録 調査篇」(日映科学映画製作所 企画:東京電力、1967年 カラー 26分)] - 科学映像館
* [http://www.kagakueizo.org/movie/industrial/4319/  「黎明 第二部 建設編」(日映科学映画製作所、企画:東京電力、1971年 カラー29分56秒)] - 科学映像館
* [http://www.kagakueizo.org/movie/industrial/4275/  「目で見る福島第一原子力発電所」(日映科学映画製作所、企画:東京電力、1991年 カラー 23分55秒)] - 科学映像館
* [https://web.archive.org/web/20110412145205/http://www.tepco.co.jp/nu/knowledge/quake/index-j.html 東京電力 もっと詳しく原子力 地震対策] - 閉鎖。(2011年4月12日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])
* [http://replay.waybackmachine.org/20090405094811/http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/index-j.html 東京電力 福島第一原発(2009年記録)] - Internet Archive
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{{DEFAULTSORT:ふくしまたいいちけんしりよくはつてんしよしこ}}
[[Category:原子力安全]]
[[Category:福島第一原子力発電所事故| *]]
[[Category:リスクアセスメント]]
[[Category:平成時代の災害]]