「ABO式血液型」の版間の差分

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== 分布 ==[[#保志1968|保志(1968) p.324-325]]
ABO式血液型の分布は母集団([[地域]]や[[人種]])によって差が大きく、コロンブス以前の分布<ref group="脚注">オーストラリア・南北アメリカ大陸などは先住民のデータから推測。</ref>では、O型の率は世界的にどこでも多いが特に[[アメリカ大陸]]の先住民(比率は後述)、A型が多い地域は[[ヨーロッパ]](35~50%)、B型が多い地域は北部インドからモンゴル(30%)となり<ref group="脚注">比率でわかるようにこれらの地域でもA型やB型は過半数に達しておらず、O型の方が多数派の場合も多い。</ref>、特にO型は中南米では100%近くになる場合もあるが、北米ではカナダの[[アルバータ州]]付近からアメリカの[[モンタナ州]]付近<ref group="脚注">原文では「カナダ西部のモンタナ州」だがそのような場所は存在しないため、図の該当部位などから「カナダ西部(からアメリカモンタナ州にかけて」の意味と判断。</ref>の先住民はヨーロッパ以上にA型の出現率が多く(50%以上)、オーストラリア南部と西部の先住民もA型の出現率が35~50%近い集団が存在しており、しかもこの2か所はMN式血液型の比率がヨーロッパ人と全く違う<ref group="脚注">ヨーロッパ人はM型遺伝子を持つ人が半分ぐらいいるが、オーストラリア先住民にはほぼいない。また、アメリカ先住民は逆にM型遺伝子をもつものが圧倒的に多くA型の多い地域では80~90%に達する。([[#保志1968|保志(1968) p.326図1「M型遺伝子頻度の地理的分布」]])</ref>ためヨーロッパ人との混血の影響でA型の率が増えたのではなく、これらにより「初期の人類はO型のみで、アメリカ先住民が移動後にユーラシアでA型やB形が生まれたのではないか?」という説が否定された。
 
一方、B型は西側の最頻地域から離れるに従い徐々に低下していくのは当然だが、同じモンゴロイド系の人種でもアジア側では比較的多い<ref group="脚注">日本やシベリア先住民ではやや低いが、北海道などのアイヌはB型が比較的多い。</ref>のにアメリカ先住民にほとんどおらず(アラスカの一部を除き5%以下)、アジアの中部にまとまっていることから「アメリカ先住民の新大陸移住(約2万年~1万5千年前)後にアジアで増加した」か「アメリカ先住民の先祖にB型がほとんどいなかった」のどちらかの可能性が高いと考えられる[[#保志1968|保志(1968) p.325]]。
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ABO型の各型の凝集力の違いなどを元にさらに下の亜型がある。検査については[[亜型検査]]を参照。
<!--「A抗原何%、H抗原何%」などはノートで言われているように出典不詳なうえ意味不明なので削除。代わりに『最新 血液型の基本と仕組み』にあった抗原数の数値を乗せます。-->
基本的に型が同じなら抗原は同じもの(量が異なるのみ)ので亜型が違っても輸血の上では問題ない<ref name="A型とB型にも種類がいっぱい">[[#松尾友香、『最新 血液型の基本と仕組み』株式会社秀和システム、2009年、116P、ISBN978-4-7980-2422-6|松尾(2009) p.116]]</ref>。(ボンベイ型は特例で問題が起きる
=== A型の亜型 ===
; A1 : 普通のA型。A型の人のうち約80%を占める。(赤血球1個当たりの抗原数8.1×10<sup>5</sup>〜11.7×10<sup>5</sup>)<ref name="A型とB型にも種類がいっぱい"></ref>
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[[画像:CisAB.svg|150px|thumb|普通、AB型(遺伝子型はA/B)とO型(遺伝子型はO/O)の両親からはA型とB型のこどもが生まれるが、遺伝子型がcis-AB/OとO/Oの親からはAB型(シスAB)とO型のこどもしか生まれない。]]
; {{Anchor|シスAB型}} (cisAB) : 普通、A型遺伝子とB型遺伝子が重なった際にAB型になる(例・A×B=AB)。しかし、シスAB型の人には、'''AB型遺伝子'''ともいえるものが存在し、配偶者がO型などでもAB型が生まれる事がある(例えばcisAB×Oの場合は全ての型が生まれる可能性がある)。ちなみに、普通のAB型は'''トランスAB型'''と呼ばれる。
: シスAB型の場合、普通のAB型に比べて抗原を作る量が少ないことが多く、A<sub>2</sub>B<sub>3</sub>、A<sub>2</sub>B、A<sub>1</sub>B<sub>3</sub>の3種類が報告されており<ref name="A型とB型にも種類がいっぱい"></ref>、一番典型的なA<sub>2</sub>B<sub>3</sub>型の場合、A抗原・B抗原は弱いがH抗原は通常より高く、A<sub>1</sub>レクチンに反応しない。血清に弱い抗B抗体があり、時には抗A<sub>1</sub>抗体もあるが体温では反応しないなどの特徴を持つ<ref>[[#北村聖、編集『看護のための最新医学講座』株式会社中山書店、2006年第2版、|北村(2006) p.344・346P、ISBN4-521-62511-8346]]</ref>。
 
{| class="wikitable"
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; ボンベイ型(Oh)
: 本来、赤血球にはH抗原が付いており、それにA抗原・B抗原がぶら下がっている。ところが、ボンベイ型にはH抗原が存在しておらず、赤血球からA抗原・B抗原が検出されないので、A型やB型の遺伝子を持っていてもおもて試験ではO型と判定されてしまう。
: うら試験の場合、ボンベイ型は抗H抗体を自然抗体として持つので、通常A・B型血球と対照用に使うO型血球<ref>[[#北村聖、編集『看護のための最新医学講座』株式会社中山書店、2006年第2版、345P、ISBN4-521-62511-8|北村(2006) p.345]]</ref>を凝集させる。
: この抗H抗体は体温で反応することがあり<ref group="脚注">抗H抗体自体はA型・AB型で一番多いA<sub>1</sub>型やA<sub>1</sub>B型の血清にも存在するが、こちらは体温で反応しないため輸血で問題にされることはほとんどない。</ref><ref>[[#北村聖、編集『看護のための最新医学講座』株式会社中山書店、2006年第2版、344P、ISBN4-521-62511-8|北村(2006) p.344]]</ref>基本的にボンベイ型にO型を含むH抗原のある型の血液を輸血できない。
: これに似たパラボンベイ型はA抗原もしくはB抗原を弱くだが持つ型、輸血などの問題はボンベイ型と同様。
: [[インド]]のボンベイ(現在の[[ムンバイ]])で発見されたことから、この名前がついた。
: 前述のようにAやB遺伝子を無視してAやB抗原を取り付けられなくしているため、厳密にはABO式と無関係でO型亜種ではなく、1932年に発見されたHh式血液型のh型にあたる血液型である(大半の人はH型になる)<ref>[[#松尾友香、『最新2009|松尾(2009) 血液型の基本と仕組み』株式会社秀和システム、2009年、p.56・182・204P、ISBN978-4-7980-2422-6204]]</ref>。
 
{| class="wikitable"
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誕生時には、うら検査で判定するのに必要な血液型決定因子が不足しているので判定できず、おもて検査では、凝集が起きにくいタイプの場合や凝集の有無を間違って、誤って仮判定されるケースがある。そのため、成長してから正しい血液型が確定された場合に、ABO型の血液型が変わったかのように見える場合がある。なお、おもて検査とうら検査の判定が一致しなかった場合は再検査する。それでも一致しなかった場合は以下の可能性も考慮する。おもて検査とうら検査には優劣がないため、どちらかの判定を優先して血液型を決定するということはしない。
 
'''おもてとうら不一致時に考えられる可能性'''<ref>[[#北村聖、編集『看護のための最新医学講座』株式会社中山書店、2006年第2版、345-346P、ISBN4-521-62511-8|北村(2006) p.345-346]]</ref>。
;血球側に問題がある場合の例
:亜型([[#ABO式血液型の亜型分類]]参照)
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== 出典 ==
{{reflist|2}}
'''参考文献'''
* {{Cite journal|和書| author = 古畑種基| authorlink = 古畑種基| title = 血液型の話| publisher = 岩波書店| series = 岩波新書| date = 1962年| ref =古畑1962}}
* {{Cite journal|和書| author = 保志宏 |author2 = 今尾恵介(監修)| title =機能から見た変異「血液成分の個人差」|journal =原色現代科学大事典6-人間| publisher = 株式会社学習研究社| date = 昭和43年| pages =323-327P| ref =保志1968}}