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「望ましい登山者数」問題や保全協力金などの加筆と記述整理。
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;歴史
[[ファイル:Fuji pilgrim hokusai.jpg|thumb|250px|江戸時代の富士登山。浮世絵「冨嶽三十六景 諸人登山」。北斎画。]]
:富士山は古来より[[神体山]](霊山、霊峰)として古来崇められ、登山は[[山岳信仰]]の一環として行われの歴史が長い。[[伝説]]では[[飛鳥時代]]、[[聖徳太子]]が乗[[馬]]して山頂に至り<ref>[https://mainichi.jp/articles/20170812/ddl/k19/040/062000c 聖徳太子騎馬像、8合目山小屋に 富士山/山梨]『毎日新聞』朝刊2017年8月12日(山梨県版)</ref>、[[役小角]]が[[流刑]]先の[[伊豆大島]]から海上を歩いて富士山頂に通っとされる。[[平安時代]]の貴族で学者の[[都良香]]が記した『[[富士山記]]』には[[富士山]]頂上の実情に近い風景描写がある。これは、良香本人が登頂、または実際に登頂した者に取材しなければ知り得ない記述であり、富士登山の歴史的記録として重要である。[[江戸時代]]には関東地方を中心に[[富士講]]が流行し、信仰目的の登山が増加した。観光目的の登山は[[明治期]]以降に盛んになった<ref>[http://www.fujiyama-navi.jp/fujitozan/appeal/page/tozan/ 毎夏約30万人を魅了する富士登山|富士山に登ろう]</ref>。
:初の富士山はかつて[[女人禁制]]とされていた<ref>[http://www.iwata-shoin.co.jp/bookdata/ISBN978-4-87294-690-1.htm 竹谷靱負『富士山と女人禁制』(岩田書院)]</ref>が、[[江戸時代]]後期になると1832年に女性登頂者初めて[[小谷三志|高山たつ]](1832年10月下旬)が登頂<ref>[https://www.fujisan-net.jp/data/article/1041.html 富士山に初めて登った日本人女性は変装していた|富士山NET]</ref>、初の外国人初の登頂者は英国公使[[ラザフォード・オールコック]](1860年7月)、初の外国人女性登頂者は英国公使[[ハリー・パークス]]夫人(1867年10月)である<ref>[http://www.cbr.mlit.go.jp/fujisabo/jimusyo/fujiazami/fujiazami_64/fa64-2.html ふじあざみ64号(2)|富士砂防事務所]</ref>。
 
; 登山ルート
[[ファイル:HujiΣ.JPG|thumb|250px|五合目以上の富士山(北西斜面、標高約2300mから)]]
[[ファイル:Hasshinpo of Mt.Fuji 18.jpg|thumb|250px|富士山最高峰[[剣ヶ峰 (富士山)|剣ヶ峰]]]]
: 現在使用されている[[登山道]]には[[静岡県]]側の「富士宮ルート」・「須走ルート」・「御殿場ルート」、[[山梨県]]側の「吉田ルート」の4ルートがある。登山者の約六割は吉田ルートを使用する<ref>[http://kanto.env.go.jp/to_2016/post_67.html 平成28年夏期の富士山登山者数の中間発表(第1回)について(お知らせ)|関東地方環境事務所]</ref> 。いずれのルートも'''登山の知識と経験、装備が欠かせない<ref name=official>[http://www.fujisan-climb.jp/basic/index.html 登山の前に必ず知っておくこと|富士登山オフィシャルサイト]</ref>。'''
 
; 登山期間
: 富士登山の期間は、山開きの7月1日〜9月14日(山梨県側)もしくは7月10日〜9月10日(静岡県側)までである<ref name=official/>。残雪の多い年は7月中旬まで登山道に雪が残り、ルートの開通が山開きに間にわないことがしばしばある。日本最高峰である富士山の地形や気候は後述するように非常に厳しく、'''この期間外は、万全な準備をしない者の登山が原則禁止されている<ref name=guideline>[http://www.fujisan-climb.jp/risk/guidelines.html 富士登山における安全確保のためのガイドライン|富士登山オフィシャルサイト]</ref>。'''とくに'''積雪期・残雪期の無謀ともいえる登山は自殺に近い行為である<ref name=guideline/>。'''
 
== 気候 ==
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== 登山ルート ==
[[ファイル:HujiΣ.JPG|thumb|250px|五合目以上の富士山(北西斜面、標高約2300mから)]]
登山ルートは山梨県側に吉田ルート、静岡県側に富士宮ルート・須走ルート・御殿場ルートがある。各ルートの登山口(自動車道の終点)は「五合目」又は「新五合目」と呼ばれているが、その標高はルートによって大きく異なる。例えば富士宮ルートの五合目は標高2380mだが、御殿場ルートの新五合目は標高1440mである。
[[ファイル:Hasshinpo of Mt.Fuji 18.jpg|thumb|250px|富士山最高峰[[剣ヶ峰 (富士山)|剣ヶ峰]]]]
: 現在使用されている[[登山道]]には[[静岡県]]側の「富士宮ルート」「須走ルート」「御殿場ルート」、[[山梨県]]側の「吉田ルート」の4ルートがある。登山者の約六割は吉田ルートを使用する<ref>[http://kanto.env.go.jp/to_2016/post_67.html 平成28年夏期の富士山登山者数の中間発表(第1回)について(お知らせ)|関東地方環境事務所]</ref> 。いずれのルートも'''登山の知識と経験、装備が欠かせない<ref name=official>[http://www.fujisan-climb.jp/basic/index.html 登山の前に必ず知っておくこと|富士登山オフィシャルサイト]</ref>。'''
 
登山ルートは山梨県側に吉田ルート、静岡県側に富士宮ルート・須走ルート・御殿場ルートがある。各ルートの登山口(自動車道の終点)は「五合目」又は「新五合目」と呼ばれているが、その標高はルートによって大きく異なる。例えば富士宮ルートの五合目は標高2380mだが、御殿場ルートの新五合目は標高1440mである。各登山口や主要駐車場では、環境・安全対策の財源となる原則1,000円の「富士山保全協力金」を支払う<ref>[http://www.fujisan-climb.jp/manner/kyoryokukin.html 富士山保全協力金]富士登山オフィシャルサイト(2018年4月1日閲覧)</ref>
{{clear}}
{| class="wikitable" style="font-size:90%;"
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[[ファイル:Fujisan Goraikou.JPG|thumb|250px|right|吉田口八合目よりご来光を望む]]
 
上記の所要時間は目安に過ぎない。また、混雑時([[日の出|御来光]]前後や[[お盆]]時期など)は[[渋滞]]が起き、さらに時間がかかる。各登山ルートを登りきった場所([[お鉢巡り]]ルートとの合流点)を「頂上」または「山頂」と呼んでいるが、これらは標高3,776mの富士山最高地点の[[剣ヶ峰 (富士山)|剣ヶ峰]]とは異なる場所である。各登山口の頂上又は山頂に到達しても、剣ヶ峰には行かない登山者も多い。{{Main2|剣ヶ峰への経路については、[[剣ヶ峰 (富士山)#剣ヶ峰への到達]]を}}
 
===吉田ルート===
[[ファイル:Mt.Fuji Horse.jpg|thumb|250px|right|富士スバルライン五合目ではレジャー化が進み、馬を使った観光業も見られる]]
[[山梨県]][[鳴沢村]]・[[富士吉田市]]の富士スバルライン五合目を出発し、富士山北側から山頂を目指すルート<ref name=yoshida>[http://www.fujisan-climb.jp/trails/yoshida/index.html 吉田ルート|富士登山オフィシャルサイト]</ref>
。登山口の標高は2305m。六合目で[[吉田口登山道]]と、本八合目で須走ルートと合流する。頂上には[[久須志神社]]がある。全登山者の六割以上がこのルートを利用する。吉田口登山道として[[世界遺産|世界文化遺産]]「[[富士山-信仰の対象と芸術の源泉]]」の一部に登録されている。
 
; 利点
: [[富士山有料道路]](富士スバルライン五合目の標高が富士宮口五合目に次いで高い<ref name=yoshida/>。山小屋や救護所が多く、トラブルに見舞われても安心<ref name=yoshida/>。登山道の開通が比較的早い。9月上旬まで営業している[[山小屋]]がある。五合目から七合目まで馬に乗って体力をセーブできる。観光を主眼にした登山道で、初心者でも挑戦しやすい(最低限の知識と経験、装備は必要)。関東からのアクセスが良く、[[バス (交通機関)|バス]]の本数も非常に多い。
; 難点
: 登山者が非常に多く、混雑する。駐車場や山小屋も混んでいる。早朝は八合目以上が渋滞しやすく、頂上で御来光を拝めないことがある。七合目付近から急な岩場になる。下山路に山小屋が一軒しかなく、ルートも登山路に比べて遠回りとなる<ref name=yoshida/>。山頂の[[久須志神社 (富士山)|久須志神社]]から剣ヶ峰まで約50分かかる。下山時に八合目の下江戸屋分岐で誤って須走口に降りてしまうことがある。人工物が多く、自然を満喫できない。マイカー規制の無い時期の週末は、[[富士山有料道路]]スバルラインが渋滞することがある。七合目までの登山道には馬糞が落ちている。
 
; 主なアクセス
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; 利点
: 登山口の標高が高いので、他のルートよりも早く山頂に着く<ref name=fujinomiya/>。山小屋が多く、八合目には[[診療所]](富士山衛生センター)もあり、トラブルに見舞われても安心。[[宝永山]]に立ち寄れる。浅間大社奥宮から剣ヶ峰まで20分で行ける。[[名古屋]]や[[関西]]からのアクセスが良い(最近は関東からも行きやすくなった)。
; 難点
: 登りと下りが同じ道で、登山者も多く、混雑しやすい<ref name=fujinomiya/>。駐車場や山小屋も混んでいる。平均勾配が約29%と傾斜が厳しく、岩場が多い<ref name=fujinomiya/>。樹林帯がなく、陽射しが強い。人工物が多く、自然を満喫できない。[[自家用自動車|マイカー]]は規制されやすい。バスの本数が吉田ルートに比べて少ない。残雪が多く、7月中旬まで登山道が開通しない年がある。発病や転倒事故が多い。
 
; 主なアクセス
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[[ファイル:Forest in Mt.Fuji 05.jpg|thumb|250px|樹林に覆われた5合目付近の登山道]]
[[ファイル:Mt.Fuji from Subashiri Trail 04.jpg|thumb|250px|6合目の手前より山頂を仰ぐ]]
[[静岡県]][[小山町]]の須走口五合目を出発し、富士山東側から山頂を目指すルート<ref name=subashiri>[http://www.fujisan-climb.jp/trails/subashiri/index.html 須走ルート|富士登山オフィシャルサイト]</ref>。登山口の標高は1970m。本八合目で吉田ルートと合流する。頂上には[[久須志神社 (富士山)|久須志神社]]がある。[[須走口登山道]]として世界文化遺産に登録されている。古来からの登山道である。
 
; 利点
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; 予約制
: 山小屋は宿泊の[[予約]]を受け付けている。予約をしていないと定員を超えたときなどに宿泊を断られることがある。ほとんどの山小屋は混雑しているが、(難度の高い)御殿場ルートの山小屋は比較的空いている。
; 宿泊料金
: 宿泊料金は素泊まりで一泊5,500円から-6,500円、2食付で7,000円から-8,000円程度である。なお、土日や休前日は1,000円程度料金が上乗せされることがある。ルートごとに宿泊料金がほぼ統一されている<ref>。[http://www.fujisanpo.com/yamagoya/charges.html 富士山の山小屋宿泊料金一覧|富士さんぽ]</ref>。料金の支払いは現金が推奨され、クレジットカード、その他カードは使用できない<ref name=yamagoya/>。
; 寝室
: 基本的には男女相部屋の大部屋である。一人辺りのスペースは狭く、混雑時はさらに圧迫される<ref name=yamagoya/>。個室を備えた山小屋もわずかにある<ref>吉田ルートの鎌岩館</ref>。
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=== トイレ ===
以前はほとんど垂れ流しで、山の斜面に垂れ流された排出物が、富士山の[[自然遺産 (世界遺産)|自然遺産]]としての[[世界遺産]]不推薦の原因の一つとなっていた。静岡県側を中心に、県や地元[[NPO]]により早くから[[バイオトイレ]]の試験的な導入が行われていたが、前述の[[世界遺産]]登録問題への取り組みあっ本格化しから以降は、山梨県側でも環境庁(後に[[環境省]]の指導で導入が進められた。現在では全ての山小屋のトイレが環境配慮型に切り替わった。
 
基本的に有料で、1回100円〜300円<ref>[http://www.fujisan-climb.jp/useful/toilet.html 富士山のトイレ|利用のための情報|富士登山オフィシャルサイト]</ref>(山頂は300円、それ以外は200円が中心)の利用料金を支払う必要がある。臭気の問題から、小屋から少し離れて建てられている。処理方式はトイレごとに異なるので、利用に際しては利用方法や注意事項を確認する必要がある<ref name=yamagoya/>。夏山期間以外は閉鎖される。
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== 危険性 ==
富士山を安全に登るためには、他の山と同様、登山の知識と経験、装備が不可欠である。しかし知名度の高さや五合目までのアクセスの良さが災いし、それらを欠いた登山者がしばしば入山し、[[遭難]]している。遭難の主な原因は、疲労や体力不足、装備不備、悪天候、[[高山病]]、持病の悪化、過密スケジュールなどである<ref>[http://www.fujisan-climb.jp/m3oati0000005me4-att/guideline_jp_rev201512.pdf 富士登山における安全確保のためのガイドライン]</ref>。御殿場ルートでは疲労と道迷い、須走ルートでは転倒、富士宮ルートでは転倒と発病が多い<ref>[http://www.fujisan-climb.jp/risk/accisident.html 遭難・事故のリスク情報|富士登山オフィシャルサイト]</ref>。静岡県側の3ルート(御殿場ルート、須走ルート、富士宮ルート)では、平成15年から24年までに390名が遭難し、33名が死亡、150名が重軽傷を負っている。山梨県側の吉田ルートも似たような状況である<ref>[http://www.fujisan-climb.jp/risk/accisident.html 遭難・事故のリスク情報|富士登山オフィシャルサイト]</ref>。
 
;天候急変
:富士山では天候が急変しやすく、強風、濃[[]][[落雷]]に警戒が必要である<ref>[http://www.fujisan-climb.jp/m3oati0000005me4-att/guideline_jp_rev201512.pdf 富士登山における安全確保のためのガイドライン]</ref>。
 
;[[落石]]
:富士山では落石がたびたび度々発生する。石を落さないためには、登山道を外れて歩かないこと、浮石を踏まないことが大切である。
:1980年の[[富士山大規模落石事故]]では、12人が死亡、29人が重軽傷を負い、吉田口の下山ルートが変更されるなどの影響があった。
 
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;シーズンオフの登山
:とく原則禁止されている。特に積雪期・残雪期の富士山はきわめて危険で、ベテラン登山家も命を落としかねない。例えば[[2009年]]12月、[[8000m峰]]二峰の登頂経験のある[[片山右京]]らが遭難、同伴者二名が死亡した。[[2013年]]12月には、[[エベレスト]]を含む8000m三峰の登頂経験のある人物が遭難死した<ref>[http://www.47news.jp/m/news/201312/SM1202_997136.html 「エベレスト登山歴ある大ベテランが…」4人富士山滑落で関係者|47News]</ref>。
:原則禁止されている。
:とくに積雪期・残雪期の富士山はきわめて危険で、ベテラン登山家も命を落としかねない。例えば[[2009年]]12月、[[8000m峰]]二峰の登頂経験のある[[片山右京]]らが遭難、同伴者二名が死亡した。[[2013年]]12月には、[[エベレスト]]を含む8000m三峰の登頂経験のある人物が遭難死した<ref>[http://www.47news.jp/m/news/201312/SM1202_997136.html 「エベレスト登山歴ある大ベテランが…」4人富士山滑落で関係者|47News]</ref>。
:[[富士山大量遭難事故|大量遭難事故]]も繰り返し起きており、[[1954年]]11月には15人が、[[1960年]]11月には11人が、[[1972年]]3月には24人が死亡した。
 
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=== マイカー規制 ===
環境保護および駐車場の過剰混雑のため、登山シーズンはマイカー規制が[[富士山有料道路|富士スバルライン]](吉田ルート)[[静岡県道150号足柄停車場富士公園線|ふじあざみライン]](須走ルート)[[表富士周遊道路|富士山スカイライン]](富士宮ルート)で行われている。五合目の駐車場が利用できなくなる。2017年は7月10日〜9月10日が規制対象である。
 
規制対象日(2017年)
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=== 皇太子の富士登山 ===
[[ファイル:富士山赤岩八合館.JPG|thumb|250px|御殿場口・7合9勺に位置する山小屋・赤岩八合館。2008年に[[皇太子徳仁親王]]が富士登山を行った際の宿泊地となった。]]
[[2008年]][[8月7日]]〜[[8月8日]]に、登山を趣味とする[[皇太子徳仁親王]]が20年ぶりに富士登山を行った。1988年にも富士登山を試みたものの途中で悪天候で引き返したが、2008年は天候にも恵まれ山頂まで到達できた。富士宮口五合目から登山を開始し、混雑する富士宮口登山道から新六合目で分かれて[[宝永山]]に到着後に御殿場口登山道に入り<ref>登山者が少なく警備が簡単で、多くの登山者に影響を与えることの少ないため</ref>、御殿場口7.9合目の山小屋(赤岩八合館)に1泊した後、翌朝6時30分頃、無事登頂と[[お鉢巡り]]を行った。下山は御殿場口の大砂走り経由で、そのまま御殿場口新五合目まで下り、昼までに下山を完了した<ref>産経ニュース 2008.8.8 08:26</ref>。登頂の際、富士山頂で見た日の出を見て詩を詠んでいる。
 
登頂の際、富士山頂で見た日の出を見て詩を詠んでいる。
<blockquote>「雲の上(へ)に太陽の光はいできたり富士の山はだ赤く照らせり」</blockquote>
 
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=== 御来光と影富士 ===
御来光とは高山で拝む[[日の出]]のことである。[[阿弥陀如来]]等、[[仏陀]]の出現に日の出を例えた表現である。富士山では御来光を頂上で見ようという登山者が多く、日の出直前の頂上付近は渋滞で動かなくなることもある。山小屋の前や登山道の途中で来光を迎える事もある。影富士とは富士山自身の[[影]]が[[日没]]前や日の出の直後に、太陽の反対側の[[雲海]]や地表に投影することである。富士山は[[独立峰]]であるため、東に開けた御殿場ルートでは曇天などでなければ、登山道のどこからでも御来光と影富士を見ることができる。山頂にも、日の出直後の影富士を見ることができる地点がある。
 
=== 案内標識 ===
山梨県側の登山道(吉田ルート)の呼び方が「吉田口」と「河口湖口」の2種類が混用されていたり標識が統一されておらずいなかったりして分かりにくかった。そのうえ不必要な場所に標識が乱立しており必要な標識の認識の妨げとなっていた。また、外国語表記が少なく増加し続ける外国人登山者に不親切であった。そのため2009年の山開きに間に合うよう案内標識の統一が図られ標識の乱立も改善された。その結果、山梨県側の登山道については「吉田口」(吉田ルート。ただし五合目は「富士スバルライン五合目」)の名称で統一され<ref>ただし、富士山五口協議会の公式ポスターなど、麓の出発点としての吉田口、河口湖口の名称はその後も使われている。</ref>、標識の枚数も整理されて大きく減少した。この新標識は基本的に日本語・[[英語]]・[[中国語]]・[[朝鮮語|韓国語]]の計4ヶ国語で表記されており、外国人にもかりやすくなった<ref>富士山:もう迷わない 乱立の標識、統一(毎日新聞)2009年6月25日</ref>また、各登山道で標識の色も統一された。
 
=== 9月登山(夏期) ===
静岡県側は9月10日、山梨県側は9月14日で登山道が通行止めになる。9月に入ると営業している山小屋が少なくなり、宿泊休憩[[飲料水]]・食事[[便所|トイレ]]の提供の問題により、登山者は徐々に少なくなる。静岡県側は、9月最初の日曜日を過ぎると富士宮ルートと御殿場ルートの七合目以上の山小屋及び須走ルートの多くの山小屋は閉鎖される。山梨県側は、吉田ルートの山小屋については、9月上旬まで大多数の山小屋が営業し、9月14日の閉山の直前まで営業するところが多いが、山頂の山小屋は8月下旬から徐々に休業し始める。
 
=== 夏期以外の登山 ===
「富士登山における安全確保のためのガイドライン(主に夏山期間以外における注意事項)」<ref name=guideline/>は、「気象条件が特に厳しいために遭難事故が発生するリスクが非常に高くなっている」ことや、「積雪期には傾斜が急な斜面が広範囲に渡って凍結するため、転倒等で滑落した場合に死亡事故につながる可能性が高い」ことなどを根拠に、「万全な準備をしない登山者の登山([[スキー]][[スノーボード]]による滑走を含む)」を禁止している。また、充分な技術・経験・知識・装備・計画のある登山者にも、[[入山届|登山計画書]]を所轄の[[警察署]]に必ず提出するよう要求している。
 
五合目以上の登山道は夏山期間以外は閉鎖される。[[御中道]]など5合目周辺も冬期は積雪し登山道が閉鎖される。2014年は12月1日に閉鎖し、2015年は6月20日に開通した<ref>[http://www.pref.yamanashi.jp/smartphone/kankou-sgn/fujisanocyuudou.html 山梨県/富士山 御中道 通行情報]</ref>。吉田口登山道は、5合目より下に関しては、[[富士山駅]]〜馬返のバスは2015年は5月2日〜11月3日がバスの運行期間<ref>[http://bus.fujikyu.co.jp/rosen/detail/id/5 富士山駅~中の茶屋・馬返 (馬返バス) - 富士急行バス]</ref>。冬期は積雪する。
 
=== お鉢巡り ===
[[ファイル:Hasshinpo of Mt.Fuji 40-2.jpg|thumb|250px|剣ヶ峰より見た富士山の[[八神峰]](山頂の峰々)と大内院(火口)]]
お鉢巡りとは、富士山山頂の[[火口]]を一周することである。富士山は山頂(登山道を登りきった場所)まで登って下山する登山者が多く、お鉢巡りはあまり多くない。時間と体力があり、天候に恵まれていないと実行は難しい。残雪が多い年はお鉢巡りルートに雪があるため、途中までしか行けないことがある。
{{main|お鉢巡り}}
 
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=== 携帯電話 ===
登山シーズン中は山小屋に臨時の基地局が置かれるうえ、多くの場所では麓からの電波も受信できるため、[[NTTドコモ]]、[[au (携帯電話)|au]]、[[ソフトバンク]]などの[[携帯電話]]が利用可能である<ref>[http://www.nttdocomo.co.jp/info/notice/tokai/page/090715_00.html 地域からのお知らせ(東海) : 富士山頂でも携帯電話がご利用可能に | お知らせ | NTTドコモ]</ref><ref name="au_05aun_info_20120711143647.html">[http://www.au.kddi.com/news/05aun/information/au_05aun_info_20120711143647.html 富士山の山頂におけるauサービスエリア拡充について]</ref>。全キャリア LTE も対応<ref>[http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/2013/07/11_00.html 富士山において「Xi」サービスを提供開始]</ref><ref>[http://www.softbank.jp/mobile/info/personal/news/service/20130710a/ 富士山頂において、iPhone 5 でLTEがご利用いただけます]</ref>。ただし、山頂の火口側など、山小屋からの電波も麓からの電波も届きにくい場所では電波が極めて弱く、圏外になることがある。auは旧富士山測候所に基地局がある<ref name="au_05aun_info_20120711143647.html"/>。山小屋では[[配線用差込接続器|コンセント]]の数は限られており、借用は原則認められないためコンセントでの[[充電]]は行えない。市販の携帯電話用[[充電器]](マルチソーラーチャージャーなど)の持ち込みが必要になる。
 
[[ファイル:Fujisanburu-1.jpg|thumb|250px|荷揚げのブルドーザー]]
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=== 清掃登山 ===
富士山の登山道や周辺には非常にゴミが多かったことなどが一因となり、富士山の[[世界自然遺産]]登録が実現しなかった<ref>『富士山が世界遺産になる日』小田全宏(著)、[[PHP研究所]]、2006年、ISBN 4-569-64733-2</ref>ことを踏まえ、富士山美化のために、[[NPO]]や[[企業]]などが毎年清掃登山活動を行っている。[[登山家|アルピニスト]]の[[野口健]]も一部の活動に参加し、活動参加者が増えるとともに登山道周辺のゴミは減ってきている。<ref>『富士山を汚すのは誰か』野口健(著)、[[角川書店]]、2008年、ISBN 978-4-04-710142-5</ref>
 
=== 「望ましい登山者数」問題 ===
富士山の世界文化遺産登録に際しては、入山者が多いことによる「神聖な雰囲気」の維持が課題として指摘された<ref>[https://mainichi.jp/articles/20170623/ddl/k19/040/419000c 富士山:「神聖な雰囲気」維持できるか 世界文化遺産登録4年]『毎日新聞』朝刊2017年6月23日(山梨県版)</ref>。上記のようなゴミ清掃や環境配慮型トイレの導入などが進んでも、富士登山人気の高まりによる自然環境や霊山としての雰囲気への圧力は大きい。このため山梨・静岡両県は「望ましい登山者数」(1日当たり吉田口4000人、富士宮口2000人)をまとめた。これは世界遺産を所管する[[国際記念物遺跡会議]](イコモス)に報告される予定である<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGKKZO28652110X20C18A3L92000/ 富士山登山者数の上限設定を了承 山梨・静岡の協議会]『日本経済新聞』朝刊2018年3月28日(地域経済面)</ref>。
 
== 脚注 ==