「王立宇宙軍 オネアミスの翼」の版間の差分

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|製作=[[末吉博彦]]、[[井上博明]]
|脚本=山賀博之
|出演者=[[森本レオ]]<br />[[弥生みつき]]<br />[[村田彩]]、[[曽我部和恭]]、[[平野正<!-- 主要]]、[[鈴置洋孝]]、[[伊沢弘]]、[[戸谷公次]]、[[安原義人]]、[[島田敏]]、[[安西正弘]]、[[大塚周夫]]、[[内田稔]]、[[飯塚昭三]]、[[徳光和夫]]物数名のみ(テンプレート解説より) -->
|音楽=[[坂本龍一]]、[[上野耕路]]、[[野見祐二]]、[[窪田晴男]]
|主題歌=
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|次作=
}}
『'''王立宇宙軍 オネアミスの翼'''』(おうりつうちゅうぐん オネアミスのつばさ)は、[[ガイナックス]]制作の[[サイエンスフィクション|SF]]アニメ映画。[[1987年]](昭和62年)[[3月14日]]に劇場公開された。純制作費は3億6000万<ref>{{Cite web |url=http://ch.nicovideo.jp/ex/blomaga/ar1137546 |title=岡田斗司夫の毎日ブロマガ「スタジオジブリ敗北!? 興行収入と配給収入についての解説」|publisher=岡田斗司夫の毎日ブロマガ |date=2016-11-16 |accessdate=2016-11-16}}</ref>だが、ハリウッドでのプレミア上映などプロモーションにかかった宣伝費などを含む総製作費は約8億円に対し[[配給収入]]は3億4700万円<ref>『映画プロデューサーが面白い』、キネマ旬報、1998年、p222。</ref>
 
架空の惑星にあるオネアミス王国を舞台として、王立宇宙軍の士官シロツグが史上初の宇宙飛行士に志願し、仲間とともにロケット打ち上げを目指すという作品。
 
 
== 評価物語 ==
[[1950年代]]の地球に似ている「もうひとつの地球」にある「オネアミス王国」正式国名「オネ・アマノ・ジケイン・ミナダン王国連邦」が舞台となる
 
「失敗ばかり」「なにもしない軍隊」と揶揄され、世間にオネアミス王国の落第軍隊として見下されている王立宇宙軍。宇宙軍士官のシロツグ・ラーダットはかつては水軍<ref group="注">オネアミス王国は湖のほとりの国で、海がない。</ref>のジェット戦闘機乗りにあこがれていたが、仕方なく入った宇宙軍で張り合いのない日々を送っていた。ある夜同僚たちと訪れた歓楽街で、シロツグは献身的に布教活動を行う少女、リイクニ・ノンデライコと出会う。多少の下心を秘めてリイクニの住居を訪れたシロツグだったが、彼女から「戦争をしない軍隊」である宇宙軍をほめられて思わず発奮し、宇宙戦艦という名目の人類初の有人人工衛星打ち上げ計画に志願し、宇宙を目指すことになる。
 
意気盛んに訓練に励み、国家的英雄に祭り上げられるシロツグだったが、打ち上げ計画の裏事情、多額の税金を使う宇宙開発の是非、開発責任者の事故死などのつらい現実に直面する。さらにロケットの軍事的脅威をつぶすため敵国「共和国」が放った刺客に命を狙われ、自己防衛のためとはいえ人を殺めてしまう。シロツグはリイクニに救いを求めようとするが、宗教にひたむきな彼女とはすれ違うばかりで、むしろ彼女と暮らす幼な子マナとの交流に心を癒される。
 
打ち上げ当日、国境近くのロケット発射台を巡り王国軍と共和国軍の激しい局地戦が始まる。カウントダウンが一旦中止されるも、シロツグは操縦席の中から仲間に発射決行を呼びかける。ロケットは弾丸飛び交う地上を離れて天高く上昇し、衛星軌道上にたどりついたシロツグは、地上の人々へ祈りのメッセージを語りかける。
 
== 概要 ==
=== 小説企画 ===
[[1950年代]]の地球に似ている「もうひとつの地球」にある「オネアミス王国」正式国名「オネ・アマノ・ジケイン・ミナダン王国連邦」が舞台。
本作の企画母体となったのは、[[日本SF大会]]のOPアニメを製作するために組織されたアマチュア映像集団「[[DAICON FILM]]」である。当時大学生だった[[山賀博之]]・[[庵野秀明]]・[[前田真宏 (アニメ監督)|前田真宏]]・[[貞本義行]]ら主要スタッフは『[[超時空要塞マクロス]]』や『[[風の谷のナウシカ (映画)|風の谷のナウシカ]]』の制作現場に参加してプロの仕事を学んだのち、次の方向としてオリジナル商業作品の創作に向かった。
 
当初は製作費4000万円の[[オリジナルビデオアニメーション]] (OVA) として企画されていたものだったが<ref>武田康廣『のーてんき通信 エヴァンゲリオンを創った男たち』ワニブックス、[[2002年]](平成14年)、p91</ref>、当時[[バンダイビジュアル|EMOTION]]の[[山科誠]]社長がレーベルで映像事業進出を模索していたことから映画化が実現し<ref>竹熊健太郎編『庵野秀明パラノ・エヴァ[[バゲリオン』太田出版、ダイ]]の[[1997年山科誠]](平社長への売り込みが9年)功しp76</ref>2時間の長編アニメ映画として製作することになった。本作を制作するためDAICON FILMは解散し、[[1984年]](昭和59年)に[[ガイナックス|GAINAX]]が設立された。当時、映画製作の進行状況など月刊[[モデルグラフィックス]]誌上において毎月リアルタイムに連載された。
 
アマチュアで名を馳せていたものの、プロで実績のない制作集団が全国ロードショー作品を任されることは異例であった。本作で映画監督デビューした山賀は当時24歳<ref group="注">『[[超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか]]』(1984年)で監督デビューした[[河森正治]]も当時24歳だった。</ref>、スタッフの平均年齢も24歳と若く、精密な世界設定や驚異的な作画水準など、アニメブーム期に台頭してきた若手クリエーターがセンスを発露する場となった。DAICON FILMの作品はマニア受けのするパロディやオマージュで知られたが、本作ではそうした要素を交えない姿勢に徹している。
監督は当時24歳の[[山賀博之]]。スタッフの平均年齢も24歳である。のちに『[[新世紀エヴァンゲリオン]]』などで有名となった[[貞本義行]]や[[庵野秀明]]も参加し、音楽監督として[[坂本龍一]]を起用している。興行的には成功とは言えなかったが、一部でロングラン上映をする館もあった<ref>『のーてんき通信』p96</ref>。また、ビデオ・レーザーディスク(「メモリアルボックス」)は長く好調な販売を記録した。[[1997年]](平成9年)に[[ドルビーデジタル]]版(「サウンドリニューアル版」)が制作、同年[[11月2日]]に公開された。
 
[[1992年]]([[平成]]4年)頃には山賀自身によって続編の『'''[[蒼きウル]]'''』が山賀監督自身によって構想されたが、諸事情から凍結となり実現していなかった。[[2013年]](平成25年)[[3月21日]]、『蒼きウル』後も何度か製作再開が明らかになっ発表され<ref>{{Cite news |url=http://mantan-web.jp/2013/03/21/20130321dog00m200013000c.html |title=蒼きウル : ガイナックスの凍結アニメが20年ぶりに再始動 |newspaper=まんたんウェブ |publisher=MANTAN |date=2013-03-21 |accessdate=2016-01-15}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://animeanime.jp/article/2013/03/21/13388.html |title=王立宇宙軍の続編「蒼きウル」20年ぶりに始動 ガイナックスがアニメフェアで発表 |work=アニメ!アニメ! |publisher=イード |date=2013-03-21 |accessdate=2016-01-15}}</ref>2017年まだ実在公開予定など明らかにされ至っていない。
公開当時、上映時間の都合からカットされた場面(約1分)があり、「メモリアルボックス」において登場キャラクターの声優である森本レオ・曽我部和恭による追加アフレコを行った上で本編に組み込まれた。その後1997年発売の「サウンドリニューアル版」ではこの場面は特典映像扱いとなり、本編は公開版に戻されている。これとは別に東宝東和側から、一日の上映回数を増やすため40分程度尺をカットするよう求められた際、企画の[[岡田斗司夫]]が「フィルムを切るのなら俺の首を切れ!」と啖呵を切り、阻止した。<ref group="注">「オタクアミーゴス!」での岡田斗司夫自身の証言。</ref>
 
=== タイトル ===
本作の企画構想時にスタッフが喫茶店で打ち合わせをしていた時、隣の客が[[ミルクティー|ロイヤルミルクティー]]を注文した。山賀はとっさに「ロイヤル・スペースフォース」という語を思い浮かべ、これを和訳した「'''王立宇宙軍'''」を企画タイトルにすることを閃いた<ref>『B-CLUB SPECIAL オネアミスの翼 〜王立宇宙軍コンプリーテッドファイル』 バンダイ 1987年 46頁</ref>。「王立〜軍」という言葉は、[[イギリス]]の軍組織が「[[イギリス空軍|王立空軍]] (Royal Air Force)」「[[イギリス海軍|王立海軍]] (Royal Navy)」などと呼称されることを踏まえたものである。
 
これではイメージが固すぎるとの考えから、1986年の映画製作発表時には副題を付け、「'''王立宇宙軍 リイクニの翼'''」という仮タイトルになった<ref>{{Cite web |url=http://www.dot-anime.com/tb/tb_emodama/016.html |title=エモーション魂〜渡辺繁を支えた縁人〜 第16回 20分間の攻防 |work=ドットアニメ - TORNADO BASE |publisher=バンダイビジュアル |date=2007-11-07 |accessdate=2016-01-15 |archiveurl=http://web.archive.org/web/20071113064142/http://www.dot-anime.com/tb/tb_emodama/016.html |archivedate=2007-11-13}}</ref>。その後"リイクニの翼"では、観客の意識がリイクニに偏り過ぎるという事で"オネアミスの翼"に変更、さらに配給元の[[東宝東和]]の意向で主題と副題を入替え、劇場公開時は「'''オネアミスの翼 王立宇宙軍'''」のタイトルとなった。
 
この入替えは制作サイドからは不評であったため、レーザーディスク化の際「'''王立宇宙軍 オネアミスの翼'''」に戻され、以後の映像ソフトでもこのタイトルとなっている。
 
=== 制作手法 ===
緻密でリアリティある作画を実現するため、シロツグの初めて体験する飛行訓練シーンでのプロペラ回転始動のカットなど一部には[[コンピュータグラフィックス]]も導入されている。しかし、[[テクスチャマッピング]]された動画にも莫大な時間と費用を要する時代であり、その節約のため、[[ワイヤーフレーム]]で描かれた線をなぞって手書きの動画に起こす手法が採られた。
 
主人公のシロツグ・ラーダット役を俳優の森本レオが担当したほか、声優陣はベテラン・中堅の実力派を多数起用している。当時現役[[日本テレビ放送網|日本テレビ]]アナウンサーであった[[徳光和夫]]がTVアナウンサー役で、外人タレントとして人気だった[[アントン・ウィッキー]][[オスマン・サンコン]]はコメディアン(漫才師)役として声をあてている。徳光和夫は映画公開前に日本テレビで放映された今作の特集番組にも出演している。
[[1992年]]([[平成]]4年)頃には続編の『[[蒼きウル]]』が山賀監督自身によって構想されたが、諸事情から凍結となり実現していなかった。[[2013年]](平成25年)[[3月21日]]、『蒼きウル』の製作再開が明らかになった<ref>{{Cite news |url=http://mantan-web.jp/2013/03/21/20130321dog00m200013000c.html |title=蒼きウル : ガイナックスの凍結アニメが20年ぶりに再始動 |newspaper=まんたんウェブ |publisher=MANTAN |date=2013-03-21 |accessdate=2016-01-15}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://animeanime.jp/article/2013/03/21/13388.html |title=王立宇宙軍の続編「蒼きウル」20年ぶりに始動 ガイナックスがアニメフェアで発表 |work=アニメ!アニメ! |publisher=イード |date=2013-03-21 |accessdate=2016-01-15}}</ref>が、2017年現在公開予定などは明らかにされていない。
 
また、敵対勢力である共和国側の人物の会話は全て架空の外国語によって進行し話内容は字幕で表現するが、その声優には全て外国人が充てられた。これは、日本人が発音するとどうしても嘘くさくなるため、より外国としての現実感を出すための演出方法として採り入れられたもの。
[[2007年]]に[[バンダイビジュアル]]が[[Blu-ray Disc|BD]]ソフトの発売に参入するにあたり、舞台の「'''HONNEAMISE'''」がBD用レーベルとして5年間使われることになる。
 
2015年現在、「[[戦場のメリークリスマス]]」で映画音楽を手がけた[[坂本龍一]]がアニメーションの音楽監督を担当した唯一の作品である。坂本龍一が全体を統括し、[[上野耕路]]、[[野見祐二]]、[[窪田晴男]]に楽曲を割り振っている。坂本が4種類の基本的なテーマ(プロトタイプ)を提示、それをもとに、坂本を含めた各作曲家がかなり自由なアレンジ([[バリエーション]])を行っている。また各作曲家オリジナルの楽曲も含まれる。坂本と共に作編曲を担当した上野耕路、野見祐二は『[[子猫物語]]』『[[ラストエンペラー]]』でも共作している。なお、書籍「坂本龍一・全仕事」(山下邦彦編、1991年)にて『メインテーマ』と『リイクニのテーマ』の坂本本人の作曲時のスケッチを見る事が出来る。
== 評価 ==
日本に先駆け[[ロサンゼルス]]でプレミア上映も行われたが、これは配給サイドによる箔付け的な要素が強く、内容は米スタッフにより大幅に編集されほぼ別物となっていた。作品を見た[[シド・ミード]]や[[マイケル・ビーン]]らは「素晴らしい映像美」を高く評価した。しかし興行的には振るわず、のちの対談によれば製作費の回収には15年かかったとされている<ref>{{Cite web |url=http://gigazine.net/news/20120505-ufotable-ordet-bones-machiasobi8/ |title=アニメ作りは少しでもいいものを届けたいという気持ちと経営とのせめぎ合い、社長3人が語る「アニメ制作会社代表放談」 |work=GIGAZINE |publisher=OSA |date=2012-05-05 |accessdate=2016-01-15 |quote=バンダイビジュアル史上最も辛かったという「オネアミスの翼」でも15年ぐらいかかって回収しているんです。}}</ref>。
 
サウンドトラック盤には未収録曲があったが、そのほとんどは、LDのコレクターズボックスに音声特典で収録された。
本作品に対し[[宮崎駿]]は、金のない無名の若者たちが集団作業で作る姿勢に好感を持って応援し<ref>『パラノ・エヴァンゲリオン』p73</ref><ref>「対談 宮崎駿・高畑勲 ぼくたちの30年東映動画からスタジオジブリへ」『キネマ旬報臨時増刊 宮崎駿・高畑勲とスタジオジブリのアニメーションたち』キネマ旬報社、[[1995年]](平成7年)、p18</ref>バンダイを説得するための話などをした。完成した作品にもある程度の評価をしているが、作中でロケット打ち上げの際に将軍が簡単に打ち上げを諦めたこと<ref>『パラノ・エヴァンゲリオン』p74</ref>や主人公以外の、努力してきた年配者を描かないことを批判<ref>大塚英志、ササキバラ・ゴウ『教養としての<まんが・アニメ>』講談社現代新書、[[2001年]](平成13年)、p234</ref>。『[[キネマ旬報]]』1987年3月下旬号で[[山賀博之]]監督とほとんど口論に近い形の対談を行っている。
 
作品イメージソングとして[[統乃さゆみ]]『[[オネアミスの翼〜Remember Me Again〜]]』(CBSソニー。作詞・[[秋尾沙戸子|森生紗都子]]、作曲・[[長戸大幸]])が[[ビーイング]]によって制作され宣伝映像に用いられたが、アニメ本編で使用されることはなかった。
[[堀江貴文]]は、本作の熱心なファンとして知られ、宇宙事業参入を目指し、知人らとロケット開発を行っていた<ref>{{Cite web |url=http://gendai.ismedia.jp/articles/-/97 |title=“丸裸”ホリエモン 「それでも続ける宇宙ロケット開発」への情熱|経済の死角 |work=現代ビジネス |publisher=講談社 |date=2010-01-16 |accessdate=2016-01-15}}</ref>。
 
=== その他 ===
[[安彦良和]]は、「全然素晴らしいとは思わない。何のメッセージもない。ただ映像は素晴らしい。誰がやったんだこんなとんでもない作画。そういうことをやって何を言いたいんだっつったら、地球は青かったって言うんですよ。それガガーリンだろ、50年代だろ、ふざけんな(笑)。青いの当たり前じゃない、みんな知ってんだよ。それが物凄い気持ち悪かったんですよね。こんなに無意味なもの、これだけのセンスと技術力を駆使して表現しちゃうこいつら何なの?って」と絶賛している<ref>「アニメ、文化、この時代〜ガンダムとエヴァンゲリオンと〇〇〇〇」(丸善ジュンク堂チャンネル、安彦良和×東浩紀、2015年7月11日)、『アニメ・マンガ・戦争』(安彦良和著、p.129)</ref>。
公開当時、上映時間の都合からカットされた場面(約1分)があり、「メモリアルボックス」において登場キャラクターの声優である森本レオ・曽我部和恭による追加アフレコを行った上で本編に組み込まれた。その後1997年発売の「サウンドリニューアル版」ではこの場面は特典映像扱いとなり、本編は公開版に戻されている。これとは別に東宝東和側から、一日の上映回数を増やすため40分程度尺をカットするよう求められた際、企画の[[岡田斗司夫]]が「フィルムを切るのなら俺の首を切れ!」と啖呵を切り、阻止した。<ref group="注">「オタクアミーゴス!」での岡田斗司夫自身の証言。</ref>
 
[[2007年]]に[[バンダイビジュアル]]が[[Blu-ray Disc|BD]]ソフトの発売に参入するにあたり、舞台の「'''HONNEAMISE'''」がBD用レーベルとして5年間使われることになる。
[[押井守]]は2016年のインタビューで、「本格的な異世界ファンタジーをちゃんとやりきれたフィルムなんて数えるほどしかない」と述べ、アニメでの例として『[[風の谷のナウシカ (映画)|風の谷のナウシカ]]』とともに本作を挙げている<ref>{{Cite news|url=http://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1481597206|title=押井守監督は、この15年で何を見て感じてきたのか? 『ガルム・ウォーズ』監督インタビュー|newspaper=animate times|date=2016-12-13|accessdate=2017-02-04}}</ref>。
 
== タイトル興行成績 ==
公開当時、ハリウッドでのプレミア上映などプロモーションにかかった宣伝費などを含む総製作費は8億円と発表された。のちに岡田斗司夫は制作費は3億6000万くらいと述べている<ref>{{Cite web |url=http://ch.nicovideo.jp/ex/blomaga/ar1137546 |title=岡田斗司夫の毎日ブロマガ「スタジオジブリ敗北!? 興行収入と配給収入についての解説」|publisher=岡田斗司夫の毎日ブロマガ |date=2016-11-16 |accessdate=2016-11-16}}</ref>。この件に関し、山賀は当初バンダイからもらった予算が3億6000万円、[[坂本龍一]]の音楽監督起用で4000万円追加され、それでも足りず4000万円オーバーした(=4億4000万円)と具体的な数字を述べている<ref>「ガイナックス風雲録」『QuickJapan vol.18』、1998年3月、太田出版[http://www.ohtabooks.com/qj100/archives/018/]</ref>。山科誠(バンダイ社長)は、製作費8億のうち「宣伝費が3億ぐらい。(現場サイドには)実質的には4億ちょっと、5億ぐらいですか」と述べている<ref>『コミックボックス』1987年5月号 p49。</ref>。
本作の企画構想時にスタッフが喫茶店で打ち合わせをしていた時、隣の客が[[ミルクティー|ロイヤルミルクティー]]を注文した。山賀はとっさに「ロイヤル・スペースフォース」という語を思い浮かべ、これを和訳した「'''王立宇宙軍'''」を企画タイトルにすることを閃いた<ref>『B-CLUB SPECIAL オネアミスの翼 〜王立宇宙軍コンプリーテッドファイル』 バンダイ 1987年 46頁</ref>。「王立〜軍」という言葉は、[[イギリス]]の軍組織が「[[イギリス空軍|王立空軍]] (Royal Air Force)」「[[イギリス海軍|王立海軍]] (Royal Navy)」などと呼称されることを踏まえたものである。
 
一部でロングラン上映をする館もあったが<ref>『のーてんき通信』p96</ref>、地味なストーリーのためか興行成績は振るわず、総製作費8億円に対し[[配給収入]]は3億4700万円に終わった<ref>『映画プロデューサーが面白い』、キネマ旬報、1998年、p222。</ref>。GAINAXの次作となるOVA『[[トップをねらえ!]]』では一転してアニメファンを意識した戦略がとられた。
これではイメージが固すぎるとの考えから、1986年の映画製作発表時には副題を付け、「'''王立宇宙軍 リイクニの翼'''」という仮タイトルになった<ref>{{Cite web |url=http://www.dot-anime.com/tb/tb_emodama/016.html |title=エモーション魂〜渡辺繁を支えた縁人〜 第16回 20分間の攻防 |work=ドットアニメ - TORNADO BASE |publisher=バンダイビジュアル |date=2007-11-07 |accessdate=2016-01-15 |archiveurl=http://web.archive.org/web/20071113064142/http://www.dot-anime.com/tb/tb_emodama/016.html |archivedate=2007-11-13}}</ref>。その後"リイクニの翼"では、観客の意識がリイクニに偏り過ぎるという事で"オネアミスの翼"に変更、さらに配給元の[[東宝東和]]の意向で主題と副題を入替え、劇場公開時は「'''オネアミスの翼 王立宇宙軍'''」のタイトルとなった。
 
日本ビデオ・レーザーディスク(「メモリアルボックス」)は長く好調な販売を記録した。[[1997年]](平成9年)先駆け[[ロサンゼドルビーデジタ]]でプレミア上映も行われたが、これは配給版(「ウンによる箔付け的な要素リニューアル版」)強く制作内容は米スタッフにより大幅同年[[11月2日]]編集公開されほぼ別物となっていた。アニメ制品を見た会社の経営者対談の中で、[[シド・ミード近藤光]][[マイケユーフォーテーブ・ビーン|ufotable]]社長)は「素晴らしい映像美」を高く評価した。しかし興行的には振るわず、オネアミスちの対談によれば製作費の回収には15年かかって回収しているんです」され述べている<ref>{{Cite web |url=http://gigazine.net/news/20120505-ufotable-ordet-bones-machiasobi8/ |title=アニメ作りは少しでもいいものを届けたいという気持ちと経営とのせめぎ合い、社長3人が語る「アニメ制作会社代表放談」 |work=GIGAZINE |publisher=OSA |date=2012-05-05 |accessdate=2016-01-15 |quote=バンダイビジュアル史上最も辛かったという「オネアミスの翼」でも15年ぐらいかかって回収しているんです。}}</ref>。
この入替えは制作サイドからは不評であったため、レーザーディスク化の際「'''王立宇宙軍 オネアミスの翼'''」に戻され、以後の映像ソフトでもこのタイトルとなっている。
 
== 物語評価 ==
日本に先駆け[[ロサンゼルス]]でプレミア上映も行われたが、これは配給サイドによる箔付け的な要素が強く、内容は米スタッフにより大幅に編集されほぼ別物となっていた。作品を見た[[シド・ミード]]や[[マイケル・ビーン]]らは「素晴らしい映像美」を高く評価した。
「失敗ばかり」「なにもしない軍隊」と揶揄され、世間にオネアミス王国の落第軍隊として見下されている王立宇宙軍。宇宙軍士官のシロツグ・ラーダットはかつては水軍<ref group="注">オネアミス王国は湖のほとりの国で、海がない。</ref>のジェット戦闘機乗りにあこがれていたが、仕方なく入った宇宙軍で張り合いのない日々を送っていた。ある夜同僚たちと訪れた歓楽街で、シロツグは献身的に布教活動を行う少女、リイクニ・ノンデライコと出会う。多少の下心を秘めてリイクニの住居を訪れたシロツグだったが、彼女から「戦争をしない軍隊」である宇宙軍をほめられて思わず発奮し、宇宙戦艦という名目の人類初の有人人工衛星打ち上げ計画に志願し、宇宙を目指すことになる。
 
本作品に対し[[宮崎駿]]は、金のない無名の若者たちが集団作業で作る姿勢に好感を持って応援し<ref>『パラノ・エヴァンゲリオン』p73</ref><ref>「対談 宮崎駿・高畑勲 ぼくたちの30年東映動画からスタジオジブリへ」『キネマ旬報臨時増刊 宮崎駿・高畑勲とスタジオジブリのアニメーションたち』キネマ旬報社、[[1995年]](平成7年)、p18</ref>バンダイを説得するための話などをした。完成した作品にもある程度の評価をしているが、作中でロケット打ち上げの際に将軍が簡単に打ち上げを諦めたこと<ref>『パラノ・エヴァンゲリオン』p74</ref>や主人公以外の、努力してきた年配者を描かないことを批判<ref>大塚英志、ササキバラ・ゴウ『教養としての<まんが・アニメ>』講談社現代新書、[[2001年]](平成13年)、p234</ref>。『[[キネマ旬報]]』1987年3月下旬号で[[山賀博之]]監督とほとんど口論に近い形の対談を行っている。
厳しい訓練や多額の税金・裏金を使う宇宙開発の意味、開発スタッフの事故死、敵国「共和国」からの刺客、リイクニとの気持ちのすれ違いを乗り越え精神的に成長していくシロツグの姿を描く。
 
[[堀江貴文]]は、本作の熱心なファンとして知られ、宇宙事業参入を目指し、知人らとロケット開発を行っていた<ref>{{Cite web |url=http://gendai.ismedia.jp/articles/-/97 |title=“丸裸”ホリエモン 「それでも続ける宇宙ロケット開発」への情熱|経済の死角 |work=現代ビジネス |publisher=講談社 |date=2010-01-16 |accessdate=2016-01-15}}</ref>。
 
[[安彦良和]]は、「全然素晴らしいとは思わない。何のメッセージもない。ただ映像は素晴らしい。誰がやったんだこんなとんでもない作画。そういうことをやって何を言いたいんだっつったら、地球は青かったって言うんですよ。それガガーリンだろ、50年代だろ、ふざけんな(笑)。青いの当たり前じゃない、みんな知ってんだよ。それが物凄い気持ち悪かったんですよね。こんなに無意味なもの、これだけのセンスと技術力を駆使して表現しちゃうこいつら何なの?って」と絶賛評価している<ref>「アニメ、文化、この時代〜ガンダムとエヴァンゲリオンと〇〇〇〇」(丸善ジュンク堂チャンネル、安彦良和×東浩紀、2015年7月11日)、『アニメ・マンガ・戦争』(安彦良和著、p.129)</ref>。
 
[[押井守]]は2016年のインタビューで、「本格的な異世界ファンタジーをちゃんとやりきれたフィルムなんて数えるほどしかない」と述べ、アニメでの例として『[[風の谷のナウシカ (映画)|風の谷のナウシカ]]』とともに本作を挙げている<ref>{{Cite news|url=http://www.animatetimes.com/news/details.php?id=1481597206|title=押井守監督は、この15年で何を見て感じてきたのか? 『ガルム・ウォーズ』監督インタビュー|newspaper=animate times|date=2016-12-13|accessdate=2017-02-04}}</ref>。
 
== 主な登場人物・声優 ==
'''(括弧)'''内はLDメモリアルボックス添付のブックレットに記載されていた名称。
 
=== 主要人物 ===
; シロツグ・ラーダット
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* トネス殿下:声 - [[熊倉一雄]]
*:オネアミス王国の王。
 
== 出演者の概要 ==
主人公のシロツグ・ラーダット役を俳優の森本レオが担当したほか、声優陣はベテラン・中堅の実力派を多数起用している。当時現役[[日本テレビ放送網|日本テレビ]]・アナウンサーであった徳光和夫がTVアナウンサー役で、アントン・ウィッキーとオスマン・サンコンはコメディアン(漫才師)役として声をあてている。徳光和夫は映画公開前に日本テレビで放映された今作の特集番組にも出演している。
 
また、敵対勢力である共和国側の人物の会話は全て架空の外国語によって進行し話内容は字幕で表現するが、その声優には全て外国人が充てられた。これは、日本人が発音するとどうしても嘘くさくなるため、より外国としての現実感を出すための演出方法として採り入れられたもの。
 
== 登場メカニック ==
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:共和国ではカラーテレビが実用化されているのに対し、オネアミス王国ではまだ白黒テレビ止まりである。
 
== 音楽 ==
2015年現在、「[[戦場のメリークリスマス]]」で映画音楽を手がけた[[坂本龍一]]がアニメーションの音楽監督を担当した唯一の作品である。坂本龍一が全体を統括し、[[上野耕路]]、[[野見祐二]]、[[窪田晴男]]に楽曲を割り振っている。坂本が4種類の基本的なテーマ(プロトタイプ)を提示、それをもとに、坂本を含めた各作曲家がかなり自由なアレンジ([[バリエーション]])を行っている。また各作曲家オリジナルの楽曲も含まれる。坂本と共に作編曲を担当した上野耕路、野見祐二は『[[子猫物語]]』『[[ラストエンペラー]]』でも共作している。
なお、書籍「坂本龍一・全仕事」(山下邦彦編、1991年)にて『メインテーマ』と『リイクニのテーマ』の坂本本人の作曲時のスケッチを見る事が出来る。
 
サウンドトラック盤には未収録曲があったが、そのほとんどは、LDのコレクターズボックスに音声特典で収録された。
 
作品イメージソングとして[[統乃さゆみ]]『[[オネアミスの翼〜Remember Me Again〜]]』(CBSソニー。作詞・[[秋尾沙戸子|森生紗都子]]、作曲・[[長戸大幸]])が[[ビーイング]]によって制作され宣伝映像に用いられたが、アニメ本編で使用されることはなかった。
 
== 関連商品 ==
=== 小説 ===
;オネアミスの翼-王立宇宙軍 I・II
:[[ソノラマ文庫]]より[[1986年]](昭和61年)、[[1987年]](昭和62年)に発売。内容の大筋は同じながら映画では描ききれなかった多くのエピソードが加筆されている。著者は[[飯野文彦]]。
;オネアミスの翼 王立宇宙軍
:ソノラマ文庫版の合本版。[[2010年]](平成22年)に[[朝日新聞出版]]の朝日ノベルスレーベルで刊行。
=== その他 ===
;オネアミスの翼-王立宇宙軍 ドキュメントファイル
:映画公開時にバンダイビジュアルから発売されたメイキングビデオ。当時のスタッフも出演している。現在に至るまで他媒体(LD、DVD、BD)での映像特典などでの収録及び単体発売はされていない。
== スタッフ ==
* 監督・原案・脚本:[[山賀博之]]
296 ⟶ 300行目:
* 制作:GAINAX
* 製作:バンダイ
 
== 関連商品 ==
=== 音楽小説 ===
;オネアミスの翼-王立宇宙軍 I・II
:[[ソノラマ文庫]]より[[1986年]](昭和61年)、[[1987年]](昭和62年)に発売。内容の大筋は同じながら映画では描ききれなかった多くのエピソードが加筆されている。著者は[[飯野文彦]]。
;オネアミスの翼 王立宇宙軍
:ソノラマ文庫版の合本版。[[2010年]](平成22年)に[[朝日新聞出版]]の朝日ノベルスレーベルで刊行。
=== その他 ===
;オネアミスの翼-王立宇宙軍 ドキュメントファイル
:映画公開時にバンダイビジュアルから発売されたメイキングビデオ。当時のスタッフも出演している。現在に至るまで他媒体(LD、DVD、BD)での映像特典などでの収録及び単体発売はされていない。
 
== 脚注 ==