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{{Otheruseslist|自由刑を作業義務により区分する法制度において作業義務を科さない刑罰の一種|自由刑に区分を設けない法制度での刑罰|拘禁刑|かつての[[中国]]において[[官僚]]に対して行われた[[刑罰]]|党錮の禁}}
'''禁錮'''(きんこ)
'''禁錮'''(きんこ)とは、[[自由刑]]に作業義務による区分を設けている法制度において作業義務を科さない[[刑罰]]のうち長期のものである。作業義務のある[[懲役]]や作業義務のない短期の[[拘留]]と区分する。なお、[[アメリカ合衆国]]や[[イギリス]]など自由刑に区分を設けない単一の刑種のときは「拘禁刑」と表現される<ref name="moj"/>。
*かつての[[中国]]において[[官僚]]に対して行われた[[刑罰]]。[[官職]]を剥奪して無期限に仕官を禁止した。→'''[[党錮の禁]]'''・'''[[新法・旧法の争い]]'''など。
*[[刑法 (日本)|刑法]]における[[刑罰]]([[自由刑]])の一つで'''禁固'''とも表記される。本項において解説。
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{{日本の刑法}}
 
== 概 ==
=== 刑の区分 ===
[[日本|日本国]]の現行[[刑法 (日本)|刑法]]では、'''禁錮'''(きんこ)とは、[[自由刑]]の一種であり、受刑者を[[刑事施設]]に拘置する[[刑罰]]である([[b:刑法第13条|刑法13条]])。禁錮は無期と有期とに分類される。
懲役は[[日本]]など自由刑に作業義務の区分がある法制度において所定の作業義務を科さない[[刑罰]]のうち長期のものである。作業義務の有無により[[懲役]]と区分する(禁錮の場合でも申請により作業を行うことはできる)<ref name="moj"/>。
 
アメリカ合衆国やイギリスなど自由刑に区分がない法制度の刑種は「拘禁刑」と表現される<ref name="moj">{{Cite web |url=http://www.moj.go.jp/content/001220567.pdf |title=諸外国の制度概要 |publisher=法制審議会 |accessdate=2018-05-04}}</ref>。日本語訳では便宜的に重罪の自由刑に「懲役」や「禁錮」の訳、軽罪の自由刑に「拘禁刑」の訳を当てることもあるが、法制度上の作業の強制等を伴っていない場合もあり法制度に関する資料では「拘禁刑」と訳される<ref name="moj"/>。
==無期禁錮==
無期禁錮は、[[死刑]]、[[無期懲役]]に次いで重い刑である。日本国の[[刑事法]]においては[[内乱罪]]、並びに爆発物使用罪([[爆発物取締罰則]]第1条)及び爆発物使用未遂罪(爆発物取締罰則第2条)にのみ定められている、非常に稀な刑罰である。なお、死刑を減軽する場合は、無期の懲役もしくは禁錮、10年以上30年以下の懲役もしくは禁錮となっているが、これは禁錮に当たる罪と同質の罪について、死刑を減軽する場合に無期又は10年以上の禁錮にするとされると考えられるため、懲役に当たる罪と同質の罪(例:殺人、外患誘致など)について、死刑を減軽する場合は無期又は10年以上の懲役となり、無期又は10年以上の禁錮にすることはできないと考えられる。
少なくとも[[1947年]]以降に無期禁錮を言い渡された者はいない<ref>[[犯罪白書]]</ref>。
 
===一般で漢字の表記===
==有期禁錮==
===法令=一般での表記====
有期禁錮は、原則として1ヶ月以上20年以下である(但し、刑を加重する場合には30年まで、減軽する場合は1ヶ月未満にすることができる)。したがって、ある条文において「2年以上の有期禁錮に処する」などと書かれている場合、天井知らずの刑が言い渡される可能性はない。[[裁判所]]は原則として「2年以上20年以下」の範囲内で量刑しなければならない。
代用表記と言われると、戦前「禁固」という表記は全く使われなかったかのように思われがちだが、決してそうではない。明治期に発行された書籍にも極少数ながら「禁固」の表記が確認できる<ref>[{{NDLDC|877829/34}} 絵本石山軍記. 第2篇 巻之6-10]や[{{NDLDC|991773/17}} 憲法志料. 5篇 巻1(1877-1884刊)]など。</ref>。「禁固」は、それほど一般的な表記でなかっただけの話にすぎない。
しかし、死刑もしくは無期刑が定められている犯罪についてはそれらの刑を選択した上で酌量減軽をすることで20年超30年以下の禁錮を言い渡すことができる。
 
====法令での表記====
[[有期懲役]]と刑の軽重を比較するときは、「有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるとき」は禁錮のほうが重い刑であるとされている([[b:刑法第10条|刑法10条]])。
[[法令]]での表記は時代によって変遷がある。制定時期と改正時期の違いにより、同一の法律内に複数の表記が混在しているものもある([[電波法]]など)。<ref>[http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column080.htm 法制執務コラム集] - [[参議院]][[法制局]]</ref>
;禁錮
:単純に漢字表記したもの。戦前から1947年頃までに制定された法令。[[検察庁法]]20条など。
;禁<ruby><rb>こ</rb><rt>、</rt></ruby>
:「こ」を平仮名書きして、[[圏点|傍点]]を付したもの。1948~1954年頃に制定された法令。[[電波法]]107条など。戦後、政府は[[国語国字改革]]を推進し、[[当用漢字]]や[[常用漢字]]を定めるなど、法令・[[公文書]]・[[新聞]]・[[雑誌]]および一般社会で使用すべき[[漢字]]を限定した。その中には「錮」は入れられなかったため、平仮名に置き換えられた。
;禁<ruby><rb>錮</rb><rt>こ</rt></ruby>
:「錮」に、[[ルビ]]を付したもの。1955年頃以降に制定された法令。表外漢字であっても、交ぜ書きすると読みづらいとされたことから。法令内に複数回「禁錮」が出てくるときは、すべてにルビを振っている法令と、最初の1回だけにルビを振っている法令がある。
;禁固
:「錮」を「固」で[[同音の漢字による書きかえ|代用表記]]したもの。[[改正刑法草案]](1974年)で使用されたが、実際に成立した法令での使用例はない。[[マスメディア]]や一般社会では広く用いられてきた。
 
2010年[[11月30日]]に内閣告示された新しい常用漢字表では「錮」の字が含まれたので、以後は戦前と同じように、ルビなしで使うことが許容されることになった。マスメディアでも「禁錮」が用いられるようになっている。
3年以下の禁錮刑を言い渡す場合においては、情状によって、その刑の全部又は一部の執行を猶予することができる([[執行猶予]])。
 
== 日本の禁錮 ==
{{Law|section=1}}
{{日本の刑法}}
=== 内容 ===
[[日本|日本国]]の現行[[刑法 (日本)|刑法]]では、'''禁錮'''(きんこ)とは、[[自由刑]]の一種であり、受刑者を[[刑事施設]]に拘置する[[刑罰]]である([[b:刑法第13条|刑法13条]])。禁錮は無期と有期とに分類される
 
==懲役との違い==
同じく自由刑である[[懲役]]との制度上の違いは、懲役では「所定の作業」を行わなければならないのに対して、禁錮ではただ拘置(監禁)することのみが定められていることにある。
 
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古くは、禁錮は政治犯や過失犯に科されるもので、懲役は[[破廉恥]]罪([[殺人]]、[[窃盗]]など道徳的に非難されるべき動機により行われる犯罪)に対して科されるものとする理解があった。その名残りとして、政治犯的性質を持つ[[内乱罪]]の[[法定刑]]には[[懲役]]がない。しかし、現代においては必ずしもこのように解釈されているわけではなく、例えば、過失犯は非破廉恥罪であるが懲役刑が科されることもある。
 
==漢字の表記= 種類 ===
禁錮は無期と有期とがある。
===一般での表記===
==;無期禁錮==
代用表記と言われると、戦前「禁固」という表記は全く使われなかったかのように思われがちだが、決してそうではない。明治期に発行された書籍にも極少数ながら「禁固」の表記が確認できる<ref>[{{NDLDC|877829/34}} 絵本石山軍記. 第2篇 巻之6-10]や[{{NDLDC|991773/17}} 憲法志料. 5篇 巻1(1877-1884刊)]など。</ref>。「禁固」は、それほど一般的な表記でなかっただけの話にすぎない。
:無期禁錮は、[[死刑]]、[[無期懲役]]に次いで重い刑である。日本国の[[刑事法]]においては[[内乱罪]]、並びに爆発物使用罪([[爆発物取締罰則]]第1条)及び爆発物使用未遂罪(爆発物取締罰則第2条)にのみ定められている、非常に稀な刑罰である。なお、死刑を減軽する場合は、無期の懲役もしくは禁錮、10年以上30年以下の懲役もしくは禁錮となっているが、これは禁錮に当たる罪と同質の罪について、死刑を減軽する場合に無期又は10年以上の禁錮にするとされると考えられるため、懲役に当たる罪と同質の罪(例:殺人、外患誘致など)について、死刑を減軽する場合は無期又は10年以上の懲役となり、無期又は10年以上の禁錮にすることはできないと考えられる。
少なくとも[[1947年]]以降に無期禁錮を言い渡された者はいない<ref>[[犯罪白書]]</ref>。
==;有期禁錮==
:有期禁錮は、原則として1ヶ月以上20年以下である(但し、刑を加重する場合には30年まで、減軽する場合は1ヶ月未満にすることができる)。したがって、ある条文において「2年以上の有期禁錮に処する」などと書かれている場合、天井知らずの刑が言い渡される可能性はない。[[裁判所]]は原則として「2年以上20年以下」の範囲内で量刑しなければならない。
しかし、死刑もしくは無期刑が定められている犯罪についてはそれらの刑を選択した上で酌量減軽をすることで20年超30年以下の禁錮を言い渡すことができる。
 
[[有期懲役]]と刑の軽重を比較するときは、「有期の禁錮の長期が有期の懲役の長期の二倍を超えるとき」は禁錮のほうが重い刑であるとされている([[b:刑法第10条|刑法10条]])。
===法令での表記===
[[法令]]での表記は時代によって変遷がある。制定時期と改正時期の違いにより、同一の法律内に複数の表記が混在しているものもある([[電波法]]など)。<ref>[http://houseikyoku.sangiin.go.jp/column/column080.htm 法制執務コラム集] - [[参議院]][[法制局]]</ref>
;禁錮
:単純に漢字表記したもの。戦前から1947年頃までに制定された法令。[[検察庁法]]20条など。
;禁<ruby><rb>こ</rb><rt>、</rt></ruby>
:「こ」を平仮名書きして、[[圏点|傍点]]を付したもの。1948~1954年頃に制定された法令。[[電波法]]107条など。戦後、政府は[[国語国字改革]]を推進し、[[当用漢字]]や[[常用漢字]]を定めるなど、法令・[[公文書]]・[[新聞]]・[[雑誌]]および一般社会で使用すべき[[漢字]]を限定した。その中には「錮」は入れられなかったため、平仮名に置き換えられた。
;禁<ruby><rb>錮</rb><rt>こ</rt></ruby>
:「錮」に、[[ルビ]]を付したもの。1955年頃以降に制定された法令。表外漢字であっても、交ぜ書きすると読みづらいとされたことから。法令内に複数回「禁錮」が出てくるときは、すべてにルビを振っている法令と、最初の1回だけにルビを振っている法令がある。
;禁固
:「錮」を「固」で[[同音の漢字による書きかえ|代用表記]]したもの。[[改正刑法草案]](1974年)で使用されたが、実際に成立した法令での使用例はない。[[マスメディア]]や一般社会では広く用いられてきた。
 
3年以下の禁錮刑を言い渡す場合においては、情状によって、その刑の全部又は一部の執行を猶予することができる([[執行猶予]])。
2010年[[11月30日]]に内閣告示された新しい常用漢字表では「錮」の字が含まれたので、以後は戦前と同じように、ルビなしで使うことが許容されることになった。マスメディアでも「禁錮」が用いられるようになっている。
 
===科刑状況===
禁錮判決が確定した件数は次のとおりである<ref>[http://www.moj.go.jp/housei/toukei/toukei_ichiran_kensatsu.html 検察統計年報・「審級別確定裁判を受けた者の裁判の結果別人員」]</ref>。95パーセント以上が執行を猶予されており、実刑判決の割合は低い。実刑判決でも大半は3年以下であり、3年超は年間数件程度である。
 
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※刑の一部執行猶予制度は2016年6月に施行されたが、2016年の禁錮刑確定者に対する適用は0件であった。
 
===禁錮以上の刑に関する欠格条項===
禁錮以上(死刑、懲役、禁錮)の刑に処せられた場合について、法律や法令で欠格事由としている例があり、俗にいう「[[前科者]]」も「禁錮以上の刑に処せられた者」(または執行猶予中の者)を指すことが多いが、より厳格な例として「[[罰金]]以上の刑に処せられた者」([[交通違反]]など)まで含まれることもある。
 
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|国家資格||[[郵便認証司]]||[[介護福祉士]]<br>[[海事代理士]]<br>[[技術士]]<br>[[情報処理安全確保支援士]]<br>[[社会福祉士]]<br>[[精神保健福祉士]]<br>[[保育士]]||[[税理士]]<br>[[社会保険労務士]]<br>[[行政書士]]<br>[[公認会計士]]<br>[[司法書士]]<br>[[土地家屋調査士]]<br>[[中小企業診断士]]||[[建築士]]<br>[[水先人]]<br>[[宅地建物取引士]]<br>[[貸金業務取扱主任者]]||[[弁護士]]<br>[[弁理士]]<br>[[教育職員免許状|教育職員免許]]
|}
 
== 韓国の禁錮 ==
禁錮は自由刑の一種で刑務所に拘置する刑罰である(韓国刑法68条)。
 
禁錮には無期と有期があり、有期禁錮は1ヶ月以上30年以下の期間となる(韓国刑法42条)。ただし、有期禁錮に対して刑を加重するときは50年まで加重できる(韓国刑法42条但書)。
 
==脚注==
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{{DEFAULTSORT:きんこ}}
[[Category:日本の刑罰]]
[[Category:自由刑|きんこ]]