削除された内容 追加された内容
一部加筆、出典追加、参考文献+1。
渋滞原因と解消について加筆
116行目:
== 渋滞の種類 ==
渋滞は発生原因によって'''自然渋滞'''と'''突発渋滞'''の2種類に大別される{{sfn|越正毅|1989|p=112}}。
* ''';自然渋滞''': 既に道路上にあるボトルネックによって発生するもので、ボトルネックに流入する交通需要が推定できるならば渋滞の区間や規模をある程度である{{sfn|越正毅|1989|p=112}}。交通需要を交通容量で割った数値を[[混雑度]]といい、混雑度が1.0以上の交通需要がその道路の交通容量を上回った際に自然渋滞は発生する{{sfn|浅井建爾|2015|p=198}}。慢性的に渋滞が発生している道路では、交通需要が交通容量を大きく上回っている状態が常時続いていると考えられている{{sfn|浅井建爾|2015|p=199}}。
* ''';突発渋滞''': [[交通事故]]や車両故障などの突発事象が原因で生じる渋滞で、渋滞に関する予測ができない{{sfn|越正毅|1989|p=112}}。
 
== 渋滞での交通流 ==
134行目:
[[File:Autumn Koyasan Wakayama07bs3200.jpg|thumb|right|220px|一般道路における渋滞の一例。観光地における観光シーズンの交通量増加に因る]]
[[File:Traffic congestion,tarui,ono,hyogo 8218573.JPG|thumb|right|220px|夏祭り会場へ向かう車のために起こった片側渋滞の例]]
一般道路において発生する渋滞原因のほとんどは、信号交差点と踏切、車線数が減少するボトルネックである{{sfn|浅井建爾|2015|p=200}}。道路の1車線には1時間あたり約2,000台の交通容量がある。例えば、片側2車線の単路部(立体交差のように信号のない部分)の交通容量は1時間あたり約4,000台であるが、これを超える量の車両が流入すると渋滞が発生する。
====信号交差点====
: 都市部では単路部は長くは続かず、信号交差点が数多くある。単路部で十分な交通容量があっても、その先の信号交差点の存在によってその道路の交通容量は低下する。例えば、信号の青信号の秒数が30秒、黄信号が0秒、赤信号の秒数が30秒という極めて単純な信号を仮定したとき、青信号時間の比率は50%となり、交通容量は青時間率が100%のとき(すなわち[[立体交差]]のとき)と比べて約半分となる。
152行目:
 
====[[踏切]]====
: [[踏切]]では列車通過時に道路が遮断され、特に都市部の踏切は遮断されている時間、「[[開かずの踏切]]になりやすい」と揶揄されることがある{{sfn|浅井建爾|2015|p=200}}。さらに[[日本]]の法規制では原則的に、信号機がない場合は遮断されていなくても一時停止が義務付けられているため、踏切によって道路容量が低下して渋滞の原因になりやい{{sfn|浅井建爾|2015|p=200}}。このような状況を解消すべく、道路整備の一環とした都市計画事業の一つである[[連続立体交差事業]]というものを実施し、都市部を中心に[[鉄道]]の一定区間を高架化もしくは地下化を進めた後、踏切の撤去作業を行う。
 
====[[橋]]([[河川]])====
161行目:
 
====見物渋滞(わき見渋滞)====
: 交通工学の本来の用語ではない。ドライバーが景色や看板火事対向車線の事故<sub>等</sub>に目を奪われて脇見したりすることが走行速度の減速につながり、また[[停車]]をすることによって渋滞が引き起こされ{{sfn|浅井建爾|2015|p=198}}。またわき見運転は事故の危険も伴い、こうしたドライバーが事故を起こせば渋滞をさらに悪化させることになる。
 
====悪天候====
: 雪などで[[タイヤチェーン|チェーン]]規制となった場合、チェーンの着脱のために装着場へ入る車が多くなること、[[サービスエリア]]・[[パーキングエリア]]などに強制流入させて滑り止め装着の有無を点検すること、チェーン装着車は最高速度が30 - 50km/h程度に制限されることなどから渋滞の原因になる。
188 ⟶ 189行目:
[[File:Meishin Expressway02.jpg|thumb|right|220px|サグ部の一例<br/>([[名神高速]] 高槻BS付近)]]
: すり鉢状の地形にある道路(サグ)ではドライバーが凹状の底の地点(谷底)に到着して上り坂となったとき、緩慢な変化に気が付きにくいことから、アクセルを強く踏むタイミングが遅れ、速度低下が発生しやすい([[オートマチック車]]の場合はギアチェンジが起こらない)。
: 自動車のアクセルは速度を管理・調整する機能ではなく、燃焼状況([[トルク]])を調節する機能であるため、路面状況の変化にドライバーが気が付かず同じようにアクセルを操作すれば、このわずかなタイミングの遅れにより速度の低下が起こることで結果的に交通容量の低下が起こる<ref>[http://www.driveplaza.com/traffic/jyutai/jyutai_hassei/jyutai1-1.html サグ部などで起きる「渋滞」の原因とその対策について] NEXCO東日本ホームページ</ref>。なお、渋滞時のサグの容量は非渋滞時の容量に比べて大幅に低下する。回避させるために「この先上り坂」や「速度回復願います」と簡易型電光掲示板に表示する対策方法が取られている。NEXCO中日本の調査では、管内で発生する交通集中渋滞のうち約55%(55%(平成19年)がサグ及び上り坂が原因で発生している。
====トンネルによる渋滞====
: トンネルは視覚的に狭く感じ、明るさも変化するため、ドライバーはその入り口付近でアクセルを緩めてしまいやすい。その結果、交通容量が低下する<ref>{{Cite news|url=http://sankei.jp.msn.com/west/west_life/news/140421/wlf14042107000001-n3.htm|title=中国道“名物”「宝塚トンネル常時渋滞」の本当の理由…2年後には劇的解消“秘策”が|work=MSN産経ニュース|newspaper=産経新聞|date=2014-04-21|accessdate=2014-04-26}}</ref>。また、雨水をはくために中央に向けて上り坂となっているトンネルもあり、これも渋滞の原因となっている。回避させるためにトンネル入り口付近の照明度を高くする、トンネル側面に水準線を描き、上り下りの状況判断をし易くする等の工夫が有効である。従来、夜間時は昼間時の5分の1に照明度を落としていたが、[[2009年]][[8月6日]]から対策としてNEXCO西日本は管内76か所のトンネルで、夜間時の照明度を昼間時の照明度と同じにする対策をとった。先行して都市部の一部トンネルで実施しており、一定の効果があったため2009年8月6日より地方部のトンネルでの運用が決まった。
 
== 渋滞対策 ==
単純に渋滞を克服し解消する方法は、道路の交通容量を拡大するか、交通量を減らすかのどちらかである{{sfn|椎名啓雄・浪川和大|2015|p=12}}。多くの場合は交通容量を増大させることで渋滞は解決できる{{sfn|浅井建爾|2015|p=200}}。
 
交通容量を拡大する方法は、道路整備・改良や[[信号機|信号]]制御の高度化などによる「交通容量を増大させる」方法と、路上駐車の排除やサグ部での速度回復などによる「交通容量を回復させる」方法に分けられる{{sfn|椎名啓雄・浪川和大|2015|p=13}}。車線数を増設することは交通容量を単純に増やすことが出来るため、最も早い渋滞解決手法だといえるが、整備費用に多額の資金を要するため、容易に車線を増やすことが出来ないのが実情である{{sfn|浅井建爾|2015|p=200}}。
 
交通量を減らす方法として、[[交通需要マネジメント]]([[英語|英]]:Transportation Demand Management、略称:TDM)があり、車の利用者が協力し合い、交通量削減のため調整を図る施策である。例として、[[フレックスタイム]](時差出勤)や、[[パークアンドライド|パークアンドライドシステム]]の導入による公共交通機関への乗り換え、運転経路変更の誘導案内のよる交通の分散化、都市部では道路の[[中央線 (道路)|中央線]]を可変させる可変レーンの設置によって、効果を上げることができる{{sfn|浅井建爾|2001|pp=188-189}}。交通需要を抑制し調整することで渋滞を緩和させるのがTDMの狙いだが、道路利用者の協力なくしては実現不可能という側面を併せ持つ{{sfn|浅井建爾|2001|pp=188-189}}。
202 ⟶ 203行目:
 
=== 信号制御 ===
信号制御の設定値を最適化すること渋滞はかなり緩和できる。交通量がほぼ同じ道路どうしが交差する信号交差点では、双方の道路の信号機の青信号と赤信号の秒数を同じ長さとするが、特に事情がない限り、交通量の多い道路側の信号機の青信号の秒数を長くし、交通量の少ない道路側の青信号を短く適切な秒数で設定することで渋滞を回避できる{{sfn|浅井建爾|2015|p=201}}。市街地では、他の信号機と連動した系統式の信号を設置することで、かなりの渋滞は回避できる{{sfn|浅井建爾|2015|p=201}}。また、交通量に応じて赤信号と青信号の秒数を自動的に調整する感応制御式の信号機の普及が渋滞対策に役立てられている{{sfn|浅井建爾|2015|p=201}}。
 
[[中華人民共和国]][[吉林省]][[吉林市]]において、これまでの統計とバスに搭載された端末を通じてデータを元に信号の設定を変えた結果、車両の平均時速が上がり渋滞緩和に成功した<ref>[http://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2015/012303.html 中国・吉林市において、ビッグデータを活用した「渋滞予測・信号制御シミュレーション」の実証実験で渋滞緩和効果を確認 2015年1月23日 株式会社NTTデータ]</ref>。
 
=== 立体交差 ===
道路が他の道路や踏切と[[平面交差]]している事により、結節点としての効果を発揮する代わりに円滑な交通を妨げになっていた<ref>日本大百科全書「平面交差」より</ref>。そこで立体的に交差することより、交通容量は飛躍的に増大でき、効率よく通行することができる{{sfn|浅井建爾|2015|p=200}}<ref>世界大百科事典「インターチェンジ」より</ref>。立体交差化は信号交差点や踏切で行われる渋滞対策手法で、特に信号交差点では交通量が多い方の道路を、交差する道路の上に跨がせる[[高架橋]]とするか、道路下にくぐらせる[[アンダーパス]]としたほうが、より大きな効果が期待される{{sfn|浅井建爾|2015|p=200}}
 
具体例として[[小田急電鉄]][[小田原線]][[成城学園前駅]]から[[登戸駅]]を[[連続立体交差事業|連続立体交差化]]した結果、実施前は旅行速度8km8&nbsp;km/hに対して実施後は旅行速度19km19&nbsp;km/hと大幅に向上することに成功した<ref>[http://www.renritsukyo.com/01Renritsukyo/renritsu2-2.html 全国連続立体交差事業促進協議会 事業の効果]</ref>。
 
=== 道路拡張・バイパス ===
219 ⟶ 223行目:
 
=== 渋滞吸収運転 ===
[[2009年]]に[[警察庁]]と[[日本自動車連盟]]が共同で[[中央自動車道]][[小仏トンネル]]で8台の車が一斉に車間距離40mを空けて走行した結果、実施前の平均時速55km55&nbsp;km/hから80km80&nbsp;km/hに回復した実験結果が出ている<ref>[http://bookstand.webdoku.jp/news/2015/08/12/073000.html ポイントは車間距離 "渋滞学"権威が明かす「渋滞吸収運転」とは BOOKSTAND]</ref>。これは車間距離を詰め過ぎると前の車に反応した後ろの車によってスピードが落ちるので、距離が40m40&nbsp;m空けることにより防ぐことができる<ref>[http://www.athome-academy.jp/archive/mathematics_physics/0000001065_all.html athomeこだわりアカデミー 2011年11月号掲載]</ref>。
 
=== 渋滞予測カレンダー ===