「盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約」の版間の差分

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|通称 =視覚障害者等による著作物の利用機会促進マラケシュ条約<ref>{{cite web|url=http://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/et/page25_001279.html|title=盲人,視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約|publisher=外務省|accessdate=2018-05-16}}</ref>、マラケシュ条約<ref name="fukushishimbun_2018-05-15">{{cite news|url=http://www.fukushishimbun.co.jp/topics/18919|title=マラケシュ条約を承認 視覚障害者らの書籍利用しやすく|newspaper=福祉新聞|date=2018-05-15|accessdate=2018-05-16}}</ref>
|通称 =
|起草 =
|署名 = [[2013年]][[6月28日]]
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|リンク = [http://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/text.jsp?file_id=301016 Marrakesh Treaty to Facilitate Access to Published Works for Persons Who Are Blind, Visually Impaired or Otherwise Print Disabled]
}}
'''盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約'''<!--The '''Marrakesh VIP Treaty''' -->(Marrakesh Treaty to Facilitate Access to Published Works by Visually Impaired Persons and Persons with Print Disabilities、英語での通称は'''Marrakesh VIP Treaty'''、 '''MVT'''<ref>{{Cite web|title=Summary of the Marrakesh Treaty to Facilitate Access to Published Works for Persons Who Are Blind, Visually Impaired, or Otherwise Print Disabled|url=http://www.wipo.int/treaties/en/ip/marrakesh/summary_marrakesh.html|publisher=[[世界知的所有権機関]]|accessdate=2016-5-31}}</ref>)は、[[2013年]][[6月28日]]に[[モロッコ]]の[[マラケシュ]]で採択された[[著作権]]に関する[[条約#多国間条約|条約]]である<ref>{{Cite web |url=http://www.wipo.int/dc2013/en/ |title=Diplomatic Conference to Conclude a Treaty to Facilitate Access to Published Works by Visually Impaired Persons and Persons with Print Disabilities |publisher=[[世界知的所有権機関]] |date=2013-6-28|accessdate=2016-8-12}}</ref><ref>{{Cite news |url=http://www.economist.com/news/international/21582039-blind-people-defeat-lobbyists-tussle-about-copyright-between-lines |title=Between the lines: Blind people defeat lobbyists in a tussle about copyright |work=[[エコノミスト]] |date=2013-7-20}}</ref>。
 
== 概要 ==
本条約は、視覚的に障害のある人々のために[[および]]やその他の著作権により保護された作品について、視覚的に障害彼らある人等がアクセスできる[[点字図書]]や[[録音図書]]等のバージョンの作成を容易にするために、著作権の例外を容認するものである。本条約は締約国に彼らの活動をカバーし、締約国がそのような素材の輸入および輸出を可能にする国内の著作権の例外を規定するための規範を定めている。
 
本条約は、[[1994年]]に作成された[[世界貿易機関を設立するマラケシュ協定]]に続く、[[マラケシュ]]に関連づけられたする2番目の国際的な貿易条約である。
 
== 経緯 ==
[[2009年]]3月に開催された第18回[[世界知的所有権機関]](WIPO)著作権及び著作隣接権に関する常設委員会 (Standing Committee on Copyright and Related Rights, SCCR) において、[[ブラジル]]、[[エクアドル]]、[[パラグアイ]]から[[世界盲人連合]]による条約案 (SCCR/18/5) の提示を受けた<ref>{{Cite web|url=http://www.wipo.int/meetings/en/details.jsp?meeting_id=17458 |title=Standing Committee on Copyright and Related Rights: Eighteenth Session|accessdate=2016-8-15}}</ref>。その後、議論が続けられ、[[2013年]][[6月17日]]から[[6月28日|28日]]までモロッコのマラケシュで本条約採択のための外交会議が開催された。
 
マラケシュでの外交会議の閉会時に条約に[[署名#条約の内容を確定する署名|署名]]したのは51ヶ国で、最終的には79ヶ国と[[欧州連合|EU]]が署名した<ref>{{Citation |url=http://www.wipo.int/treaties/en/ShowResults.jsp?lang=en&treaty_id=843 | title= }}</ref>。[[2014年]][[7月24日]]、インドが本条約の加入書を寄託した最初の国となった<ref>{{cite web |url=http://www.wipo.int/treaties/en/ShowResults.jsp?search_what=N&treaty_id=843 |title=Notifications: Marrakesh VIP Treaty |publisher=[[世界知的所有権機関|World Intellectual Property Organization]] |date=2015-12-11|accessdate=2016-2-5}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.thehindu.com/news/national/india-ratifies-marrakesh-treaty-for-visually-impaired/article6171554.ece |title=India ratifies Marrakesh Treaty for visually impaired |work=[[:en:The Hindu]] |date=2014-7-3|accessdate=2016-8-12}}</ref>。本条約の発効には20ヶ国の[[批准]]書または[[加入]]書の寄託が必要とされるが(本条約18条)、[[2016年]][[6月30日]]にカナダが批准書を寄託したことによりこの条件が達成され、同年[[9月30日]]に発効した<ref>{{Citation |url=http://www.wipo.int/pressroom/en/articles/2016/article_0007.html |title="WIPO Press Release" : Canada’s Accession to Marrakesh Treaty Brings Treaty into Force|publisher=世界知的所有権機関}}</ref>。
 
[[2015年]]3月、[[欧州連合理事会]]はいつになく厳しい声明を出し、[[欧州委員会]]をEUによる本条約採択の遅れの件で非難し、同委員会が「遅滞なく必要な法律の立案をすること」を求めた<ref>{{Cite web |url=http://tacd-ip.org/archives/1325 |title=Marrakesh in the EU: facing the excuses and delay tactics after Council statement |publisher=[[:en:Trans Atlantic Consumer Dialogue|TransAtlantic Consumer Dialogue]] |work=IP Policy Committee blog |date=2015-4-7|accessdate=2016-8-12}}</ref><ref>{{Cite web |url=http://www.statewatch.org/news/2015/apr/eu-council-marrakesh-treaty-guidance-7321-15.pdf |title=Proposal for a Council Decision on the conclusion, on behalf of the European Union, of the Marrakesh Treaty to Facilitate Access to Published Works for Persons who are Blind, Visually Impaired, or Otherwise Print Disabled — Guidance for further work |publisher=[[欧州連合理事会]] |format=PDF |accessdate=2016-8-12}}</ref>。
 
== 実体規定 ==
本条約の受益者は、3条に規定されており、
本条約の受益者である「視覚障害者等」は、3条に規定されており、[[視覚障害者|盲人]]、視覚障害、または、知覚的もしくは読字に関する障害をもち、かかる障害をもたない人と実質的に同等の視覚機能をもつように改善することができないために、障害をもたない人と実質的に同程度には、印刷された著作物を読むことができない者<ref>{{PDFlink|[http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/hoki/h26_02/pdf/sanko_2.pdf 文化庁参考和訳]}} 3条(b)</ref>、身体障害により、読書のために通常受け入れられる程度まで書籍を保持する、操作する、若しくは目の焦点を合わせる、又は目を動かすことができない者<ref>文化庁参考和訳 3条(c)</ref>となっている。
* [[視覚障害者|盲人]]である者<ref>{{PDFlink|[http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000343334.pdf 外務省和訳]}} 3条(a)</ref>
この定義規定から分かるように、[[本]]を読むことができない者は、目が見えない者に限られない。例えば、[[筋萎縮性側索硬化症]]の症状が進行した患者は文章を理解することができても、本のページをめくることができない。一方、[[ディスレクシア|識字障害者]]のように、ページをめくることができるが、本の内容を理解できないために、本を読んだということにはならない者もいる。
* 視覚障害又は知覚若しくは読字に関する障害のある者であって、そのような障害のない者の視覚的な機能と実質的に同等の視覚的な機能を与えるように当該障害を改善することができないため、印刷された著作物を障害のない者と実質的に同程度に読むことができないもの<ref>外務省和訳 3条(b)</ref>
* 身体的な障害により、書籍を持つこと若しくは取り扱うことができず、又は読むために通常受け入れ可能な程度に目の焦点を合わせること若しくは目を動かすことができない者<ref>外務省和訳 3条(c)</ref>
とされている。
 
この定義規定から分かるように、[[本]]を読むことができない者は、目が見えない者に限られない。例えば、[[筋萎縮性側索硬化症]]の症状が進行した患者や[[運動障害|肢体不自由者]]に文章を理解することができても、本のページをめくることができない者もいる。一方、[[ディスレクシア|識字障害者]]のように、ページをめくることができるが、本の内容を理解できないために、本を読んだということにはならない者もいる<ref name="fukushishimbun_2018-05-15" />
 
視覚障害者が、出版物についてアクセスできる形式で入手できるものは5%程度しかないと推定されており<ref>{{PDFlink|[http://www.wipo.int/edocs/pubdocs/ja/general/1050/wipo_pub_1050_2013.pdf 2013年WIPO総会事務局長報告書]}} 29</ref>、本条約は、本のような著作物を読むことができない者に対し、それらの者が利用しやすい形式で制作された複製物を提供できるようにするため、加盟国に著作権に制限規定または例外規定を設けることを求めている(本条約4条)。もっとも、これらの規定が当該著作物についての権利者の正当な利益を不当に害したり、当該著作物の通常の利用を妨げたりすることはない(本条約11条)。
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== 締約国 ==
* [[アルゼンチ]]、[[エルサルバドルオーストラリア]]、[[ボツワナ]]、[[ブジル]]、[[首長国連邦ルキナファソ]]、[[カナダ]]、[[チ]]、[[コスタリカ]]、[[朝鮮民主主義人民共和国]]、[[ウルグエクドル]]、[[パラグアイエルサルバドル]]、[[シン]](2018年8月11日効力発生予定)、[[ルゼンチンテマラ]]、[[メキシコホンジュラス]]、[[ド]]、[[イスラエル]]、[[大韓民国ケニア]]、[[オーキルギ]]、[[レソラリア]](2018年6月30日効力発生予定)、[[ブラジルリベリア]]、[[ペルーマラウイ]]、[[朝鮮民主主義人民マリ共和国]]、[[イスラエメキシコ]]、[[モンゴル]]、[[ナイジェ]]、[[エクアドルパナマ]]、[[パラグアテマラ]]、[[カナダペルー]]、[[大韓民国]]、[[モルドバ]]、[[ロシア]]、[[セントビンセント・グレナディーン]](2016年12月5日発効予定)、[[シンガポール]]、[[スリランカ]]、[[チュニジア]](2016、[[ウガンダ]](201812月7月23力発生予定)、[[アラブ首長国連邦]]、[[ウルグアイ]](38ヶ国)<ref>[{{cite web|url=http://www.wipo.int/treaties/en/ShowResults.jsp?lang=en&treaty_id=843 |title=WIPO-Administered Treaties Contracting Parties > Marrakesh VIP Treaty (Total Contracting Parties : 2238) ]|publisher=世界知的所有権機関 |accessdate=2015-06-01}}</ref>
 
日本においては、[[2018年]]の[[第196回国会]]に提出され、3月29日に衆議院本会議、4月25日に参議院本会議で、全会一致で条約締結が承認されている<ref>{{cite web|url=http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/196/meisai/m196200196001.htm|title=盲人、視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約の締結について承認を求めるの件|publisher=参議院|accessdate=2018-06-01}}</ref>。
 
== 評価 ==
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== 脚注 ==
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== 外部リンク ==
* [http://www.mofa.go.jp/mofaj/ila/et/page25_001279.html 盲人,視覚障害者その他の印刷物の判読に障害のある者が発行された著作物を利用する機会を促進するためのマラケシュ条約] 外務省
* [http://www.wipo.int/wipolex/en/treaties/text.jsp?file_id=301016 Marrakesh Treaty to Facilitate Access to Published Works for Persons Who Are Blind, Visually Impaired or Otherwise Print Disabled] (全文){{Ref-en}} in the WIPO Lex database — official website of WIPO.
 
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