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|名称 = ヒョウタン
|色 = lightgreen
|画像 = [[画像:W hyoutan1071.jpg|250px]]
|画像キャプション = ヒョウタンの花(2001年7月)
|界 = [[植物界]] [[:w:Plantae|Plantae]]
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|英名 = [[:en:Gourd|Gourd]]
}}
[[File画像:Lagenaria siceraria var peregrina MHNT.BOT.2013.22.54.jpg|thumb|''Lagenaria siceraria var peregrina'']]
 
'''ヒョウタン'''('''瓢箪'''、'''瓢{{lang|zh-tw|簞}}'''、学名:''Lagenaria siceraria'' var. ''gourda'')は、[[ウリ科]]の植物。[[漢語]]では'''瓢'''(ひょう、'''瓠'''、'''匏'''とも表記)、'''瓢瓠'''(ひょうこ)、'''胡盧'''(ころ、'''葫盧'''、'''壺盧'''とも表記)ともいい、[[和語]]では'''ひさご'''、'''ふくべ'''という<ref>{{Cite web |url= http://thesaurus.weblio.jp/content_find/text/0/Lagenaria+siceraria+var.gourda |title= Weblio シソーラス |accessdate=2016-05-04}}</ref>。
この植物の果実を加工して作られる「ひょうたん」は、「瓢」の「箪(容器)」という意味である。
 
== 概説 ==
最古の栽培植物のひとつで、原産地の[[アフリカ]]から食用や[[加工]]材料として全[[世界]]に広まったと考えられている。[[乾燥]]した[[種子]]は耐久性が強く、[[海水]]にさらされた場合なども高い[[発芽]]率を示す。
 
狭義には上下が丸く真ん中がくびれた形の[[品種]]を呼ぶが、[[球]]状から楕円形、棒状や下端の膨らんだ形など品種によってさまざまな実の形がある。
 
ヒョウタンは、苦み成分であり嘔吐・下痢等の食中毒症状を起こす[[ククルビタシン]]<ref>{{PDFlink|[http://www.tokyo-eiken.go.jp/assets/issue/journal/2000/pdf/51-31.pdf 化学物質及び自然毒による食中毒等事件例(第17報) -平成11年-(pdf)]}}東京都立衛生研究所 研究年報 2000 年</ref>を含有し、果肉の摂取は食中毒の原因となる<ref>{{citeCite news |title=授業でひょうたん食べ児童17人がおう吐・腹痛 |author= |newspaper=[[日本放送協会|NHK]] |date=2013-07-04 |url=http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130704/k10015804921000.html |archiveurl=https://web.archive.org/web/20130705025830/http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130704/k10015804921000.html |archivedate=2013年7月5日-07-05 |accessdate=2013-07-04 |deadurldate=2017年9月-09}}</ref><ref>[http://www.asahi.com/articles/OSK201311140150.html ヒョウタンで体調不良 食べさせた小学校教諭、懲戒免職の処分 大阪府教委] [[朝日新聞]] 2013年11月15日</ref><ref>[http://www.asahi.com/articles/ASG7F4W0GG7FPTIL00C.html ひょうたん苗、食用と誤表記し販売 腹痛で入院した人も] [[朝日新聞]] 2014年7月13日</ref>。
 
== 種類 ==
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== 歴史 ==
日本では、[[縄文時代]]草創期から前期にかけての遺跡である[[鳥浜貝塚]]から種子が出土している。文献史学上では『[[日本書紀]]』(720年成立)の中で瓢(ひさご)としてはじめて公式文書に登場する。その記述によると[[仁徳天皇]]11年(323年)、[[茨田堤]]を築く際、水神へ[[人身御供]]として捧げられそうになった茨田連衫子という男が、ヒョウタンを使った頓智で難を逃れたという。
 
{{要出典範囲|date=2017-04-06|古代のヒョウタンは現在のような括れた形態ではなく通常の植物の実のような筒のような形をしていたことがかっており、突然変異で今日知られているような特徴的な形が発現し、それが人伝に栽培されて世界中に広まった、とされる。}}
 
== 利用 ==
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=== 容器 ===
[[File:Refreshing palm wine.jpg|thumb|left|200px|[[ヤシ酒]]の容器として([[コンゴ共和国]]、2008年)]]
[[ファイル:Vieira Camino de Santiago.jpg|thumb|right|[[サンティアゴ・デ・コンポステーラ]]巡礼者が水を入れる]]
果肉部分を除去し、乾燥させたものが容器として[[水筒]]や[[酒]]の貯蔵に利用されていた(微細な穴があるために[[水蒸気]]が漏れ出し、[[蒸発熱|気化熱]]が奪われるため中身が気温より低く保たれる)。
 
軽くて丈夫なヒョウタンは、世界各国でさまざまな用途に用いられてきた。[[朝鮮半島]]ではヒョウタンをふたつ割りにして作った[[柄杓]](ひしゃく)や食器を「パガチ」と呼び、庶民の間で広く用いられてきた。また、[[アメリカインディアン]]は[[タバコ]]の[[パイプ]]に、[[南アメリカ|南米]]の[[アルゼンチン]]、[[ウルグアイ]]、[[ブラジル]]では[[マテ茶]]の茶器、また[[インドネシア]]・[[パプア州|イリアンジャヤ]]や[[パプアニューギニア]]などでは[[先住民]]によって[[コテカ|ペニスケース]]として使われている。
*[[千利休]]は花器として使った先覚者で花道家[[安達瞳子]]も利用したという<ref>湯浅[2015:89-90]</ref>
*[[喫煙具]]としても使われる<ref>湯浅[2015:93]</ref>
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[[File:Refreshing palm wine.jpg|thumb|left|200px|[[ヤシ酒]]の容器として([[コンゴ共和国]]、2008年)]]
[[ファイル:Vieira Camino de Santiago.jpg|thumb|right|[[サンティアゴ・デ・コンポステーラ]]巡礼者が水を入れる]]
</gallery>
 
=== 楽器 ===
[[画像:Guiro.png|thumb|50px|右|[[ギロ]]]]
ラテン音楽では、ヒョウタンの内側をくりぬき外側に刻みを入れて棒でこすったり叩いたりして演奏する[[ギロ]]とう打楽器がある。ほかに多くの[[弦楽器]]([[コラ (楽器)|コラ]])、[[打楽器]]、[[管楽器]]、[[笛]]、[[笙]]などに使われる<ref>湯浅[2015:117-148]</ref>
 
=== 浮きと漁具 ===
[[済州島]]の[[海女]]は[[浮き]]用にヒョウタンを抱える<ref>湯浅[2015:106-107]</ref>[[漁具]]としても使われる<ref>湯浅[2015:104]</ref>
 
=== 神具 ===
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=== 航海術 ===
[[ポリネシア人]]が[[航海]]をする際に用いたとされ「魔法のヒョウタン」と呼ばれた<ref>{{Cite book |和書 |last= |first= |author= 茂在寅男 |authorlink= 茂在寅男 |coauthors= |translator= |year= 1979 |title= 古代日本の航海術 |publisher= 小学館 |series= 小学館創造選書 (25) |page= |id= |isbn= |quote= }}</ref>。
 
=== 装身具 ===
ニューギニア島の先住民が股間に着用する[[コテカ]]に加工される。
 
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ヒョウタンは水筒、酒器、調味料入れなどの容器に加工されることが多い。
 
加工には、まず、完熟したヒョウタンの実を収穫し、ヘタの部分に穴を開ける。そこから棒を突きれ、果肉をある程度突き崩す。その状態で重石を載せ、水中に漬け込む。
 
1週間-1ヶ月ほど経ってから、表皮を剥がし、腐ってペースト状になった果肉をすべて掻き出して綺麗に洗う。その後で水を取り替え、一週間ほど漬けて腐敗臭を抜いてから陰干しする。乾燥したヒョウタンは、表面に[[柿渋]]や[[弁柄|ベンガラ]]、[[漆]]、[[ニス]]などを塗って仕上げる。水筒や食器など、飲食関係の容器に用いる場合は、酒や[[番茶]]を内部に満たして臭みを抜く。
 
なお果肉の腐敗臭はかなり強烈なので、屋内や住宅密集地での作業は控え、手にはゴム手袋をするのが望ましい。手に臭いが移った場合、石鹸で洗っても臭いは容易に落ちないため、手に[[灯油]]や[[溶媒|有機溶剤]]を塗ってから石鹸で洗うと臭いがよく落ちる(ただし皮膚に灯油や有機溶剤が付着することは有害なので、あくまでも緊急時の対処とするのが望ましい)。臭気を抜く方法に、塩素系(キッチンハイター)などの溶液に漬け込むことも有効である。
 
現在は酵素を利用して果肉を分解する加工液も市販されており、これを利用すると腐敗による加工よりもはるかに早く、腐敗臭もなく加工できる<ref>{{Cite web |title=バイオひょうたんごっこ® | url=http://sakata-netshop.com/about/campaign/hyoutangokko/ |accessdate=2017-02-16 | work= | publisher=サカタのタネ |ref=}}</ref>
 
== 毒性 ==
観賞用のヒョウタンの中には[[ククルビタシン]]という苦味成分のある植物毒を含有しているものがあり、[[嘔吐]]と[[下痢]]を伴う重篤な胃および腸不全を引き起こし、稀に死亡することもあるため、注意が必要である。
 
;中毒事例
*[[茨木市立彩都西小学校]]において、事前にヒョウタンの植物毒を認知していた校長から制止されたにも関わらず、これを無視した教諭が児童28人にヒョウタンを食べさせ、17人が中毒症状を起こし懲戒免職になったことがある<ref>2013年11月15日08時01分 読売新聞</ref>。
*「グリーンプラザ山長」([[奈良県]][[生駒市]])が、生産した苗に誤って「育てて楽しい、食べておいしいシリーズ」のラベルをけて出荷し、ホームセンター大手「[[ロイヤルホームセンター]]」(本社・大阪市西区)で販売された。このうち、押熊店(奈良市押熊町)の購入者から苗を受け取った知人の40歳代女性が実を食べ、腹痛や吐き気などの症状を訴えて2日間入院したが命に別状はかった<ref>2014年7月13日15時32分 朝日新聞</ref>。
 
*「グリーンプラザ山長」([[奈良県]][[生駒市]])が、生産した苗に誤って「育てて楽しい、食べておいしいシリーズ」のラベルをつけて出荷し、ホームセンター大手「[[ロイヤルホームセンター]]」(本社・大阪市西区)で販売された。このうち、押熊店(奈良市押熊町)の購入者から苗を受け取った知人の40歳代女性が実を食べ、腹痛や吐き気などの症状を訴えて2日間入院したが命に別状は無かった<ref>2014年7月13日15時32分 朝日新聞</ref>。
 
*[[兵庫県]][[篠山市]]の男性が、自宅の庭で栽培したヒョウタンを素揚げにして友人と食べ、おう吐や下痢の症状が出て救急車で搬送された<ref>2016年8月2日16時29分 神戸新聞NEXT</ref>。
 
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== ギャラリー ==
[[File画像:Umajirushi.jpg|thumb|150px|[[豊臣氏|豊臣家]]の[[馬印]]千成瓢箪]]
<gallery>
画像:W hyoutan2091.jpg|ヒョウタンの実
画像:Calabash Trellis.jpg|ヒョウタン棚
画像:さまざまなヒョウタンImg783.jpg|様々なヒョウタン
File:Lagenaria siceraria "geese".jpg|カナダの小売市場にて
ファイル:Flag of Osaka Prefecture.svg|[[大阪府旗]]の意匠は千成瓢箪にちなむ<ref name=osaka/>
File:FSbottlegourd.jpg|ヒョウタンを用いた容器(中国)
File:Calabash-pipe.jpg|ひょうたんを用いたパイプ
</gallery>
 
== 因んだ名前 ==
真ん中でくびれている、ひょうたんの独特の形(ヒョウタン型)から、それに[[エポニム|ちなんだ名]]を持つ生物や地形がある。
 
;植物
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;魚
* コロダイ(胡盧鯛) - [[イサキ科]]の[[海水魚]](学名 ''Plectorhynchus pictus''<ref>{{Cite web |date= 2016-5-4 |url =http://ejje.weblio.jp/cat/nature/ndbmj |title= 動物名辞典 |publisher= [[日外アソシエーツ]] |accessdate=2016-05-04}}</ref>。
 
;地形
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== 脚注 ==
{{Reflist}}
<references />
 
== 参考文献 ==
* {{Cite book|和書 |author= 湯浅浩史 |authorlink= 湯浅浩史 |title= ヒョウタン文化誌 |date= 2015-9-18 |publisher= [[岩波書店]] |series= [[岩波新書]](新赤版)1564 |isbn= 978-4-00-431564-3 |ref=}}
* {{Cite book |和書 |editor= 古文化財編集委員会 |year= 1984 |title= 古文化財の自然科学的研究 |publisher= [[同朋舎]] |page= 652 |id= |isbn= 978-4810404104 }}
 
== 関連項目 ==