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m →‎受賞(受賞候補)歴: 「人造美人」は「ボッコちゃん」の改題なのでこちらにリンクしておきます。
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| image = Hoshi Shinichi.jpg
| imagesize = 180px
| caption = 星新一<br /><small>[[早川書房]]SF[[S-Fマガジン]]1963年12月号(1963)より星新一</small>
| pseudonym = 弓 晶一
| birth_name = 星 親一
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* [[1998年]](平成10年) - 第19回[[日本SF大賞]]特別賞を受賞<ref>[http://www.sfwj.or.jp/list.html 日本SF大賞]</ref>。
 
=== 星雲賞について ===
SFファンが選ぶ年間ベスト賞である[[星雲賞]](1970年創設)を星は一度も受賞していない。その低評価の事情について[[筒井康隆]]は、筒井自身が星の真価がわかるようになったのは30歳に近くなってからだったと述べた後、星雲賞の母体であるSFファン・グループは10代から20代が多数を占めている(当時の話)ため、そういった若い世代からショート・ショートというものがたいへん軽いものと見られているのでは、と想像している<ref>『'60年代日本SFベスト集成』への星の収録作「解放の時代」の解説</ref>。
 
ただし、1983年の「ショートショート1001編を達成」を機に、翌1984年夏の日本SF大会で、[[日本SFファングループ連合会議]]議長の門倉純一の提案で「星雲賞特別賞」を授賞することとなる。実際に授賞式まで行われたが、星の側が受賞を拒否し、「幻の星雲賞」となった<ref>[[牧眞司]]「ぼくのSFファン修業時代、星作品に関係することなど」http://www.hoshishinichi.com/note/34.html</ref>。
 
後年、[[手塚治虫]]、[[矢野徹]]、[[米澤嘉博]]、[[野田昌宏]]、[[柴野拓美]]、[[小松左京]]らは死去した際に星雲賞特別賞を受賞したが、星の死去時は授賞されなかった。第39回(2008年)において、最相葉月の評伝『星新一 一〇〇一話をつくった人』が星雲賞ノンフィクション部門を受賞した。
 
== 作品の特徴 ==
星の作品、特にショートショートは通俗性が出来る限り排除されていて、具体的な地名・人名といった固有名詞が出てこない。例えば「100万円」とは書かずに「大金」・「豪勢な食事を2回すれば消えてしまう額」などと表現するなど、地域・社会環境・時代に関係なく読めるよう工夫されている。さらに機会あるごとに時代にそぐわなくなった部分を手直し(「電子頭脳」を「コンピュータ」に、「ダイヤルを回す」を「電話をかける」に直すなど)がされていて、星は晩年までこの作業を続けていた。激しい暴力や殺人シーン、性行為の描写は非常に少ないが、このことについて星は「希少価値を狙っているだけで、別に道徳的な主張からではない」「単に書くのが苦手」という説明をしている。加えて、時事風俗は扱わない、[[当用漢字]]表にない漢字は用いない、前衛的な手法を使わない、などの制約を自らに課していた。
 
ショートショートの主人公としてよく登場する「エヌ氏」「エフ氏」の名は、星の作品を特徴づけるキーワードとなっている。「エヌ氏」を「N氏」としないのは、アルファベットは、日本語の文章の中で目立ってしまうからだと本人が書いている。
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作品は20言語以上に翻訳され<ref>1985年時点で[[英語]]・[[ドイツ語]]・[[フランス語]]・[[イタリア語]]・[[中国語]]・[[ロシア語]]・[[朝鮮語]]・[[ルーマニア語]]・[[ポーランド語]]・[[チェコ語]]・[[インドネシア語]]・[[ウクライナ語]]・[[ノルウェー語]]・[[ラトビア語]]・[[リトアニア語]]・[[ベンガル語]]・[[セルビア・クロアチア語]]・[[マジャール語]]・[[アゼルバイジャン語]]・[[エスペラント]]の20言語([[深見弾]]「星新一―億の読者をもつ作家」(新潮文庫「たくさんのタブー」巻末)より)。</ref>、世界中で読まれている。
 
[[寓話]]的な内容の作品が多く、星も自らを「現代の[[アイソーポス|イソップ]]」と称していた(『未来いそっぷ』と題した作品集もある)。その柔軟な発想と的確に事物の本質をつかんだ視点の冷静さから多くの読者を獲得したほか、学校教科書([[光村図書出版]]『国語 小学5年』に掲載された「おみやげ」、[[東京書籍]]『[[NEW HORIZON (東京書籍)|NEW HORIZON]]』に掲載された「おーいでてこーい(英語の教科書であるため、英訳されCan Anyone Hear Me?のタイトルで収録)など)やテレビ番組『[[週刊ストーリーランド]]』(「殺し屋ですのよ」など)・『[[世にも奇妙な物語]]』(「おーい でてこーい」「ネチラタ事件」など)の題材に採用されている。
 
評論家の[[浅羽通明]]は自身の評論の中で星のショートショートをしばしば引用し、どんな時代においても通用する星作品の「普遍的な人間性への批評」を強調している。
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== 人物・エピソード ==
容貌や作風とは裏腹に、実生活でもギャグを連発するなど「奇行の主」と呼べる側面があった。SF仲間の集まりなど、気を許せる場では奇人変人ぶりを遺憾なく発揮していた。同行している作家仲間を驚かせることもしばしばだったという。特に筒井の初期短編は、星の座談でのギャグに大きく影響を受けているといわれる<ref>最相葉月『星新一 一〇〇一話をつくった人(下)』新潮文庫 pp.161-163</ref>。SF作家仲間たちと西新宿の台湾料理店(山珍居)に集まり、SF的な雑談に興じたが、中でも星の「異常な発想の毒舌発言」はその中でも群を抜いていて、他のSF作家たちの回想文などで神話的に語られている。その一部は『SF作家オモロ大放談』(いんなあとりっぷ社、1977年。のちに『おもろ放談』(1981年)と改題され角川文庫に収録)で読むことができる。[[平井和正]]は星の異常な発言をテーマにした短編小説「星新一の内的宇宙<small>(インナースペース)</small>」を発表しており、作家仲間が集まると自然と星を中心に話題が広がっていた様子が描写されている。しかし、文庫解説等では(育ちがいいこともあり)しばしば紳士的な人物と書かれた。世代・生育環境が近いこともあり、[[北杜夫]]とも親交が深かった<ref>2人とも父親は医薬系組織(製薬会社と病院)のトップ、母親は名家出身(小金井良精の孫と大病院の娘)で本人は東京(本郷と青山)育ち</ref>。また、礼節を欠いて接してくる人間には距離を置いて接していた。
 
[[星製薬]]が人手に渡った後も永らく、[[星薬科大学]]評議員という肩書きがあった。なお、[[手塚治虫]]の漫画『[[W3|ワンダースリー]]』の主人公・「星真一」の名前は彼に由来する。星新一自身は、手塚の息子の[[手塚眞]]にちなんでいる可能性も考えていた<ref>星新一「文句を言い忘れた『W3』の主人公名」『[[朝日ジャーナル]]臨時増刊 手塚治虫の世界』[[朝日新聞社]]、1989年。</ref>。
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また、「リスクもなく大きなもうけが出る」と称して大量の人から金銭を集める詐欺行為の被害者について、「だまされた者は、欲に目がくらんだ者であり、救ってやる必要などない」などと辛辣な内容をエッセイに書いていた<ref>『きまぐれ遊歩道』(新潮文庫)pp.111-112他</ref>。別のエッセイ集『できそこない博物館』では、「[[不渡り]][[手形]]をつかまされれば、誰だって人間不信になる」といった一文を目にすることができる。
 
特に[[ドイツ文学]]に傾倒したり滞在した経験があるわけではないが、この国と縁の深い人物の多い家系<ref>外祖父・小金井良精とその義兄・森鴎外については有名だが、父・星一も留学経験こそないものの、[[フリッツ・ハーバー]]訪日の援助したり、ベルリン工科大学名誉教授の称号を贈られるほどの親独家として名高い。</ref>も影響しているのか、[[ドイツ]]びいきの感覚があり、エッセイ「クマのオモチャ」では「ドイツを全面的に信用している」「いい意味での恐るべき民族である」と手放しに近い賛辞を呈していた。同じくエッセイ「名前」では長女の名前ユリカを誕生月[[7月]]のドイツ語(Juli ユーリ)から発想した経緯を綴っている(ともに『気まぐれ星のメモ』所収)。また、星作品には国籍の明確な外国人はほとんど登場しないが(そもそもどこの国の話かすら判らないものが多い)、『ほら男爵現代の冒険』の主人公は当然ドイツ人であり、『気まぐれ指数』にも重要な脇役で在日ドイツ人が登場している。青年期と、かなりのブランクを経て中年期以降にもクラシック音楽を愛聴していた。クラシックの中で最も好きな曲に、[[ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン|ベートーヴェン]]『[[ピアノ三重奏曲第7番 (ベートーヴェン)|大公三重奏曲]]』を挙げ、[[アルフレッド・コルトー|コルトー]]、[[ジャック・ティボー|ティボー]]、[[パブロ・カザルス|カザルス]]の演奏盤を愛聴していた<ref>星新一『きまぐれ遊歩道』p.76(新潮文庫、1990年)</ref>。
 
小松左京によると、星には[[少年愛]]の傾向があり、ひところはピーター([[池畑慎之介☆]])に入れ上げて「ピーターに会わせてくれるんだったら、とにかく大長編書くとかね、つまらんこといってた」という<ref>北杜夫『怪人とマンボウ』p.118(講談社、1977年)</ref>。その後、[[郷ひろみ]]に入れ上げていた時期もあり、「彼はね、一人で支那まんじゅう食いながら、郷ひろみのテレビ見てんだそうですけど、鬼気迫るな」とも小松は発言している<ref>北杜夫『怪人とマンボウ』p.119(講談社、1977年)</ref>。
 
ウイスキーが好きで特に[[サントリー]]の角瓶を愛飲していた。エジプト旅行に行く際、免税店で買い求めたが取り扱っておらず、仕方なくオールドを買った。角が置かれていなかったことをひじょう非常に残念がり、「角なんて飲めなかったな、昔は」「飲めなかった。高級品だったんだ。手が出なかった。それが、いまじゃ、ああいう所に置いてないんだから。喜ぶべきことなのか、悲しむべきことなのか」と発言している<ref>佐々木清隆『さよならバーバリー 2』(1998年)http://www.asahi-net.or.jp/~jg3k-ssk/hoshi2.html</ref>。
 
[[公立はこだて未来大学]]は2012年9月6日に「きまぐれ人工知能プロジェクト 作家ですのよ」の開始を発表した。[[松原仁 (情報工学者)|松原仁]](はこだて未来大学)、[[中島秀之]](はこだて未来大学学長)、[[角薫]](はこだて未来大学)、[[迎山和司]](はこだて未来大学)、[[佐藤理史]]([[名古屋大学]])、[[赤石美奈]]([[法政大学]])の6人でプロジェクトチームを結成した。星新一のショートショート作品の解析を行い、プログラム的に体系化、生成アルゴリズムの検討と共に[[トライアンドエラー]]を繰り返し、人工知能によって2017年までに星新一作品と同等かそれ以上のショートショートを自動生成できるようにすることを目指している<ref>5年以内にショートショートの公募に匿名で応募して入賞することを目指すとしている。</ref>。[[瀬名秀明]]が小説の評価方法の検討を行うなどの顧問を務める。[[2015年]]9月には、自動生成されたショートショートを第3回[[星新一賞]]に応募したことが発表された<ref>{{cite web|title=第3回星新一賞に応募しました。|url=http://www.fun.ac.jp/~kimagure_ai/news/150924.html|date=2015-09-24|accessdate=2016-01-29}}</ref>。
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== 家系図 ==
{{familytree/start}}
{{familytree| | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | | A-1 |A-1=[[小林親真|小林又兵衛]]}}
{{familytree| | | | | | | | | | | | | | | | | | | |,|-|-|-|+|-|-|-|.| }}
{{familytree| | | | | | | | | B-1 | | | | B-2 |y| B-3 | | B-4 | | B-5 |B-1=森静泰|B-2=小金井良達|B-3=幸|B-4=[[小林虎三郎]]|B-5=[[小林雄七郎]]}}
{{familytree| | | | | |,|-|-|-|+|-|-|-|.| | | |!}}
{{familytree| | | | | C-1 | | C-2 | | C-3 |y| C-4 | | C-5 |C-1=[[森鴎外|森鷗外]]|C-2=[[三木竹二]]|C-3=[[小金井喜美子|喜美子]]|C-4=[[小金井良精]]|C-5=[[桑木厳翼]]}}
{{familytree| | ,| -| -| -| -|-|-|-|.| | | |,|-|^|-|.| | | |!}}
{{familytree| D-0 | | D-1 |y| D-2 |y| D-3 | | D-4 |~| D-5 | | D-6 |D-0=<small>星一の妹</small>|D-1=(内妻)|D-2=[[星一]]|D-3=精|D-4=[[小金井良一]]|D-5=[[小金井素子]]|D-6=[[岡部三郎]]}}
{{familytree| |!| | | | | |!| | | |)|-|-|-|.| | | | | | | | | |!| |}}
{{familytree| E-0 | | | | E-1 | | E-2 | | E-3 |~|~|~|~|~|~|~| E-4 |E-0=娘|E-1=[[出澤三太]]|E-2=[[星新一]]|E-3=星協一|E-4=<small>岡部三郎の長女</small>|boxstyle_ E-2=background-color: #FDFC8F;}}
{{familytree| |!| | | | | | | | | |!}}
{{familytree| F-0 | | | | | | | | F-1 |F-0=[[鈴木俊平]]|F-1=[[星マリナ]]}}
{{familytree/end}}
 
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* 妖精配給会社([[1964年]](昭和39年))
* [[夢魔の標的]]([[1964年]](昭和39年))
*: はじめてのSF長編。[[S-Fマガジン]]に連載された。
*
* おせっかいな神々([[1965年]](昭和40年))
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* なりそこない王子([[1971年]](昭和46年))
* だれも知らない国で([[1971年]](昭和46年))
*: 書き下ろし長編の少年もの。後に『ブランコのむこうで』改題された。
*
* さまざまな迷路([[1972年]](昭和47年))
* にぎやかな部屋([[1972年]](昭和47年))
*: 戯曲。[[レーゼドラマ]]として書かれたが、その後、舞台上演されている
*
* ようこそ地球さん([[1972年]](昭和47年))
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*: 神話的な物語を描いた短編集。
*
* 天国からの道([[2005年]](平成17年))))
* つぎはぎプラネット([[2013年]](平成25年))))
 
=== エッセイ集 ===
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=== 翻訳 ===
* [[フレドリック・ブラウン]]『さあ、気ちがいになりなさい』 早川書房 [[1962年]](昭和37年)<ref>下訳は当時早川書房の編集者だった[[福島正実]]、[[南山宏]]、[[常盤新平]]らが担当している。星による訳者あとがき(2005年の再版では割愛されている)では、単に'''協力者'''として3人への謝辞が書かれているが、下訳の事実について福島らの元同僚・[[内田庶]]がエッセイの中で言及している。</ref>
* [[ジョン・ウィンダム]]『海竜めざめる』 早川書房、[[1966年]](昭和41年)
* [[クリスチーネ・ネストリンガー]]『トマニ式の生き方』 エイプリル・ミュージック [[1978年]](昭和53年)
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* なお星作品の主な外国語訳は以下のとおり。
*: [[1963年]](昭和38年)に『ボッコちゃん』が英訳され、『Magazine of Fantasy and Science Fiction 6月号に掲載。
*: [[1966年]](昭和41年)に短編『景品』が[[ロシア語]]に訳され、[[コムソモール|コムソモリスカヤ・プラウダ]]紙に掲載。同年『冬きたりなば』が[[ソビエト連邦|ソ連]]・ミル出版社刊の『世界SF選集』の国際短編アンソロジーに収録される。
*: [[1967年]](昭和42年)、短編『タバコ』『願望』『危機』『冬きたりなば』『宇宙の男たち』『景品』がソ連・ミル出版社刊の日本SF短編アンソロジーに収録される。
 
=== ドラマ原作 ===
* [[宇宙船シリカ]] - NHK総合テレビにて[[1960年]](昭和35年)9月5日から[[1962年]](昭和37年)3月27日まで放送されたSF人形劇。
 
== 星新一に関する作品 ==
=== 特集雑誌など ===
* 別冊新評『星新一の世界』 新評社、1976年(昭和51年)12月(「76 AUTUMN」号。ただし表紙には‘WIN’と表記)。
** 内容は、本人のエッセイ、ショートショート、インタビュー、対談、他作家などの寄稿、座談会、グラビア(スナップ写真、収集物など)、資料(大辞典、年譜、作品目録、書評目録など
* 『SF作家オモロ大放談』(いんなあとりっぷ社、1977年)
** 『おもろ放談』(改題、角川文庫、1981年)
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=== 朗読 ===
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=== 伝記 ===
* {{Cite book|和書|author=最相葉月|authorlink=最相葉月|date=2007-03|title=星新一 一〇〇一話をつくった人|publisher=新潮社|isbn=978-4-10-459802-1}}
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== 星新一ショートショート・コンテスト ==
1979年(昭和54年)より始まった星の選考によるショートショート作品のコンテスト。発案者は講談社の編集者[[宇山日出臣]](秀雄)<ref>最相葉月『星新一(下)』(新潮文庫)p.267</ref>。毎年の優秀作品は単行本として出版されている。星の死後も選者を[[阿刀田高]]に変え、マイナー・チェンジを繰り返しながら継続中である。受賞者の中でも[[江坂遊]]の才能は非常に評価しており、星自身は「唯一の弟子」と考えていて江坂の子供の名づけ親にもなった。もっとも、いわゆる第二世代のSF作家たちには私的交遊なども通じて星の弟子を自認している者が多く、第一世代後半組でも作風にまったく共通点のない[[平井和正]]が文庫解説で弟子宣言している。
 
=== 主な受賞者 ===
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== 星新一賞 ==
{{main|星新一賞}}
2013年から[[日本経済新聞社]]が主催する公募[[文学賞]]。{{main|星新一賞}}
 
== 脚注 ==