「サブプライム住宅ローン危機」の版間の差分

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'''サブプライム住宅ローン危機'''(サブプライムじゅうたくローンきき、{{lang-en-short|subprime mortgage crisis}})とは、[[2007年]]末から[[2009年]]頃を中心として[[アメリカ合衆国]]で起きた、住宅購入用途向け[[サブプライム・ローン]]の[[不良債権]]化である。サブプライム・ローンへの投資を証券化し[[金融商品]]として取引可能にした「サブプライム・モーゲージ(subprime mortgage)」は、[[金融市場]]で[[価格]]が下落するなどして、'''[[リーマン・ショック]]'''を代表例とする[[経済問題]]に発展した。
 
リーマン・ショックは、[[2008年]][[9月15日]]に米国の大手[[投資銀行]]である[[リーマン・ブラザーズ]]が[[倒産]]した事を引き金に発生した。関与を疑われた銀行は、後に次々と和解金を支払い、関与の違法性をふくむ事件の真相をうやむやにしている<ref>まず[[JPモルガン・チェース]]
:[http://www.bloomberg.co.jp/news/123-MV95QK6JTSED01.html JPモルガン、51億ドル支払いで米連邦住宅金融局と和解合意] 2013/10/26 10:35 JST
:[http://jp.wsj.com/articles/SB10001424052702304387404579306983344614594 JPモルガン、マドフ事件めぐり当局と和解―26億ドル支払い] 2014年1月8日07:30
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:[http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NO74I36VDKHT01.html 野村とRBS、住宅ローン担保証券販売の米訴訟で損害賠償へ] 2015/05/12
 
この件では[[リーマン・ブラザーズ]]の3部門を買収した[[野村ホールディングス]]も被告となっている。すでに米連邦住宅金融局は[[バンク・オブ・アリカ]]も訴えており、これまでの住宅ローン担保証券をめぐる訴訟で179億ドル規模の和解合意に達している。
:[http://www.bloomberg.co.jp/news/123-NOFBTN6JIJUP01.html 野村とRBSに960億円の支払い命令-住宅証券販売で米地裁] 2015/05/16 17:32 JST
 
危機の招来を疑われながら[[連邦準備制度|FRB]]から融資を受けている。
:DebtNet通信 (vol.8 #22) [http://www.jca.apc.org/~kitazawa/debtnet/2011/vol8_22.htm 米GAOの監査はFRBによる16兆ドルの銀行救済融資を暴く] 2011年9月
*[[シティグループ]] 2.5兆ドル
*[[モルガン・スタンレー]] 2.04兆ドル
*[[メリルリンチ]] 1.949兆ドル
*[[バンク・オブ・アリカ]] 1.344兆ドル
*[[バークレイズ]] 8,680億ドル
*[[ベア・スターンズ]] 8,530億ドル
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*[[スコットランド銀行]] 1,810億ドル
*[[パリバ]] 1.750億ドル
:合衆国のソース。[http://www.lincolncountywatch.org/16trillion.htm Federal Reserve gives 16 Trillion of your money to their bankster buddies.] lincoln county watch</ref>。2015年2月4日現在、主な原告であり、[[連邦住宅抵当公庫|ファニーメイ]]と[[連邦住宅金融抵当公庫|フレディマック]]を監督する[[:en:Federal Housing Finance Agency|米連邦住宅金融局]]は、一部の住宅ローンについて元本削減を引き続き検討しているという<ref>WSJ [http://jp.wsj.com/articles/SB12052756172436844285404580442521678652614 住宅ローン元本削減、対象は限られる見込み=FHFA局長] 2015年2月5日 11:14 JST</ref>。
 
このような経緯から、サブプライム住宅ローン危機あるいは'''サブプライム問題'''の語は、広義として、リーマン・ショックを契機として発生した'''[[世界金融危機]]'''を含めて指す場合がある。
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==概要==
{{出典の明記|date=2015年10月30日 (金) 10:33 (UTC)|section=1}}
'''サブプライム住宅ローン危機'''のおおもとの原因である[[サブプライムローン|サブプライム・ローン]]とは、米国の[[サブプライムローン|サブプライム]]層を対象として、彼らの住宅購入用途向けに、ローンへの返済が滞った場合への[[担保]]として購入する住宅に[[抵当権]]を設定し、抵当貸付(詳細は[[譲渡抵当]]を参照)とした[[住宅ローン]]、即ち'''モーゲージ・ローン'''(mortgage loan)である。
 
米国では[[日本]]などとは異なり、[[住宅ローン]]の証券化が広く普及しており、その債権を組み込んだ金融商品を所有していた金融機関は種類も数も多数に上る。米国の住宅の安定供給を目的として設立された、[[連邦住宅抵当公庫]](ファニー・メイ/Fannie Mae)や、[[連邦住宅金融抵当公庫]](フレディ・マック/Freddie Mac)などが、モーゲージ・バンク(mortgage bank)からサブプライム・ローンの債権をまとめて購入して証券化し、MBS(Mortgage Backed Securities)という担保証券の中で比較的リスクの高いサブプライム・モーゲージ(subprime mortgage)として市場に供給した。こうした制度によって発行されたサブプライム・モーゲージのうち、およそ80%が変動金利型のアジャスタブル・レート・モーゲージ([[:en:Adjustable-rate mortgage]]) であったとされる<ref name="DODD">{{citation|first=Chris|last=Dodd| year = 2007 | url=http://dodd.senate.gov/?q=node/3731 |title=Senator Dodd: Create, Sustain, Preserve, and Protect the American Dream of Home Ownership |publisher=dodd.senate.gov |date=2007-02-07 | accessdate=2009-02-18}}</ref>。「住宅の値段が上昇し続ける」という考えのもと、サブプライム・ローンは過剰に供給されていた。
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[[ファイル:Subprime Crisis Diagram - X1.png|thumb|left|住宅価格の下落による[[ドミノ倒し]]]]
 
危機の直接原因もしくは引き金は、概ね2005年~2006年頃にピークを迎えた米国の住宅[[バブル経済|バブル]]が弾(はじ)けたことだった<ref name="Moyers Morgenson">{{cite episode| title=Episode 06292007 | series = [[:en:Bill Moyers Journal]] | network = [[公共放送サービス]] | transcripturl = http://www.pbs.org/moyers/journal/06292007/transcript5.html | airdate = 2007-06-29}}</ref><ref name="WSJ Housing Bubble Burst">{{citation| first=Justin|last=Lahart| year = 2007 | title=Egg Cracks Differ In Housing, Finance Shells | publisher=Wall Street Journal | url=http://online.wsj.com/article/SB119845906460548071.html?mod=googlenews_wsj | date=2007-12-24 | accessdate=2008-07-13 }}</ref>。以後[[サブプライムローン]]と変動金利型住宅ローンの債務不履行が急速に増加した。ローンの初期弁済額を低く抑えるといった借り手刺激策や長期的な住宅価格上昇トレンドから、借り手は多少無理のあるローンでもすぐにより良い条件で借り換えられると信じて手を出した。ところが、2006年~2007年に掛けて金利が上昇し住宅価格が緩やかな下落を始めると、米国の多くの地域ではローンの借り換えが前より難しくなった。月々の返済額が安い初期優遇期間の満了、思うように上昇しない住宅価格、及び変動金利型住宅ローンの金利が切り上がったことなどから、[[債務不履行]]や抵当物件の[[強制執行|差し押さえ]]が劇的に増加した。住宅価格の下落によって、ローン金額よりも住宅価値の方が低いという状況が生まれてしまい、これも借り手側が差し押さえを選ぶ金銭的な動機になった。米国で2006年終盤から顕在化したこの差し押さえの蔓延は、世界的な経済危機の主な原因の一つであり続けている。何故ならこれは消費者の富を吸い上げると共に金融機関の体力を着実に破壊するからである。
 
危機に至るまでの何年かに渡り、急成長しつつあるアジア諸国や産油国から巨額の外資が米国に流入してきた。この資金流入は 2002年~2004年頃の米国の低金利と相俟って融資条件を大いに緩和し、住宅バブルと信用バブルの両方に油を注いだ。様々な種類のローン(例えば住宅、クレジットカード、自動車など)が簡単に組めるようになり、消費者は空前の債務を負うこととなった<ref>{{citation|first=Ben S.|last=Bernanke|authorlink=ベン・バーナンキ| year = 2009 | date=2009-04-14 | url=http://www.federalreserve.gov/newsevents/speech/bernanke20090414a.htm|title=Four Questions About the Financial Crisis|publisher=[[連邦準備制度|連邦準備制度理事会]]|accessdate=2010-06-23}}</ref><ref>{{citation| first=Paul | last=Krugman| year = 2009 | url=http://www.nytimes.com/2009/03/02/opinion/02krugman.html?_r=1 | title=Revenge of the Glut| date=2009-03-01 | publisher=[[ニューヨーク・タイムズ]]|accessdate=2010-07-10}}</ref>。住宅バブルや信用バブルの一部として、[[不動産担保証券]] (MBS) と呼ばれる金融商品の契約高が非常に増えた。これは住宅ローンの弁済金と住宅価格を価値の裏づけとする証券である。こうした[[金融革新]] ([[:en:financial innovation|en]]) によって、世界中の企業や投資家が米国の住宅市場に投資できるようになった。住宅価格が下落すると、大量の資金を借りてサブプライム MBS に大きく投資していた世界的な大手金融機関が巨額の損失を計上した。住宅市場の危機が他の経済分野に波及するにつれて、他種のローンでも債務不履行や損失が目立って増加した。全世界の損失額は何兆ドルもの規模と推計されている<ref>{{cite journal|url=http://www.imf.org/external/pubs/ft/weo/2009/01/pdf/exesum.pdf|title=Executive Summary| author = 国際通貨基金 | authorlink = 国際通貨基金 | publisher=国際通貨基金| date = 2009-01 |accessdate=2010-06-23}}</ref>。
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サブプライム危機に関連し 2007年を通じて 300件を超える民事訴訟が連邦裁判所に提訴された。州裁判所における訴訟件数は集計されていないが、やはり多数に上るものと信じられている<ref>{{cite web | title = Subprime lawsuits on pace to top S&amp;L cases - The Boston Globe | url=http://www.boston.com/business/articles/2008/02/15/subprime_lawsuits_on_pace_to_top_sl_cases/ | accessdate=2008-05-19 | year = 2008 }}</ref>。
{{節stubスタブ|date=May 2010}}
 
{{節stub|date=May 2010}}
 
==影響==