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千葉県による品種改良などについて加筆しました。
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[[File:Peanut-AAS.JPG|330px|thumb|'''ラッカセイ'''の[[アミノ酸スコア]]<ref>http://www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/search/</ref><ref>[『タンパク質・アミノ酸の必要量 WHO/FAO/UNU合同専門協議会報告』日本アミノ酸学会監訳、医歯薬出版、2009年05月。ISBN 978-4263705681 邦訳元 ''[http://whqlibdoc.who.int/trs/WHO_TRS_935_eng.pdf Protein and amino acid requirements in human nutrition]'', Report of a Joint WHO/FAO/UNU Expert Consultation, 2007]</ref>]]
'''ラッカセイ'''([[漢字]]: '''落花生'''、[[学名]]: {{Snamei|Arachis hypogaea}}、[[英語]]: peanut <ref>{{IPA-en|ˈpiːnʌt}}。[[日本語]]では英語からの[[外来語]]を[[カタカナ]]で「ピーナッツ」または「ピーナツ」と表記。[[英語]]で「peanut」はこの植物全体を指しうるが、日本で「ピーナッツ」は、専らこの植物の[[種子]]部分(特に、食用のそれ)を指していることが多い。</ref>または groundnut)は[[マメ亜科]][[ラッカセイ属]]の[[一年草]]。食用にされる[[種子]]は別名'''ナンキンマメ'''(南京豆)、ピーナッツともいう
 
== 名称 ==
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[[中国語]]では「花生」(ホワション {{ピン音|huāshēng}})、「落花生」(ルオホワション {{ピン音|luòhuāshēng}})、別名「長生果」<ref name=zhanglu> 張璐、『本経逢原』、[[清]]。</ref>。[[台湾語]]では「塗豆」(「土豆」とも表記。トータウ thô͘-tāu)。[[客家語]]では「番豆」(ファンテウ)ともいう。
 
ピーナット(Peanut)または、ピーナッツ(peanuts)の語源は[[Pea]][[ピー]]([[エンドウマメ]])[[Nuts]][[ナッツ]](木の実)であるが、名称のみで実際はエンドウマメの木の実ではない。
 
== 特徴 ==
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== 栽培史 ==
ラッカセイの原産地は[[南アメリカ大陸]]である。最も古い出土品は、[[紀元前2500年]]前の[[ペルー]][[リマ]]近郊にある[[紀元前2500年]]前[[遺跡]]から出土した大量のラッカセイの[[]]である{{sfn|ジョンソン |1999|p=125-131}}。また、[[紀元前9世紀|紀元前850年]]ころの[[モチェ文化]]の墳墓にあった[[副葬品]]にラッカセイが含まれていることから、ラッカセイが生活の中で重要な位置を占めていたことが分かる{{sfn|ジョンソン |1999|p=125-131}}。
 
その後、[[メキシコ]]には[[紀元前6世紀]]までに伝わっていたが、[[16世紀]]の[[スペイン]]人[[修道士]]の記録では[[アステカ]]族はラッカセイを食糧ではなく薬と考えていた{{sfn|ジョンソン |1999|p=125-131}}。また、[[カリブ海]]の島々でもラッカセイの栽培は行われており、そこでは重要な食糧とされていたという。
 
[[大航海時代]]の始まりで、ラッカセイは[[ヨーロッパ]]にも紹介されたが、土の中で成長するラッカセイはそれまでのマメ類の常識とはかけ離れた、奇妙な存在と感じられた{{sfn|ジョンソン |1999|p=125-131}}。気候もあまり適さないことから、ヨーロッパでの栽培はあまり行われなかった。
 
南アメリカ以外にラッカセイの栽培が広がったのは[[16世紀]]中ごろである。[[ポルトガル]]の船乗りたちが[[西アフリカ]]-[[ブラジル]]間の[[奴隷貿易]]を維持するために[[アフリカ]]に持ち込んだのが始まりで、そのまま[[西アフリカ]]、[[アフリカ]]、[[ポルトガル領インド]]に栽培地が広がっていく{{sfn|ジョンソン |1999|p=125-131}}。ほぼ同時期に[[スペイン]]へ伝わったラッカセイは[[南ヨーロッパ]]、[[北アフリカ]]へと渡っていく。さらに[[インドネシア]]、[[フィリピン]]への持ち込みもほぼ同時期である。
 
[[日本]]には[[東アジア]]経由で[[1706年]]にラッカセイが伝来し、「[[南京市|南京]]豆」と呼ばれた。ただし、現在の日本での栽培種はこの南京豆ではなく、[[明治維新]]以降に導入された[[品種]]である。
 
[[18世紀]]以前の[[北アメリカ]]では、ラッカセイは[[家畜]]の餌か[[黒人]][[奴隷]]用の向け食糧として栽培されていたが、[[南北戦争]]による食糧事情の悪化により[[白人]]もラッカセイを食べるようになり、「ピーナツ」と呼ばれ愛されるようになった{{sfn|ジョンソン |1999|p=133-136}}。
 
== 利用 ==
=== 食用 ===
 
ラッカセイの実を食べる時は、殻(莢、[[豆果]])のまま炒るか殻からむいたものを炒ることが多い。もしくは炒った後に[[バター]](または[[パーム油]]など)を絡める。
 
また、殻のまま[[塩茹で]](茹でピー)にする<ref name=soshu48>『落花生 栽培手引き』p48、2010年3月、相州落花生協議会。</ref><ref>大正10年に[[神奈川県]][[秦野市]]曽屋原に軍の飛行場が建設されることとなり、10月上旬に収穫が強制されたものを塩水につけて茹でたところ味がよかったので、だんだんと神奈川県西部地域に広がった。軍が生んだ産品ともいえる。</ref>。[[北海道]][[東北地方]][[千葉県]]の一部では[[節分]]の豆まきで殻付きで炒った落花生を用いる地域もある。
 
[[中華人民共和国|中国]]や[[台湾]]では殻ごと塩、[[八角]]などの[[香辛料]]を加えた湯で茹でる方法調理や、[[蒸篭]]で蒸す方法こと一般的である多い。茹で落花生は日本でも[[静岡県]]、[[鹿児島県]]などでは一般的である。[[長崎県]][[大村市]]では[[筑前煮]]に落花生を入れる習慣がある。
 
中国では皮付きの種を油で[[揚げる|揚げて]]から[[塩]]をまぶす方法も一般的である。これは朝食に食べる[[粥]]の具としても使う。
 
ラッカセイの薄皮には、[[レスベラトロール]]が含まれ、薄皮ごと食べるほうが健康に良いと言われている<ref>[http://www.kitasato-u.ac.jp/daigaku/noui/newsletter/noui_no47.html 「情報:農と環境と医療 47号」(北里大学学長室通信)No.47 2009/2/1]</ref><ref>[https://archive.is/20121219003616/http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=32378 ピーナツは皮ごと食べよう : 視的!健康論 ~眼科医坪田一男のアンチエイジング生活~] (読売新聞/ヨミドクター、2010年10月21日)</ref>。
 
=== 加工、調理原料 ===
加熱したピーナッツの外側に[[砂糖]]をまぶしたり、[[小麦粉]]の衣を付けて揚げたようなりした[[豆菓子]]や[[チョコレート]]菓子などの加工品も一般的であ生産・販売されている。[[鹿児島県]][[奄美群島]]には熱した[[黒砂糖]]と絡めた[[がじゃ豆]](さた豆)、[[味噌]]も加えた[[味噌豆]]などのといった菓子がある。[[千葉県]]の名産品には「落花生の[[甘納豆]]」が存在している。他には、砕いて[[団子]]の中に入れる[[餡]]にしたり、[[揚げせんべい]]に加えられたりもする。
 
ラッカセイの日本での主産地である千葉・[[茨城]](およびそれらの地域からの出身者が多い東京)では、甘辛く味つけた味噌で炒ったラッカセイをあえた[[惣菜]]がポピュラーで、スーパーの惣菜コーナーなどでも売られており、「味噌ピー」と呼ばれている。
 
[[料理]]では加熱して砕いたラッカセイを[[ゴマ]]同様に[[薬味]]に使う場合があり、[[中華料理]]のうち[[四川料理]]、[[台湾料理]]などではよく見られる。また、[[龍のひげ飴]]([[クルタレ]])、[[団子]]などの菓子に入れられることもある。
 
[[福建省]][[厦門市]]や[[台湾]]には小豆の代わりにラッカセイで作った[[ぜんざい]]ともいうべき「花生湯」「花生仁湯」がある。
 
[[広東料理]]の[[スープ]]では[[ニワトリ|鶏]]の足(もみじ)、[[ナツメ]]などと薄皮付きのラッカセイを煮込んだ「紅棗鷄腳花生湯」、ナツメを[[パパイヤ]]に変えた「木瓜鷄腳花生湯」 。広東[[粥]]には豚のあばら骨、[[タラ]]の干物、[[するめ]]や干しエビと薄皮付きのラッカセイを入れて煮込んだ「排骨花生粥」「柴魚花生粥」「艇仔粥」などもある。
 
[[沖縄県]]では「ジーマーミ(地豆)」と呼び、水分を含ませてすり潰したラッカセイに[[サツマイモ]][[デンプン]]を加えて加熱して作る[[ジーマーミ豆腐]]がある。[[鹿児島県]][[奄美群島]]にもあり、[[鹿児島市]]や[[鹿屋市]]では[[だっきしょ豆腐]]と呼ぶ。[[胡麻豆腐|ごま豆腐]]に似た食感のものである。
 
[[中華人民共和国|中国]]の[[福建省]]、[[台湾]]、[[ベトナム]]などでは加熱後、粉状にしたラッカセイと砂糖を合わせて押し固めた、[[落雁]]に似た「[[花生酥]]」がある。福建省、台湾、[[マレーシア]]には更に[[麦芽糖]]を加えて固めた[[貢糖]]もある。
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=== 殻 ===
[[]]は[[肥料]]、干して[[燃料]]にするほか、粉砕して、[[プラスチック]]のフィラー、[[コルク]]代用品、[[研磨材]]などに利用することができる。
 
== ラッカセイアレルギー ==
ラッカセイは([[蕎麦]]同様に)重篤な[[食物アレルギー]]([[アナフィラキシー]])を引き起こす可能性のある食材として知られている。ナッツアレルギーを持った女性がピーナッツバター入りのサンドイッチを食べたボーイフレンドと[[接吻|キス]]をしたあと、重度のアレルギー症状で死亡する事故も起きている<ref>KERI BLAKINGER
[http://www.nydailynews.com/news/world/quebec-woman-dies-kissing-boyfriend-ate-peanut-butter-article-1.2672456 Quebec woman opens up about daughter’s tragic death after allergic reaction from kissing boyfriend who ate peanut butter sandwich] Daily News2016年6月13日</ref>。
 
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[[ファイル:Peanut_9417.jpg|thumb|220px|掘り出した殻付きラッカセイ]]
;主たる生産地
以下に、[[国際連合食糧農業機関|FAO]](FAO)による2004年時点の生産量<ref>[http://www.fao.org/es/ess/top/commodity.html?lang=en&item=242&year=2005 FAOによる生産統計(2004年)]</ref>、輸出量<ref>[http://www.fao.org/es/ess/toptrade/trade.asp?dir=exp&disp=countrybycomm&resource=242&ryear=2004 FAOによる輸出統計(2004年)]</ref>、輸入量<ref>[http://www.fao.org/es/ess/toptrade/trade.asp?disp=countrybycomm&resource=242&ryear=2004 FAOによる輸入統計(2004年)]</ref>のうち、上位5カ国を示す。いずれも重量ベースである。
 
生産量は、[[華人民共和|中国]](1441万トン)、[[インド]](590万トン)、[[ナイジェリア]](294万トン)、[[アメリカ合衆国]](211万トン)、[[インドネシア]](147万トン)である。中国が約4割、上位5カ国で全生産量の75%を占める。統計値は殻付き (Groundnuts in Shell) である。
<!--== 貿易 ==-->
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;むきみの輸出と輸入
未加工品の落花生は主にむきみ (Groundnuts Shelled) の形で貿易ルートに乗っている。[[輸出]]では、中国(32.5万トン)、アメリカ合衆国(14.6万トン)、インド(11.2万トン)、[[アルゼンチン]](7.0万トン)、[[オランダ]](6.3万トン)である。[[輸入]]では、オランダ(22.5万トン)の輸入量が突出しており、ついで[[イギリス]](8.5万トン)、[[カナダ]](8.0万トン)、メキシコ(7.6万トン)、[[ドイツ]](6.0万トン)である。日本のむきみ輸入量は世界第7位に位置し、主に中国から輸入されている。
 
;殻付き
むきみと比較すると、殻付きの貿易量は少ない。輸出量は、中国(7.8万トン)、インド(6.5万トン)、アメリカ合衆国(1.7万トン)、[[エジプト]](1.1万トン)である。輸入ではメキシコ(2.2万トン)、イタリア(2.1万トン)、インドネシア(1.9万トン)、ドイツ(1.4万トン)、スペイン(1.4万トン)である。
 
むきみ、殻付きのほか、煎る・揚げるといった加工品、ピーナツバターのようにさらに加工が進んだ形の商品も貿易ルートに乗っており、金額ベースでは加工品の占める割合が高い。
 
=== 日本における生産と輸入 ===
日本における生産量は、[[農林水産省]]の『作物統計』<ref>「27年産豆類(乾燥子実)及びそばの収穫量(全国農業地域別・都道府県別)」『作物統計』、2016年、[[農林水産省]] [http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001145339]</ref>によると、[[2015年]]の生産量はむきみ換算で1万2300トンである。輸入量は、財務省の貿易統計によると9万8867トンであった。県別の生産量では、[[千葉県]]が9590トンで突出しており、78.0%を生産している。千葉県は農林総合研究センターに「落花生研究室」を設けている。[[品種]]として「ナカテユタカ」「郷の香」「おおまさり」のほか<ref>[https://www.pref.chiba.lg.jp/lab-nourin/nourin/honjou/rakkasei.html 千葉県農林総合研究センター・落花生研究室](2018年7月26日閲覧)</ref>、2018年に命名した「Qなっつ」のように[[品種改良]]やブランド化、高齢化で減少傾向にある栽培農家数の回復にも力を入れている<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGKKZO33176950Z10C18A7L61000/ 落花生新品種は「Qなっつ」千葉県、10年ぶり/甘み強く後味あっさり■秋デビュー]『日本経済新聞』朝刊2018年7月20日(首都圏経済面)2018年7月26日閲覧。</ref>。特に千葉県中央部の[[八街市]]が生産量では日本一を誇る。県別では[[茨城県]](1500トン、12.2%)が続き、千葉県と合わせると9割をえる。以下、[[神奈川県]]、[[栃木県]]、[[鹿児島県]]が続く。<br />
 
日本で初めて栽培されたのは[[1871年]]([[明治]]4年)に[[神奈川県]][[大磯町]]の農家、[[渡辺慶次郎]]が[[横浜]]の親戚から落花生の種を譲り受け、自分の[[]]に蒔いたもの。花は咲いたが何も実を結ばないので「こんなもの」と足蹴りしたら地中から鞘(殻)が出てきて、地下結実性であることが判明した<ref>『落花生 栽培手引き』p47、2010年3月、相州落花生協議会。同時期に神奈川県二宮町の[[二見庄兵衛]]も「南京豆」の種子を入手し、試作した。後年、この中から立性種を選別した。</ref>。経済栽培に向けて、販売先の確保のため、地元[[旅館]]に試食を依頼したが「客は喜んだが、座敷が汚されて困る」と断られた逸話が残っている。その後、明治10年に0.4リットル袋入りにて横浜の[[駄菓子屋]]に売り込んだところ盛況となり、経済栽培採算がとれる商業生産への見通しがたった<ref name=soshu48/>。千葉県においては[[1876年]]より栽培が開始されている。<br />
 
[[ファイル:Boiled big peanuts & normal peanuts, Katori City, Japan.jpg|thumb|200px|塩茹でした[[千葉県]]開発のジャンボ落花生(左)と通常の落花生]]
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*金時
 
日本国内で消費されている安価なラッカセイの大部分は[[華人民共和|中国]]産で、主に大粒の品種を栽培している[[山東省]]、[[河北省]]、[[天津市]]産の輸入が多い。「南京豆」という別名に使われている[[江蘇省]]の[[南京市|南京]]など、[[華中]]・[[華南]]地方産のラッカセイは小粒の物が多い。
 
== 販売価格 ==