「ラウダ航空004便墜落事故」の版間の差分

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当該便は[[香港]]発[[バンコク]]経由で[[ウィーン]]を最終目的地とする定期国際航空便であり、香港からバンコクまでのフライト、およびバンコクでの乗客の乗換えや荷物の積み下ろしの後に離陸(16時02分)するまでは、特段の異常はなかった{{Sfn|AAIC|1993|p=2}}。
離陸から5分45秒後の16時7分ごろ、コックピット内センターペデスタルの表示ランプに“REV ISLN”という黄色表示が現れた。[[エンジン計器・乗員警告システム|EICAS]]にも同様の表示 ("L REV ISLN") が現れ、どちらも周期的に点灯しては消えるという状態を繰り返した。[[副操縦士]]は機内備え付けのクイック・リファレンス・ハンドブック (Quick Reference Handbook, QRH) を参照し、これはスラストリバーサーの油圧隔離弁 (Hydraulic Isolation Valve, HIV) の異常であり、「更なるシステム故障が発生すると飛行中に(リバーサーが)動作することがある」と書かれている、と操縦をしていた[[機長]]に報告した。これに対して機長は「表示は常時点灯状態ではなく、点いたり消えたりしている「これはただの Advisory(助言)項目だよな(EICASの表示は緊急度の高い順に Warning / Caution / Advisory の3種類に区分され、表示色や音声警報が出る・出ないなどの違いがあるが、当該異常表示は“Advisory”扱いに区分されるものだった)」、「きっと{{疑問点範囲|湿気|date=2018年6月|title=AAIC pp54-55では BM-1 oh you can tell 'em about it just it's it's it's just ah no- ah it's probably ah wa- ah moisture or
something cause it's not it's not just on it's coming on and off
BM-1 could be some moisture in there or somethin'
と言っており、waterと言いかけてmoistureといったように見えます。moistureは液体としての水分や固体中の水分も含むと思います。湿気と書く空気中の水分と取られかねませんが、表示が点いたり消えたりする原因として機長が湿気(humid)を想定していたとは限定できないのでは。}}か何かのせいだろう」、「これはただの Advisory(助言)項目だよな(EICASの表示は緊急度の高い順に Warning / Caution / Advisory の3種類に区分され、表示色や音声警報が出る・出ないなどの違いがあるが、当該異常表示は“Advisory”扱いに区分されるものだった)」と受け流した。実際、QRH にもこの Advisory 表示に関しては、それに対応して何らかの操作・処置を行うといった指示は書かれていなかった{{Sfn|AAIC|1993|pp=14-15}}<ref name="aoki2015">{{cite book|和書
|author=青木謙知
|title=飛行機事故はなぜなくならないのか<small>55の事例でわかった本当の原因</small>
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}}</ref>。
 
16時17分ごろ、副操縦士が“oh reverser's deployed(逆噴射装置が作動)”と発言し、直後に振動音や金属が擦れ合うようなノイズ、機長の“Jesus Christ!(ああ、何なんだ)”という発言が[[CVR]]に記録されている{{Sfn|AAIC|1993|p=56}}。この時点で高度24,700[[フィート]]、対気速度はおよそ[[マッハ]]0.78で、エンジンはこの時まで上昇時出力を発生していた{{Sfn|AAIC|1993|p=3}}(ただしスラストリバーサー動作直前にはエンジンは一旦アイドル状態となる)。単純にエンジンの推力を絞るのとは異なり、スラストリバーサーが動作すると周囲に乱流が発生する。し、エンジンが主翼下にパイロンで吊り下げられたタイプの航空機では、この乱流が主翼上下の気流に影響を及ぼし、結果として揚力が減少する当該事故では主翼揚力はおよそ25%低下していた<ref name="aoki2015" />、突然のスラストリバーサーの動作による姿勢変化により生じた激しいバフェット、修正を試みたパイロットによる動翼類の過剰操作、および速度超過が原因となり空中分解した{{Sfn|AAIC|1993|p=18}}。実際、機長は修正しようとして、“Here, wait a minute!(まだだ、待ってくれ)”と発言し{{Sfn|AAIC|1993|p=56}}左エンジンの燃料供給を止めたが、制御不能と確信し、“Ah, Damn it! (ああ、畜生)”!)”と最期の言葉を発言した。はじめにラダーと左エレベータが脱落し、続いて右水平安定板の下面後半部大半が失われた{{Sfn|AAIC|1993|pp=18-19}}。このことで左水平安定板のみが揚力を発生したため機体尾部にねじれを生じ、どちらが先かは不明だが、ついには垂直安定板と左水平安定板も失った{{Sfn|AAIC|1993|p=19}}。その結果機体は急激な前転状態となり、両方の主翼が下側に折れ曲がり、その数秒後には胴体を含め空中分解した{{Sfn|AAIC|1993|p=18}}{{Sfn|AAIC|1993|p=19}}。これがスラストリバーサー動作の29秒後であり、空中分解と思われる複数の爆発音とともに CVR 記録は終了している{{Sfn|AAIC|1993|p=56}}。
 
破片の飛散状況や速度および降下角度に不確定な要素があるが、空中分解時の高度は 10,000 フィート以下と推定されている{{Sfn|AAIC|1993|p=17}}。
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== 調査 ==
事故後、ラウダ航空社長であった元[[F1]]レーシングドライバーの[[ニキ・ラウダ]]<ref>ドライバーとしての現役当時から自家用機を自ら操縦し、[[ボーイング737]]の機長養成トレーニングも受けてい。</ref>は直接事故現場を訪れて調査に参加、原因究明に尽力した。その後、逆推力装置の誤作動が直接の事故原因だと判明するとボーイング本社に向かい、ラウダ自身がシミュレーターで事故機と同じ状況を再現した。彼は15回シミュレーションを行ったが、一度も機体の制御を回復できなかった。
 
次にラウダはテスト飛行中における逆推力装置の試験方法に着目した。すると、テスト飛行では高度10,000フィート付近という比較的低い高度で、かつ250ノットという低速状態だった。この状態で逆推力装置が作動した場合の影響は10%の揚力低下に留まり、回復操作も容易だった。