「浄水器」の版間の差分

削除された内容 追加された内容
m ウィルス
編集の要約なし
1行目:
'''浄水器'''(じょうすいき)は、[[水道水]]を給水栓(各家庭の蛇口)より後の段階できれいにするための機器。
[[File:WATER PURIFIER.jpg|thumb|蛇口取り付けタイプ。活性炭、中空糸膜、イオン交換体を使用した製品。[[三菱ケミカル・クリンスイ|三菱ケミカル]]製。]]
'''浄水器'''(じょうすいき)は、[[水道水]]を給水栓(各家庭の蛇口)より後の段階できれいにするための機器。
 
== 概要 ==
10行目:
 
== 使用目的 ==
* [[日本]]の[[水道水]]には[[水道法]]の定めにより、必ず[[次亜塩素酸]]が給水栓(例えば各家庭の[[蛇口]])の時点で残留するように添加されている([[残留塩素]]の項を参照)。このため[[ウイルス]]や、[[大腸菌]]をはじめとする有害な[[微生物]][[有機物]]などは混入していても既に無害化されている筈であり、本来浄水器で取り除くべき対象とは言えない。万が一混入しているとすれば、[[集合住宅]](マンション)などで清掃などきちんと管理(メンテナンス)されていない[[貯水槽]](給水[[タンク]])の存在や給水管の腐食劣化などの汚染源があるためであり、これを取り除くことが先決である。
 
* [[次亜塩素酸]]と不純物とが反応して生じた、[[トリハロメタン]]などの化合物には[[発癌性]]があるとされ、[[日本]]では浄水器の主な目的はこの化合物の除去にある、とされる。しかし、実際に[[日本]]の[[水道水]]では、残留[[トリハロメタン]]濃度に対して、[[厚生労働省|厚生労働]][[省令]]によって[[世界保健機関|WHO]]勧告より厳しい水質基準が設けられており、それ以上を取り除く必要があるという科学的な定説は未だに示されていない。また実際に日本の[[水道水]]で[[次亜塩素酸]]化合物によって人体に何らかの被害が発生したとの報告も皆無である。この点で浄水器の効果に対する評価は未だ一様ではない。
* [[次亜塩素酸と不純物とが反応して生じた、[[トリハロメタン]]などの化合物には[[発癌性]]があるとされ、日本では浄水器の主な目的はこの化合物の除去にある、とされる。しかし、実際に日本の水道水では、残留トリハロメタン濃度に対して、[[厚生労働省|厚生労働]][[省令]]によって[[世界保健機関|WHO]]勧告より厳しい水質基準が設けられており、それ以上を取り除く必要があるという科学的な定説は未だに示されていない。また実際に日本の水道水で次亜塩素酸化合物によって人体に何らかの被害が発生したとの報告も皆無である。この点で浄水器の効果に対する評価は未だ一様ではない。次亜塩素酸そのものは、人体内で[[胃酸]]によって[[塩化水素]]、すなわち[[胃酸]]自体の主成分に変化し、[[水道水]]では含まれる量も少ないことから、これを飲み続けてもまず害はない。
 
* [[クリプトスポリジウム]]など[[次亜塩素酸]]に強い一部の[[原虫]]は、[[1996年]]に[[埼玉県]][[入間郡]][[越生町]]で発生した[[水道水]]による集団感染をきっかけに注目され、浄水器の普及を促す要因のひとつとなった。しかしその後、全国の浄水場で[[原虫]]に対する管理(濁度0.1度以下)が徹底されるようになったため、最近の[[日本]][[水道水]]ではまず混入はないと考えられる。
* [[河川]]水中に生育する一部の[[藻類]]や[[菌類]]によって生じる[[ゲオスミン]]などの物質は、浄水場の[[次亜塩素酸]]処理で除去しきれずに[[水道水]]に混入することがあり、[[ヒト|人間]]の[[鼻]]はこの臭いに鋭敏でいわゆる[[カビ]]臭として認識されるため、これを取り除くことも浄水器の目的とされる。ただ、こうした物質は[[水道水]]に含まれる程度の量ではまず[[人体]]に無害であり、また最近では浄水場で[[オゾン]]処理などのカビ臭対策が普及してきているため、問題にされることは少なくなってきている。
 
* 他に、[[水道水]]には[[水道管]]や[[貯水槽]](給水[[タンク]])が古くなって劣化することなどにより[[金属]]などの不純物(さびなど)が混じっていることがあり、これらを取り除くことも浄水器の目的とされる。また、開発途上国などで[[水道水]]の[[殺菌]]や不純物の除去が不完全である場合は、それぞれの水質に適した機能を持つ浄水器が要求される。
* [[河川]]水中に生育する一部の[[藻類]]や[[菌類]]によって生じる[[ゲオスミン]]などの物質は、浄水場の[[次亜塩素酸]]処理で除去しきれずに[[水道水]]に混入することがあり、[[ヒト|人間]]の[[鼻]]はこの臭いに鋭敏でいわゆる[[カビ]]臭として認識されるため、これを取り除くことも浄水器の目的とされる。ただ、こうした物質は[[水道水]]に含まれる程度の量ではまず[[人体]]に無害であり、また最近では浄水場で[[オゾン]]処理などのカビ臭対策が普及してきているため、問題にされることは少なくなってきている。
 
* 他に、[[水道水]]には[[水道管]]や[[貯水槽]](給水[[タンク]])が古くなって劣化することなどにより[[金属]]などの不純物(さびなど)が混じっていることがあり、これらを取り除くことも浄水器の目的とされる。また、開発途上国などで[[水道水]]の[[殺菌]]や不純物の除去が不完全である場合は、それぞれの水質に適した機能を持つ浄水器が要求される。
 
== 機能と原理 ==
* '''[[活性炭]]'''は、[[次亜塩素酸]]と反応して僅かずつ失われながら、次亜塩素酸の分解[[触媒]]として作用する。また同時に、[[活性炭]]表面の無数の細かい孔が水中の[[トリハロメタン]][[ゲオスミン]](Geosmin)(Geosmin)をはじめとする様々な不純物を吸着してゆく。このため、その寿命は通水した量や時間には必ずしも関係なく、活性炭が不純物を吸着し終った時点である。また、長期間使用しているとその細かい孔の中で[[微生物]]が増殖するため、製造段階で[[殺菌]]のための[[銀]]などを[[蒸着]]または噴霧しておくが、それでも時間が経つと微生物が発生してくることは避けられない。よって、活性炭の寿命はこれらを総合的に考え合わせてメーカーごとに決められている。
 
* '''[[逆浸透膜]]'''は、水分子だけを透過させ、その他の物質の殆どを、表面および内部をも使って阻止して濃縮水として排出する。使用中に膜の表面が不純物で覆われてくることと、特定の[[金属]][[イオン]]など膜を劣化させる物質(膜の素材により異なる)が流入することによって次第に処理水量やイオンの阻止率が低下してくるが、その寿命は使用水圧や水質、水温などによって大きく異なるため一概には言えない。実際に使用する場合は寿命を延ばす目的で、最初に粗処理の[[フィルタ]]、次に中間処理として活性炭を通し、最終処理として逆浸透膜を使うのが一般的である。
* '''[[精密ろ過膜]]'''や'''[[フィルタ]]'''は、水道管またはタンクの劣化などによる不純物の除去、また孔径が概ね1[[マイクロメートル]]以下であれば[[クリプトスポリジウム]]などの[[原虫]]の除去に有効である。上述の通り日本の水道水には給水栓の時点で次亜塩素酸が残留するように添加されているため、1マイクロメートル以下の大きさの物質が阻止されていなくても、少なくとも衛生上の問題が生じることはない。
 
* 日本では少ないが、浄水器でイオンの除去に[[イオン交換樹脂]]を使う場合もあり、これをイオン交換式[[純水器]]、または単に[[純水器]]と呼ぶ。イオン交換樹脂には陽イオン交換樹脂(自身が持つ[[水素イオン]]を水中の[[陽イオン]]と置き換える)と陰イオン交換樹脂(自身が持つ[[水酸化物イオン]]を水中の[[陰イオン]]と置き換える)とがあり、水素イオンまたは水酸化物イオンが放出され終わるとイオン交換樹脂を交換、または[[強酸]]や[[強アルカリ]]を使った再生が必要になる。但し、イオン交換樹脂には原則として、イオン以外の[[微生物]]や[[有機物]]、[[金属]]などを阻止する能力は無いので、注意が必要である。
* '''[[精密ろ過膜]]'''や'''[[フィルタ]]'''は、水道管またはタンクの劣化などによる不純物の除去、また孔径が概ね1[[マイクロメートル]]以下であれば[[クリプトスポリジウム]]などの[[原虫]]の除去に有効である。上述の通り日本の水道水には給水栓の時点で次亜塩素酸が残留するように添加されているため、1マイクロメートル以下の大きさの物質が阻止されていなくても、少なくとも衛生上の問題が生じることはない。
* イオン交換式純水器に似たものとして'''[[軟水器]]'''があるが、これは水中の[[カルシウム]]イオンや[[マグネシウム]]イオンなど陽イオンを[[ナトリウム]]イオンに置き換える(陰イオンは変化しない)ものであり、再生が[[食塩]]水で簡単に行えて安全性が高く環境負荷も低い反面、水中のイオンの総量を変えるものではないことに留意する必要がある。
 
* '''アルカリイオン整水器'''については、[[アルカリイオン水]]の項を参照されたい。
* 日本では少ないが、浄水器でイオンの除去に[[イオン交換樹脂]]を使う場合もあり、これをイオン交換式[[純水器]]、または単に[[純水器]]と呼ぶ。イオン交換樹脂には陽イオン交換樹脂(自身が持つ[[水素イオン]]を水中の[[陽イオン]]と置き換える)と陰イオン交換樹脂(自身が持つ[[水酸化物イオン]]を水中の[[陰イオン]]と置き換える)とがあり、水素イオンまたは水酸化物イオンが放出され終わるとイオン交換樹脂を交換、または[[強酸]]や[[強アルカリ]]を使った再生が必要になる。但し、イオン交換樹脂には原則として、イオン以外の[[微生物]][[有機物]][[金属]]などを阻止する能力は無いので、注意が必要である。
* '''[[殺菌灯]]'''は、紫外線を照射することで殺菌を行う。以前はランプの交換が必要であったためランニングコストが高かったが、現在は長寿命の[[紫外線LED]]を採用する浄水器も登場している。米国規格にNSF/ANSI 55があり<ref>[http://www.nsf.org/consumer-resources/health-and-safety-tips/water-quality-treatment-tips/standards-for-water-treatment-systems Standards for Water Treatment Systems] {{仮リンク|NSF International|en|NSF International}}</ref>、アムウェイやWaterlogicなどの米国メーカーがそれに適合する浄水器を販売している<ref>[http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/726933.html バクテリア除去率99.9999%を保証する水道直結型の浄水サーバー「Cube」] Impress 2015年10月22日</ref><ref>[http://www.amway.com/lcl/en/ResourceCenterDocuments/Visitor/home-espr-fact-v-en--eSpringWaterPurifierNSFPerformanceDataSheet.pdf Performance Data Sheet] Amway</ref>。
 
* イオン交換式純水器に似たものとして'''[[軟水器]]'''があるが、これは水中の[[カルシウム]]イオンや[[マグネシウム]]イオンなど陽イオンを[[ナトリウム]]イオンに置き換える(陰イオンは変化しない)ものであり、再生が[[食塩]]水で簡単に行えて安全性が高く環境負荷も低い反面、水中のイオンの総量を変えるものではないことに留意する必要がある。
 
* '''アルカリイオン整水器'''については、[[アルカリイオン水]]の項を参照されたい。
 
* '''[[殺菌灯]]'''は、紫外線を照射することで殺菌を行う。以前はランプの交換が必要であったためランニングコストが高かったが、現在は長寿命の[[紫外線LED]]を採用する浄水器も登場している。米国規格にNSF/ANSI 55があり<ref>[http://www.nsf.org/consumer-resources/health-and-safety-tips/water-quality-treatment-tips/standards-for-water-treatment-systems Standards for Water Treatment Systems] {{仮リンク|NSF International|en|NSF International}}</ref>、アムウェイやWaterlogicなどの米国メーカーがそれに適合する浄水器を販売している<ref>[http://kaden.watch.impress.co.jp/docs/news/726933.html バクテリア除去率99.9999%を保証する水道直結型の浄水サーバー「Cube」] Impress 2015年10月22日</ref><ref>[http://www.amway.com/lcl/en/ResourceCenterDocuments/Visitor/home-espr-fact-v-en--eSpringWaterPurifierNSFPerformanceDataSheet.pdf Performance Data Sheet] Amway</ref>。
<!--== 注意 ==
* '''[[水道水]]以外の[[雨水]]や[[井戸]]水、[[川]]の水や[[工業用水]]を浄水器に通しても、飲用するのに安全とは限らない'''メーカーによる取扱説明書を十分に理解し、必要に応じて最寄りの[[保健所]]などに相談して水質分析を行った上で、適切な処理方法を選択する必要がある。
* [[災害]]時用に、持ち運びできて生水(雨水、井戸水、河川水など)や泥水から[[飲料水|飲用可能]]な水を得られる器具があるが、'''これらの器具は[[農薬]]などの毒性物質や[[金属]]イオンを必ずしも取り除くことはできない'''使用する場合はメーカーによる適用範囲の指示に注意し、上記の物質の除去性能が明確でない場合には、生水や泥水を原水として使わないように留意する必要がある。
* '''[[逆浸透膜]]は膜の透過後に[[細菌]]や[[カビ]]などの繁殖が起こらないことを必ずしも保証できない'''これは逆浸透膜が、[[水道水]]の[[残留塩素]]など、元の水に含まれる殺菌成分をも全て除去してしまうためである。また、逆浸透膜は水道水中の高濃度の不純物に弱い。このため逆浸透膜の前後には、メーカーが推奨する適切な[[フィルタ]]や[[活性炭]][[殺菌]]や[[洗浄]]のための機構などを設けると共に、それらの定められた洗浄・交換時期を守ることが必要である。
-->
 
37 ⟶ 45行目:
汲み置きができるポット型や、災害用のものにはストロー型もある。
 
製品によっては、[[アルカリイオン水]]を生成できるもの(アルカリイオン水生成機)や、[[大腸菌]]などの[[黴菌|有害菌]]や[[鉛]]などの[[重金属]]も除去できる性能を有するものもある。
 
一般的なものは、[[ホームセンター]]や[[家電量販店]]などで数千~数万円程度で入手可能であるが、[[訪問販売]]や[[催眠商法]]で販売される物の中には価格が数十万円~数百万円もする物もある。また水道局関係を騙って「水道水が汚染されている云々」といったセールストークで販売する手法が採られるものなど、いわゆる[[悪徳商法]]といえるものもある。[[消費生活センター]]や[[国民生活センター]]への苦情が多い品目でもある。
67 ⟶ 75行目:
* [[ヤンマー]]
* [[LIXIL]]
(アイウエオ順)
 
== 脚注 ==
81 ⟶ 89行目:
* [http://www.jwpa.or.jp/jo/jo-tekigolist.html 同協会浄水器適合制度]
* [http://www.jwpa.or.jp/sw/sw-tekigo.html 同協会浄水シャワー適合制度]
* [http://www.jwpa.or.jp/jo/jo-tekigolist-ro.html 同協会逆浸透膜 (RO) (RO)浄水器適合制度]
 
{{デフォルトソート:しようすいき}}