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|画像=[[File:Pandanus odoratissimus.jpg|260px]]
|画像キャプション = アダンの葉と集合果(西表島)
|界 = [[植物界]] {{snameSname||Plantae}}
|門 = [[被子植物門]] {{snameSname||Magnoliophyta}}
|綱 = [[単子葉植物綱]] {{snameSname||Liliopsida}}
|目 = [[タコノキ目]] {{snameSname||Pandanales}}
|科 = [[タコノキ科]] {{snameSname||Pandanaceae}}
|属 = [[タコノキ属]] {{snameiSnamei||Pandanus}}
|種 = '''アダン''' {{snameiSnamei||Pandanus odoratissimus|P. odoratissmus}}
|学名 = {{snameiSnamei|Pandanus odoratissimus}} <small>[[カール・フォン・リンネ (子)|L. fil.]]</small>
|和名 = アダン(阿檀)
}}
'''アダン'''(阿檀、{{snameiSnamei|Pandanus odoratissimus}})は、[[タコノキ科]][[タコノキ属]]の常緑小高木。[[亜熱帯]]から[[熱帯]]の海岸近くに生育し、非常に密集した群落を作る。時に[[マングローブ]]に混生して成育する。
 
'''アダン'''(阿檀、{{snamei|Pandanus odoratissimus}})は、[[タコノキ科]][[タコノキ属]]の常緑小高木。[[亜熱帯]]から[[熱帯]]の海岸近くに生育し、非常に密集した群落を作る。時に[[マングローブ]]に混生して成育する。
 
== 特徴 ==
アダンは高さ 2-6m ほどになる常緑の小高木である。成長とともに太い枝が横に展開し、そこから[[特殊な根#気根|気根]]([[支柱根]])を垂らして接地する<ref name="jwpp267">日本の野生植物 p267</ref>。この支柱根が木を安定させ、風倒を防いでいる。
 
[[葉]]は幅 3-5cm、長さ 1-1.5m にも達する細長い披針形。基部はやや広がっており、茎を包むような形で生じる。葉は皮質で硬く厚く、落ちても茎には跡が残る<ref name="jwpp267"/>。アダンの葉の辺縁部や主脈には鋭い棘がある。主脈上のそれは先端近くでは先向き、根本近くでは根本向きになっており、中程では交互の向きに並んいるため、どちら向きにでも刺さるようになっている。
 
アダンは雌雄異株であり、夏季に雄株は房状の[[花序]]、雌株は球状で小型の花序をつける。雄花序は長さ 20 -25cm 25cmであり、複数の緑色 - 黄白色の葉状の[[苞|総包]]と白色の肉穂花序からなる。総包は長さ 10 - 20cm、肉穂花序は 4-5cm ほど。肉穂花序は多数の小枝に分岐しており、そこから多数の[[雄蕊]]が生じる。雌花序は太い軸の先端から生じる広楕円形。葉状で白色の長さ 10 -20cm 20cmの総包十数枚を伴う。[[雌蕊]]は楕円型<ref name="jwpp267"/>。
 
[[果実]]は直径 15 -20cm 20cmほどで[[パイナップル]]に似た外見であり、パイナップルと同様に集合果である。個々の果実は倒卵形で、長さ 4 - 6cm、幅 3 - 5cm。[[内果皮]]は繊維質、[[外果皮]]は肉質<ref name="jwpp267"/>。若いうちは緑だが熟すと黄色くなり、甘い芳香を発する。
 
== 利用 ==
葉や幹は利用価値が高く、葉は煮て乾燥させた後、[[パナマ帽]]等の細工物としたり、細く裂いて糸とし、[[筵]]やカゴを編む素材として利用される。[[観葉植物]]や[[街路樹]]としても利用される。
 
沖縄では古くからその葉で筵や[[ござ]]、[[座布団]]、[[草履]]を作るなどの利用があった。凧の糸にもアダンの[[繊維]]を撚った糸がもつれにくく適しているという。[[明治時代]]時代以降、加工技術の進歩に伴い、巻き煙草入れや手提げ鞄などが作られるようになったが、その後新たな素材の出現で衰えた。葉を漂白して作られたアダン葉帽子は一時期にブームを起こし、国外にまで輸出されるほどの好評を得た。[[モーリシャス]]では[[製紙業|製紙]]原料とされるとも言う。また、気根を裂いて縄とし、またその縄を編んでアンツクという手提げ鞄とする事も八重山では伝統的に行われ、これに昼食用の芋や[[豆腐]]などを入れて畑に出たという<ref>城間(1977)p(1977)p.56</ref>。
 
防潮林・防風林・砂防林としても利用され、また観賞用に庭園などに栽培されることもある<ref>天野(1982)p(1982)p.183</ref>。
 
パイナップルのような外観と甘い芳香のため、果実はいかにも美味に見えるが、ほとんどが繊維質で人間が食べるのには適さない。果実の表面に存在する突起の一箇所ごとが種子になっていて、その中心の[[松の実]]のような柔らかい白い箇所が可食部である。果実は硬い繊維質に包まれており、可食部を取り出す手間に見合う味と量ではないため、現在の沖縄県で食べる習慣は廃れてしまったが、過去にはアダンの果実で[[アンダンスー]]を作った。また、沖縄では昔食用とされたことから[[お盆]]には仏前にアダンの果実を供える習慣があったが、現在はパイナップルが使われる<ref>{{Citation | author = 渡口初美 | year = 1979 | publication-date = | title = 沖縄の食養生料理 | publisher = 国際料理学院 | isbn = | page = 18-19}}</ref>。また、[[石垣島]]ではアダンの柔らかい新芽を[[法事]]やお盆などの際の[[精進料理]]に用いる習慣がある<ref>{{Citation | author = 藤清光、中山美鈴 | year = 1997 | publication-date = | title = たべる、おきなわ 本土でつくる沖縄の家庭料理 | publisher = エリス | isbn = | page = 80}}</ref>。他の野菜と共に精進煮とし、くせのない若[[タケノコ|筍]]のような味だというが、[[灰汁#食品のアク|灰汁]]を抜かないと食べられず、手間がかかるため現在ではあまり食用にされない。[[インド料理]]では花から香料をとる
[[インド料理]]では花から香料をとる。
 
== 分布 ==
日本では[[トカラ列島]]以南の沿岸域に分布する。[[中華人民共和国|中国]]南部や[[東南アジア]]にも見られる<ref name="jwpp268">日本の野生植物 p268</ref>。[[ポリネシア]]を中心に生育する {{snameiSnamei|P. tectorius}} <small>Sol. ex Parkinson</small> も混同される場合があるが、これは別種であるとされる<ref name="jwpp268"/>。近縁種については[[タコノキ属]]を参照。
 
== アダンの登場する作品 ==
* [[中島みゆき]]『阿檀の木の下で』(『[[パラダイス・カフェ]]』収録)
* [[BEGIN_BEGIN (バンド)|BEGIN]] 『パナマ帽かぶって』(『[[3LDK]]』収録)
 
== 注釈・参考文献 ==
{{reflistReflist}}
* {{Cite book
| 和書
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| id = ISBN 978-4582535051
}}
* 城間朝教『沖縄の自然〔植物誌〕』(1977)(1977)、新星図書
* [[天野鉄夫]]『琉球列島有用樹木誌』(1982)(1982)、琉球列島有用樹木誌刊行会
 
== 外部リンク ==