「獅子文六」の版間の差分

[[1920年]]に、母の岩田あさじが死去。その後に一人暮らしを始めたものの、1920年代前半の[[フランス]]が、[[第一次世界大戦]]後の[[フランス・フラン|フラン]]の下落で、日本とそれほど変わらない生活費でフランスに滞在できることが動機となり、[[1922年]]に渡航し。現地では[[ジャック・コポー]]が主宰する[[ヴィユ・コロンビエ劇場|ヴィユ・コロンビエ座]]や、[[ジュール・ロマン]]に代表されたフランス新現代劇の観劇、研究に没頭する。滞在中に知り合ったフランス人のマリー・ショウミーと結婚し、[[1925年]]に帰国。同年に長女の巴絵が生まれる。杉並区和田堀に住み、[[第一書房]]の『近代劇全集』の翻訳、フランス滞在時の見聞を題材にした随筆や短編小説を、『[[新青年 (日本)|新青年]]』『[[改造 (雑誌)|改造]]』などの雑誌に掲載することで生計を立てていた。1930年ごろ、妻のマリーが病気のためにフランスへ帰り、そのまま死去。マリーの死去から自身の再婚までは、長女と二人だけの暮らしが続いた。

[[1932年]]、[[築地小劇場]]を脱退した[[友田恭助]]、[[田村秋子]]夫妻を中心に結成された新劇の団体「築地座」に、[[岸田國士]]、[[久保田万太郎]]、[[里見とん]]らととも共に顧問として関わる。この時期には、演劇関連の仕事、戯曲や翻訳の執筆だけでは生活が立ち行かなくなったことから、「四四、十六」をもじった'''獅子文六'''の筆名で、小説家として活動するようになる。[[1934年]]、雑誌に『[[新青年 (日本)|新青年]]』に掲載された『金色青春譜』が、長編小説の処女作である。同1934年には富永静子と二度目の結婚をし、[[千駄ヶ谷]]に転居。[[1936年]]に、最初の新聞連載小説として[[報知新聞]]に掲載された『[[悦ちゃん]]』は大好評となり、このときに小説家としての獅子文六の筆名が知れ渡ることになった。

翌[[1937年]]、[[岸田國士]]、[[久保田万太郎]]と共に[[文学座]]を創立する。「文学座」の命名は岩田のものによる。岸田、久保田と共に文学座幹事（のちに顧問）を務め、岸田、久保田がこの世を去った後は、文学座の最後の精神的支柱として、文学座座員はもとより、文学座を脱退した[[劇団雲]]、[[劇団NLT]]の面々からも信頼を一手に受けた。