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{{出典の明記|date=2018年3月}}
'''検察官'''(けんさつかん)は、[[検察|検察権]]行使の権限主体である。
 
== 日本の検察官 ==
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検察官はそれぞれが検察権を行使する[[独任制]][[官庁]]である。[[検察庁]]は検察官の事務を統括する官署にすぎない。検察官は刑事裁判における訴追官として審級を通じた意思統一が必要であることから、検察官は検事総長を頂点とした指揮命令系統に服する('''検察官同一体の原則''')。
 
検察官が事務の途中で交代しても、同一の検察官が行ったと同じ効果が発生する。また、検察捜査の殆どは地方検察庁の検察官が直接行うため、上級庁(最高検察庁と高等検察庁)は、地方検察庁から報告を受けて了承や指示はするものの、上級庁自身が[[逮捕 (日本法)|逮捕]]をして直接捜査を担当することはほとんどない(例外として、[[1957年]]に[[東京高等検察庁]]が「2人の代議士を収賄容疑で召喚」と誤報した[[読売新聞]]記者を[[名誉毀損罪]]で逮捕・取調べをした事件([[売春汚職事件]])と、[[2010年]]に最高検察庁が特捜部長・特捜副部長・主任検事を[[証拠偽造罪]]や[[犯人隠避罪]]で逮捕・取調べ・[[起訴]]した事件([[大阪地検特捜部主任検事証拠改ざん事件]])などがある)。
 
検察官は、例外を除き起訴権限を独占する(国家訴追主義)という極めて強大な権限を有し、刑事司法に大きな影響を及ぼしているため、政治的な圧力を不当に受けない様に、ある程度の独立性が認められている。端的なものが[[法務大臣]]による指揮権の制限である。
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検察庁は、[[司法権]]、[[立法権]]、[[行政権]]の三権の内、[[行政権]]を持つ[[行政]]に帰属する官庁である。検察庁は、国民の権利保持の観点から、俗に準司法機関とも呼称されている。[[日本国憲法第77条]]では「検察官は、[[最高裁判所 (日本)|最高裁判所]]の規則に従わなければならない」と規定されている。
 
検察庁は行政機関であり、[[国家公務員法]]の規定に基づき、その最高の長である法務大臣は、当然に各検察官に対して[[指揮権 (法務大臣)|指揮命令]]が可能だが、この指揮権については検察庁法により、「検察官の事務に関し、検察官を一般に指揮監督することができる。但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる。」として、具体的事案については、検事総長を通じてのみ指揮ができるとした。前述の検察官同一体の原則から、検察官は検事総長を頂点とした指揮命令系統として、検察権は行政権に属して統一されている
 
{{see|指揮権 (法務大臣)}}
 
前述の検察官同一体の原則から、検察官は検事総長を頂点とした指揮命令系統として、検察権は行政権に属して統一されている。
 
検察官の定員は、[[2012年]]([[平成]]24年)、副検事以外の検察官1810名、副検事899名で、合計2709名である。
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==== 報酬 ====
検察官の[[給与]]については、[[検察官の俸給等に関する法律]]に基づく[[報酬]]が与えられる事になっているただし、ここで検事総長、次長検事及び検事長については、身分としては[[一般職]]に分類される[[国家公務員]]ではあっても[[給与]]については[[特別職]]扱いされ、法律中の別表によらない旨の定めがある(法1条。これを根拠に検事総長は[[国務大臣]]に準じる報酬を与えられる事になる。)。)
 
他に、検察官の給与については[[一般職の職員の給与に関する法律]]に基づいての、[[初任給調整手当]]等が適用される事になる。
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警察と検察はその所属官庁を異にし、検察官の指揮権を実行あらしめるための身分上の監督権を与えなかったこともあって、検察官の指揮命令の徹底を欠き、現実には捜査の二元化をきたしていたともいわれている<ref>{{Cite journal |和書|author=日本評論社(編) |title=現代の検察―日本検察の実態と理論 |date=1981-08 |publisher=日本評論社 |journal=法学セミナー増刊 総合特集シリーズ |issue=16 |id={{NCID|AN00327008}} |pages=88-95 |quote=『捜査における検察の役割―警察と検察の関係』(井戸田侃・[http://id.ndl.go.jp/bib/2369125 記事登録ID「2369125」])}}</ref>。戦後においては、公訴機関と捜査機関を原則としてそれぞれ分離し、[[人権]]保護が図られた。
 
その結果、警察は第一次捜査機関としての役割を担うこととなり、検察官と対等・独立の協力関係を確立したが、公訴提起・公判維持の観点から検察官には依然、一定の指揮権限を与えている。但し、警察官は正当な理由がある場合はこれを拒否できる。なお、不当な指示が行われて問題となったものとしては、平成13年、[[福岡高裁判事妻ストーカー事件]]で[[福岡地方検察庁|福岡地検]]が脅迫事件の[[被疑者]]が[[福岡高等裁判所|福岡高裁]][[判事]]の妻であったため、逮捕の方針を任意捜査にするよう指示したとされる問題がある<ref>[https://web.archive.org/web/20010305130254/http://www.nishinippon.co.jp:80/media/news/0102/sinrai/n2.html 特権意識が招いた歪み 警察まであざむいて] - [[西日本新聞]]・特集『落ちた信頼 捜査情報漏洩』より《2017年11月6日閲覧;現在は[[インターネットアーカイブ]]内に残存》</ref>。同事案では、福岡地検次席検事が捜査情報を漏洩したとされ、警察との関係が著しく悪化し、検察は警察等の捜査関係機関に対する理解が十分でないとの批判を受け、法務省では警察官の活動等に対する理解を深めるための具体的方策を検討していくこととなった<ref>[http://www.kantei.go.jp/jp/sihouseido/dai55/55bessi3.html 法務省・「福岡地検前次席検事による捜査情報漏えい問題 調査結果」(抜粋)] [[総理大臣官邸]]</ref>。本件については、平成13年3月、[[福岡高等検察庁|福岡高検]]検事長が[[福岡県警察|福岡県警]]本部を訪れ、福岡県警本部長に謝罪した<ref>{{Cite book |和書 |author=産経新聞司法問題取材班 |authorlink=産経新聞 |date=2002-05 |title=司法の病巣 |publisher=[[角川書店]] |id={{全国書誌番号|20289435}} |isbn=978-4048837422}}</ref>。また、平成22年には[[大阪地方検察庁|大阪地検]]の検事が[[大阪府警察|大阪府警]][[貝塚警察署|貝塚署]]の[[刑事]]に捜査報告書の改変をさせた事例があり、その後、当該検事は[[懲戒処分]]を受けたが、強い批判を招いた<ref>[http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2010/101224.html 検察官による捜査報告書の改変指示に関する日弁連コメント] 日本弁護士連合会 2010年12月24日</ref><ref>[http://www.osakaben.or.jp/web/03_speak/seimei/seimei101222.pdf 大阪地方検察庁の検事による捜査報告書の改ざん指示についての会長声明] 大阪弁護士会</ref>。平成23年には、[[福島地方検察庁|福島地検]]が[[東北地方太平洋沖地震]]後に、[[福島県警察|福島県警]]と十分な協議をせず一方的に[[勾留]]中の被疑者の[[保釈|釈放]]指揮を行ったが、釈放された被疑者の中には性犯罪者なども含まれていた他、釈放された後に建造物侵入で再び逮捕された者もおり、福島地検が地検庁舎を一時閉鎖していた事実と併せて国民の強い批判を浴びた。その結果、福島県警との関係が悪化し、福島地検検事正が更迭される事態となった<ref>産経新聞 平成23年5月17日付 </ref>。
 
検察官は警察官等に対して、一般的指示権、一般的指揮権、具体的指揮権を有するほか、正当な理由がなくこれらの検察官の指揮に従わない場合、検事総長、検事長、検事正は従わない司法警察職員の懲戒の請求を[[公安委員会]]に対してすることができる。検察官自身には懲戒権限はない。
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:検察官が自身が独自に捜査を行う場合に、検察官の責任において司法警察職員を指揮して独自捜査を補助させるものである。補助命令とも呼ばれる。武装、訓練など、警察官でなければ実施が難しい捜査を補助するためのものであり、あくまでも警察官でなければ行い得ない補助を念頭においているものである。従って、単なる雑務等の補助を命ずる趣旨のものではなく、本来の警察業務に支障をきたすまでの補助を命ずることはできない。検察官と司法警察職員とが同一事件を捜査する場合、検察官が司法警察職員から引継ぎを受け、自らの指揮の下に捜査を行わせることが出来るという説も有るが、司法警察職員に第一次捜査権を付与しており、検察官と間は協力関係にあると定めていることから、法との整合性に疑問がある<ref name="hiraki2009">{{Cite book |和書 |author=平良木登規男 |date=2009-10 |title=刑事訴訟法 I |publisher=成文堂 |id={{全国書誌番号|21673230}} |isbn=978-4792318482}}</ref><ref name="hiraki2000" />。これはあくまでも検察官が独自に捜査を行う場合に補助をさせるものであって、第一次捜査権を有する警察自身が捜査中の事件について具体的指揮を行うものではないと解される。
;懲戒・罷免の訴追(刑事訴訟法第194条)
:司法警察職員が上記、検察官の指示、指揮に正当な理由無く従わなかった場合に、検察官には司法警察職員を処分する権限はない<ref name="r-hirano_1958" />。その管理者、懲戒・罷免権者にその訴追を求め得るだけである<ref>{{Cite book |和書 |author=藤木英雄 |authorlink=藤木英雄 |coauthors=松本時夫、[[土本武司]] |date=2000-03 |title=刑事訴訟法入門 第3版 |publisher=有斐閣 |series=有斐閣双書 |id={{全国書誌番号|20054908}} |isbn=978-4641112025 |quote=初版(1976年刊行)書誌情報→[http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001205214-00 『国会図書館サーチ』より] }}</ref><ref>{{Cite book |和書 |author=石丸俊彦 |authorlink=石丸俊彦 |coauthors=[[仙波厚]]、[[川上拓一]]、[[服部悟]] |date=2011-03 |title=刑事訴訟の実務(上) |publisher=[[新日本法規出版]] |id={{全国書誌番号|21928781}} |isbn=978-4788273887}}</ref><ref name="hiraki2009" />。この条文の反対解釈から、司法警察職員は正当な理由がある限り、検察官の指揮に従う必要はない。懲戒の請求はそれ自体が重大問題であることから、この請求権者は検事総長、検事長、検事正に限られており、現在まで一度も請求がなされたことはない。検事総長、検事長又は検事正自身には懲戒権限はないため、この正当性の判断は懲戒[[罷免]]権者が第一次捜査機関としての司法警察職員の責務を鑑み、独自に判断する事となっている。立法趣旨も「最後の決定権はすべて公安委員会または懲戒罷免権者にまかせる」こととされているところである<ref>{{Cite conference |url=http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/019/0488/01903250488027.pdf |format=PDF |title=衆議院法務委員会 |volume=27 |date=1954-04-02 |publisher=衆議院事務局 |pages=2-5 |conference=第19回国会 |quote=下牧武説明員(検事・刑事局参事官)の答弁から(→[http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/019/0488/01903250488027a.html HTML版])}}</ref>。なお、公務員は[[上司]]の指揮命令に従う義務があることから、司法警察職員の組織上の上司の指揮と刑事訴訟法上の検察官の指揮のいずれかが優先されることになるか解釈が分かれているが、法の趣旨では、正当性の判断を公安委員会又は懲戒罷免権者に委ねているため、個々具体的に判断されることとなる。公安委員会の管理権と検察官の指揮権が相反する場合にどちらが優先されるかについては、あくまでも正当性の判断主体は公安委員会であること、法が公安委員会と検察官の関係を指揮関係ではなく、協力関係としていること、公安委員会は[[民主主義]]的意思を反映してること、警察の捜査は自治事務とされており、基本的運営は自治体が行い諸経費についても自治体が負担していること、検察官自身はあくまでも行政機関に過ぎないことなどから、最終的に公安委員会の管理権が優先される。公安委員会が懲戒の訴追を退けた場合、この決定は最終的のものであって、懲戒請求をした検察官はこれに従わざる得ず、当否を争う方法はない。もちろん、この場合においても検察官自身での独自捜査は可能である。この条文については、第一次捜査機関である司法警察職員の士気を低下させていないかどうか、通常、警察官の人事について権限を与えられていない公安委員会が刑事訴訟法上では人事権の一部である罷免・懲戒権限を与えられていることの矛盾など批判もある<ref>{{Cite book |和書 |author=桐山隆彦 |coauthors=土金賢三(改訂増補) |year=1966 |title=警察官のための刑事訴訟法解説 改訂増補版 |publisher=警察図書出版 |id={{全国書誌番号|66002142}} |quote=1956年版(桐山隆彦 著)書誌情報→[http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000000951720-00 『国会図書館サーチ』より]}}</ref>。これは司法警察活動(犯罪の捜査)に関してのものであり、行政警察活動(犯罪の鎮圧等)に関しては、ともに検察官の権限はなく、当然指揮の問題も発生しない。
 
検事総長を務めた[[伊藤栄樹]]は、自著『秋霜烈日』(朝日新聞社)で検察と警察との関係に触れ、「検察は、警察に勝てるか。どうも必ず勝てるとはいえなさそうだ」としている。
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また、犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないと検察官が判断した場合には、検察官は公訴を提起しないことができる(刑事訴訟法248条)。これは[[起訴便宜主義]]と呼ばれ、訴追を必要としないと判断された事件については'''[[起訴猶予処分]]'''(不起訴処分の一種)にすることができる。検事でパス(パイ)してシャバに出られることから、俗に検パイ(けんパイ)とも呼ばれる。
 
起訴独占主義の数少ない例外として'''[[準起訴手続]]'''(刑事訴訟法262条~269条)がある。これは、[[刑法 (日本)|刑法]]、[[破壊活動防止法]](破防法)、[[無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律|団体規制法(オウム規制法)]]における公務員の[[職権濫用罪|職権濫用]]などの罪について検察官が公訴を提起しない場合に、その罪の[[告訴・告発]]者が不服なときに[[日本の裁判所|裁判所]]に付審判を請求できる制度で、[[付審判制度|付審判]]の決定があったときは、公訴の提起があったものとみなされる(刑事訴訟法267条)。またこの時、裁判確定までの検察官としての職務は、裁判所が指定する[[弁護士]]([[指定弁護士]])が務めることとなり、この職務に当たる弁護士はいわゆる「[[みなし公務員]]」となる(刑事訴訟法268条)。
 
さらに起訴独占主義の例外として[[2009年]](平成21年)[[5月21日]]から検察官が不起訴にした事件で[[検察審査会]]が起訴相当を2回議決した場合も、公訴が提起されたものと看做され、指定弁護士が検察官の職務にあたる制度が設けられた。