「核磁気共鳴画像法」の版間の差分

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==概要==
被験者に[[高周波]][[磁場]]を与え、人体内の[[水素]]原子に共鳴現象を起こさせる際に発生する電波を受信コイルで取得し、得られた信号データを画像に構成する仕組み。水分量が多い脳や血管などの部位を診断することに長けている。MRI装置の[[ガントリー]]の中にはコイルや磁石が搭載され、電流を流す原理を実現する。[[PET]]診断との組み合わせた複合タイプも一部普及しつつある。
 
断層画像という点では、X線[[CT]]と一見よく似た画像が得られるが、CTとは全く異なる物質の物理的性質に着目した撮像法であるゆえに、CTで得られない三次元的な情報等(最近は[[コンピュータ断層撮影|CT]]でも得られるようになってきている)が多く得られる。また、[[2003年]]にはMRIの医学におけるその重要性と応用性が認められ、"核磁気共鳴画像法に関する発見"に対して、[[ポール・ラウターバー]]と[[ピーター・マンスフィールド]]に[[ノーベル生理学・医学賞]]が与えられた。
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電子とともに原子を構成する[[原子核]]の中には、その[[スピン角運動量|原子核スピン]](以下「核スピン」)により[[磁石]]の性質を持つものが多く存在する。しかし、(物質全体として自発的に磁化されていない限り)それぞれの核スピンの向きはばらばらであり全体でキャンセルされる結果、巨視的な磁化を発生しない。ここに外部から(強い)[[静磁場]]を作用させると、核スピンの持つ磁化は磁場をかけた向きにわずかに揃い、全体として静磁場をかけた向きに巨視的磁化ができる(以降、巨視的磁化を考える)。
 
 この際、核スピンは静磁場方向を軸として[[歳差|歳差運動]]を発生する。歳差運動とは、コマの首振り運動と同様な運動である(回転軸と核スピンの軸が一致しない)。この運動の周波数は[[ラーモア周波数]]と言われ、かけた静磁場の強さ及び磁気モーメントの強さに比例する。通常のMR撮像では、10 - 60[[メガヘルツ|MHz]]ほどである。これは電磁波で言えば[[ラジオ波]]の範囲にあたる。核磁化を励起するためのコイルは、[[RFコイル]]と呼ばれている。
[[ファイル:MRI*.jpg|右|222x222ピクセル]]
 そこに特定周波数の電磁波(ラジオ波領域)のパルスを照射すると、照射電磁波の周波数とラーモア周波数が一致した場合に共鳴が発生し、回転数が変化する(核磁気共鳴現象)。照射が終わると元の状態に戻る。重要なのは、このパルスが終わって定常状態に戻るまでの過程({{仮リンク|緩和現象|en|Relaxation (NMR)}})で、それぞれの組織(通常のMRIであれば水素原子の置かれている環境)によって戻る速さが異なることである。核磁気共鳴画像法ではこの戻りかたの違いをパルスシーケンスのパラメータを工夫することにより画像化する。
 
しかしこのままでは、どこがどのような核磁気共鳴信号(NMR信号)を発しているのかという位置情報に欠ける。そこで静磁場とは別に、距離に比例した強度を持つ磁場([[勾配磁場]]、または傾斜磁場)をかける。一般的に、勾配磁場を印加するコイルのことは[[勾配磁場コイル]]と呼ばれている。勾配磁場によって原子核(通常は<sup>1</sup>H)の位相や周波数が変化する。実際に観測するのは個々の信号の合成されたものであるから、得られた信号を解析する際に二次元ないし三次元の[[フーリエ変換]]を行うことで個々の位置の信号(各位置における核磁化に比例)に分解し、画像を描き出す。
 
医療用MRIでは、ほとんどすべての場合、水素原子<sup>1</sup>Hの信号を見ている。ところが、上記のMRIの原理を満たす[[原子核]](核スピンが0以外)であれば、全て画像にすることが可能であり、そのような原子核は<sup>1</sup>H以外にもたくさんある。しかし、それらは<sup>1</sup>Hと比べれば極微量であり、[[画像]]にするには少なすぎる。これに対し、<sup>1</sup>Hは水を構成する原子核であるが、人間の体の2/3は水であることを考慮すると、人間の体は<sup>1</sup>Hだらけであるといえる。<sup>1</sup>Hは水以外の人体を構成する物質(たとえば脂肪)の中にも含まれている。ゆえに、<sup>1</sup>Hを画像化することは、人体(の中身)を画像にすることに近い。<sup>1</sup>H以外の原子核([[炭素]] (<sup>13</sup>C) 、[[リン]] (<sup>31</sup>P) 、[[ナトリウム]] (<sup>23</sup>Na) など)に関しては、研究レベルでは画像化が行われているが、臨床診断にはあまり用いられていない。