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'''育児休業'''(いくじきゅうぎょう)とは、[[子育て|子を養育]]する労働者が法律に基づいて取得できる休業のことである。[[女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約]]の第11条は育児休業の取得による解雇と差別を禁止している。本項目では、日本において、[[1991年]]に制定された[[育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律]](平成3年法律第76号)(通称:育児介護休業法)によって定められた育児休業、及び同法に定める育児を理由とする措置、同法による指針(「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置に関する指針」最終改正・平成28年厚生労働省告示第313号、以下「指針」)について説明する。
*育児介護休業法については、以下では条数のみ記す。
 
== 定義 ==
「育児休業」とは、労働者([[日雇い|日々雇用される者]]を除く)が、法第2章に定めるところにより、その子を養育するためにする休業をいう(第2条1号)。
*「労働者」とは、[[労働基準法]]第9条に規定する「労働者」と同義であり、同居の親族のみを雇う事業に雇用される者及び家事使用人は除外するものである。
*「日々雇用される者」とは、1日単位の労働契約期間で雇われ、その日の終了によって労働契約も終了する契約形式の労働者である。長期的な休業となり得る育児休業の性質になじまない雇用形態の労働者であることから、対象となる労働者から除くこととしたものである。なお、労働契約の形式上日々雇用されている者であっても、当該契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている場合には、実質的に期間の定めのない契約に基づき雇用される労働者であるとして育児休業の対象となるものである。
*「子」とは、労働者と法律上の親子関係がある子([[養子]]を含む)のみならず、[[特別養子縁組]]を成立させるために養親となる者が養子となる者を6か月以上の期間現実に監護しているときの当該期間にある者、養子縁組里親に委託されている者及び特別養子縁組により養親となろうとする者又は養子縁組里親に準ずる者として厚生労働省令で定める者に厚生労働省令で定めるところにより委託されている者をいう。
*「養育」とは、同居し監護するとの意であり、監護とは民法第820条に規定する監護と同義である。病気、旅行により短期間同居に欠けていても「養育している」ことに変わりがないものである。
 
== 育児休業取得の要件 ==
育児休業を取得するには、以下の要件を満たすことが必要である。取得する者の'''男女は問わない'''。また、子が実子であるか[[養子]]であるかも問わない。家族などで事実上、子の世話が可能な者がいても、それに関係なく取得は可能である。事業所によっては[[就業規則]]などで独自の上乗せ規定を設けている場合もある。
 
事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該'''育児休業申出を拒むことができない'''(第6条)。ただし、[[労使協定]]に定めることにより、以下の労働者については、育児休業を認めないことができる(施行規則第7条)。
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=== 雇用の形態 ===
有期雇用労働者については、次のいずれにも該当していなければならない(第5条1項)。なお労働契約の形式上期間を定めて雇用されている者であっても、当該契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となっている場合には、これらの要件に該当するか否かにかかわらず、実質的に期間の定めのない契約に基づき雇用される労働者であるとして育児休業の対象となる(指針)。
労働者(日々雇用される者を除く)が対象となる。ただし、有期雇用労働者については次のいずれにも該当していなければならない(第5条1項)。
#当該事業主に引き続き1年以上雇用されていること。
#子が1歳6か月になるまでの間に雇用契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が満了することが明らかでないこと。
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=== 期間 ===
育児休業は、'''子が1歳に達するまでの間'''に取得することができる(第5条1項)。男性労働者は[[配偶者]]の出産日から取得可能であるが、女性労働者が自ら出産した子については[[産前産後休業|産後休業]]期間(出産日の翌日から8週間)が優先されこの期間は育児休業の期間に含まない。ただし、1歳到達日において育児休業をしている場合で次のいずれかの事情がある場合には、1歳到達日の翌日から1歳6か月に達する日まで育児休業をすることができる(第5条3項、施行規則第6条)。平成29年10月以降は改正法施行により、1歳6ヶ月到達時点でこれらの事情がある場合に再度申請することにより2歳到達日まで育児休業を延長できる。
#[[保育所]]に入所を希望し、申込みをしているが、子が1歳に達する日後の期間について、当面その実施が行われない場合
#子の養育を行っている子の親である[[配偶者]]で、子が1歳に達する日後の期間について常態として当該子の養育を行う予定であったものが次のいずれかに該当した場合
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#*6週間(多胎[[妊娠]]の場合にあっては14週間)以内に出産する予定であるか又は産後8週間を経過しないとき。
 
育児休業は原則として'''同一の子について労働者一人につき1回限り'''行うことができるが(第5条2項)、産後8週間を経過する日の翌日までの期間に父親が育児休業を取得した場合は、1歳到達までの間に再度父親が育児休業を取得することができる('''パパ休暇''')
*パパ休暇の「産後8週間」の起算日は、出産予定日前に当該子が出生した場合にあっては当該出生の日から当該出産予定日から起算して8週間を経過する日の翌日までとし、出産予定日後に当該子が出生した場合にあっては当該出産予定日から当該出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日までとする(第5条2項括弧書き)。出産予定日と実際の出生日が異なる場合において、パパ休暇の取得に関する労働者の期待を保護する観点から設けられたものである。例えば、4月1日が出産予定日である場合において、3月25日に子が出生したときは、パパ休暇の対象となる期間は3月25日(実際の出産日)から5月27日(出産予定日から8週間後)までとなり、また、同様の場合において4月8日に子が出生したときは、パパ休暇の対象となる期間は4月1日(出産予定日)から6月3日(実際の出産日から8週間後)までとなる。パパ休暇は男性の育児休業取得を促進する観点から設けられたものであるが、例えば養子縁組をした場合など、法律の要件を満たす場合には、女性であっても当然対象となりうる。
 
両親がともに育児休業をする場合であって、以下のいずれにも該当する場合、子が'''1歳2か月'''になるまでの育児休業を取得することができる('''パパ・ママ育休プラス'''、第9条の2)。
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== 育児休業給付制度 ==
育児休業期間中の賃金については、法令上は[[賃金]]の支払いを事業主に義務付けておらず(民法第536条により、休業期間中の事業主の賃金支払義務は消滅する)、各事業所の就業規則等による。厚生労働省「平成27年度雇用均等基本調査」によると、育児休業中の労働者に会社や企業内共済会等から金銭を支給している事業所割合は15.2%(平成24年度同調査では18.9%)であり、このうち「毎月金銭を支給する」は8.6%(同10.3%)にとどまっている。
 
育児休業のために賃金の支払いを受けられない者に対して、[[雇用保険法]](昭和49年法律第116号)第61条の4の規定により'''[[雇用保険#育児休業給付|育児休業給付金]]'''の支給を受けることができる。休業は法律により定められている労働者の権利であるため、事業所に規定が無い場合でも、申し出により休業することは可能であり、問題がある。以下の要件をすべて満たした場合には事、育児休所に対して[[厚生労働大臣]]から助言・指導・勧告給付を受けることなされできる。
以下の要件をすべて満たした場合、育児休業給付を受けることができる。
#一般被保険者又は高年齢被保険者である。
#育児休業開始日の前2年間に、賃金支払い基礎日数11日以上の月が12か月以上ある。