「イザベラ・バード」の版間の差分

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最初の朝鮮訪問は[[1894年]](明治27年)。以降3年のうちに、バードは4度にわたり朝鮮各地を旅し、『[[朝鮮紀行]]』を記した。『朝鮮紀行』は、国際情勢に翻弄される李氏朝鮮の不穏な政情、伝統的封建的伝統、文化など、バードがじかに見聞きした朝鮮の情勢を伝える。
 
筆者の犀利な観察眼と朝鮮の資料としての評価より、[[1925年]](大正14年)に日本国内でも抄訳され、『三十年前の朝鮮』の書名で出版された<ref>{{Harvtxt|バード|1925}}</ref>。{{main|朝鮮紀行}}
 
以下、『朝鮮紀行』より。
{{main|朝鮮紀行}}
 
[[釜山]]に上陸したバードは、高台にある[[外国人居留地]]の周りの杉林が[[1592年]]からの[[文禄・慶長の役]]の際に[[豊臣秀吉]]日本軍による植林によるものと記し、また釜山の旧市街が同じく[[文禄・慶長の役]]の占領の際に、日本人によって手がけられたと記している。「砦はとても古いものの、中の市街は三世紀前の構想に沿って日本人の手によって近代化されている」<ref>{{Harvtxt|バード|1998|pp=46-50}}</ref>。
[[ファイル:Korea and Her Neighbours.png|thumb|200px|『[[朝鮮紀行]]』の中の1ページ]]
バードは[[韓国併合]]以前の当時の[[ソウル特別市|ソウル]]に関して、道は牛がすれ違えないほど細く迷路のようであり、家から出た汚物によって悪臭が酷く、北京を見るまで「ソウルこそこの世で一番不潔な町」だとし、「[[紹興市|紹興]]へ行くまではソウルの悪臭こそこの世で一番ひどいにおいだ」「都会であり首都であるにしては、そのお粗末さは実に形容しがたい」と記している<ref>{{Harvtxt|バード|1998|pp=58-60}}</ref>。また、人工の道や橋も少なく、「あっても夏には土埃が厚くて、冬にはぬかるみ、ならしてない場合はでこぼこの地面と、突き出た岩の上をわだちが通っている。道と言っても獣や人間の通行でどうやら識別可能な程度についた通路に過ぎない」と記しており<ref>{{Harvtxt|バード|1998|pp=169 f}}</ref>、ソウルには芸術品や公園や劇場、旧跡や図書館も文献もなく、寺院すらないため、清や日本にある宗教建築物の与える迫力がソウルにはないとしている<ref>{{Harvtxt|バード|1998|p=85}}</ref>。他方、[[金剛山 (朝鮮)|金剛山]]の長安寺では「天国にいるような心地の二日間」を過ごすことができたと賞賛している<ref>{{Harvtxt|バード|1998|loc=11章}}</ref><ref>[http://www.norihuto.com/kumgang-old-tyouan.htm 19世紀末~日本植民地時代の長安寺について]</ref>。また[[貨幣]]・[[通貨]]の流通については、銀行が町にないと記しており、また日本の円がソウルと条約港で通用したことを記している<ref>{{Harvtxt|バード|1998|pp=93 f}}</ref>。
 
そして[[日清講和条約]]で日本が朝鮮の独立を成し遂げて実質的な日本の保護国とした3年後の1897年(明治30年)にバードがソウルを再訪した際の体験によると、ワシントンで市政運営について学んだ知性と手腕の市長(漢城府伴尹)李采淵が、1897年(明治30年)から税関長[[ジョン・マクレヴィ・ブラウン]]の提案のもとに、市内環境改善を行なっており、「不潔さでならぶもののなかったソウルは、いまや極東で一番清潔な都市に変わろうとしている!<ref name="kodansha1998.p=545">{{Harvtxt|バード|1998|p=545}}</ref>」「路地には悪臭が漂い、冬にはあらゆる汚物が堆積し、くるぶしまで汚泥に埋まるほど道のぬかるんでいた不潔極まりない旧ソウルは、みるみる地表から姿を消そうとしている<ref name="kodansha1998.p=545" />」と記載し、改善点を具体的に列挙し、「首都修復は朝鮮式の法則に従ったもので、西洋化されているのではないことを念頭に置かなければならない(同p546)」と記しており、ここでも日本についての言及と同様に、肯定的な側面と否定的な側面双方を多面的に記述している。
 
朝鮮とロシア国境部の[[沿海州]]では水路が整備され、衛生にも配慮され、家屋は朝鮮半島におけるものより立派だとし、「朝鮮人というのはくずのような民族でその状態は望み無しと考えていた」がその考えを正すべきかもしれないとしている<ref>{{Harvtxt|バード|1998|pp=305-307}}</ref>。
 
身分制度に関して、「[[両班]]は究極に無能であり、その従者たちは金を払わず住民を脅して鶏や卵を奪っている<ref>{{Harvtxt|バード|1998|p=137}}</ref>」としている。「両班は公認の吸血鬼であり、ソウルには「盗む側」と「盗まれる側」の二つの身分しかない<ref>{{Harvtxt|バード|1998|p=558}}</ref>」と述べている。朝鮮の官僚については、「日本の発展に興味を持つ者も少数はいたものの、多くの者は搾取や不正利得ができなくなるという私利私欲のために改革に反対していた<ref>{{Harvtxt|バード|1998|pp=343 f}}</ref>」とし、「堕落しきった朝鮮の官僚制度の浄化に日本は着手したが、それは困難きわまりなかった<ref>{{Harvtxt|バード|1998|p=344}}</ref>」と述べている。
 
他方、「一般に表情はにこやかで、当惑が若干混じる。顔だちから察せられるのは、最良の場合、力あるいは意志力よりも明敏さである。朝鮮人はたしかに顔だちの美しい人種である<ref>{{Harvtxt|バード|1998|p=23}}</ref>」とも、また「朝鮮人は清国人にも日本人にも似てはおらず、そのどちらよりもずっと見栄えがよくて、体格は日本人よりはるかにりっぱである」とも記している<ref>{{Harvtxt|バード|1998|p=40}}</ref>。
 
== 著作 ==