「毛細血管」の版間の差分

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毛細血管のすぐ手前の動脈の部分を小動脈、すぐに先の部分を小静脈とよぶ。小動脈と小静脈の壁にある平滑筋はしだいにまばらになって平滑筋を欠く毛細血管に移行する。毛細血管のうち、動脈につづく、やや太い部分を動脈性、静脈に続く太い部分を静脈性毛細血管という。さらにその下流の部分を毛細血管後細静脈とよぶことがある。平滑筋の有無を毛細血管と定義した場合静脈性毛細血管と小静脈の境界を定めるのがしばしば困難になる。口径150μm位まで平滑筋が存在しないこともある。
 
小動脈-毛細血管-小静脈が単純なわな(係蹄)をなして接続するのは[[真皮]]乳頭や粘膜層の乳頭などに限られており、多くは複雑な[[網]]をなす。また小動脈の末端部の平滑筋である毛細血管前括約筋が収縮・弛緩することによって、毛細血管網の血流が調節されていることが多い。[[内分泌]]の毛細血管は非常に密に分布している。腺細胞からホルモンを受け取って、全身の血液にのせる役割を担っているからである。広義の内分泌腺とみなされる肝臓でもこのことは同じである。多くの内分泌の腺細胞索や肝細胞索の間をはしる毛細血管は、多少とも太くなり[[洞様毛細血管]]([[類洞]])とよばれる。洞様毛細血管では血液はゆっくりとながれるので物質交換には非常に都合がよく、[[心筋]]や[[骨髄]]でも認められる。
 
== 構造 ==
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=== 内皮細胞 ===
脈管系の[[上皮]]を[[内皮]]という。毛細血管の内皮を構成する内皮細胞は薄い板状であるが、[[細胞|核]]の部分だけが厚く盛り上がっている。細胞の全形は、血管の方向に概ね一致してやや長く伸び、核もこの方向に長軸を向いた小判形である。毛細血管の横断面をみると、細胞の1個が指輪のように全周を抱くこともあり2,3個がつながって全周を囲むことがある。
 
内皮細胞の境界線を観察するには古くから[[硝酸銀]]による方法が用いられる。[[腸間膜]]などの膜片組織を硝酸銀液に浸し、あるいは血管に同液を注入した後、光にさらすと銀粒子が析出し、内皮細胞の境界に沈着し、これを黒く染める。硝酸銀液を血管注入し、光または現像液で処理した後にレジンを注入し鋳型を走査型電子顕微鏡で観察すると内皮細胞の境界線がわかりやすい<ref>Arch Histol Cytol. 2000;63(5):425-9. PMID 11201200</ref>。内皮細胞の内腔面を[[走査型電子顕微鏡]]で観察すると多数の長さの不揃いな微繊毛が生えていることがある。大血管にも小血管にも見られる。この微繊毛の意義は不明である。内皮細胞を[[透過型電子顕微鏡]]で観察すると、[[核]]の近くに[[ゴルジ装置]]があり、両者の間にしばしば[[中心小体]]が見える。そのほか、核周囲部には[[ミトコンドリア]]、若干の[[粗面小胞体]]、遊離[[リボゾーム]]、少数の水解小体がある。細胞質の薄い部分にはのみこみ陥凹や小胞が通常みられる。内皮細胞の[[中間径フィラメント]]は[[ビメンチン]]が豊富で[[細胞骨格]]として内皮細胞を機械的に支持している。また[[基底膜]]との接着にも重要な役割を担う。微小管は核の一端に局在する中心小体から出て、細胞の長軸を沿って走っている。血管内皮の細胞間には、多少とも接着装置が存在する。しかしその発達は血管の種類や存在部位によって大きく異なる。血管の透過性は[[密着結合]]の発達の程度によって影響を受けると考えられている。血管の透過性は脳血管では低く、脳以外の組織では透過性は高い。脳の血管内皮は強固で連続的な密着結合を形成し、物質透過を遮断しており[[血液脳関門]]といわれている。対照的に骨格筋の血管内皮では密着結合の発達が悪く断続的であるので物質の透過性が高い。内皮細胞のマーカーとしてはCD31(platelet endothelial cell adhesion molecule-1、PECAM-1)、CD34、CD36、RECA-1などが知られている。
 
=== 周皮細胞 ===
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=== 連続性毛細血管 ===
連続性毛細血管(continuous capillary)は骨格筋組織や中枢神経系など多くの組織にみられるので筋型あるいは中枢神経型の毛細血管といわれる。細胞質は薄くなっても100~200nmの厚さがあり窓は空いていない。隣接する細胞との境界のところで両細胞の縁がめくれ返るように辺縁ひだをつくることが多い。内皮細胞の外側は完全に基底膜で取り巻かれる。内皮細胞の間には密着結合が存在するがその程度は器官によって異なる。内皮細胞の細胞質を横切って両方性に巨大分子のトランスサイトーシスを示す多数の小胞が認められる。連続型毛細血管が毛細血管でもっとも一般的なタイプであり[[筋]]肉|筋組織]]、[[皮膚]]、結合組織、[[肺]]、外分泌腺、[[胸腺]]、神経組織などに存在する。連続性毛細血管をもつ臓器では分子量が1kDa以上の水溶性の物質はほとんど血管外に移行できない<ref>臨床薬物動態学 改訂第5版 p345-360 ISBN 9784524257584</ref>。内皮細胞の細胞膜に溶け込んで血管壁を透過する親油性物質を除けば、連続性毛細血管の内皮細胞の物質の透過はピノサイトーシス小胞または細胞間隙または細胞を貫く水で満たされた通路の3つの経路のうちいずれかによって起こる。連続性毛細血管の内皮細胞には半径約6.7〜8.0nmの小孔と20〜28nmの大きな穴の通路の存在が示されているが、それぞれ解剖学的にどの構造に相当するのかは明らかではない<ref>「次世代バイオ医薬品の製剤設計と開発戦略」 出版:シーエムシー出版 監修:森下真莉子 (2011) p103-110 ISBN 9784781312736</ref>。低分子化合物は親水性が高くても小孔を自由に通過できるので連続性毛細血管であっても透過性は高い。
 
=== 有窓性毛細血管 ===