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== 手法 ==
[[ファイル:錯視 (15073682070).jpg|thumb|180px|イメージバンプの例]]
交通規制や路面標示によって運転者への注意喚起を行う'''ソフト的対策'''または路上に構造物(物理的デバイス)を設置して道路そのものに手を加える'''ハード的対策'''が行われる。地域の実情に合わせて様々な手法を組み合わせ、交通静穏化を実施する<ref>{{Cite book|和書|author=一般社団法人 交通工学研究会|title=改定 生活道路のゾーン対策マニュアル|date=2017年6月13日|year=|publisher=丸善出版株式会社|ISBN=978-4-905990-86-4|pages=49-55}}</ref>。これらは特に必要な地点について単発的に行われることもあれば、商店街や住宅街などの特定の道路について全面的に行われたり、ある地域内の全ての道路について一括して行われることもある
 
=== ソフト面 ===
* '''[[一方通行]]''' - 交通量の抑制や[[抜け道]]防止に設定される。指定方向外進行禁止もこれに含まれる。
* '''速度''' - 重大事故を避けるべく、時速30キロ以下に設定するのが望ましいとされる<ref>{{Cite web|url=https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/seibi2/kisei/zone30/pdf/houkokusyo.pdf|title=生活道路におけるゾーン対策推進調査研究報告書|accessdate=2017-08-31|publisher=警察庁|page=23}}</ref>。ゾーン対策を行う場合は、路線別ではなくゾーン内で一括して規制対象とする。
* '''路面標示''' - 規制の内容や路側帯の明示など、カラー舗装も利用して運転者に視覚的な注意喚起を促す。特に[[錯視]]で路面に隆起があるように見せる物は'''イメージハンプ'''という'''。'''
* '''車種''' - 主に大型車の進入を禁止する。騒音対策で二輪を指定する事例や、歩行者専用道路規制を用いて通行車両を居住者用のものに限定する事例もある。
* '''駐車''' - 駐車禁止指定で通行の安全を確保したり、道路の左端以外を駐車可能場所として指定することで、意図した交通静穏化の効果を得られるようにする。
 
=== ハード面 ===
 
* '''路面標示''' - 規制の内容や路側帯の明示など、カラー舗装も利用して運転者に視覚的な注意喚起を促す。特に[[錯視]]で路面に隆起があるように見せる物は'''イメージハンプ'''という'''。'''
 
* '''狭窄''' - 車道の一部を狭くし、車両の通過速度を低下させる。歩道を張り出させたり、[[ボラード]]を設置するほか、環境や景観に配慮して花壇や樹木を置く場合もある{{sfn|浅井建爾|2001|p=158}}。
* '''蛇行''' - 複数の狭窄を組み合わせ、車両の通過速度を低下させる。直線的な屈折が連続するものはクランク、曲線的なものはスラローム、連続しない蛇行はシケインと呼ばれる。
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* '''[[クルドサック]]''' - 住宅が面する道路を袋小路状にし、通過交通の流入を防ぐもの。車止めで十字路を遮断し同様の効果を狙う例もある。
* [[ハンプ (道路)|'''ハンプ''']] - 路面の一部を隆起させ、通過車両の速度を低下させるよう促す。舗装材をそのまま用いるものや、ゴム製のものがある。
 
== 実施 ==
 
=== コミュニティ道路 ===
以上の手法を実施した道路をコミュニティ道路と呼ぶ。日本では歩車分離のものを'''コミュニティ道路'''歩車共存としたも以下を'''歩車共存道路'''と呼ぶ2種類がある。いずれも自動車の通行を主たる目的とはせず、より歩行者優先を強調するものである。
 
* '''コミュニティ道路''' - 歩行者空間と車両空間が物理的に分離され、従来より歩行者の通行スペースを広く取るもの。交通量が多い道路について実施される。狭窄、ハンプなどのハード的対策が重点的に行われる。
* '''歩車共存道路''' - 歩行者空間と車両空間が物理的に分離されないもの。交通静穏化の必要性がありながら、費用面でハード的対策を行うことが難しい道路について実施される。カラー舗装やソフト的対策が重点的に行われる。
 
=== コミュニティ・ゾーン ===
以上の手法を道路単位ではなく、ゾーン対策として特定の地域でまとめて実施したものを'''コミュニティ・ゾーン'''と呼ぶ。前述の通り、通常は路線別に交通規制や道路構造の変更が決定される(線的対策)ところを、ある特定の地域を一つの「ゾーン」として指定し、ゾーン内の全ての道路の最高速度を集合体として捉えて対策を行う(面的対策)ものである。
 
== 日本 ==
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|2016年||499,201||{{N/A}}||{{N/A}}
|}
[[日本]]では、[[1980年]]に[[大阪市]]が市道にクランクやハンプなどを設置し、欧州の事例と同様の効果を狙った'''[[コミュニティ道路]]'''が開通したのが始まりである。また、ほぼ同時期に[[西洋環境開発]]により汐見台ニュータウン([[宮城県]][[七ヶ浜町]]に汐見台)、その後[[桂坂ニュータウン]]([[京都市]][[西京区]])としてボンエルフ状の分譲地が引き続き造成し、後に京都市西区でも同様の理念で[[桂坂ニュータウン]]を建設しされのが始まりである
 
欧米における生活道路網のゾーン対策が効果を見せていたことから、日本でも1996年より[[警察庁]]が各都道府県警に向けてこれと同様の「'''コミュニティ・ゾーン対策'''」を推進した<ref>{{Cite web|url=https://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/kisei/kisei19960624-1.pdf|title=コミュニティ・ゾーン対策の推進について|accessdate=2017-07-30|date=1996-06-24|publisher=警察庁}}</ref>。これは交通規制の実施と物理的デバイスの設置を一挙に行うことで交通静穏化を目指すものであったが、これらを一つの事業として行うには住民や自治体などとの連携が不可欠であり、立案から実施までに長い時間を要する上、住民の合意が得られなかったり、自治体が必要な予算を捻出できないなどして、計画倒れになる事例もあった。<ref name=":1">{{Cite web|url=https://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/kisei/kisei20110920.pdf|title=ゾーン30の推進について(通達)|accessdate=2017-07-30|date=2011-09-20|publisher=警察庁}}</ref>。また、[[2003年]]には国土交通省により「'''あんしん歩行エリア'''」の指定が行われ、都道府県公安委員会と道路管理者によって対策が行われたが、2012年までの9年間で全国1378箇所の指定に留まった。あんしん歩行エリアもコミュニティ・ゾーン対策と類似したもので<ref name=anshin />、依然として同様の問題点を抱えており、日本におけるゾーン対策の広まりは不十分なままであった。