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</small>]]
 
'''放射能'''(ほうしゃのう、{{lang-en-short|radioactivity}}、{{lang|en|activity}}<ref>放射能({{lang-en-short|radioactivity}})である元素の同位体が放射性崩壊を起こす性質のことを表し、放射能({{lang-en-short|activity}})で放射性崩壊を起こす速さ(単位時間あたりの放射性崩壊する原子の個数)を表す、というように区分されることもある。しかし、結局放射能を持てばベクレル値を持ち、ベクレル値を持つ物質は放射能を持つこととなるので、同じ意味と考えてよい。</ref>)とは、[[放射性同位体|放射性同位元素]]が[[放射性崩壊]]を起こして別の元素に変化する性質(能力)を言う<ref>[[#草間(2007)|草間(2007)]] p.&nbsp;99.</ref>。なお、放射性崩壊に際しては[[放射線]]の放出を伴う。
 
放射能は、単位時間に[[放射性崩壊]]する原子の個数(単位:[[ベクレル]] [Bq])で計量される。
 
なお、ある元素の[[同位体]]の中で放射能を持つ元素を表す場合は「[[放射性同位体]]」、それらを含む物質を表す場合は「[[放射性物質]]」と呼ぶのが適切である<ref>{{efn|日常会話やマスコミ等において「放射能を浴びる」「放射能に汚染される」などの誤用が一般に定着し常用されている。ここでいう「放射能を浴びる」とは放射性物質から放出される放射線を浴びることを意味し、「放射能に汚染される」とは放射性物質に汚染される事を意味している。</ref>}}
 
== 概要 ==
[[Image:Becquerel plate.jpg|250px|thumb|right|<small>[[アンリ・ベクレル|ベクレル]]が偶然近くに置いたウラン鉱石が写真乾板を感光させたことによって、放射能は発見された。乾板とウラン鉱石の間にあった金属製[[マルタ十字]]シンボルが偶然感光して映り込んでいるのも見て取れる。</small>]]
 
すべての物質は原子から構成される。さらに原子は負電荷を持つ電子と正電荷をもつ原子核からなる。[[原子核]]<ref>{{efn|なお、原子核は電気的に中性な中性子と電子と等量であるものの逆の正電荷を持つ陽子からなる。中性子と陽子を合わせて核子と呼ぶ。</ref>}}からなる。原子核の種類を[[核種]]という{{efn|あくまで原子核の種類を核種というのであって、単に核種といった場合は放射能を持たない[[安定同位体]]も含まれている<ref>J.E.BRADY・G.E.HUMSTON著 『ブラディ一般化学 下』若山信行・一国雅巳・大島泰郎訳、東京化学同人、1992年、863頁。ISBN 4-8079-0348-9。あくまで原子核の種類を核種というのであって、単に核種といった場合は放射能を持たない[[安定同位体]]も含まれている。</ref>。}}が、核種によってはその量子力学的バランスの不釣り合いから、放射線(α線、β線、γ線など)を放出して[[放射性崩壊]]と呼ばれる崩壊現象を起こして他の核種に変化することがある。そのような放射線を放出して放射性崩壊を起こす性質のことを'''放射能''' (radioactivity) と呼ぶ<ref name="rika">{{efn|ウランやトリウムといった自然界に存在している原子核の放射能を天然放射能といい、核爆発や原子炉などの核反応で人工的に作り出されたプルトニウムやセシウムの一部の同位体などの放射能を人工放射能ということもある<ref name="rika"> 長倉三郎ほか編、『[https://www.iwanami.co.jp/book/b256607.html 岩波理化学辞典] 』、岩波書店、1998年、項目「放射能」より。ISBN 4-00-080090-6</ref>。}}{{efn|1896年に[[アンリ・ベクレル]]により発見され、[[マリ・キュリー]]により命名された<ref name="buturi">物理学辞典編集委員会編、『物理学辞典三訂版』、培風館、2005年、項目「放射能」より。ISBN 4-563-02094-X</ref>。}}
: 長倉三郎ほか編、『[http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/08/6/0800900.html 岩波理化学辞典] {{webarchive|url=https://web.archive.org/web/20130927144110/http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/08/6/0800900.html |date=2013年9月27日 }}』、岩波書店、1998年、項目「放射能」より。ISBN 4-00-080090-6</ref><ref name="buturi">1896年に[[アンリ・ベクレル]]により発見され、[[マリ・キュリー]]により命名された。
: 物理学辞典編集委員会編、『[http://www.baifukan.co.jp/sinkan/shokai/02094X.html 物理学辞典三訂版]』、培風館、2005年、項目「放射能」より。ISBN 4-563-02094-X。</ref>。
 
元素の同位体で放射能を持つものを「[[放射性同位体]]」と呼び、放射性同位体を含む物質を「[[放射性物質]]」と呼ぶ。しかし、一般には放射能をもつあらゆるもの(同位体や物質、核種、放射線など)に対する総称として、表現としては不適切と承知の上で使用れたり、不適切であることを知らないまま使用されたりもする。
 
== 放射性壊 ==
放射性崩壊によって放出された粒子や電磁波は高いエネルギーを持つ。このエネルギーは[[崩壊エネルギー]]と呼ばれる。崩壊エネルギーは最終的に熱エネルギーに変質する。<ref>{{efn|[[原子力電池]]ではこの熱エネルギーを電気エネルギーに転換して利用るしくみが[[原子力電池]]や[[原子力発電]]である。</ref>}}
 
=== 放射性崩壊の速さとしての放射能 (activity) とその単位 ===
一般に[[放射性物質]]の単位時間あたりに[[放射性崩壊]]する原子の個数(放射性崩壊の速さ)を、その放射性物質の放射能(activity)と呼び、単位としては[[ベクレル]](Bq [s<sup>−1</sup>])が用いられる<ref>{{efn|放射能は壊変毎秒 (decay per second ; dps) または壊変毎分 (decay per minutes ; dpm) で表されることもある。</ref><ref>}}{{efn|放射能研究の当初は標準単位がなく[[アーネスト・ラザフォード]]も独自の単位を使用していた。そこで、標準となる単位の必要性を感じていたラザフォード自身が基準委員会の委員長となり、1910年の第一回国際放射線学会にて 1 g の[[ラジウム]]が持つ放射能を単位とした1キュリー (Ci) が定義された。その後、1974年にSI単位として国際度量衡総会でベクレルを採択し1975年から国際標準として用いられている。日本においては法改正がなされた1989年からベクレルが公式使用されている。</ref>}}。またベクレル以前に用いられていた単位であり、現在補助単位として用いられている[[キュリー]] (Ci) と呼ばれる単位もある。
{{details | 半減期#放射能 (activity)}}
;ベクレル (Bq)
:放射性物質が1秒間当たりに崩壊する'''原子の個数''' (d/sec) の単位を'''ベクレル'''(記号:Bq)と言う<ref>{{efn|たとえば、ある物質が 1 Bq の放射能を持つとは'''毎秒 1 個の原子'''が放射性崩壊により崩壊しているということである。</ref><ref>}}{{efn|1 kg あたりの放射能として[[比放射能]]という目安もある。
{{details|比放射能}}</ref>。毎秒壊変(崩壊)数 (dps ; decay per second) などとも呼ばれていた<ref>{{efn|ただし、原子核が崩壊する時に放射線を放射するが、1個の原子核が崩壊するときに1個の放射線が出てくるとは限らない。さらには、出てくる放射線の種類やエネルギーなどの確率が異なることがある。この確率を分岐比という。<ref>大塚徳勝・西谷源展 『Q&A放射線物理 改訂新版』、共立出版、2007年、152-155頁。ISBN 978-4-320-03453-2</ref>。}}{{efn|1=なお、ある物質が 1 モル (mol) だけあれば、それを構成する分子の個数は[[アボガドロ定数]] N<sub>A</sub> = 6.02214129 × 10<sup>23</sup> 個である。}}
: 大塚徳勝・西谷源展 『Q&A放射線物理 改訂新版』、共立出版、2007年、152-155頁。ISBN 978-4-320-03453-2</ref><ref>なお、ある物質が 1 モル (mol) だけあれば、それを構成する分子の個数は[[アボガドロ定数]] N<sub>A</sub> = 6.02214129 × 10<sup>23</sup> 個である。</ref>。
{{details|ベクレル}}
 
;キュリー (Ci)(補助単位、旧単位)
:歴史的な理由から、放射性物質である[[ラジウム]] 1 g が1秒間に崩壊する原子の個数(d/sec , Bq)をもとに定められた放射能の単位をキュリー(記号:Ci)と言う<ref>{{efn|ただし、毎秒370億個のラジウム原子が崩壊(3.7×10<sup>10</sup>Bq)してアルファ粒子を放出するという値は古い値であり、現代における正確な値は3.61×10<sup>10</sup>Bq である。そのため、放射能の単位としてのキュリー (Ci) と放射性物質のラジウムの間に直接の関係はなくなってしまった。<ref>[[#Ray(1955)|原子核工学(1955)]] p.&nbsp;23.</ref>}}。1Ci(キュリー)はベクレル (Bq) を元に以下のように定められる。
::1 Ci = 3.7×10<sup>10</sup> Bq
:また、1ベクレルは2.7×10<sup>−11</sup>キュリーである<ref name="buturi3">大塚徳勝・西谷源展 『Q&A放射線物理 改訂新版』、共立出版、2007年、152-155頁。ISBN 978-4-320-03453-2</ref>。なお、キュリーは現在でも補助単位として使用されている。
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放射能(ベクレル)を直接測定することは難しいので、測定対象物から発する[[放射線]]の数やエネルギーを測定して、間接的に放射性物質の量(ベクレルと質量は対応する。[[比放射能]]も参照)を求める方法を採ることが多い。
 
* α線の測定には、[[液体シンチレーションカウンタ]][[硫化亜鉛]][[シンチレーション検出器]][[半導体検出器]]<ref>{{Cite web|url =http://isotope.c-technol.co.jp/products/syahei/alpha.html|title =アルファちゃん|accessdate=2012-10-22|deadlinkdate=2018年10月}}</ref>が用いられる。
* γ線の測定には、[[半導体検出器#ゲルマニウム半導体検出器|Ge半導体検出器]]や[[ヨウ化ナトリウム|NaI]][[シンチレーション検出器|シンチレーションカウンタ]]が用いられる。
* 表面汚染を検出するには、[[ガイガーカウンター|ガイガー=ミュラー検出器]]が用いられる。
 
== 放射線障害とその防護 ==
放射線を浴びることを[[被曝]]という。被曝線量によっては放射線障害と呼ばれる影響が身体に現れることがある。被曝は大きく外部被曝と内部被曝に分類される。外部被曝を防ぐには、遮蔽、距離、被曝時間が重要である<ref>{{efn|放射線障害を防止するため、法令により、人体が被曝する放射線の量([[線量]])に限度が設けられており、放射性物質を取り扱う場合はこの値を超えないようにする必要がある。また放射性物質を取扱う施設の仕様、放射性物質の購入・保管・廃棄の管理、汚染の管理、管理被服や[[放射線防護服]]、保護具の着用も法令や施設の内規で定められている。
</ref>}}
{{see also | 放射線#放射線障害とその防護 | 放射線障害 | 被曝}}
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
{{notelist}}
=== 出典 ===
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{{DEFAULTSORT:ほうしやのう}}
[[Category:放射能|*]]
[[Category:放射線]]
[[Category:原子力]]
[[Category:素粒子物理学]]
[[Category:原子核物理学]]
[[Category:原子物理学]]
[[Category:物質の性質]]