「トラファルガーの海戦」の版間の差分

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イギリス艦隊司令官[[ホレーショ・ネルソン (初代ネルソン子爵)|ホレーショ・ネルソン]]はこの戦いの中で命を落とす事になったが、彼が戦闘開始時に発した「[[英国は各員がその義務を尽くすことを期待する]]」の信号は名文句として後世に残された。
 
なお、この海戦の勝利の重要さが明確に認識されるようになったのはナポレオン戦争が終結した後であった。海戦の発生理由もイギリス本土防衛に直接起因するものではなく、あくまで敵艦隊の撃滅を目指していたネルソンの積極的性格に拠る所が大きかった。海戦後の1806年以降、ヨーロッパの覇権を握った[[ナポレオン・ボナパルト|ナポレオン]]が[[大陸封鎖令]]を強化するにつれて、トラファルガーでフランス艦隊を壊滅させておいた事へのに対する戦略的意義が高まり始めた。ナポレオンの敗北後、トラファルガー海戦の結果が終始イギリスの優位性を支えていたと分析された事から、ネルソンは救国の英雄として称えられるようになった。
 
== 海戦までの流れ ==
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*一等戦列艦「ラヨ」<small>(西)</small>
* 二等戦列艦「[[フォーミダブル (戦列艦・2代)|フォルミダブル]]」<small>ル・プレ少将座乗(仏)</small>
* 戦列艦 43
 
'''第二団 '''<small>旗艦「ビューセントル」副旗艦「ヌエストラセニョーラデラサンティシマトリニダード」</small>
 
* 戦列艦 12
* 一等戦列艦「[[ヌエストラ・セニョーラ・デ・ラ・サンティシマ・トリニダー (戦列艦)|ヌエストラセニョーラデラサンティシマトリニダード]]」<small>シスネロス少将座乗(西)</small>
* 二等戦列艦「ビューセントル」<small>ヴィルヌーブ中将座乗(仏)</small>
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=== ネルソンタッチ(11:45~12:20) ===
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午前11時45分、'''北縦隊'''(ネルソン中将)と'''南縦隊'''(コリングウッド中将)による二列縦隊を組ませたネルソンは、フランス・スペイン合同艦隊への突入命令を下し「英国は各員がその義務を尽くすことを期待する」の旗信号を送った。後に「ネルソンタッチ」と呼ばれるこの艦隊移動は、敵艦と接触するまでの間は相手からの一方的な砲撃に晒され、被弾した時は砲弾が船体上を縦断して大きな被害を出す危険な行動であった。ネルソンは敵艦隊をカディス軍港へ逃げ込ませない為に、あえてこの捨て身の体当たり戦法に打って出を用い事にし、また分した敵前衛を彼らが回頭を終えるまでの間遊兵にする狙いもあったとされる
 
12時00分、西側から急速接近して来るイギリス艦隊を視認したヴィルヌーブは、各団の旗艦に隊列を揃えさせて一筋の艦隊ラインを築くよう旗信号を送り、'''第1団'''(ル・プレ少将)、'''第2団'''(ヴィルヌーブ中将)、'''第3団'''(ナヴァレテ中将)、'''第4団'''(グラヴィーナ大将)が北から南に向けてある程度整列した。続けて戦闘準備を命じたヴィルヌーブは同時に全艦の砲門を開かせて西側に向けた一斉砲撃を開始した。縦隊で突き進むイギリス各艦は砲弾の雨に見舞われたが、長期の航海で疲弊していたフランス砲手達の士気と錬度は低く、また敵船体を狙った水平砲撃ではなく、マストと帆を標的にする上向き砲撃を行った事が更に命中率を下げたので、イギリス各艦は至近距離に到るまで大きな損傷を被らなかった。
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=== 両艦隊の衝突(12:20~13:00) ===
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12時20分、北縦隊を率いるネルソンは第1団に向けていた北縦隊の針路を突如南に45度変え、第2団を目指しに向けて突入させた。これは敵先導艦を牽制して速度を落とさせる為のフェイントだった。コリングウッド率いる南縦隊は第3団に向かって直進し続けていたので、その旗艦「英ロイヤルソヴリン」が最初にフランス艦列に接触した。「英ロイヤルソヴリン」は第3団旗艦『西サンタアナ』の船尾側を掠めるように接触した後に砲弾を撃ち込みながら北へ舵を切って接舷すると素早く架橋して海兵部隊を突入させた。旗艦の敵接触後、南縦隊の各艦は南方へ広がるようにして斜めに航進し、それぞれが標的を定めた第3団の敵艦に突入していった。「英ドレッドノート」以下の5隻は更に南へ角度を取り、第4団への攻撃に向かった。
 
12時40分、北縦隊の旗艦「英ヴィクトリー」もフランス艦列に到達し、第2団旗艦『仏ビューセントル』に衝角突撃した。北に移動する『仏ビューセントル』はこれを間一髪でかわしたが、その船尾に対して開かれた「英ヴィクトリー」左舷の全砲門から多数の至近砲弾を撃ち込まれ船体後部を粉砕された。『仏ビューセントル』を襲う「英ヴィクトリー」に対して、北側の『仏ネプチューネ』と南側の『仏ルドゥタブル』がそれぞれ砲門を向けたので「英ヴィクトリー」もまた南北両面から至近砲火を浴びる事になった。
 
12時50分、『仏ビューセントル』後方を通過した「英ヴィクトリー」は敵艦列の真っ只中に飛び込む形となり、全身に砲弾を受けながら南東へ進んで『仏ルドゥタブル』と衝突した。北縦隊2番艦「英テレメーア」も南東へ舵を切って『仏ルドゥタブル』の攻撃に向かった。3番艦の「英ネプチューン」は北東へ船首を向け『西ヌエストラセニョーラデラサンティシマトリニダード』に突撃した。「英ヴィクトリー」の近接砲撃で半壊状態となった『仏ビューセントル』には4番艦「英リヴァイアサン」と5番艦「英コンカラー」が襲い掛かり、それぞれ接舷して海兵隊を斬り込ませた。
 
=== ネルソンの負傷(13:00~14:00) ===
13時00分、「英ヴィクトリー」と『仏ルドゥタブル』は互いに絡み合って身動きが取れなくなり、双方が海兵隊を繰り出して激しい銃撃の応酬と白兵戦が甲板上で繰り広げられる事になった。この乱戦の中でネルソンは左胸を撃ち抜かれて瀕死の重傷を負った。『仏ルドゥタブル』の海兵隊は強力でイギリス海兵を押し返した後に「英ヴィクトリー」へ乗り込もうとしたが、そこに来援した「英テレメーア」海兵隊の援護射撃で大きな被害を出す事になった。
 
13時30分、「英リヴァイアサン」「英コンカラー」に包囲された『仏ビューセントル』が降服し、ヴィルヌーブも捕虜となった。この頃、遊兵と化していた第1団のフランス艦列は後方の味方に加勢する為に西への回頭運動を行っている最中だった。また北縦隊の副旗艦「英ブリタニア」以下の6隻も第2団のフランス艦列に突入し、この方面ではイギリス側が一気に優勢となった。
 
13時55分、「英ヴィクトリー」相手に奮戦していた『仏ルドゥタブル』であったが「英テレメーア」にも挟撃された事で力尽き、ついに降服した。
 
=== 閉幕 ===