「ヒルベルト空間」の版間の差分

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:<math>\sum_{k=0}^\infty \|\mathbf{x}_k\| < \infty</math>
なる条件を満たすとき、[[絶対収束]]するという<ref>{{harvnb|Marsden|1974|loc=§2.8}}</ref>。スカラー項級数の場合と全く同じく、絶対収束するベクトル項級数は
:<math>\left\|\mathbf{L}-\sum_{k=0}^N\mathbf{x}_k\right\|\to 0\quad(\text{as }N\to\infty)</math>
なる意味で、このユークリッド空間の適当な極限ベクトル '''L''' に収束する。このような性質(絶対収束級数は通常の意味でも収束する)は、ユークリッド空間の'''[[完備距離空間|完備性]]''' {{lang|en|(''completeness'')}} として表される。
 
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ルベーグ空間は[[測度空間]] {{math|(''X'', ''M'', ''μ'')}} ({{mvar|X}} は[[集合]]で、{{mvar|M}} は {{mvar|X}} の部分集合からなる[[完全加法族]]、{{mvar|μ}} は {{mvar|M}} 上の[[測度|完全加法的測度]])に付随する[[関数空間]]である。{{math|''L''<sup>2</sup>(''X'', ''μ'')}} を、{{mvar|X}} 上の複素数値可測関数で、その[[絶対値]]の平方の[[ルベーグ積分]]が有限となるようなもの全体の成す空間とする。即ち、{{math|''L''<sup>2</sup>(''X'', ''μ'')}} に属する関数 {{mvar|f}} は必ず
:<math> \int_X |f|^2\, d \mu < \infty</math>
を満たす。ただし、[[零集合|測度零の集合]]の上でだけ異なる([[ほとんど (数学)|殆ど至る所一致する]])ような関数は全て同一視するものとする。
 
{{math|''L''<sup>2</sup>(''X'', ''μ'')}} に属する関数 {{math|''f'', ''g''}} の内積は
:<math>\langle f,g\rangle:=\int_X f(t) \overline{g(t)} \ d \mu(t)</math>
で与えられる。{{math|''L''<sup>2</sup>}} の元 {{math|''f'', ''g''}} に対して、右辺の積分が存在することはコーシー・シュヴァルツの不等式から示されるから、これは確かに内積を定義している。このように定義された内積に関して {{math|''L''<sup>2</sup>}} は実は完備になる<ref>{{Harvnb|Halmos|1957|loc=Section 42}}.</ref>。積分がルベーグ積分であることは完備性を保証するために本質的である。例えば、実数からなる領域上で[[リーマン積分#可積分性|リーマン可積分関数]]を考えるのでは十分でない<ref>{{Harvnb|Hewitt|Stromberg|1965}}.</ref>。
 
98行目:
:<math>\int_0^1 |f(t)|^2w(t)\,dt < \infty</math>
を満たすもの全体の成す空間は[[ルベーグ空間|重み付き {{math|''L''<sup>2</sup>}}-空間]]と呼ばれ、{{mvar|w}} を重み関数と呼ぶ。内積は
:<math>\langle f,g\rangle:=\int_0^1 f(t) \overline{g(t)} w(t) \, dt</math>
で与えられる。重み付き空間 {{math|1=''L''{{su|p=2|b=''w''}}([0, 1])}} はヒルベルト空間 {{math|''L''<sup>2</sup>([0, 1], ''μ'')}} に等しい。ただし測度 {{mvar|μ}} は可測集合 {{mvar|A}} に対して
:<math>\mu(A) = \int_A w(t)\,dt</math>
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非負整数 {{mvar|s}} と領域 {{math|Ω ⊂ '''R'''<sup>''n''</sup>}} に対し、ソボレフ空間 {{math|''H''<sup>''s''</sup>(Ω)}} は {{mvar|s}} 階までの[[弱微分]]が全て {{math|''L''<sup>2</sup>}} に属するような {{math|''L''<sup>2</sup>}}-関数を全て含む。{{math|''H''<sup>''s''</sup>(Ω)}} における内積は
:<math>\langle f,g\rangle := \sum_{k=0}^s\int_\Omega D^kf(x) \cdot D^k\bar{g}(x)\, dx=\int_\Omega f(x)\bar{g}(x)\,dx + \int_\Omega D f\cdot D\bar{g}(x)\,dx + \cdots + \int_\Omega D^s f(x)\cdot D^s \bar{g}(x)\, dx</math>
で与えられる。ただし、右辺のドット積は各階の偏導関数全体の成すユークリッド空間におけるドット積である。{{mvar|s}} が整数でない場合にもソボレフ空間は定義できる。
 
ソボレフ空間は、(ヒルベルト空間のより具体的な構造に依拠する)スペクトル論の観点からも研究される。適当な領域 {{math|Ω}} に対してソボレフ空間 {{math|''H''<sup>''s''</sup>(Ω)}} を{{仮リンク|ベッセルポテンシャル|en|Bessel potential}}全体の成す空間として定義することができる<ref>{{harvnb|Stein|1970}}</ref>。これはだいたい
:<math>H^s(\{Omega) = \,{ (1-\Delta)^{-s/2}f;\ | f\in L^2(\Omega)\, \}</math>
のようなものである。{{独自研究?|date=2018年11月23日=}} ここで {{math|Δ}} は[[ラプラス作用素]]、{{math|(1 &minus; Δ)<sup>&minus;''s''/2</sup>}} は{{仮リンク|スペクトル写像定理|en|spectral mapping theorem<!-- リダイレクト先の「[[:en:Banach algebra]]」は、[[:ja:バナッハ環]] とリンク -->}}によって捉えることができる。非負整数 {{mvar|s}} に対するソボレフ空間の意味のある定義を与える必要があることをひとまず置いておけば、ソボレフ空間の定義は[[フーリエ変換]]のもとで特に望ましい性質を持ち、[[擬微分作用素]]の研究に対して理想的である。これらの方法を[[コンパクト空間|コンパクト]][[リーマン多様体]]上で用いれば、例えば[[ホッジ理論]]の基礎を成す[[ド・ラームコホモロジー#ホッジ分解|ホッジ分解]]が得られる<ref>詳細は {{harvtxt|Warner|1983}} に見つかる。</ref>。
 
のようなものである。{{独自研究?|date=2018年11月23日=}} ここで {{math|Δ}} は[[ラプラス作用素]]、{{math|(1 &minus; Δ)<sup>&minus;''s''/2</sup>}} は{{仮リンク|スペクトル写像定理|en|spectral mapping theorem<!-- リダイレクト先の「[[:en:Banach algebra]]」は、[[:ja:バナッハ環]] とリンク -->}}によって捉えることができる。非負整数 {{mvar|s}} に対するソボレフ空間の意味のある定義を与える必要があることをひとまず置いておけば、ソボレフ空間の定義は[[フーリエ変換]]のもとで特に望ましい性質を持ち、[[擬微分作用素]]の研究に対して理想的である。これらの方法を[[コンパクト空間|コンパクト]][[リーマン多様体]]上で用いれば、例えば[[ホッジ理論]]の基礎を成す[[ド・ラームコホモロジー#ホッジ分解|ホッジ分解]]が得られる<ref>詳細は {{harvtxt|Warner|1983}} に見つかる。</ref>。
 
=== {{anchors|正則函数の空間}}正則関数の空間 ===
; ハーディ空間
:[[複素解析]]や[[調和解析]]で用いられる[[ハーディ空間]]は、その元が複素領域上の[[正則関数]]となっているような関数空間の一種である<ref>ハーディ空間の一般論は {{harvtxt|Duren|1970}} を見よ。</ref>。{{mvar|U}} をガウス平面上の[[単位円板]]とすると、ハーディ空間 {{math|''H''<sup>2</sup>(''U'')}} は {{mvar|U}} 上の正則関数 {{mvar|f}} で、その平均<div style="margin: 1ex 2em;"><math>
M_r(f) := \frac{1}{2\pi}\int_0^{2\pi}|f(re^{i\theta})|^2\,d\theta
</math></div>がまた {{math|''r'' &lt; 1}} で抑えられるようなもの全体の成す空間として定義される。このハーディ空間上のノルムは<div style="margin: 1ex 2em;"><math>
\|f\|_2 = \lim_{r\to 1} \sqrt{M_r(f)}
</math></div>で与えられる。この円板上のハーディ空間はフーリエ級数と関係があり、正則関数 {{mvar|f}} が {{math|''H''<sup>2</sup>(''U'')}} に属するための必要十分条件は、<div style="margin: 1ex 2em;"><math>
f(z) =\sum_{n=0}^\infty a_n z^n,\qquad\left(\sum_{n=0}^\infty|a_n|^2 <\infty\right)
</math></div>なる形に書けることである。従って、空間 {{math|''H''<sup>2</sup>(''U'')}} は、単位円板上の {{math|''L''<sup>2</sup>}}-関数で、負の周波数に対するフーリエ係数が消えているようなもの全体からなる。