「暴力団」の版間の差分

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「暴力団」は[[暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律]](暴力団対策法)により法的な定義を与えられている<ref name="mizoguchi_2011_p13">{{Cite book |和書 |author=溝口敦 |authorlink=溝口敦 |title=[[暴力団 (書籍)|暴力団]] |year=2011 |page=13 |chapter=ヤクザと暴力団員 |publisher=[[新潮社]] |series=[[新潮新書]] |ISBN=978-4-10-610434-3}}</ref>。すなわち、「その団体の構成員(その団体の構成団体の構成員を含む)が集団的に又は常習的に暴力的不法行為等を行うことを助長するおそれがある団体」<ref name="mizoguchi_2011_p14">{{Cite book |和書 |author=溝口敦 |authorlink=溝口敦 |title=[[暴力団 (書籍)|暴力団]] |year=2011 |page=14 |chapter=ヤクザと暴力団員 |publisher=[[新潮社]] |series=[[新潮新書]] |ISBN=978-4-10-610434-3}}</ref>。通常は「ヤクザ」と同義であるが<ref name="mizoguchi_2011_p13"/>、テレビや新聞などのメディアでも「ヤクザ」という語の使用は避けられ、もっぱら「暴力団」の語が用いられている<ref name="mizoguchi_2011_p14"/>。一方で、暴力団員は自らのことを任侠道に邁進する者として、「極道」「任侠の徒」といった美称を好んで使う。
 
暴力団対策法の定める要件を根拠に指定を受けた組織を「'''[[#指定暴力団|指定暴力団]]'''」という<ref>{{Cite book |和書 |author=溝口敦 |authorlink=溝口敦 |title=[[暴力団 (書籍)|暴力団]] |year=2011 |page=15 |chapter=ヤクザと暴力団員 |publisher=[[新潮社]] |series=[[新潮新書]] |ISBN=978-4-10-610434-3}}</ref>。なお、[[山口組|六代目山口組]]、[[住吉会]]、[[神戸山口組]]および[[稲川会]]の4団体で全暴力団の構成員・準構成員などの人数の70%強を占めており、[[警察庁]]は左記4団体を主要暴力団と見なしている<ref name="npa2015npa2017">{{Cite web |author=[[組織犯罪対策部]] |url=https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudankikakubunseki/boutai18sotaikikaku03/h27_jouseih29.sotaijousei.pdf |title= 平成2729における 組織犯罪暴力団情勢 【確定値版】|accessdate=20162018-0411-0326 |date=20162018-02-25 04|format=PDF |publisher=[[警察庁]]}}</ref>。
 
暴力団の構成員、資金や便宜を供与するなどで暴力団に自発的に協力する者、および、暴力団や暴力団構成員を利用するなどして交わりを持つ者などを「'''[[#暴力団関係者|暴力団関係者]]'''」という<ref>{{Cite web |author=[[デジタル大辞泉]] |url=http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/252394/m0u/ |title=ぼうりょくだんかんけいしゃ【暴力団関係者】の意味 |accessdate=2013-12-27 |publisher=[[goo辞書]]}}</ref>。近年では、「'''準暴力団'''」という規定も新たに設けられた<ref name="sankei130307"/>。
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大組織の親分になると自らの手で違法な金儲けをする必要はなく、上納金を組織の運営費や活動資金に充てるほか、豪邸を構え、[[愛人]]を囲い、高級外車を乗り回すなど、豪奢な生活を送る資金として使用しているのが実態であり、[[麻薬]]や[[覚醒剤]]の密売、[[恐喝]]、[[犯罪|ゆすり]]、[[犯罪|たかり]]、[[振り込め詐欺]]、[[ノミ屋|ノミ行為]]、[[強盗]]、[[置き引き]]、[[密輸]]、[[殺人]]、[[盗賊|追剥]]、[[万引き]]、[[窃盗]]、[[誘拐]]、[[闇金融]]、[[管理売春]]、[[美人局]]などの犯罪行為は任侠道をわきまえない不心得者の下部団体の組員などが個人的に行っているという建前をとっている。逆に組員だからといって犯罪行為をしなければいけないということでは無く、一般企業に組員であることを隠して就職し、給料を上納金に当てている者も見られる。
 
なお、[[警察庁]]は暴力団の収益源のうち、特に[[覚せい剤取締法]]違反、恐喝、賭博及びノミ行為等の4種類の犯罪によるものを「暴力団の伝統的資金獲得活動」と整理している<ref>{{Cite report |authorname=警察庁"npa2017" |title=平成19年 警察白書 |url=https://www.npa.go.jp/hakusyo/h19/honbun/pdf/19p00200.pdf |format=PDF |at=暴力団の資金獲得活動の変遷 |accessdate=2018-01-28}}</ref>。
 
組織犯罪そのものは淵源的には悪政を敷き苛斂誅求を求める為政者からの自警や相互扶助的な目的で結成された場合が多く<ref>{{Cite book |author=Salvatore Lupo |translator=Antony Shugaar |year=2009 |title=History of the mafia |publisher=Columbia University Press |ISBN=978-0-2311-3134-6}}{{要ページ番号|date=2013年5月}}</ref>、このように弱きを助け強きをくじき仁義を重んずる「任侠道」を標榜する暴力団もあるが、その任侠がお題目に過ぎない組もあり、前者の場合は組織内は相互扶助的な色彩が強いが、後者の暴力団社会は[[弱肉強食]]である。
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現行法では暴力団や組員に対しては住居の自由などの基本的人権の侵害すら懸念されるほどの規制が行われているが、[[イタリア]]の[[マフィア対策統合法]]のような暴力団の存在自体の非合法化はなされていない。
 
暴力団の不法行為に対し「[[暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律]]」(平成3年法律第77号、暴対法)が[[1992年]]3月に施行された。その後、暴力団や関連団体に携わる者のうち、構成員については右肩下がりで減少していたものの、逆に準構成員の数が増えて補完する形となり、1991年から2004年までは9万から8万人の横ばいで推移していた。しかし、2004年以降はともに数を減らしており、2010年から以降は毎年5,000人~8000人程度のペースで、2017年末は前年度と比べて4,600人減少してい、約34,500人である<ref name="npa2015npa2017"/>。このように暴力団の活動に打撃を与え、目に見える範囲では効果を上げている一方、資金活動が行えなくなった暴力団の犯罪の地下組織化も懸念されている。組員また、資金活動行えなくなったことによる困窮化により、複数の暴力団を辞めても暴対法規制が数年間続関係者によるATM不正引出し事件を1例に困窮する組員が別の組織間は元組員は就業できないという状態となるケや犯罪グルスも多く、辞めたくても辞めるプと手を組むこと、より巧妙で悪質い組員も存在する。辞犯罪に手を染める意向を示す組員よう対し支援すなった。また、暴力団によ集団万引きや支援制度サケやあさり、なまこの密漁、生活保護費設けようとす動きも見られるが詐欺一般人拳銃を担保は困窮す借金、結婚式場で売上金の窃盗、電気料金を抑え元組員ため対し「[[自業自得]]」とみメーターの違法改造す向きも多い上支援制度が暴力団困窮を理由利用される恐れも多見境な進展し犯罪を犯す事例が出ていない<ref name="クロ現 2018.5.28">{{Cite web |url=https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4136/index.html|title=貧困暴力団”が新たな脅威に|accessdate=2018-11-26 |date=2018-5-28|format=HTML|publisher=[[NHK]]}}</ref>
組員が暴力団を辞めても暴対法の規制が数年間続き、その間は元組員は就業できないという状態となるケースも多く、辞めたくても辞めることができない組員も存在する。辞める意向を示す組員に対し支援する動きや支援制度を設けようとする動きも見られるが、一般人には困窮する元組員に対し「[[自業自得]]」とみる向きも多い上、支援制度が暴力団に利用される恐れも多く進展していない。また、警察などの支援で離脱した元組員は、過去10年間で約6,120人。一方で、支援を受けて就労に至ったのは147人と約2%にとどまっている。「生活保護を受けたい」などと働く意欲のない者も多く、昔の仲間との関係が切れなかったり、無職のまま金に困って出戻りする例も少なくない。<ref name="sankei160410">{{Cite news |title=「助けてください」携帯代も払えません…組離脱者の悲痛な叫び、就労支援は暴力団“弱体化”のカギ|newspaper=産経WEST・産経新聞|date=2016-04-10|url=https://www.sankei.com/west/news/160410/wst1604100017-n2.html}}</ref>更に、暴力団を辞めたものの詐欺グループの誘いに乗って、詐欺犯罪をするなど、犯罪の世界に再び染める者もいる。
 
また、近年の暴力団構成員及び準構成員等の年齢構成は、40歳未満の層の減少が顕著であり、暴力団の高齢化が進んでいる。2014年末時点で、40歳未満は約26.3%(20歳未満:0.0% 20~29歳:5.1% 30~39歳:21.2%) 、40歳以上60歳未満は約51.7%(40~49歳:33.2% 50~59歳:18.5%)、60歳以上は約22.0%(60~69歳:15.8% 70歳以上:6.2%)であった。<ref name="npwp2017">{{Cite web |url=https://www.npa.go.jp/hakusyo/h27/honbun/html/rf111000.html|title=平成27年警察白書 特集 組織犯罪対策の歩みと展望 第1節 組織犯罪情勢の推移|accessdate=2018-11-26 |date=2015|format=HTML|publisher=[[警察庁]]}}</ref>これは、昭和63年末時点で、20歳未満の暴力団員が3,4千人、20歳代で2万3,4千人、30歳代で2万6,7千人であったのと比べると、20歳未満は約100分の1以下、20歳代は約17分の2、30歳代は約5分の2である。逆に、40歳以上は、40歳代で2万3,4千人、50歳以上で1万人であり、40歳代は約4分の3、50歳以上は2倍である。<ref>{{Cite web|url=https://www.npa.go.jp/hakusyo/h01/h010102.html|title=平成元年警察白書 第1章 暴力団対策の現状と課題-市民生活と経済活動を食い物にする犯罪組織- 第2節 暴力団の構造と活動|accessdate=2018-11-26|date=1989|format=HTML|publisher=[[警察庁]]}}</ref>
=== 暴力団関係者 ===
暴力団のメンバーを指す語として、「暴力団員」「構成員」、ならびに「組員」などがあり、いずれも同じ意味である<ref name="mizoguchi_2011_p14"/>。これらを含む「暴力団関係者」の他の例として、組に所属してはいないが組との関係を有し、組員と似たようなこと、あるいは組の[[スポンサー]]のようなことを行う者「準構成員」が挙げられる<ref>{{Cite book |和書 |author=溝口敦 |authorlink=溝口敦 |title=[[暴力団 (書籍)|暴力団]] |year=2011 |page=35 |chapter=「暴力団関係者」って誰? |publisher=[[新潮社]] |series=[[新潮新書]] |ISBN=978-4-10-610434-3}}</ref>。[[警察庁]]の定義によれば、準構成員とはすなわち、「構成員ではないが、暴力団と関係を持ちながら、その組織の威力を背景として暴力的不法行為等を行う者、または暴力団に資金や武器を供給するなどして、その組織の維持、運営に協力し、もしくは関与する者」となる<ref>{{Cite book |和書 |author=溝口敦 |authorlink=溝口敦 |title=[[暴力団 (書籍)|暴力団]] |year=2011 |page=34 |chapter=「暴力団関係者」って誰? |publisher=[[新潮社]] |series=[[新潮新書]] |ISBN=978-4-10-610434-3}}</ref>。ほか、準構成員よりさらに暴力団と距離を置く「暴力団関係者」を指す「共生者」という警察用語などがある<ref>{{Cite book |和書 |author=溝口敦 |authorlink=溝口敦 |title=[[暴力団 (書籍)|暴力団]] |year=2011 |page=36 |chapter=共生者と企業舎弟 |publisher=[[新潮社]] |series=[[新潮新書]] |ISBN=978-4-10-610434-3}}</ref>。
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指定暴力団の構成員は、他の暴力団よりも強い規制を受けることになる。暴対法第9条では、指定暴力団員が、指定暴力団の威力を示して行う27の「暴力的要求行為」を、規制する事ができる。また指定暴力団員以外の者が、指定暴力団の威力を示して行う同27の行為についても「準暴力的要求行為」として規制することができる。しかし、同じ行為を、非指定暴力団の構成員が、非指定暴力団の威力を示して行う場合については、暴対法の規制の対象とはされていない<ref>{{Cite web |url=http://www.botsui-hyogo.or.jp/taisakuho/taisakuho.html |title=暴力団対策法 |accessdate=2015-11-06 |work=知っておこう暴力団対策 |publisher=暴力団追放兵庫県民センター}}</ref><ref>{{cite news |url=http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG14H8G_U5A011C1CR8000/ |date=2015-11-07 |title=山口組分裂、新組織の指定急ぐ方針 国家公安委員長 |newspaper=[[日本経済新聞]] |accessdate=2015-02-10 }}</ref>。
 
2018年4月25日時点で以下の24団体が指定されている<ref name="npa2015npa2017"/><ref>{{Cite web |url=https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kikakubunseki/sotaikikaku01/h28.sotaijyousei.pdf |title=平成28年における 組織犯罪の情勢 |accessdate=2017-09-06 |format=PDF |publisher=警察庁}}</ref>。都道府県別に見ると全国最多は[[福岡県]]で、[[工藤會]]、[[道仁会]]、[[太州会]]、[[福博会]]、[[浪川会]]の5団体である<ref>{{cite news |url=http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/word/5882 |date=2009-06-07 |title=福岡県内の暴力団 |newspaper=[[西日本新聞]] |archivedate=2015-02-10 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20150210030254/http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/word/5882 |deadlinkdate=2017年10月 }}</ref><ref name=":0">{{Cite report |author=警察庁 |title=平成29年 警察白書 |url=http://www.npa.go.jp/hakusyo/h29/pdf/pdf/08_dai4syo.pdf |format=PDF |at=組織犯罪対策 |accessdate=2018-02-04}}</ref><ref name=":0" />。
{{-}}
{|class="wikitable sortable" style="text-align: left; background-color: #ffffff;"
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|}
*初回指定年月日>五十音順。組名・構成員数・代表者名は任侠山口組と関東関根組を除き『暴力団情勢と対策 2018年版』(暴力団追放センター)<ref>{{Cite web |url=http://fc00081020171709.web3.blks.jp/_src/3559542/jyousei_2018_01.pdf |title=暴力団情勢と対策 2018年版 |accessdate=2018-10-03 |format=PDF |publisher=暴力団追放センター}}</ref> 『平成2930年上半期における暴力団情勢』2224頁(警察庁)<ref name="H30.09">{{Cite web |url=httpshttp://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kikakubunseki/sotaikikaku02sotaikikaku04/h29kamih30kami.sotaijyouseisotaijousei.pdf |title=平成2930年上半期における暴力団情勢 |date=2018-09|accessdate=2018-0511-1726 |format=PDF |publisher=警察庁 |archiveurl=http://web.archive.org/web/20180517153759/https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/kikakubunseki/sotaikikaku02/h29kami.sotaijyousei.pdf |archivedate=2018-05-17 |deadlinkdate=2018-11-22}}</ref>による。代表者名の()内は通称、人数は準構成員を除く構成員のみ<ref>{{Cite web|urlname=https://www"H30.npa.go.jp09" /sosikihanzai/kikakubunseki/sotaikikaku03/h29.sotaijousei.pdf|title=平成29年における組織犯罪の情勢【確定値版】|accessdate=2018-10-04|format=PDF|publisher=警察庁}}</ref>
 
=== 指定が取り消されたか失効した団体 ===
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[[警察庁]]は、「[[半グレ]]」と呼ばれる元[[暴走族]]グループ等に関し、これらを想定した「準暴力団」という規定を新たに設けたうえで、2013年より実態解明の取り組みを始動させている<ref name="sankei130307">{{Cite news |title=半グレを「準暴力団」と規定 警察庁 東京、大阪で暗躍か |newspaper=[[MSN産経ニュース]] |date=2013-03-07 |url=http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130307/crm13030712150005-n1.htm |archiveurl=https://web.archive.org/web/20130315001144/http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130307/crm13030712150005-n1.htm |archivedate=2013-03-15}}</ref>。
 
「既存の暴力団のように組長をトップとする上下関係がはっきりしてはいないが、所属メンバーやOBが繁華街などで、集団で常習的に暴力的不法行為を行う、暴力団に準じる集団」がその定義で、先立つ2012年に東京で発生した「[[六本木クラブ襲撃事件]]」を機としての新設であった<ref>{{Cite web |author=緒方健二 |url=http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/2013040900006.html |title=「準暴力団」とは何だ |accessdate=2013-05-02 |date=2013-04-09 |website=[[WEBRONZA]]}}</ref>。警察庁によれば、この準暴力団で規定されるグループの一部は暴力団とも密接な関係を有するという<ref>{{Cite news |title=元暴走族集団の摘発強化へ 「準暴力団」と規定 |date=2013-03-07 |newspaper=[[47NEWS]] |agency=共同通信 |url=http://www.47news.jp/CN/201303/CN2013030701000954.html |archiveurl=http://web.archive.org/web/20131224092019/http://www.47news.jp/CN/201303/CN2013030701000954.html |archivedate=2013-12-24}}</ref>。2014年末現在、公表されている「[[関東連合]]OB」「[[怒羅権|チャイニーズドラゴン]]」「打越スペクターOB」「大田連合OB」を含め、8団体が準暴力団と見なされている<ref name="npa2015">{{Cite web |author=[[組織犯罪対策部]] |url=https://www.npa.go.jp/sosikihanzai/bouryokudan/boutai18/h27_jousei.pdf |title=平成27年の暴力団情勢 |accessdate=2016-04-03 |date=2016-02-25 |format=PDF |publisher=[[警察庁]]}}</ref>。
 
== 脚注 ==