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{{出典の明記|date=2018年11月}}
'''分子マシン'''(ぶんしマシン)、もしくは '''分子機械'''(ぶんしきかい、{{lang-en-short|molecular machine)machine}})は、ミクロスケール、あるいはナノスケールで制御された機械的動きを起こす[[分子]]、あるいは分子複合体である。
 
== 分子機械の分類と例 ==
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=== 生体分子機械 ===
'''生体分子機械'''は生体内に存在するタンパク質で、[[分子モーター]]とも呼ばれる。方向性のある動きによってなんらかの機能を発現する。
 
*[[ATP合成酵素]]
* [[ATP合成酵素]]
** タンパク質複合体が回転しながらATPを合成する
* [[ミオシン]]
** [[アクチンフィラメント]]の上を直線運動し、筋肉の収縮運動の元となる
* [[キネシン]]、[[ダイニン]]
** [[微小管]]の上を直線運動し、細胞内での物質輸送を担う
 
これらのように明らかな方向性を持ち、比較的大きな動きを起こす分子モーターでなくとも、多くの[[酵素]]はその広い領域での[[コンホメーション]]変化が起こることで機能を発現している。このことから、一般に酵素などのタンパク質のことを分子機械と呼ぶこともある。
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'''合成分子機械'''は[[有機化学]]的に合成された分子マシンであり、光、熱、[[水素イオン指数|pH]]変化、[[酸化還元]]などの外部刺激に応じて分子の構造が変化する。[[ナノテクノロジー]]の中で化学的な領域の一角を占めるものとして注目されている。
 
* [[ロタキサン]]や[[カテナン]]といった[[超分子]]的モチーフを用い、リングのひも上の位置(ロタキサンの場合)あるいは、二つのリング(カテナンの場合)の相対的な位置が刺激に応じて変化するもの
* 分子内の一部分が他の部分に対して一方向に回転する、あるいは回転のon/offを制御できるもの
* ゲスト分子・イオンに対する親和性が刺激(光・酸化還元・第三の物質の添加など)に応じたホスト分子の構造変化によって変化するもの
* ゲストとして捕えたイオンの捕られた位置が、刺激に応じて変化するもの
といった例が実現されている。
 
具体的には
 
* シャトル
** [[ロタキサン]]を用い、pH変化、光照射などによって環状部位がひも状部位の上を前後に動く。
* ギア
* ピンセット(tweezer)
* 回転ドア(turnstile)
* ローター
** 化学物質、あるいは光・熱刺激によって一方向に回転する「分子ローター」が作られている。
 
そもそも有機分子は多少なりとも[[コンフォメーション]]の自由度を持っており、分子の形状(=分子内での原子の相対座標)を変化させることができるため、合成分子機械を定義づける条件は定まりきっていない面もある。現時点では、
 
* 刺激に応答して、明確な方向性を持つ動きを起こす。
* 同じ動作を繰り返して起こすことができる(2種類・あるいはそれ以上の複数の状態の間を周期的に遷移できる)。
* 動きがなんらかの分光法によって観測できる。
という性質を持つ分子を分子機械と呼ぶことが多い。(たとえば、液体の[[トルエン]]一分子を見た場合、[[メチル基]]は[[ベンゼン環]]に対して回転しているはずであるが、一方向に回転させたり、回転のon/offを刺激に応答して変えたりというような「意味のある」ことを起こすことは難しいと考えられる。このように、分子の動きが制御できない場合は、分子機械とは呼べない。<ref>もちろん温度を変えることで分子内の回転速度は変化するが、これは他の分子でも一般的に見られる現象なので意味のある制御とは言い難い。</ref>)
 
という性質を持つ分子を分子機械と呼ぶことが多い。(たとえば、液体の[[トルエン]]一分子を見た場合、[[メチル基]]は[[ベンゼン環]]に対して回転しているはずであるが、一方向に回転させたり、回転のon/offを刺激に応答して変えたりというような「意味のある」ことを起こすことは難しいと考えられる。このように、分子の動きが制御できない場合は、分子機械とは呼べない。<ref>{{efn|もちろん温度を変えることで分子内の回転速度は変化するが、これは他の分子でも一般的に見られる現象なので意味のある制御とは言い難い。</ref>}}
 
=== 生体分子を人工的に改変した半人工分子機械 ===
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== 代表的な研究者 ==
分子機械はカテナン、ロタキサンといった「絡み合った分子」を用いた系が多く研究されていて、その分野の研究者が多い。2016年には「分子マシンの設計と合成」の先駆的な研究を行った3名の研究者に[[ノーベル化学賞]]が授与されることになった。
 
*[[:ジャン=ピエール・ソヴァージュ]](2016年ノーベル化学賞)
* [[フレイザジャン=ピエストッダソヴァジュ]](2016年ノーベル化学賞)
* [[ベルナルト・L・ェリンハレイザー・ストッダート]](2016年ノーベル化学賞)
* [[:ジャン=ピエーナルトソヴァージュL・フェリンハ]](2016年ノーベル化学賞)
*[[新海征治]]
* [[新海征治]]
* [[:w:David_Leigh_(scientist)|David Leigh]]
* [[:w:Vincenzo Balzani|Vincenzo Balzani]]
 
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
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== 関連項目 ==
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* [[分子ロボット]]
* [[ナノカー]]
 
== 参考文献 ==
<references />
 
== 外部リンク ==
* [http://www.org-chem.org/yuuki/rotaxane/machine.html ロタキサン(2)〜分子マシンへの挑戦〜] - ロタキサンを使った分子機械の例
**[http://www.org-chem.org/yuuki/rotaxane/machine.html ロタキサン(2)〜分子マシンへの挑戦〜]
 
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{{DEFAULTSORT:ふんしましん}}
[[Category:分子]]
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[[Category:分子生物学]]
[[Category:機械]]
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