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老朽化問題を国内外で分けて、日本について加筆。導入部の説明をやや丁寧にしたり、内部リンクを追加したりの記述整理。
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[[File:Akashi Bridge.JPG|thumb|300px|[[明石海峡大橋]]]]
 
'''橋'''(はし)、'''橋梁'''(きょうりょう)とは、[[谷]]などの[[地|地面]]やより低い位置を通る[[道路]]・[[鉄道路線]]、[[川]]・[[湖沼]]・[[海]]といっ[[水面]]よりもなどを跨ぐ形で、高い[[位置|場所]]に設けられた[[道]]である。
 
== 歴史 ==
=== 有史以前の橋 ===
橋の起源についてははっきりしたことは判らないが、偶然に谷間部分を跨いだ倒木や石だったと推測されている。その後人類が道具を使うようになってからは伐採した木で[[丸木橋]]が造られるようになった。また、木々に垂れ下がっている[[]]を編んだ[[吊橋]]の原型とされる蔓橋(つるはし)や、より長い距離を渡るために川の中で飛び出た石の頂部に丸木を渡したり自然石を積み上げて[[橋脚]]を築いたり、杭を打ち込んで橋脚にしたりした事も考えられている。
なお、[[日本語]]の「橋」という言葉は、道の'''はし'''に架けるものから由来しているとされる{{sfn|石井一郎|1987|p=85}}。
 
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[[File:Pont du Gard FRA 001.jpg|thumb|300px|[[ポン・デュ・ガール]]]]
 
[[紀元前5世紀]]から[[6世紀]]ごろには[[バビロン]]や中国で[[石橋|石造]]の[[桁橋]]が架けられていた。紀元前4000年ごろの[[メソポタミア|メソポタミア文明]]では石造[[アーチ橋]]が架けられている。紀元前2200年ごろ、バビロンでは[[ユーフラテス川]]に長さ 200 [[メートル|m]] の[[レンガ]]橋が架けられた。アーチ橋の架橋技術は、古代メソポタミア地方で発祥した技術が、東西に伝播して西洋と東洋それぞれ独自に発展したとする研究が<!--元工学博士の武部健一により-->発表されている{{sfn|武部健一|2015|p=9|ps=、武部「アーチは東漸したか」『第九回日本土木史研究発表会論文集』より孫引き。}}。
 
[[古代ローマ|ローマ時代]]に道路網の整備に伴い各地に橋が架けられ、架橋技術は大きく進歩した。現存する水道橋は驚異的な精度を持っている。[[ローマ教皇]]は英語で「ポープ」と呼ばれるが、この「Pope」の正式名称である「最高司教:Pontifex maximus」の前半部は「橋:Ponti」と「つくる:fex」から成り立っている。この名前が示すように、古代ローマ時代には橋を架けることは聖職者の仕事であった。中国や日本でも橋は[[仏教]]僧侶が架けることが多かった<ref name = "橋 HASHI">大野春雄監修『橋 HASHI なぜなぜ読本』山海堂 2000年5月20日 第1版第3刷発行</ref>。
 
日本での記録に残っている最古の橋は、『[[日本書紀]]』によると[[景行天皇]]の時代に現在の[[大牟田市]]にあった御木のさ小橋(みきのさおはし)である。巨大な倒木による丸木橋とされている。人工の橋では同じく『日本書紀』によると[[324年]]([[仁徳天皇]]14年)に現在の[[大阪市]]に[[猪甘津橋]](いかいつのはし)が架けられたのが最古とされている{{sfn|武部健一|2015|p=25}}{{sfn|浅井建爾|2001|p=212}}。また、[[624年]]([[推古天皇]]32年)に[[道昭]]が京都の宇治川に[[宇治橋 (宇治市)|宇治橋]]を、[[726年]]([[神亀]]3年)には[[行基]]が[[山崎橋 (山城国)|山崎橋]]を架けるなど、古くは僧侶が橋を架けたことが知られている{{sfn|浅井建爾|2001|p=212}}。これは僧侶が[[遣隋使]]や[[遣唐使]]として中国に渡り技術を学んできたことや、救済の一環として土木事業を指導したことによる。一方、当時の[[律令政府]]は[[勢多橋]]などの[[畿内]]の要所を例外とすれば、橋の築造には消極的であった。『[[日本紀略]]』の[[延暦]]20年([[801年]])5月甲戌条には、河川に橋がないことで[[庸]]の搬送が困難な場合には、そのたびに[[舟橋]]を架けるように命じている。
 
=== 中世ヨーロッパの橋 ===
[[ローマ帝国]]が滅んだ後の[[中世ヨーロッパ]]では、優れた土木技術は失われてしまった。このため、流失した橋には再建されず放棄されたものも多い。
依然石造りのアーチ橋は造られていたが、この時代に橋を架けたのは[[聖職者]]だった。
 
戦乱の続いた時代では橋は戦略上重要な拠点となるため、守備用の塔が付属して建てられたり、戦時に簡単に壊せるようになってものりした橋も多い。
[[ルネサンス]]期になると扁平アーチが開発され、軽快な石橋が建設されるようになった。
 
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[[File:Hiroshige le pont Nihonbashi à l'aube.jpg|thumb|[[歌川広重]]『[[東海道五十三次]]』より「[[日本橋 (東京都中央区)|日本橋]]」]]
 
[[律令制]]衰退弛緩とともに交通路も衰退し、橋の整備も資力や技術に乏しい現地にゆだねられたため、架橋技術は発達しなかった。更に治水技術の未熟からしばしば発生した雪解けや大雨に由来する増水にも弱く、船橋のような仮橋や[[渡し船]]による代替で間に合わされるケースが多かった。こうした傾向は[[江戸時代]]末期まで続き、江戸時代に多くの大河川に架橋がされなかったのも、実際には軍事的な理由とともに技術的要因による部分も大きかった。
 
そうした中でも特徴的な架橋の例はあり、[[鎌倉時代]]においては僧侶の勧進活動の1つとして、[[重源]]による瀬田橋や[[忍性]]による宇治橋の再建などが行われた。これは人々の労苦を救うとともに架橋を善行の1つとして挙げた[[福田思想]]の影響によるところが大きいとされている。安土桃山時代から江戸時代に入ると、都市部や街道においてようやく橋の整備が進められるようになった。江戸時代の大都市には[[江戸幕府|幕府]]が管理した橋と町人が管理して一部においては渡橋賃を取った橋が存在し、江戸では「御入用橋」「町橋」、大坂では「[[公儀橋]]」「町人橋」と称した。また、江戸時代以前の日本では木造の橋がほとんどであったが、九州や琉球では大陸文化の影響を受け、明出身の僧侶[[如定]]による[[長崎市|長崎]]の[[眼鏡橋 (長崎市)|眼鏡橋]]の造営をはじめとする石造りの橋が多く作られるようになり、江戸時代末期に作られた[[肥後国]]の[[通潤橋]]は同地方の石工らによって様々な工夫がされたことで知られている{{sfn|浅井建爾|2001|p=212}}。また、石積みの橋桁と木製のアーチを組み合わせた[[周防国]][[岩国市|岩国]]の[[錦帯橋]]など、中小河川における架橋技術の発達を示す例が各地でみられるようになった。
 
この他、[[八橋]]と言って、川底が浅い場所に杭を打ち、その杭の間に板を渡すという方法で作られたために、川の途中で曲がりくねった構造をした木造の橋が作られたこともあった。なお、2016年現在時点の日本においても「八橋」と言う地名が残っている。
 
=== 産業革命後の橋 ===
[[File:The world's first iron bridge.jpg|thumb|[[アイアンブリッジ (橋)|アイアンブリッジ]]]]
 
[[18世紀]]末期から[[19世紀]]にかけて、[[産業革命]]によって生産量が増えた[[鉄]]を用いた橋が出現する{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。鉄の出現量産により橋梁技術が飛躍的に向上し、橋脚と橋脚の間隔を示す支間長(スパン)が大幅に伸びて長大橋が建設されるようになる{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。初めは[[銑鉄]]を用いた全長30 mの橋が[[イギリス]]で架けられたが、製鉄技術の改良により[[鋼]]を用いた橋が誕生する{{sfn|石井一郎|1987|p=86}}。[[1873年]]には[[鉄筋コンクリート]]を用いた橋が[[フランス]]で初めて架けられ、その後全世界に普及する{{sfn|石井一郎|1987|p=86}}。日本で最初の鉄橋は、[[1868年]]([[慶応]]4年)に長崎の[[眼鏡橋 (長崎市)|眼鏡橋]]が架かる[[中島川]]の下流に[[オランダ人]]技師の協力を得て架けられた[[くろがね橋]]である{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。純日本国産の鉄橋第1号は、[[1876年]]([[明治]]11年)に東京の[[楓川]]に架けられた[[楓川#楓川に架かる橋|弾正橋]]であり{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}、鋼橋としては、[[1888年]](明治21年)に完成した[[東海道本線]]の天竜川橋梁が日本初である{{sfn|浅井建爾|2001|p=221}}。さらに鉄道網の進展、[[自動車]]の普及と交通量の変化に合わせて重い[[活荷重]]に耐えられる橋が要求されるようになって、[[1900年代]]に入ってから鉄筋コンクリート製の橋も造られるようになった{{sfn|浅井建爾|2001|pp=212,221}}。また、経済の急速な発展に伴い、経済的で短い工期が重視された。
 
=== 現代の橋 ===
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[[ファイル:Car to inspect the bridge,Katori-city,Japan.jpg|サムネイル|右|橋の下まわりを点検するために開発された橋梁点検車。]]
さらに、橋の建設には大きな金額がかかること、[[高度経済成長期]]に大量に建設された橋が老朽化しつつあることから、長期的な視点での安全性、経済性の確保が重要となっている。かつては橋の定期点検が十分に行われていなかったため、老朽化を要因とする事故が相次いだ。[[2007年]]([[平成]]19年)11月には[[吉野川]]水系の[[日開谷川]]の支流の1つである[[大影谷川]]にかかっていたトラス橋が、自動車通過中に落橋するという事故が起きた<ref>[http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20071219/514427/ トラス橋が車の通過中に崩落、香川と徳島の県境で]</ref>。この事故後の調査で、この橋も定期的な管理がなされていなかったことが判明した<ref>[http://www.nikkei.com/news/print-article/?R_FLG=0&bf=0&ng=DGXNASFK1701N_X10C14A6000000&uah=DF250520127861 誰も管理しない橋、コンクリ落下で「発見」相次ぐ]</ref>。
 
こうした事故を受け、[[2012年]](平成24年)に[[道路法]]が改正され、道路管理者は管理する全ての橋梁について、5年に1度近接による目視で点検を行い、健全性を診断することになった。橋の定期点検は、橋の安全性の確保のほか、点検結果を元に橋梁長寿命化修善計画を策定することで、橋の計画的な長寿命化及び更新を図ることになり、[[公共事業]]費の増大を防ぐことにつながっている。
 
{{Main2|日本の道路橋に対する技術基準の変遷については、[[道路橋示方書]]を}}
 
== 一般的な構造 ==
[[FIle:Bridge structure 2 NT.PNG|thumb|250px|断面(道路橋)<br/>1.全幅(ぜんぷく) 2.有効幅員(ゆうこうふくいん) 3.高欄(こうらん) 4.地覆(じふく) 5.[[歩道]]、歩道幅員 6.[[縁石]](えんせき) 7.[[路肩]](ろかた)、路肩幅員 8.[[車道]] 9.舗装 10. 床版(しょうばん)11.主桁]]
[[File:Bridge structure NT.PNG|thumb|250px|側面 <br/>1.橋長(きょうちょう) 2.支間(しかん) 3.橋桁(はしげた) 4.支承(ししょう) 5.橋台(きょうだい) 6.杭基礎 7.橋脚(きょうきゃく) 8.[[ケーソン]]基礎 9.直接基礎 10.上部構造(じょうぶこうぞう) 11.下部構造(かぶこうぞう)]]
=== 上部構造 ===
上部構造は、床構造と主構造から成り立つ{{sfn|藤原稔|2010|p=3}}。床構造は[[床版]](しょうばん)や[[床組]](ゆかぐみ)によって形成され、通行する[[交通]]を支える役目を持つ{{sfn|藤原稔|2010|p=3}}。主構造は[[主桁]]など、床構造を支えて荷重を下部構造に伝達する役割がある{{sfn|藤原稔|2010|p=3}}。
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*[[File:Arch bridge.png|thumb|アーチ橋]][[アーチ橋]] - 上向きの弧([[アーチ]])を用いた橋で、アーチ(アーチリブ)には大きな圧縮力と比較的小さな曲げモーメントが作用する。コンクリートや鋼あるいは木のほかに、近代以前では[[岩石|石]]がよく用いられていた。深い渓谷など、橋脚を造ることが困難な場所で採用されることが多い形式{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。
{{-}}
*[[File:Rigid frame bridge.png|thumb|ラーメン橋]][[ラーメン橋]] - [[橋脚]]と[[主桁]]が剛に結合された骨組([[ラーメン (骨組)|ラーメン]])構造を用いた橋。ラーメンはドイツ語 Rahmen (鋼節骨組)に由来する{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。部材には軸力、せん断力と曲げモーメントが作用し、材料としてはコンクリートあるいは鋼が用いられる。構造力学の観点からは、ラーメン構造は力のい方程式の数より未知反力の数の方が多い[[不静定]]構造である。これにより過大な荷重によってある部材が大きく変形しても落橋は免れたり、橋脚上に支承がなく上部構造がずれ落ちたりすることがないため耐震性の高い構造と考えられている。あまり一般的ではなく、[[高速道路]]を跨ぐなどごく一部でられる形式{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。
{{-}}
[[File:SyachokyoVsTsuribashi.png|thumb|斜張橋と吊り橋]]
*[[吊り橋]] - [[ケーブル]]、[[ロープ]]など曲がりやすいが引張強度が大きい部材から桁あるいは床版を吊り下げた橋を呼ぶ。近代以降の大規模な吊橋は、両岸に大きな質量を持つ[[アンカーブロック]]やアンカレイジと呼ばれる[[橋台]]とその橋台の間に2本以上の[[主塔]]を設け、その間に張り渡したケーブルから通行路となる桁を吊り下げる形式を採る。このような吊橋では、桁および荷重の全ては、ケーブルおよびケーブルから下げられたハンガーが受け持つため、桁自体は通行路として橋の形状を保つ程度の剛性があれば十分なことから[[補剛桁]]と呼ばれる。ケーブルには引張力、主塔には圧縮力が作用する。アンカレイジはケーブルに生じる引張力に対してその質量および底面の摩擦力によって抵抗する。なお、主塔とケーブルが接触する主塔頂部のサドルの形状を固定式とする場合、荷重の偏在によっては主塔に曲げ応力が生じる場合があるので留意する。ケーブルには高強度の鋼、主塔には鋼やコンクリートが主に用いられる。橋台から床版を直接吊り下げる「吊床版橋」がある。アンカレイジを用いず桁の両端でケーブルを固定する「自碇式吊橋」「自定式吊橋」という形式もあるが、橋桁に大きな圧縮力が働くので設計が複雑になる。
*[[斜張橋]] - 吊り橋の一種で、支点となる主塔から斜めに張ったケーブルで橋桁を吊ったもの{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。主塔上部から斜めに伸びた多数のケーブルが橋桁などの鉛直荷重を受け持つとともに、桁に対して圧縮力となる軸力を導入する。ケーブルには引張力が生じるため、鋼製。主塔には圧縮力がはたらき、桁には曲げ[[モーメント]]と軸力が作用するため、コンクリートが用いられることが多いが、軟弱地盤の場合は主塔にも鋼構造が用いられる。また、[[多々羅大橋]]のように、主塔の設置箇所の制限から、中央径間と側径間との延長のバランスが悪い場合、主塔に曲げ応力が生じるのを回避するため、単位長さ重量の大きいコンクリートと小さい鋼とを組み合わせた複合構造を用いることもある。ケーブルの張り方によって、主塔側面の異なった高さから斜め平行に張られる「ハープ」と主塔上部の一点から放射線状に張られる「ファン」の2つの形式があるほか、張る面を桁中央(道路の場合は中央分離帯)に寄せる1面吊り、桁側端に分離する2面吊り、1面に2条近接させる形式等、さまざま様々なバリエーションがある。<ref name = "橋 HASHI"/>。美観に優れることから、近年採用例が増えつつある{{sfn|浅井建爾|2001|pp=214-215}}。
*[[エクストラドーズド橋]] - 外ケーブルを用いたプレストレストコンクリート橋の一種。比較的高さの低い主塔から斜材(外ケーブル)により主桁を支持する構造。外ケーブルが構造断面の外側に飛び出していることから大偏心外ケーブル構造とも呼ばれる。外観は斜張橋に類似しているが、主桁の剛性が高く構造としては桁橋に近い。また、斜材ケーブルの角度が小さいことから、[[活荷重]]の影響によって斜材の張力変動が小さく疲労に対して有利であり、斜張橋に比べ斜材ケーブルの張力を高く取ることができる。さらに低い主塔と相まって、建設コストを低く抑えることができ、近年は鉄道、道路を問わず、採用例が増加している。
 
=== 材料別 ===
主要構成部材の材料により、以下のような種類がある。鋼橋やコンクリート橋などは、[[昭和]]30年代頃から「永久橋」と呼ばれた<ref>{{PDFlink|[http://www.mlit.go.jp/common/001036084.pdf Ⅱ.道路の老朽化対策の本格実施に向けて]}}(国土交通省)</ref>。
* [[鋼橋]] - 上部構造に[[鋼]]を用いた橋。鋼は[[比強度]]が高く、弾力性に富む<ref name=":0">{{Cite web|url=http://www.pref.tokushima.jp/bridge/about/|title=橋の博物館とくしま 橋の種類・構成|accessdate=2018-02-10|publisher=徳島県道路整備課機能再生・管理担当}}</ref>。[[錆|発錆]]を防止するため[[塗装]]が必要<ref name=":0" />。
* [[鉄橋]] - 上部構造に[[鉄]]を用いた橋。現在では厳密にいう鉄を用いた橋は少ないが、鋼橋を指していうことが多い。[[鉄道橋]]と混同されることもある。
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* [[木橋]] - [[木材|木]]を用いた橋。橋の材料として古来から用いられており、現在でも人道橋など荷重強度が小さな橋を中心に架設例がある<ref name=":0" />。特に[[1990年代]]以降は、従来の無垢材に加えて[[集成材]]の利用が進み、以前の伝統的木橋と区別して「近代木橋」と呼ばれることもある。このほか、鉄筋コンクリートや鋼材、[[繊維強化プラスチック]]などとの複合橋も架設されている。橋梁形式としては、桁橋、トラス橋、アーチ橋を中心に各種の形式がある。
* [[土橋]] - 木橋の橋面を丸太で作り、上を土でならした橋。簡素である。
* [[氷橋]] - 「すがばし」と読む。[[北海道]]開拓の初期から[[第二次世界大]]後にかけて見られた。凍結した川に丸太や枝などを敷いて雪を載せ、水をかけて凍らせる氷でできた橋。[[穂別町]]の例では、丸太を積載した[[馬橇]]が通行できる大型の橋も存在した<ref>{{Cite book |和書 |author=菅原昭二「十四歳の丸太馬搬」|year=2014 |title=穂別高齢者の語り聞き史(昭和編)大地を踏みしめて 上|page=p274 |publisher=穂別高齢者の語りを聞く会 }}</ref>。
* [[石橋]] - [[岩石|石材]]を用いた橋の総称<ref name=":0" />。石材は引張力に対して弱い一方で、圧縮力に対して強いため、主にアーチ橋で用いられる{{sfn|石井一郎|1987|p=87}}。
* [[複合橋]] - 異種材料や異種部材による[[合成構造]]あるいは[[混合構造]]を用いた橋。一般には、鋼部材とコンクリート部材を組み合わせた上部形式を指す。
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道路と鉄道の双方を渡す橋もあり、'''[[鉄道道路併用橋]]'''(併用橋)と呼ばれる。
 
橋を用いなくても道が引ける場所に、あえて橋を設けている物を[[高架橋]]という。これは道への不要な侵入や接触を避けるためや、景観のために設けるものである。(「[[立体交差]]」も参照)
 
==== 水上交通 ====
水路橋のうち、特に[[運河]]を立体交差させて[[河川舟運]]に用いる橋。ヨーロッパで多く見られる。
 
現在、世界最長とされるのは[[ドイツ]]の[[マクデブルク]]にあるマクデブルク水路橋([[:de:Wasserstraßenkreuz Magdeburg]])で全長918m918m、[[エルベ川]]を跨いでハーフェル運河とミッテルラント運河を接続する。なお、ミッテルラント運河は[[ミンデン (ノルトライン=ヴェストファーレン)|ミンデン]]でも[[ヴェーザー川]]を渡っている。
 
==== 輸送用 ====
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* [[鉄道道路併用橋]] - [[鉄道]]と[[道路]]が一つの橋を共用するもの。
* [[橋上店舗]] - 川に架かる橋の上が店舗になっているもの。日本に現存するものでは[[渋谷川]]の上にある[[東急百貨店]]東横店東館がその代表例である。
* [[橋上市場]] - [[岩手県]][[釜石市]]の[[鈴木東民]]市長の主導により、[[河川法]]の特例許可を受けて[[甲子川]](地元では大渡川と呼ばれた)に架かる大渡橋に並行する形で[[1958年]]([[昭和]]33年)に完成した全長 110 m 、全幅 13 m の市場。[[1965年]](昭和40年)の河川法改正により営利目的の河川占有が認められなくなり、市場内店舗は[[2003年]](平成15年)1月5日に全店閉店、代替施設として建設された「駅前橋上市場 サン・フィッシュ釜石」へ移転し、その後解体された<ref>[[鎌田慧]]『反骨 鈴木東民の生涯』(講談社, 1989年)</ref><ref>[[サンデー毎日]](2003年3月2日号)「消えゆく光景・釜石橋上市場」</ref>。
* [[ループ橋]]
* [[門橋]] - [[陸軍]]が河を渡る際に使用。
* [[流れ橋]] - [[洪水]]の際に、橋桁が流される構造の橋。[[上津屋橋]]など。
* 八つ橋 - 公園施設などで池の上に折れ曲がる形(あるいは四方八方に延びる形)で設置される木製の橋。
* 架橋機材 - 分解・折りたたみ式の橋桁と必要な物品をトラックなどで運搬できるようにした機材。災害などで橋が破損し通行できない場合に臨時で架設する。軍事目的での利用も多い([[07式機動支援橋]]など)。
** [[架橋戦車]] - [[戦車]]の[[シャーシ]]に[[橋梁]]を乗せることで目的地まで自走できる橋。
 
195行目:
* [[ソコルル・メフメト・パシャ橋]]([[ボスニア・ヘルツェゴビナ]]/[[ドリナ川]])- [[ミマール・スィナン]]の橋(16世紀)。『[[ドリナの橋]]』の舞台。[[世界遺産]]。
* [[スタリ・モスト]](ボスニア・ヘルツェゴビナ/[[ネレトヴァ川]])- ミマール・スィナンの門下生が手がけたとされる橋(1566年)。世界遺産。
* [[来遠橋]]([[ベトナム]][[クアンナム省]][[ホイアン]]/トゥボン川水路) - 日本人商人がかけたとされる橋(1593年)。世界遺産の一部。
* [[アイアンブリッジ (橋)|アイアンブリッジ]](コールブルックデール橋)([[イギリス]]・[[アイアンブリッジ峡谷]]) - 世界初の鉄橋。アーチ橋([[1779年]]。[[世界遺産]]。
* [[フォース橋]](イギリス/[[フォース湾]]) - トラス橋([[1890年]])。世界遺産。
* [[ビスカヤ橋]]([[スペイン]]/[[ネルビオン川]])- 世界最古の[[運搬橋]](1893年)。世界遺産。
* [[タワーブリッジ]](イギリス、[[ロンドン]][[テムズ川]]) - 近代吊り橋の原点。吊り橋([[1894年]])
* [[ハーバーブリッジ]]([[オーストラリア]]、[[シドニー]]) - 完成当時世界最長のシングルアーチ橋([[1932年]])
* [[ゴールデン・ゲート・ブリッジ]]([[サンフランシスコ]]) - サンフランシスコのランドマークとなっている吊り橋([[1937年]])
* [[ノルマンディー橋]]([[フランス]]/[[セーヌ川]]) - 完成当時世界最長の斜張橋([[1995年]])
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* [[日本橋 (東京都中央区)|日本橋]](東京都[[中央区 (東京都)|中央区]]) - [[東海道]]の起点とした経緯から[[重要文化財]]に指定されている。
* [[通潤橋]](熊本県[[山都町]]) - 日本では珍しい巨大な石造アーチ水道橋。[[重要文化財]]に指定されている。
* [[かずら橋]]([[徳島県]]の山間部各地) - 植物([[サルナシ]])のつる[[蔓]]で架けられた[[吊り橋]][[祖谷渓]]のかずら橋は[[重要有形民俗文化財]]に指定されている。<!--* [[新木津川大橋]]([[大阪市]])- アーチ橋として完成当時日本最長。-->
* [[萬代橋]](新潟県[[新潟市]]/[[信濃川]]) - [[花崗岩]]による重厚なアーチ橋で、意匠・記述性を評価され[[重要文化財]]に指定されている<ref>{{Cite web|url=http://www.hrr.mlit.go.jp/niikoku/info/bandaibashi/process.html|title=重要文化財萬代橋 重要文化財の経緯|publisher=[[国土交通省]]北陸地方整備局新潟国道事務所|accessdate=2018-03-12}}</ref>。
* [[生地中橋]](いくじなかばし) - [[富山県]][[黒部市]]生地の[[黒部漁港]]に架かる可動橋。昭和期に黒部漁港拡張のために動力昇降式可動橋となり、後に現在の旋回式可動橋に架け替えられた。これは日本では最初であり、世界でも珍しい。
 
==メンテナンス・老朽化問題と対策==
鋼やコンクリートで作られたいわゆる「永久橋」といえども、定期的に点検や補修を加えないと部材の腐食やひび割れが進行するほか、[[耐用年数]]が近付くまたは超過すると部材そのものの劣化が進行して極端な場合には崩壊に至る。
 
===日本===
[[アメリカ合衆国]]では、1920年代以降に造られた橋梁をはじめとした近代的なインフラが[[1980年代]]に耐用年数を超え始め、使用に制限を加えざるを得ないなど社会問題化したことから、積極的にインフラの老朽化対策が進められるようになった<ref>{{Cite web |date= |url= http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h25/hakusho/h26/html/n1132000.html|title=社会インフラの維持管理をめぐる状況 「荒廃するアメリカ」とその後の取組み |publisher=国土交通省 |accessdate=2018-08-25}}</ref>。
[[日本]]2020年代以降、[[高度成長期]]に建設された橋梁をはじめとした[[インフラストラクチャー]]の供用年数が50年を超え、後述の[[アメリカ合衆国]]同様に耐用年数が問題となる時期に差し掛かる<ref>{{Cite web |date= |url=https://www.pwri.go.jp/caesar/overview/02-01.html |title= 橋を取り巻く交通環境と進行する高齢化|publisher= 国立研究開発法人 土木研究所|accessdate=2018-08-25}}</ref>ため、政府は2013年よりインフラの長寿命化計画を立案し、順次必要なメンテナンスを進めている<ref>{{Cite web |date= 2013-11|url=http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/infra_roukyuuka/pdf/houbun.pdf |title=インフラ長寿命化基本計画 |publisher=インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議 |accessdate=2018-08-25}}</ref>。
 
地方の小規模な橋では、建設年の記録が残っていない例もある。人口減少が著しい地域([[過疎地域]])では、架け替えや補修に必要な財政負担に見合う通行者数や自動車交通量が今後見込めないため、管理する自治体が撤去を決断する橋も多い。[[国土交通省]]の2018年時点集計では、撤去・廃止が決まった橋は全国で137カ所ある<ref>[https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38035750R21C18A1EA4000/ 老朽で「廃橋」全国137ヵ所/改修断念、地方多く/人口減、利用頻度見極め]『日本経済新聞』朝刊2018年11月25日(6面)2018年11月29日閲覧。</ref>。
[[日本]]は、2020年代以降、[[高度成長期]]に建設された橋梁をはじめとしたインフラの供用年数が50年を超え、アメリカ同様に耐用年数が問題となる時期に差し掛かる<ref>{{Cite web |date= |url=https://www.pwri.go.jp/caesar/overview/02-01.html |title= 橋を取り巻く交通環境と進行する高齢化|publisher= 国立研究開発法人 土木研究所|accessdate=2018-08-25}}</ref>ため、政府は2013年よりインフラの長寿命化計画を立案し、順次必要なメンテナンスを進めている<ref>{{Cite web |date= 2013-11|url=http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/infra_roukyuuka/pdf/houbun.pdf |title=インフラ長寿命化基本計画 |publisher=インフラ老朽化対策の推進に関する関係省庁連絡会議 |accessdate=2018-08-25}}</ref>。
 
===海外===
[[アメリカ合衆国]]では、1920年代以降に造られた橋梁をはじめとした近代的なインフラが[[1980年代]]に耐用年数を超え始め、使用に制限を加えざるを得ないなど社会問題化したとからのため、積極的にインフラの老朽化対策が進められるようになった<ref>{{Cite web |date= |url= http://www.mlit.go.jp/hakusyo/mlit/h25/hakusho/h26/html/n1132000.html|title=社会インフラの維持管理をめぐる状況 「荒廃するアメリカ」とその後の取組み |publisher=国土交通省 |accessdate=2018-08-25}}</ref>。
 
[[イタリア]]では、2018年に[[モランディ橋]]が崩壊した際、設計の不備が疑われたほかメンテナンスが追い付いていないことも問題となった。また、イタリア国内において過去5年間(2013年-)に10カ所の高架橋が崩壊していたことも報道されている<ref>{{Cite web |date= 2018-08-16|title= イタリア・高架橋崩落 過去5年間に10件|url=http://www.news24.jp/articles/2018/08/16/10401581.html|publisher= 日テレ24|accessdate=2018-08-25}}</ref>。