「ベストエフォート」の版間の差分

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RWINについて「100Mbps以上の帯域を消費することはまれである」とあるが他の記事の実測値と異なるため独自研究として削除
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'''ベストエフォート'''({{Lang-en|best effort}}、最善努力)とは、最大の結果を得られるよう努力することをいう。通常、[[委任]]契約等における受任者の負うべき義務を規定する場合に使われる用語で、そのような努力がなされないときは債務不履行責任を負うものの、そのような努力がなされたうえは、結果に対する責任を負わないことを定める際に用いられる。
 
[[コンピュータ]]のベストエフォートとは、利用者の操作によるデータの要求がシステムが処理できる量を超えても明示的なエラーの通知も再処理もしない方式を意味する技術用語である。通常、能力を超えた[[パケット通信]]要求は、黙って捨てら破棄される。
 
== 通信事業者 ==
[[電気通信役務|電気通信サービス]]には、全ては挙げないがおおまかに以下のようなものがある。
[[電気通信役務|電気通信サービス]]が「ベストエフォート型」を標榜する場合、網の能力を超えたトラフィックが入力された場合に、超過分のパケット通信が捨てられる仕組みを意味する。[[電気通信事業者]]が「いかなる意味でも品質に関する義務を負わないこと」と解している。
*[[ブロードバンドインターネット接続]](パソコン)
*[[モバイルブロードバンド]] (スマートフォン・タブレットなど)
*[[日本における携帯電話|携帯電話]]
 
これらの契約には、「ギャランティ型」という契約者がネットワークを占有する契約と、本記事で解説する「ベストエフォート型」ではネットワークの設備が共有されるというものがある<ref name="通信速度表示"/>。
顧客に対し、通信規格上の最高速度のみを[[広告]]する行為は、単に[[信義則]]に反するだけではなく、顧客の期待とサービスの実態とを乖離させるため、[[不当景品類及び不当表示防止法]]で禁止される『[[優良誤認]]表示』となる。事業者は、通信規格上の最高接続通信速度であり、提供可能な実効通信速度ではないことを注意喚起することとなっている。
 
[[電気通信役務|電気通信サービス]]が「ベストエフォート型」を標榜する場合、ネットワークの能力を超えたトラフィックが入力された場合に、超過分のパケット通信が捨てられる仕組みを意味する。[[電気通信事業者]]が「いかなる意味でも品質に関する義務を負わないこと」と解している。
[[ブロードバンドインターネット接続]]・[[モバイルブロードバンド]]・[[日本における携帯電話|携帯電話]]では、同一の規格でも、実効速度が事業者や地域・場所によって違い、同料金を支払っている契約者の中で、契約履行の公平性を失った[[無線パケット通信]]サービス提供となり、[[消費者]]トラブルとなる。そのため、[[総務省]]が「移動系通信事業者が提供するインターネット接続サービスの事業者共通の実効速度計測手法及び利用者への情報提供手法」が定められ、サービス品質を実測し、その結果を広告することとなった<ref>{{cite press release|url=http://www.soumu.go.jp/main_content/000358884.pdf|title=移動系通信事業者が提供するインターネット接続サービスの実効速度計測手法及び利用者への情報提供手法等に関するガイドライン(案)|publisher=総務省|date=|accessdate=2015-10-26}}</ref>。
 
顧客に対し、通信規格上の最高速度のみを[[広告]]する行為は、単に[[信義則]]に反するだけではなく、顧客の期待とサービスの実態とを乖離させるため、[[不当景品類及び不当表示防止法]](景品表示法)で禁止される[[優良誤認]]表示』となる。事業者は、通信規格上の最高接続通信速度であり、提供可能な顧客の期待とサービスの効通信速度では態が異いことを注意喚起すことような表示となっている。
 
;電気通信サービスの広告表示に関する自主基準及びガイドライン
 
2003年12月には、「電気通信サービス向上推進協議会」(TELESA、事業者の協会で構成)が自主基準を策定し、宣伝広告において、ベストエフォートについてはサービス品質が環境によって変化しうることを明瞭に表示する、「最高品質」などといった場合は客観的事実に基づくよう求めた(また料金広告など)<ref>{{cite web |author=永沢茂 |title=広告における「ベストエフォート」表示などで業界が自主基準策定 |url=https://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2003/12/15/1503.html |date=2003-12-15 |publisher=Internet Watch |accessdate=2018-12-1}}</ref>。2007年にはこのガイドラインの改定のための案を示し、再び虚偽・誇大広告に気をつけ、客観的な事実に基づく点を示した<ref>{{cite web |author=吉澤亨史 |title=電気通信サービス広告の自主基準とガイドライン改訂で意見を募集 |url=https://japan.cnet.com/article/20349250/ |date=2007-5-22 |publisher=CNET Japan |accessdate=2018-12-1}}</ref>。しばしば改訂されている。
 
;移動系通信事業者が提供するインターネット接続サービスの実効速度計測手法及び利用者への情報提供手法等に関するガイドライン
 
実効速度が事業者や地域・場所によって違うことが、[[消費者]]トラブルとなりうる。とりわけ、スマートフォンにおける理論上の最高速度の表示が高速化するにつれ、消費者からの苦情が増加した。2015年までに総務省が研究会を開催し、実際の速度、「実行速度」を広告に利用するための議論がなされた。2016年には総務省のガイドラインに従った1500地点での計測がNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクによってなされた。これをTELESAが監督する。<ref name="通信速度表示"/>。
 
消費者から寄せられた苦情は「LTEサービスで150Mbps(最高速度)とされているが、動画が遅延して表示される(実行速度の結果)」といったものである<ref name="格安スマホの実効速度"/>。総務省が電気通信事業を管轄しており、苦情は[[国民生活センター]]や、市役所などに設置されている[[消費生活センター]]にも寄せられる。
 
*下り最大150Mbps 、 実行速度 42.5Mbps - 103Mbps<ref>{{cite web |author=田中聡 |title=3キャリアが通信の「実効速度」を公開――総務省のガイドラインに基づき測定 |url=http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1601/05/news119.html |date=2016-1-5 |publisher=ITmedia Mobile |accessdate=2018-12-1}}</ref>。
 
伴って、こうした主要キャリアの回線を利用している[[仮想移動体通信事業者|MVNO]]他社は、こうした最高速度の広告宣伝をやめていった<ref name="通信速度表示"/>。最大速度を宣伝したければ、、実行速度も併記するというガイドラインができたことが理由で、各社も計測の準備を行っている<ref name="格安スマホの実効速度">{{cite web |author=榊原康、玄忠雄 |title=格安スマホの実効速度はどう測る?総務省による実証実験が始動へ |url=https://tech.nikkeibp.co.jp/it/atcl/column/17/052400211/053000006/ |date=2017-5-31 |publisher=日経XTECH |accessdate=2018-12-1}}</ref>。
 
===違反例===
そうした中で2017年にはMVNOの[[FREETEL]]が消費者庁によって命令措置を受けた。理由は「業界最速」「販売数1位」とウェブサイトで広告したことについて、特定地点での12時台の結果であったことや、グラフの数値が異なっていたこと、特定の電気販売店での販売数であったことなど。<ref>{{cite web |author=田中聡 |title=FREETELの「業界最速」は何が問題だったのか? プラスワンと消費者庁に聞く |url=http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1704/28/news057.html |date=2017-4-28 |publisher=ITmedia Mobile |accessdate=2018-12-1}}</ref> 景品表示法への違反、優良誤認として8824万円の支払いが命じられた<ref>{{cite web |author= |title=消費者庁、プラスワン・マーケティングに課徴金 「FREETEL」運営時、「業界最速」など不当表示 |url=http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1803/26/news081.html |date=2018-3-26 |publisher=ITmedia Mobile |accessdate=2018-12-1}}</ref>。
 
こうした苦情によって2016年に[[電気通信事業法]]が改正され、電波のつながり具合や、契約時の説明等が不十分な場合には8日以内に契約を解除できることとなった<ref>{{cite web |author= |title=ご存じですか? 電気通信事業法が改正されました-光回線やスマートフォン等の契約書面はしっかり確認しましょう! |url=http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20160519_2.html |date=2016-6-6 |publisher=国民生活センター |accessdate=2018-12-1}}</ref>。
 
2018年にはある男性が[[UQコミュニケーションズ]]を提訴。「ギガ放題プラン」について、契約上の速度制限について店頭説明では制限にかかったことがないかのように説明されたため契約したら、著しい速度制限があったため。東京高等裁判所の判決により認められたことは、[[電気通信事業法]]26条における契約条件の説明義務や、[[消費者契約法]]4条1項1号の「不実告知」という重要事項の事実と異なる説明である。また回線提供者のUQは契約を担当した会社ではないが、UQの広告について優良誤認を起こす可能性、消費者契約法9条によって解約金は解約による損害を上回ってはならず、UQの1万9千円は脱法的だと指摘された。<ref>{{cite web |author=出口絢 |title=契約時の「録音」が決め手に…UQ「ギガ放題」広告に賠償命令 |url=https://www.bengo4.com/c_8/n_7853/ |date=2018-5-9 |publisher=弁護士ドットコム |accessdate=2018-12-1}}</ref>。
 
== 実際の通信速度 ==
ベストエフォート型では通信設備や回線が顧客間で共有されているため、回線利用の混雑を理由に通信品質は低下する<ref name="通信速度表示">{{cite web |author=佐々木太志 |title=通信速度表示とMVNOの関係 |url=http://www.itmedia.co.jp/mobile/articles/1612/08/news053.html |date=2016-12-8 |publisher=ITMedia Mobile |accessdate=2018-12-1}} 次ページも含む。</ref>。また回線事業提供者の根幹の設備である「バックボーン」が要求されるデータ量に足して不足すると速度低下は起こる<ref>{{cite web |author=高橋健太郎 |title=トラフィック急増で体感速度が低下 どこにボトルネックが生じるのか |url=https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/nnw/18/112000040/112000001/ |date=2018-11-30 |publisher=日経XTECH |accessdate=2018-12-1}}</ref><ref>{{cite web |author=高橋健太郎 |title=常にバックボーン帯域を増強 400Gの伝送技術も投入へ |url=https://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/mag/nnw/18/112000040/112000003/ |date=2018-11-30 |publisher=日経XTECH |accessdate=2018-12-1}}</ref>。
[[2010年代]]、[[インターネットバックボーン|バックボーン]]である大手の[[インターネットサービスプロバイダ|ISP]]の間およびISPと[[インターネットエクスチェンジ|IX]]との接続は100G[[ビット毎秒|bps]]単位であり、[[ルーター]]・[[レイヤ3スイッチ|スイッチ]]もn×10Gbpsのオーダ(10Gbpsは、100Mbpsの100本分)である。そのため、最大1~2Gbpsで通信できるとしているが、すべてのユーザが最高速度で通信し続けることができるだけの通信インフラは、そもそも存在していない。
 
2018年には10Gbpsの光回線サービスの提供が開始されている<ref name="au10GB">{{cite web |author=清水理史 |title=PCから回線までフル10Gbpsの接続はやっぱり速かった! 自宅インターネット環境を「auひかり ホーム10ギガ」に変更 |url=https://internet.watch.impress.co.jp/docs/column/shimizu/1137646.html |date=2018-8-13 |publisher=Internet Watch |accessdate=2018-11-25}}</ref>。スマートフォンでは2017年に、NTTドコモが788Mbpsのサービスを開始している<ref name="格安スマホの実効速度"/>。
回線を共有しているため、他のユーザの使用状況や、同じ地域の同じISPを利用する他のユーザの使用状況などで、単位時間あたりに送受信できるデータ量を表す実効通信速度が大きく変動する。
 
しかし、こうしたベストエフォート型回線サービスの最大速度の表示はあくまでもその通信規格における理論上の最高速度であり、利用者の競合がなく1人のみが使用し、信号減衰がないといった環境は実際には望めない<ref name="通信速度表示"/>。
[[フレッツ]]の場合、[[インターネット]]の利用については、IPv4では都道府県単位で1か所、IPv6では西日本と東日本の単位で1か所あるPOIと呼ばれるNTTとプロバイダ間の接続点において10Gbpsで接続されているため、同じ地域の同じプロバイダを利用するユーザで10Gbpsの帯域を共有している。例えば、同一県内で同じプロバイダを利用する1万のユーザが同時に通信すれば、1ユーザあたりの実効通信速度の期待値は1Mbpsとなる。同様に、[[Quality of Service|QoS]]による優先度の関係で、実際にはあり得ない状況だが、他のユーザが全く通信していなければ、1Gbpsで通信できる可能性もある。
 
;記者が個人的に実測した一例
また、[[パーソナルコンピュータ|PC]]の処理や[[ブロードバンドルーター]]搭載の[[Local Area Network|LAN]]転送性能が低い場合、FTTHやCATVなどの[[Wide Area Network|WAN]][[ラストワンマイル]]の回線がオーバースペックとなっている。
*最大10Gbps - 実行速度ダウンロード 2200.95Mbps、アップロード 5063.96Mbps<ref name="au10GB"/>。
*最大1Gbps - 実行速度ダウンロード 618.32Mbps、アップロード 986.12Mbps<ref name="au10GB"/>。
 
またこうした[[スピードテスト]]の結果よりも、実際にデータを提供しているウェブサイトからのダウンロード速度は遅くなることがある(この場合、特定のウェブサイトの読み込みが遅い)<ref name="au10GB"/>。
もっとも、TCP/IPのプロトコル的に、RWIN(TCP Window)の一般的なサイズ64kバイト~256kバイトでRTT(Round Trip Time)が15ms程度の場合、1組のソケット間通信では接続通信速度が1Gbpsであっても、100Mbps程度の実効通信速度が上限となる。TCPは基本的には応答確認しながら通信を行う方式であるため、RTTが長くなれば、実効通信速度が低下する。RTTは、通信の距離が長くなったり、通信が輻輳状態になったり、通過するルータの数が多くなったりすると長くなる。RWINを大きくすればRTTが長くなっても実効通信速度の低下を抑制できるが、多数の通信を捌くために通信相手となるサーバ側の送信用のTCP Windowのサイズが小さいことが多く、そのためにクライアント側も小さなRWINしか使えず、実効通信速度が低下する。複数のソケットを使用して同時並行で通信すれば、実効通信速度を上げることもできるが、クライアントの処理能力によってはかえって実効通信速度が落ちてしまうことがある。結果として、複数の機器または複数のソケットを使って同時並行で通信しない限り、100Mbps以上の帯域を消費することはまれである(応答確認を行わないUDPならばより高速な通信も可能であるが、実際には、回線の輻輳や、サーバおよびクライアントの処理能力不足でそれほど高速な通信はできない)。
 
;NTTドコモによるガイドラインに従った表記
== 脚注 ==
*最大788MBps - 実行速度は97Mbps-162Mbps<ref name="格安スマホの実効速度"/>。
 
===パソコン環境===
FTTHやCATV、ADSLの[[Wide Area Network|WAN]][[ラストワンマイル]]の回線の設備が性能不足である場合もある。ここまでは[[モデム]](あるいは[[ブロードバンドルーター]])までである。
 
モデム(ブロードバンドルーター)から利用者が使用するパソコンまたはスマートフォンまででは、[[パーソナルコンピュータ|PC]]の処理性能や、搭載された[[Local Area Network|LAN]]や[[Wi-Fi]]の規格上の転送性能が低い場合がある。
 
こうしたネットワークの途中、あるいは末端において、処理性能の低い機器が存在すれば、その処理性能を上回ることはできない。
 
例えば2018年時点では、10Gbpsの設備では、[[10ギガビット・イーサネット]](10GBASE-T)のルーターと、[[カテゴリー6ケーブル#CAT6A|カテゴリー6ケーブル]] (CAT6A) 規格のケーブルが必要となる<ref name="au10GB"/>。Wi-Fiでも、回線業者から送られてくるモデム装置は{{仮リンク|IEEE 802.11ax|en|IEEE 802.11ax}}(WiFi 6)の最大2.4Gbpsに対応するが、端末側(PCやスマートフォン)の、[[IEEE 802.11ac]](Wi-Fi 5、[[MIMO]])の最大866Mbpsなど(規格により異なる)を超えることはできない<ref name="au10GB"/>。(またこれらの規格も理論上最高速度であり、実測では劣る)
 
== 脚注出典 ==
{{脚注ヘルプ}}
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* [[電気通信役務#日本の電気通信事業法における利用者保護]]
* [[ブロードバンドインターネット接続]]
 
==外部リンク==
*[http://www.tspc.jp/consumer.html 消費者の皆さまへ] (電気通信サービス向上推進協議会) 自主基準に関するガイドライン等
 
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