「イスパノ・スイザ HS.404」の版間の差分

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[[File:20mm_Hispano-Suiza_Mk_V_cannon-IMG_6279-white.jpg|thumb|250px|イスパノ・スイザ 20mm航空機関砲<br />イギリスによって独自改良されたモデルである、イスパノ<ref name="hs404_1">原語の[[スペイン]]および[[フランス語]]では語頭の「H」を発音しないため、"Hispano"は“イスパノ”と発音されるのが正しいが、イギリスやアメリカでは英語読みの発音である“ヒスパノ”と発音される例も多く、日本でも“ヒスパノ”と表記されている例が多々ある。特にイギリスがライセンス生産したモデルは“ヒスパノ”とされることが多い。</ref> Mk.V(Hispano Mark V)]]
[[File:Hispano-Suiza Anti Aircraft Gun, 20 mm..jpg|thumb|250px|イスパノ・スイザ HS.404<br />画像のものはイギリスによる独自改良型であるイスパノ Mk.Vを地上設置型の対空機銃とした転用型である]]
'''イスパノ・スイザ HS.404'''(Hispano-Suiza HS.404)は、[[イスパノ・スイザ]]社によって開発された口径20mmの[[航空機関砲]]である。
 
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しかし、HS.7/9の生産開始直後、エリコン社との間に特許を巡る係争が発生し、両社の協定が破棄されてしまったために継続的な生産が不可能となり、イスパノ社の技術者[[マルク・ビルキヒト]](Mark Birkigt)は、特許回避の意味もあり、HS7/9に機構の改修と連射能力、[[砲口初速]]の向上といった改良を施し、タイプ 400('''HS.400''')および402('''HS.402''')、更に実銃の製作は行われず図面上のみのものであったがタイプ 403('''HS.403''')を経て、1936年にはタイプ 404('''HS.404''')を完成させた。エリコンFFSでは[[ブローバック#APIブローバック方式|API ブローバック]]だった作動方式は、[[ショートリコイル]]とロック解放時にガス圧作動という併用方式に改められていた。
 
HS.404の大きな特徴として、上述のように2種類([[ショートリコイル]]および[[ガス圧作動方式]])作動方式を併用していることと、作動に伴う動作部分が非常に大きいことが挙げられる。通常、ブローバック方式の銃器は[[ボルト_(銃)|遊底(ボルト)]]のみ、もしくはボルトと銃身(※ショート/ロングリコイル方式)が撃発に伴い前後に動くことで動作するが、HS.404は砲身部先端よりも後部、つまりは銃身の大半と機関部そのものが前後する構造になっていることである。これは[[モーターカノン]]方式に用いることを前提として設計されているためで、通常の自動火器では前後に駆動する作動部を保持する部分(レシーバー)を、エンジンおよびそれに砲をマウントするフレームを用いることで、エンジンと砲を一体化させた設計としていたためである。
 
モーターカノン備砲用の20mm HS.404の他、銃身長を1,000mmに短縮して爆撃機他の銃塔/防御機銃用とした'''HS.405'''、23mm口径とした銃塔/防御機銃用(銃身長 1,150mm)の'''HS.406'''、23mm口径でモーターカノン用の長銃身(銃身長 1,600mm)型'''HS.407'''も開発された。ただし、HS.404以外は第二次世界大戦の開戦時で試作品が1丁ずつ完成していたのみである。
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元来の装弾数は多くても60発([[弾倉#バリエーション|ドラムマガジン]])のみであったため、飛行中にドラムを交換することができない[[航空機]]では装弾数不足が問題になり、[[1940年]]に[[弾帯|ベルト給弾]]システムの開発で解決が試みられたが、[[ナチス・ドイツのフランス侵攻|フランスの降伏]]で計画は頓挫し、最終的にはベルト給弾型は試作品と設計図が密かにイギリスに持ち出されて実現した。
 
[[イギリス]]は、HS.404の製造許可を取りつけ、'''イスパノ<ref name="hs404_1" /> Mk.I'''(Hispano Mark I)として[[1940年]]に“モーターカノン”方式でなくとも搭載できるように機体へのマウント方法を工夫し、[[ウェストランド ホワールウィンド]]へ搭載している。[[バトル・オブ・ブリテン]]中には[[スーパーマリン スピットファイア|スピットファイア]]にも搭載(Mk.Ib/Mk.II)されたが、旋回時の装弾不良などから部隊での評判は必ずしも良くはなかった。さらに、[[イギリス空軍]]と[[イギリス海軍]]艦隊航空隊は[[1941年]]に細かな改良を加えた'''イスパノ Mk.II'''(Hispano Mark II)を採用し、ブローニング[[機関銃]]8挺を装備していた[[ホーカー ハリケーン]] Mk.Iと熱帯地用のスピットファイアへ搭載させた。後のイギリス空軍[[戦闘機]]に搭載される標準[[武装]]になるが、当初作動不良を頻発したため、スピットファイアでは暫定的に20mm[[機関砲]]2門と7.7mm機銃4挺のB翼装備で配備され、改善後に4門装備も可能なユニバーサルウィングことC翼が標準となり、[[ホーカー タイフーン|タイフーン Mk.IB]]以降、[[ホーカー テンペスト|テンペスト Mk.V]]でも4門装備であった。
 
[[File:Aircraft_MG.JPG|thumb|240px|[[A-1_(航空機)|ダグラス A-1 スカイレイダー]]に搭載された、アメリカ生産型HS.404の改良型であるAN-M3 20mm航空機銃]]
HS.404は[[アメリカ合衆国]]でも導入され、20mm機関砲への更新を予定していた[[アメリカ陸軍航空隊]]と[[アメリカ海軍]]では、1941年に弾薬の製造を含む大規模な製造体制が構築された。アメリカで製造されたHS.404は'''AN-M1'''と呼称された。しかし、ミリ[[メートル法]]で作図されていた設計図を[[ヤードポンド法]]に修正して設計図を描き直したこと、アメリカ軍においては“大砲”に分類して製造公差を決定した<ref>これはアメリカ軍においては口径0.60インチ(15.24mm)より口径の大きなものは「砲」として分類されるためである。砲の製造公差は「銃」よりは緩く規定されていた。</ref>ため、部品の精度に問題が生じ、製造された機関砲は信頼性に乏しく、撃針の打撃力不足によって不発が多発し、更に、重量軽減のために空気圧式の再装填装置を取り外したため、飛行中に装弾不良が発生すると回復できない、という深刻な問題が生じた。イギリスは自国の生産力の負担を軽減するためにAN-M1の輸入に興味を示したが、AN-M1を受け取ると、その出来の悪さに失望したという。また、20mm機関砲はそれまでの7.62mm/12.7mm航空機銃に対して重いため、単純に換装した機体は発砲時や高機動時の翼のねじれが大きくなり、総じて命中精度が低下するという事態となった。
 
イギリスは主にわずかに短い[[薬室]]の違いが問題の原因であると考え、[[1942年]]4月にイスパノ Mk.IIとその図面(イギリス製のためヤード・ポンド法規格で作図されていた)を比較のためアメリカに送った。しかし、アメリカでは既にAN-M1用弾薬の生産ラインを稼働させて大量に生産してしまっていたため、薬室の修正を断り、他所の修正を行うことで少しでも信頼性を高めた'''AN-M2'''を開発した。だがこれも成功とは言い難く、不発と装弾不良の多発の問題は最後まで解消されることはなかった。アメリカ海軍は戦争を通してAN-M1/M2系20mm機関砲で武装の統一を試みていたが、全面的に切り替えられることはなく、対地攻撃任務向けに[[F6F (航空機)|F6F]]や[[F4U (航空機)|F4U]]の一部に搭載されたにすぎなかった。
 
イギリスは、自国の生産力はもはや問題ではないレベルまで向上していたため、アメリカ製AN-M1/M2の導入は中止した。また、イスパノ Mk.IIを、[[砲口初速]]を犠牲にして重量の軽減と速射性を高め、[[銃砲身|銃身]]を短くした'''イスパノ Mk.V'''(Hispano Mark V)を開発し、テンペスト Mk.Vなどに搭載した。アメリカはMk.Vに倣って'''AN-M3'''を開発したが、やはり信頼性の問題は続いた。結局、アメリカ製HS.404の信頼性問題は、アメリカ陸軍航空隊では空軍の発足に伴って制式番号が変更され、弾薬をイギリス規格のものに切り替えて薬室の設計を変更した'''M24'''に至が、アメリカ海軍ではAM-N3の改良型である'''[[コルト Mk12|Mk.12]]'''が開発されるまで解決しなかった。なお、Mk.12では発射速度は毎分1,000発に向上している
 
第二次大戦後は[[DEFA 550|DEFA]]、[[ADEN (機関砲)|ADEN]]などの[[リヴォルヴァーカノン]]の搭載機が増加していき、旧式機の引退と共に、イスパノ Mk.Vを含むHS.404系機関砲は、航空機搭載用としてはその姿を消していった。
 
== 対空機関砲としての利用 ==
HS.404は航空機関砲としての他、銃架に搭載した対空機関砲としても用いられ、航空機用のものを急造の銃架に載せた現地生産品も数多く製作されている。ただし、オリジナルのHS.404およびそのライセンス生産品は、構造上銃口先端部を固定しなければ安定して動作しないため、銃架の構造にはその点を踏まえた工夫が必要であった。
HS.404(AN-M3)およびM24はアメリカ海軍では'''Mk.16'''として艦載化もなされた<ref>[http://www.navweaps.com/Weapons/WNUS_20mm_mk16.php 20 mm Mark 16]</ref>。
 
HS.404(ANAN-M3)およびM24はアメリカ海軍では'''Mk.16'''として艦載化もなされた<ref>[http://www.navweaps.com/Weapons/WNUS_20mm_mk16.php 20 mm Mark 16]</ref>。
 
=== TCM-20 ===
[[File:TCM-20-hatzerim-2.jpg|thumb|250px|イスパノ・スイザ HS.404をM45機関銃架に搭載したTCM-20対空機関砲]]
第二次世界大戦時のアメリカ合衆国で、4挺の[[ブローニングM2重機関銃|M2重機関銃]]を装備したM45機関銃架が開発され、車載用途などで運用された。第二次世界大戦後、イスラエル国防軍はM45機関銃架のM2重機関銃を、2挺のイスパノ・スイザHS.404に換装した2連装の対空機関砲として'''TCM-20対空機関砲'''を開発した<ref name="weaponsystems">[http://weaponsystems.net/weapon.php?weapon=EE02+-+TCM-20 weaponsystems.net TCM-20]</ref>。TCM-20はM3ハーフトラックや[[BTR-152]]装甲車に搭載されて使用された。また自走型以外にも右写真のように地上据置で使用されたり、1軸2輪の[[フルトレーラー|トレーラー]]に積載して小型トラックで牽引可能としたものも見られた。1973年に発生した[[第四次中東戦争]]でも、旧式兵器でありながら26機を撃墜する活躍を見せた。
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== 外部リンク参照元 ==
* [https://archive.org/details/20mmautomaticgun00unit War Department Training Manual TM 9-227 20mm M1 Automatic Gun & 20mm AN-M2 Automatic Gun (November 19, 1942).] - アメリカ軍の作成したAN-M1およびAN-M2のマニュアル ※2018年12月10日閲覧
 
== 関連項目 ==
{{commons|Category:Hispano-Suiza_HS.404}}
* [[機関砲]]
* [http://www.airwar.ru/weapon/guns/hs400.html airwar.ru>Hispano-Suiza HS.404(411)] ※ロシア語ページ
* [[航空機関砲]]
 
* [[コルト Mk12]]
 
== 外部リンク ==
* [http://www.airwar.ru/weapon/guns/hs400.html airwar.ru>Hispano-Suiza HS.404(411)] ※ロシア語ページ
* [https://eugeneleeslover.com/USNAVY/CHAPTER-9-B.html NAVAL ORDNANCE AND GUNNERY, VOLUME 1 NAVAL ORDNANCE>CHAPTER 9 AUTOMATIC WEAPONS B. 20-mm aircraft gun]
* [http://arsenalvg33.free.fr/hs404.htm L'Arsenal VG33>CANON HISPANO SUIZA TYPE 404]
 
{{第二次大戦の航空機関砲}}