「ファロー四徴症」の版間の差分

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'''ファロー四徴症'''(ふぁろーしちょうしょう、Tetralogy of Fallot;TOF)とは、1672年にデンマーク人医師[[ニールス・ステンセン]]が提唱し、1888年、フランス人医師[[エティエンヌ・ルイ・アルチュール・ファロー]]により、[[チアノーゼ]]を起こして全身の[[皮膚]]が青く(浅黒く)見えるBlue Babyと呼ばれた子供の症例から報告された[[先天性心奇形]]の一種である<ref>([[#二宮2006|(二宮2006) p.186-187「マルセイユの法医学教授ファロー」]])</ref>発生の段階で[[肺動脈]]と[[大動脈]]の2つを分ける動脈幹円錐中隔が前方に偏位することで生じるものである。名前にある「四徴」とは以下の4つを意味する。
*[[肺動脈狭窄]];:漏斗部狭窄、肺動脈の入り口が狭くなっている。
*[[大動脈騎乗]](:大動脈の起始が左右の心室にまたがっていること)
*[[心室中隔欠損]]
*[[心室中隔欠損]]:心室中隔に穴が開いている。
*[[右心室肥大]]
*右心室肥大:右心室の心筋が厚くなる。
*[[大動脈騎乗]](大動脈の起始が左右の心室にまたがっていること)
ただし「四徴」のうち、この症例に特徴的なチアノーゼ症状を引き起こしている本質要素は肺動脈狭窄と心室中隔欠損である<ref>[[#高橋2015|(高橋2015) p.159]]</ref>。また、[[肺動脈]]狭窄が閉鎖に至った場合、[[極型ファロー四徴症]]といわれる。
 
右心室からの[[静脈血]]が心室中隔欠損を通じて流れ込むので、[[チアノーゼ]]を起こす。主に乳児期以降にチアノーゼを起こし、全身の[[皮膚]]が青く(浅黒く)見える子供をBlue Babyと呼ぶ。
 
[[肺動脈]]狭窄が閉鎖に至った場合、[[極型ファロー四徴症]]といわれる。
 
==病態==
循環器の発生において[[肺動脈]]と[[大動脈]]は最初は共通の'''動脈幹'''として1つの脈管であるが、動脈幹に隆起が生じそれが螺旋状に成長し動脈幹中隔として2つの動脈を分ける、また心円錐でも左右を分ける円錐中隔が形成される。この2つの中隔が融合して動脈幹円錐中隔として右室流出路と左室流出路を分ける。この中隔が前方に偏位したものがファロー四徴症である。動脈管円錐中隔の前方偏位により'''肺動脈が狭窄'''するとともに、その分だけ大動脈が拡張する('''大動脈騎乗''')。一方で動脈幹円錐中隔が偏位のために心室側の洞部中隔が融合できないので'''心室中隔欠損'''を生じる。
通常の[[アイゼンメンゲル症候群|アイゼンメンジャー化]]していない[[心室中隔欠損]]では左室圧の方が右室圧より高く、左右短絡(左右シャント)を生じ肺高血圧となるが、ファロー四徴症の場合は[[肺動脈狭窄]]があるために肺に血液が流れ込みにくく肺血流量は減少するとともに右室圧と左室圧が等しくなり右左短絡(右左シャント)を生じ右心室からの[[静脈血]]が心室中隔欠損を通じて流れ込むのでチアノーゼが起きる。だし、通常の心臓に比べると右室圧は高いので[[右室肥大]]を生じることになる。
 
なお、極型ファロー四徴症でない場合は出生時の右室流出路(肺動脈)狭窄は強くなく、心臓が発達するにつれ漏斗部の肥厚で狭窄が強くなるので生後数か月で徐々にチアノーゼが悪化していく<ref>[[#高橋2015|(高橋2015) p.159-160「G Fallot四徴症」]]</ref>。
なお、新生児は誕生後10~15時間は肺動脈と大動脈の間で[[動脈管]]から血液が通過できるため、ファロー四徴症の子供もこの間はここ経由で肺に十分血流が送られ比較的症状が軽いが、これを過ぎると動脈管がふさがって血液が通れなくなるため悪化する<ref>『新編・医学史探訪 : 医学を変えた巨人たち 』二宮陸雄 著、医歯薬出版、2006年、ISBN 4-263-23851-6、P.221。</ref>。
 
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自然治癒はしないため、手術を要する。根治手術は以前はある程度の成長をまってしたが、現在では1-2歳前後の手術が一般である。
#[[姑息手術]](緊急手術)
#*肺血流増加を目的としたブレク-タウシッグ(Blalock-Taussig)手術<ref>和名は「ブラロック・トーシッヒ手術」とも([[#高橋2015|(高橋2015) p.157]])</ref>(鎖骨下動脈と肺動脈の間にを吻合、もしくはバイパス血管をつけ、肺血流を増加させる手術。)等を行い、根治手術まで持たせる<ref>なお、ブレク-タウ手術は先天性心疾患の外科手術としては歴史が長く1944年に初めて行われたが、当初は心臓そのものをいじる根治手術がなかったため、この手術は待機目的ではなくこれ自体が治療だった。</ref><ref>『新編・医学史探訪 : 医学を変えた巨人たち 』([[#二宮陸雄 著、医歯薬出版、2006年、ISBN|(二宮2006) 4-263-23851-6、Pp.222-223「ファロー四徴の手術に挑んだブレイロクとタウシッグ」]])</ref>
#根治手術(待機手術)
#*[[心室中隔欠損]]孔閉鎖術、右室流出路再建術(⊂肺動脈弁温存手術)等を行う。
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== 脚注 ==
{{Reflist}}
== 参考文献 ==
 
*{{cite book | 和書| author = 二宮陸雄| title =新編・医学史探訪 : 医学を変えた巨人たち| publisher =医歯薬出版| date = 2006年| isbn = 978-4-263-23851-6| ref = 二宮2006}}
*{{cite book | 和書| author = 梅村敏(監) 木村一雄(監) 高橋茂樹| title =STAP内科5 循環器| publisher =海馬書房| date = 2015年7月| edition = 第3版| isbn = 978-4-907921-02-6| ref = 高橋2015}}
==関連項目==
{{心血管疾患}}