「国務大臣」の版間の差分

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[[日本国憲法第75条]]は「国務大臣は、その在任中、内閣総理大臣の同意がなければ、訴追されない。但し、これがため、訴追の権利は、害されない」と規定する。この規定は国務大臣の特典であるとともに内閣の一体性を確保し、内閣総理大臣の内閣の首長としての地位を強化するものである<ref name="itou-540">伊藤正己著 『憲法 第三版』 弘文堂、1995年、540頁</ref>。
 
日本国憲法第75条の「訴追」については、[[刑事訴訟法]]上の[[逮捕 (日本法)|逮捕]]・[[勾留]]を含むとする説(本来的には「公訴の提起」を意味するが、憲法75条は国務大臣の身体の[[自由]]を保障した趣旨である<ref name="itou-540"/>)と逮捕・勾留を含まないとする説(憲法上あるいは諸法令上の「訴追」とは裁判・懲戒・罷免の請求を意味する<ref name="satou-(2)-920">佐藤功著 『新版 憲法(下)』 有斐閣、1984年、920頁</ref>)が対立している<ref name="higuchi-nakamura-satou-urabe-(3)-267">樋口陽一・中村睦男・佐藤幸治・浦部法穂著 『注解法律学全集3 憲法Ⅲ(第41条~第75条)』 青林書院、1998年、267頁</ref>。[[日本国政府|政府]]見解は「訴追」には逮捕を含まないとしている<ref name="higuchi-nakamura-satou-urabe-(3)-268">樋口陽一・中村睦男・佐藤幸治・浦部法穂著 『注解法律学全集3 憲法Ⅲ(第41条~第75条)』 青林書院、1998年、268頁</ref>。先例としては1948年9月30日に[[栗栖赳夫]]国務大臣([[経済安定本部]]総務長官兼[[物価庁|物価庁長官]][[経済調査庁|中央経済調査庁長官]])が[[昭和電工事件]]で内閣総理大臣の同意なく逮捕されたが、この事件で[[東京高判所|東京高裁]]は憲法75条の「訴追」に逮捕、勾引、勾留のような身体の拘束を含むとは解しえないと判示している(東京高判昭和34年12月26日判時213号46頁)<ref name="higuchi-nakamura-satou-urabe-(3)-267-268">樋口陽一・中村睦男・佐藤幸治・浦部法穂著 『注解法律学全集3 憲法Ⅲ(第41条~第75条)』 青林書院、1998年、267-268頁</ref>。
 
先述のように「国務大臣」には内閣総理大臣を含む場合と含まない場合があるが、日本国憲法第75条の「国務大臣」についても、内閣総理大臣もこの「国務大臣」に含むとする学説(内閣総理大臣の訴追には総理自らの同意を要すると解する)と、内閣総理大臣はこの「国務大臣」には含まれないとする学説(内閣総理大臣が自らの訴追に同意するということは考えにくく、また、国務大臣について内閣総理大臣の同意を要するとしている本条の精神からみて、内閣総理大臣については他の国務大臣よりも強く保護されているものと解すべきであるとし訴追だけでなく逮捕されることもないという特典が自ずから導かれるとみる)の二つの説が対立している<ref name="higuchi-nakamura-satou-urabe-(3)-268"/>。